世界に春がやってくる

後日談

えっちしよ。[後編]



犯人は・・・次女アクアだった。

「おじ〜ちゃん。お待たせ〜」
「お〜・・・似合うじゃん」

孫のアクアを仰ぎ見る祖父メノウ。

「へへっ。これだけはピッタリフィットぉ〜」

エクソシストの制服は特殊魔法素材で作られている。
伸縮自在なので体格差のあるヒスイのものでも着用可能だった。
・・・祖父メノウの入れ知恵だ。

「よく盗ってこれたなぁ」
「うん〜。今日はキッチンでえっちしてたから〜。簡単だったよ」

アクアの報告を受け、メノウは苦笑い。

「ほら、例の魔法陣、用意できてるからさ」

それは現在地・・・つまり、屋敷裏の森から、モルダバイト西の砂漠へと移動する魔法陣だった。
今夜、モルダバイト西の砂漠で任務遂行の予定なのだ。

コードネーム『国士無双』。

メノウとコクヨウによるエクソシストコンビだが、今夜はパートナー交代。
メノウに代わり、エクソシストの資格を持たないアクアが赴く。
・・・規約違反でも、気にしない家系だ。

エクソシスト志望のアクア。
同棲相手のコクヨウが断固として認めないので、実力を示し、考えを改めさせてやろうという意図があった。
ついでにコクヨウとの絆が深まれば・・・というメノウの気遣いでもある。

「あとこれ。お前に向いてると思うから」

メノウが与えたのは、アクア専用武器・・・トンファー。
ベテランのコクヨウが一緒なので、心配はしていないが、それでも身を守るための武器は必要だろう、と。

「じゃあ、アクアからはこれ〜」

かつて右手にぶら下げていた小さなバスケット。
トンファーを受け取る際一旦地面に置いたのだが、それを再び持ち上げ、取り出したのは、焼き立てのクッキーが詰まった包みだった。

「少し時間があったからぁ〜。寮に戻ってクッキー焼いたの」

突然変異的に。
アクアは料理上手だった。
安心して焼き立ての味を堪能できる。

「コクヨウにも食わしてやれば?」
「コクヨ〜甘い物嫌いだもん」
「お前は食うだろ?」
「いらな〜い。アクア、ダイエット中だし」
「これはおじ〜ちゃんのために作ったものだから、全部あげる」と、アクアは言った。

遺伝子の・・・不思議。
メノウに対してだけは、鬼畜でも意地悪でもなく、なぜかとても優しいアクア。

「そ?んじゃ、お言葉に甘えて」

受け取ったクッキーの包みを開け、次から次へと口の中へ放り込む・・・メノウは大の甘党だ。

「はい。おじ〜ちゃん」
「ん!サンキュっ!」

クッキーと共に持ってきた保温ポット。
中にはローズヒップの紅茶が入っていた。
メノウが喉を詰まらせないよう、内蓋コップに注いで手渡す。
そのおっとりとした仕草や気の遣い方が亡き妻と重なり、しんみりと嬉しく思うメノウだった。

好き嫌いがハッキリしているアクアの脳内ランキング。

一位 コクヨウ
二位 メノウ
三位 ジスト
四位 ヒスイ
五位 シトリン

・・・以下同列。祖父メノウは常に不動の二位をキープしていた。
つまり・・・グランドファザコン。おじいちゃん子だ。

「そろそろ本命デートの時間だろ」

代理人として孫のアクアを向かわせる事はコクヨウに告げていない。

「うん〜。コクヨ〜驚くかなぁ」
「そりゃ驚くさ」

メノウの悪戯好きは何年経っても変わらないのだった。

「おじ〜ちゃん。ありがと〜」

チュッ!お礼のキス。
アクアのふっくらした唇がメノウの頬に触れた。

「いってきまぁ〜す」
「頑張れよ〜」

メノウが用意した魔法陣を踏み、目的地へと。
激励の笑顔で送り出すも、少々寂しい。

「ま、しょうがないよな」

寂しさはクッキーの甘さで誤魔化して。

「さて、っと。ヒスイに怒られに帰るかぁ」

娘に怒られるのは案外嬉しいもので。
制服紛失事件の黒幕として自首しようと思う。
怒ってもイマイチ迫力に欠けるヒスイ。
可愛いと思うばかりで、少しも懲りない父メノウ。
怒った時、ヒスイが口にする言葉はいつも同じなのだ。

(うん。絶対こう言う)

「もうっ!お父さんはぁっ!!」

 

モルダバイト西の砂漠。

「何でお前が来てんだよ!?」

待ち合わせの場所に、一足先に到着していたコクヨウは、アクアの顔を見るなり大声で怒鳴った。
『国士無双』のエクソシスト、コクヨウ。
“銀”の吸血鬼一族の直系にして最後の生き残りでもある。
過去の失態から、今は狼に近い獣の姿をしていた。

(畜生!アイツ嵌めたな!!)

本来のパートナー、メノウを罵ったところでどうにもならない。

「今日はぁ、サービスデーなんだよ?」
「サービスデーだと?」
「ほぅらぁ」
「・・・!!」

制服のスカートを捲り上げると・・・ いきなり割れ目。
アクアはなんとノーパンだった。

「コクヨ〜がいつでも入れられるよ〜にっ」
「入れねぇよ!!」

アクアのペースに早くも振り回されるコクヨウ。

今回の任務は・・・
砂漠で頻発している行方不明者の捜索、及び原因究明。
そして、可能であるならば、解決に至ること、だ。

先日、体液を吸われ干涸らびた死体が発見され、吸血鬼の仕業ではないかという噂が立ち始めていたのだ。
早急に事の真相を突き止めなくてはならない。
 
「アクア達吸血鬼のぉ、股間に関わる問題だよね〜」
「“股間”じゃねぇ!“沽券”だ!!バカ」

西の砂漠・・・これまでは至って平和な場所だった。
悪い噂が囁かれるようになったのは、一ヶ月ぐらい前からだ。

(コイツと一緒じゃ仕事になんねぇ)

アクアのボケにツッコミを入れるのにも疲れて。

「コクヨ〜。歩くの早いよ〜」
「うるせぇ!黙ってついてこい!」
 

月光が翳った時だった。

突如、足元の砂地が渦を巻き、すり鉢のような窪みを形成・・・巨大な蟻地獄だった。

「わぁ〜・・・・」惚けたアクアの悲鳴。

「チッ!」コクヨウは舌打ち。

二人は砂の流れに足を取られ、蟻地獄の中心部へと吸い込まれていった。
そこは・・・
 

地下洞窟。

天井部分から砂と一緒に落下する二人。
獣の優れたバランス感覚で、見事着地を決めたコクヨウ。
その上に・・・アクアが落ちてきた。

ドサッ!!

ウグッ!!

コクヨウは潰れたが、お陰でアクアは無事だった。

「重いんだよ!デブ!さっさと退け!」
「アクア、ダイエットしてるもん!」

言い争いをしている場合ではなかった。
二人が落ちた場所は地下空間の崖上で、崖下には広大な砂地が広がっていた。
そこに、まるで水面のような波紋が広がり、今回の事件の親玉モンスターが姿を現した。

落ちてきた獲物を捕らえ、喰らうために。
クワガタに似た頭部。
昆虫タイプの魔物で、かなりの巨体だ。
砂から覗かせた頭部だけでも5mはあった。

エクソシスト達は昆虫タイプの魔物を総称で“蟲”と呼ぶ。
早速食事にありつこうと、蟲は消化液を吐いた。
先に狙われたのは、銀の獣コクヨウだ。

「コクヨ〜!!危なぁ〜い!!」

ドンッ!!

愛しいコクヨウを毒牙にかけてなるものかとアクアが庇う、が。
それはかなり見当違いで。
助けがなくとも充分かわせるものだったというのに、勢いよく押し出され・・・

「バッ・・・何す・・・」

コクヨウは、崖から転落した。

「コクヨ〜に何するのよぉ!!も〜!!アクア怒ったよ!!」

アクアは蟲を睨みつけ、トンファーを構えた。

(お前がやったんだろ!!ボケ!蟲のせいにすんな!)

崖下の、コクヨウ。
不幸中の幸いで、一段下に落ちただけで済んだ。
もしそこに岩壁が突き出ていなかったら、今頃砂に沈んでいた。

突然の事だったので、受け身も取れず、全身打撲。
動けない程ではないが、こんな事なら消化液を浴びた方がまだマシだと思える。

「コクヨ〜はぁ、そこで見てて。アクアが殺るから」

実戦は初めてであろうアクア・・・少しも臆することなく崖から飛んだ。
蟲の脳天をトンファーで殴る。
しかもそこで炎の魔法が発動し、蟲は一瞬にして炎に包まれた。
専用武器の追加効果だ。
魔法が苦手なアクアのために、メノウが仕込んでおいたのだった。

ギィィィィ!!

昆虫系は大部分が火に弱い。あっけなく焼死した。

(度胸のある女だな・・・)

しかしそれもアクアの父親と母親の顔を思い浮かべれば納得がいく。

「あ〜あ。爪割れちゃった〜・・・」

口を尖らせながら、蟲の死骸を足場にコクヨウの待つ岩壁へと飛び移るアクア。

「ふ〜っ。疲れたぁ〜」

コクヨウの向かいに座り、アクアは大きく脚を開いた。

 すると、性器丸見え。明らかに性的挑発だ。

「アクア、頑張ったから、ご褒美ちょうだ〜い。ここに」
「アァン?ご褒美だぁ?」

コクヨウはキレた表情で聞き返した。

「だってパパが〜」

ご褒美だよ。

「いつもそ〜言って、ママのアソコにオ×××ン入れてるよ?」
「・・・・・・」

(コイツのエロさは尋常じゃねぇ!!)

学校の成績不振はすべてこれが元凶か。

(それとも何か取り憑いてんのか!?)

真面目に、そんな事まで考えるコクヨウ。

「ね〜?コクヨ〜・・・えっちしよ?」
「ひとりでやってろ!!」

いつもと同じやりとりで、コクヨウはアクアの誘いを断った。
が、対するアクアの反応はいつもと違っていた。

「じゃあ、そ〜する」

 
暗い女性器の溝を指の腹で擦る。
濡れ出すと、躊躇いもせず自分の中指を割れ目に押し込んだ。

ぷちゅ・・・

「んっ・・・ぁ・・・はぁっ」

コクヨウの目前で、処女とは思えない大胆な自慰が展開される。

「何考えてんだよ!?オイっ!!やめろ!!」
「コクヨ〜がひとりでしろって言った」

グッ、グッ、と。
中指をコクヨウの陰茎に見立てて。
少しでも奥へ・・・健気に指を動かすのだ。

「コ・・・クヨぉ〜・・・あぁ・・・んっ!!」

グラグラと男心が揺さぶられ。


「お前・・・何でそんなにエロいんだよ!!」

遺伝、と答えればそれまでだが。

「アクアがこんなにえっちになるの・・・コクヨ〜といる時だけ・・・だよ?」

愛の殺し文句で、コクヨウの理性は崩壊寸前まで追い込まれた。

「バカ・・・何言ってんだよ・・・」

そんなに求められたら・・・男として、見て見ぬフリはできない。
 

しきりに動くアクアの指。
綺麗に伸ばした爪で、女性器を傷つけてしまいそうだ。

それならまだ自分の方が・・・
コクヨウを度々襲う心の葛藤。

「コクヨ〜・・・コクヨぉ〜・・・はぁっ・・・あんっ・・・」
 

(ここまできたらやるしかねぇ!!)

同棲期間4年。結局、愛があるのだ。
このままアクアを放ってはおけない。
固まる決意。

すぐに察して、アクアが体勢を変えた。
獣のコクヨウに合わせ、自分も獣になった気分で。
四つん這いになり、お尻で更なる誘惑。

「準備オッケぇ〜!」
「ホントにいいんだな?」
「いいよぉ〜」

早く!早く!とアクアが急かし、上から体を重ねる・・・。
銀の体毛がアクアの背中を擽った・・・ところで。

ヒラリ。

一枚。金色の羽根。

「・・・・・・・・・」
「やあ。僕の事は気にせず続け・・・」
「・・・る訳ねぇだろ!!」

コクヨウの天敵、コハクの登場。
妻ヒスイの制服を取り戻しにやってきたのだ。

「君に“お義父さん”と呼ばれるのも複雑だなぁ〜」

熾天使コハクは上空から急にそんな事を言い出した。

「アクアは僕等の娘だからね」

忘れていたが、そういう系図なのだ。

「欲しいなら、ちゃんと挨拶にくること。その時は一発殴らせて貰うから。覚悟しててね」
「・・・チッ!」

これまでもコハクには散々殴られてきた。
自業自得とはいえ、何度撲殺されかかった事か。

(今更何が一発だ。極悪天使!!)

だが、アクアと結婚すれば、否応なくそういう関係にならざるを得ない。

究極の選択を前に。

「クソッ!!」

・・・今夜は退く。

「あっ!コクヨ〜!待って〜」

コクヨウはコハクから逃げるように洞窟の奥へと姿を消した。

「パパぁ〜!!邪魔しないでよぉ〜!!」
「ははは!ごめん。ごめん」

実りそうで実らない、恋。
一家の次女。

アクアの春は・・・まだ遠い。


+++END+++


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