51話 ハダカエプロン
「トパーズ?」
朝靄の中からヒスイの声がした。
地下室にジンを残し、サファイアとも別れ、一人噴水前まで戻ってきたところだった。
時刻は早朝4時。
「・・・・・・」
「あ、ビックリした?」
ヒスイは幼い少女の姿をしている。
見た目は10歳そこそこだ。
「赤ちゃんを産んだ後はね、こうやって体を縮ませて、魔力を回復させるの。このほうが何倍も早く取り戻せるのよ。体力もね」
出産して間もないというのに、そんな気配は微塵も感じさせない姿だった。
「・・・・・・」
トパーズは口を結んだまま、伝えたい言葉が、何一つ、声にならない。
「あの・・・ごめんね?」
小さなヒスイがトパーズを見上げていた。
「どっちかっていうと、私のほうが悪い気がする」
主語のない文脈・・・でも、わかる。
「息子だからいいや、なんて、軽く考えちゃって。親子でもえっちすれば子供ってできるものなのね」
当たり前のことなのに、相変わらずボケたことを言う。
「お兄ちゃんは怒らなかったけど・・・やっぱり傷つけちゃったと思うから」
「・・・・・・」
「今度から気をつける」
ケロッとした顔で、ヒスイはそう締め括った。
「ひょっとしたら、お兄ちゃんが厳しいコト言ったかもしれないけど、気にしないで。無理して一緒に暮らすこともないし。トパーズはまだこれからだし」
「・・・・・・」
「普通に誰かを好きになって・・・結婚して・・・うん。それでいいと、思う」
心から出た言葉なのか、自分でもよくわからない。
(でも“母親”だったら、きっとこう言うべき・・・)
「・・・・・・」
ごちぃんっ!
「いたっ!!」
突然グーで頭を殴られた。
少女相手でも手加減なしだ。
「な、なんでぶつの〜!?」
ヒスイは涙目でトパーズに文句を言った。
「・・・無理だ」
「え?」
「お前にしか勃たない」
「・・・・・・え?今、なんて・・・」
思わず真顔で聞き返すヒスイ。
「勃たない。他の女とはできない」
トパーズは堂々と言い切った。
「・・・そ・・・れは・・・深刻な病気だわ・・・病院へ・・・」
激しく狼狽えるヒスイを捕まえて、抱き上げる。
「ほっとけ。そのうち治る」
抱き上げて・・・ヒスイの耳を甘噛みした。
「あ〜・・・え〜・・・っとぉ・・・じゃあ・・・一緒に暮らす?」
くすぐったい痛みに頬を染めながらヒスイが言った。
「そうする」
「あんまりお兄ちゃんと喧嘩しないでね?」
「それは、保証できない」
「シ・・・シトリンっ!!?」
ジンの声が裏返る。
ヒスイの出産騒動から一週間。
コハク、ヒスイ、メノウ、トパーズは産まれた赤子を連れてエクソシストの寮へ。
オニキス、サファイア、シトリン、ジンはモルダバイト城へ。
シトリンに呼び出され、部屋へと顔を出したジン。
そこで待っていたのは・・・
裸にエプロン姿のシトリンだった。
(祖父殿っ!!ホントにこれで大丈夫なのか!!?)
別れ際、メノウに念を押され、訳がわからないながらもチャンレジしてみた。
巨乳、そしてスタイル抜群のシトリン。
最高にセクシーだ。ジンはすっかり見とれてしまっている。
「ええと・・・お風呂にする?」
「え・・・?」
「ご飯にする?」
「え?え?」
「それとも・・・ワ・タ・シ?」
「えぇぇっ!?」
「なっ・・・なんだコレはぁっ!!」
自分で言って大慌て。
『ジンが喜ぶ魔法の言葉だよ♪』
メノウがマジックで手の平に書いた台詞を丸読みしたのだ。
「ジン・・・あの・・・これは・・・」
折角のお誘いを断る筈がない。
有頂天になったジンの耳に、シトリンの言い訳は届かなかった。
「えっと・・・じゃあ、シトリン」
ビクッ!!
指名されたシトリンが露骨に怖がる。
「え・・・?」
(ダメ・・・なのか?)
身を竦め、浮かべる表情は明らかに恐怖。
(そんな顔されたら・・・)
舞い上がっていた気持ちが一気に萎えてしまった。
「えっと・・・じゃあ・・・ご飯で」
「そうか!飯か!」
急にシャキッと背筋を伸ばし、ジンをテーブルへと案内する。
「さぁ!食え!!」
「え?」
(どれを??)
テーブルの上に用意されていたのは・・・泥団子。
「ドーナツだ!!」
シトリンが胸を張って宣言した。
ドーナツの作り方はコハクから習った。
シトリンの腕前を知っているコハクは、ホットケーキの粉を使った一番簡単な作り方を伝授したのだが・・・駄目だった。
(どうやったらこうなるのか逆に聞きたいくらいだ・・・でも・・・)
ジンのコメントを、シトリンは今か今かと待ちわびている。
「いただきます・・・」
「おぉ!遠慮せずどんどん食え!」
ぱくっ。
「う・・・」
飲み込んですぐ、アヤシイ雲行き。
ゴロゴロゴロ・・・そして、落雷。
(は、腹が・・・)
「っ・・・ごめんっ!!」
「ジン!?おい!どうした!?」
ジンはトイレに駆け込んだ。
(シトリン・・・エプロンは似合ってる。似合ってるけど・・・料理は絶対オレがする)
「よしっ!次は風呂だな!」
“シトリン”に順番が回ることはあるのか。
(どんどん遠のいていく気がする・・・)
誘っているとしか思えない悩殺的な格好をしているのに、寄ると逃げる。
猫の時とは全く勝手が違っていた。
(あぁ、なんて情けない・・・)
猫のシトリンに慣れすぎて、自分でもどうしていいかわからない。
女の扱い方をすっかり忘れてしまっていた。
シトリンの意図もわからないまま、言われるがまま。
(まさかこのあと・・・なんてことないよなぁ・・・)
シトリンの部屋の浴室で、ジンは裸で立っていた。
「おぉ〜い!!湯加減はどうだぁ!?」
シトリンに急かされ、慌てて湯船へ。
「うわっちゃぁ!!!」
(熱い!熱すぎる!!オレ、殺される!?)
毒団子に続き、熱湯風呂。
シトリンに悪意がないのはわかっているが、いつか大惨事に繋がりそうで怖い。
「お〜い!背中流してやろうか!?」
「えっ!?」
(その格好で!?)
突然の嬉しい申し出に体が反応。
希望を無くし、ぐったりとしていた部分が元気に勃ち上がる。
「やば・・・っ」
シトリンにその気もないのに、一方的な勃起を見られるは恥ずかしかった。
「入るぞぉ〜?」
「ちょっとまっ・・・」
タオルで前を隠さなければ。
セクハラになってしまう。
ジンは慌てふためいて、近くに掛けてあったタオルへと手を伸ばした。
「わ・・・っ!!」
そして足がツルリ。
(なんでこんなトコロに石鹸があるんだよぉ〜・・・)
お決まりすぎて泣けてくる。
ゴン・・・ッ!!
後頭部が浴室のタイルにぶつかった。
「ジン!?大丈夫かっ!!?」
徐々に遠くなる意識の中、シトリンに抱き起こされる。
フニフニと柔らかい胸が顔面を圧迫・・・
(ああ・・・なんか幸せ・・・)
猫じゃないシトリンに逢えたのは、本当に久しぶりだから。
(今日はこれで・・・いいや・・・)
「で、結局やってないの?」
「はぁ・・・」
エクソシスト正員寮。
コハクの淹れたハーブティに癒されながら、打ち明けた真実。
「ホントに君、男?」
「う・・・」
女顔のコハクに言われてグザッ。
自分でも自信がなくなってきた。
「・・・ふむ。なら僕がお手本を見せてあげよう」
「え?」
「しっかり見ていきなさい」
ははは!と笑ってコハクが立ち上がる。
「ヒスイ〜、おいで〜」
「はぁ〜い」
すぐに返事が返ってきた。
「ここに隠れて見てて。ただし、ヒスイのアソコは見ないでね」
「は、はぁ・・・」
コハクにクローゼットへと押し込まれたジン。
(何でこんなことに・・・)
タタタ、とヒスイが駆けてきてコハクに抱き付いた。
幼い。事情を知っていても、驚く幼さだ。
ヒスイはエクソシストの制服を着ている。
髪型はツインテールで、黒の衣装によく映える、赤いリボンをしていた。
とても産後一週間の母親には見えない。
コハクが頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細めて笑った。
「久しぶりにヒスイのエプロン姿が見たいなぁ」
「エプロン?うん、いいよ」
料理をするためのものではないと、ヒスイも理解していた。
着替えてくると言って一旦部屋を後にし、次に現れた時は、裸エプロンだった。
「おにいちゃん〜、これでいい?」
「うん・・・可愛いよ、すごく」
ちゅっ。
まずは屈んで、賞賛のキス。
「ね、ヒスイ、後ろ向いて」
「うん」
エプロンの結び目と、お尻の割れ目。幼くても女の香りが漂う。
「裸エプロンは後ろ姿がイイんだ」
と、ジンに聞こえるように言った後、背後からヒスイを囲う。
エプロンの白に負けないくらい、色素の薄いヒスイの肌。
チラチラと覗く乳首は淡いピンク色・・・桜の蕾のようだった。
日夜捏ねくり回されているものとは到底思えない。
「ちょっとだけ・・・触らせて、ね」
ヒスイの乳房は今、産まれた子供のためのものだった。
あまり刺激しないよう手の平で軽く覆って撫でる。
「あっ・・・」
それだけでも感じてしまうヒスイ。
「おにいちゃ・・・」
背中にコハクの唇が触れる度、ヒスイは体を震わせて、股の間から甘い雫を落とした。
それを掬い取り、内奥へ還すように、トロトロにふやけた場所へ指を浸ける。
きゅぷっ・・・
「ん、あっ・・・!」
いつにも増して狭くなったヒスイの入口は二本の指でいっぱいになってしまったが、コハクの指戯に応えて、その幼い体からは想像もできないほどの愛涎を垂らした。
ぷちゅ。ぷちゃっ。くちゃっ。
「うっ・・・あぁ・・・ん」
ヒスイはカーテンにしがみつき、痺れるような快感で体が崩れ落ちてしまわないよう必死になっていた。
(絶対オレのこと忘れてる・・・)
クローゼットの中から、強要された覗きに勤しむジン。
切なく興奮してしまうので、できれば目を逸らしたい。
(・・・のに、なんでこんなに綺麗に見えるんだろうなぁ・・・)
性行為が視覚的に美しいものとは、今まで思っていなかった。
その概念を覆すほど、絡み合う二人に見惚れてしまう。
きゅぽっ。
可愛らしい音をたててコハクの指が抜けた。
「うっ・・・んっ・・・!」
「ヒスイ・・・舐めて」
コハクは濡れた指先をヒスイの口へ突っ込んだ。
「ん・・・むっ!!」
「ね・・・美味しいでしょ?」
ヒスイは頷いてコハクの指についた自分の愛液を舐め、それが済むと、指をちゅうちゅうと吸い始めた。
「ほにぃ・・・ひゃん・・・の・・・ふき」
言葉にならない声。
でもコハクには通じる。
“お兄ちゃんの指、好き”
「うん・・・もっと・・・吸って。僕のアレだと思って」
指先を動かして、ヒスイの口内を掻き回す。
「ほにぃ・・・ひゃ・・・ふっ・・・ぅ!!」
口の中に入れられた指は、淫口に差し込まれたペニスと似た感覚で、ヒスイを激しく興奮させた。
口腔は愛液で溢れ、コハクの指をビショビショに濡らしている。
「んっ!ふぅっ!!」
きゅっ。きゅっ。ちゅっ。
ヒスイの口から淫らな音が漏れる。
ぴちゃ・・・
「よしよし・・・いい子だね」
低く甘い声でコハクが褒めると、ヒスイは益々夢中になって指を咥えた。
(う・・・すごい・・・エロすぎる・・・コハクさん・・・)
コハクが妙に眩しく見える。ジンの視線は釘付けだ。
「じゃあ、そろそろ・・・」
と、言ってもコハクはまだズボンを下ろさない。
「僕がいただくとしよう」
ごくり。
コハクの喉が鳴る。
「あっ・・・おに・・・」
姿勢を低くし、下からヒスイの腰を掴んで固定。
小さな割れ目にずっぽりと顔を埋めた。
「あっ・・・!!ンンッ!!」
ヒスイの体が持ち上がるほど顔を密着させると、ヒスイはコハクの口の中へたっぷりと愛液を注ぎ込んだ。
「はっ、んっ、んぅ・・・あ・・・ん」
ジュルッ。ジュルルッ。ゴクン。
「はぁ・・・んっ・・・」
これでもかとコハクに愛液を吸い取られ、ヒスイはついにカーテンを離してしまった。
「も・・・ちから・・・はいんな・・・」
ズルッ・・・
両手両足が床につく。
ヒスイはいつしか雌犬の格好になってべちゃりと伏した。
「あぅ・・・おにぃ・・・ちゃぁあん・・・」
「・・・そろそろ欲しいかな?」
そこでコハクがチャックを下ろす。
in クローゼット
(うわ・・・あんなに小さいトコに入れちゃうんだ・・・痛そ〜・・・)
だが、ヒスイが嫌がる様子は全くない。
ギシギシ、ビチビチと裂ける音が聞こえてきそうな程なのに。
交尾の体勢で、身体いっぱいに迎え入れている。
「うっ!ううっ!!はっ・・・あ・・・」
(パッと見、犯罪だよな〜・・・)
「あっ!あっ!あぁぁ!!」
叫び、喘ぐ、ヒスイの声。
艶っぽく、色っぽく、荒れる。
「・・・ヒスイ、愛してる。痛かったら、ごめんね」
深々と突き刺した巨根を引き戻し、再びズブリ。
「あうっ!!!」
「あっ!ひ・・・っ!く・・・っ!!」
「う゛ぁっ・・・あ・・・!!」
濃度200%の激しい濡れ場。ヒスイは乱れきっている。
(オレ・・・ここにいていいんだろうか・・・)
ジンはだんだんと不安になってきた。
(また、見てはいけないモノを見てしまっているような・・・)
サービスシーンの連続で逆に怖くなってくる。
(とにかくこれ以上はダメだっ!!)
ぎゅっと目をつぶった瞬間だった。
パァッ・・・
覗き穴から光が差し込んだ。
「・・・っ・・・あ、あぁっ!?」
同時に、間の抜けたコハクの声が接近してくる。
「・・・え?」
バンッ!
「うわ・・・っ!?」
見えない力に吹き飛ばされたコハクがクローゼットの扉に激突し、その拍子にパカッ。
全開。めでたくジンの姿がお目見えした。
「え?え?」
「あ・・・やばい・・・」
凍りつく空気。
「な、な、なによぉお〜っ!!!コレぇ!!!」
愛液も渇かぬうちから激怒するヒスイ。
「ジンくん?シトリンに言いつけるわよ?」
まさしく般若の形相でジンを見下ろす。
10歳の少女が実際の何倍も大きく見えた。
「す、すみません・・・」
「あ、いや、僕が・・・」
コハクが正直に名乗り出る。
「お〜に〜い〜ちゃんっ!!!」
ワナワナと震えて、ヒスイが声を張り上げた。
「ごめん。ごめん。とにかく先に服着て・・・」
怒り狂うヒスイにコハクは慌てて自分のシャツを着せた。
「だいたいおにいちゃんはねぇ!ヒトに見せすぎなのっ!!私のこと何だと思ってるのよ!!バカッ!!ヘンタイっ!!」