14話 会いたい気持ち
船上の朝。食堂にて。アクアとジスト。
「こくよ〜と会ったんだよ〜」
「コクヨウ?じ〜ちゃんのパートナーの?」
『国士無双』のコクヨウは銀色の獣だ。
同じエクソシストだが、近付くと威嚇してくるので、ジストもあまりよく知らなかった。
「あのでっかい犬??」
「おじ〜ちゃんとケンカして、ボロ負けでちょっとカワイソ〜だったよ」
過去で過ごした一週間の疲れからか、メノウはずっと眠りっ放しだった。
「二人とも、ちょっといい?」
スピネルが食堂に顔を出した。
「吉報だよ」
「きっぽ〜??」
5歳児アクアが聞き返す。
スピネルはアクアの頭を撫で、「良い知らせのこと」と言った。
「ハーモトームが見えてきたよ」
「ホントっ!?」
ジストが甲板に躍り出ると、確かに。
大陸が間近に迫っていた。
ハーモトームという場所が特定できたので、オニキスが幽霊船長に話をつけ、今回はれっきとした航海を経ての到着となる。
「やったぁっ!!」
これで皆が揃う!ジストは目を輝かせて。
「ヒスイ達、今頃何してるかなぁ・・・」
ハーモトーム。港町宿屋にて。コハクとヒスイ。
夏は吸血鬼も喉が渇く。
「んく、んく・・・ぷはぁ〜!!」
ヒスイは水分補給中だった。
コハクの喉元に齧り付き、思う存分血を吸って。
「ごちそうさまっ!」
「さて、じゃあ・・・」
コハクはにっこりと微笑んで、血液の付着したヒスイの唇を指で拭った。
「今日もあんあんしようね〜」
「あんあん?」
あ・・・あん、あん、あん・・・
直行したベッドで正常位。
左手でヒスイの片脚を持ち上げ、右手でペニスを握っているコハク。
そのペニスはもう半分ほどヒスイに挿入されていた。
根元を巧みに操り、サオでヒスイの入口を擦る。
「んっ・・・あっ・・・」
ペニスの動きに合わせて、入口がくちゃくちゃと鳴り始めた。
目に見える愛液はすでに白く濁り。
「あん!あんっ!おにぃっ・・・」
挨拶代わりにいきなり膣口を広げられ、ヒスイの吐く息が震える。
「はっ・・・はぁ・・・ぁ」
されるがままに、早くも内側がほぐされて。
奥への刺激が欲しくなる、が。またもや焦らされる。
コハクはペニスを引き戻し、膣内から持ち帰った上質の愛液を指に纏い、次なる愛撫へと移った。
「そろそろ出ておいで」
包皮からほんの少し顔を覗かせた、ヒスイの可愛い突起。
軽く皮を引っ張り、綺麗に剥き出してから、コハクはそれを親指と人差し指で摘んだ。
「あっ・・・ぅんっ!!」
興奮して膨らんでも、小振りなヒスイの肉粒。
下から上へ、上から下へ、愛液で湿らせながら、指の腹で丁寧にしごく。
優しい微笑みといやらしい手つきで、繊細な刺激をヒスイに与え。
「はぁ・・・っ、あっ、あ・・・!!」
コハクが小さな肉粒を弄れば弄る程、ヒスイが脚を開いて。
欲情しきった割れ目を晒し、無言の催促をする。
「ヒスイ・・・」
突き刺したい愛しさは何十年経っても変わらず。
コハクは、愛ゆえに無敵の硬度を誇るペニスを直進させた。
「おにいちゃ・・・んく・・・っ・・・!!」
(ああ・・・ヒスイ・・・)
膣内はヌルッとして滑りが良く。
いつもの肉襞が気持ちいい。
クライマックスへ向け、コハクはヒスイと指を絡めた。
「いち、に、さん」
「あうんっ!!」
浅く、浅く、深く。
1、2、3のリズムをヒスイの体に覚えさせ、コハクは浅い突きと深い突きを正確に繰り出した。
「いち、に・・・」
「・・・あくっ!!」
一定のリズムでヒスイが喘ぐ。
教えられた突きのタイミング。
3の快感を、カラダが期待する。
「あ・・・はんっ!!」
3が訪れる度、ペニスが膣奥まで滑り込み、ヒスイの白い喉が反る。
コハクの3が心地良く耳に響いて。股間が痺れる。
「んっ・・・んっ!!んんっ!!」
3までの間隔は次第に短くなり、ハードな突きの連続。
「あっ!あっ!お、おにぃ・・・んぐっ!!」
深く、深く、より深く。
ペニスに体重がかけられる。
「うっ・・・あ・・・ぁん!あっ・・・ぅ!」
ヒスイの声が絶頂の気配を漂わせ、コハクは一旦ペニスの動きを止めた。
「よしよし」
唇にキスをすると、ヒスイはとても喜んで。
「はむ・・・んっ・・・」
しばらく舌を絡め合ってから、首筋にキスをして。
そのまま・・・ヒスイの体に覆い被さる。
「ん〜・・・おにぃ・・・ちゃ」
ヒスイは両手でコハクに抱き付いた。
「揺れるから、しっかりつかまっててね」
ヒスイの股間でコハクの腰が跳ねる。
「あっ!あっ!はっ!はっ!ああっ!ああん!あん!あん!」
性器を激しく擦り合い、互いに快感を貪って。
ピクピク、膣内で脈動するコハクのペニス。
ヒクヒク、脈動を感じて収縮するヒスイの膣壁。
「あ、あ、あ・・・あんっ!あん!あぁぁん!!」
最後とばかりにヒスイが大きく喘ぎ。
「んっ・・・!!」
「あ・・・っ!!」
そして二人は同時に果てた。
「ん〜・・・はぁ〜・・・」
奥にたっぷり精液を浴びて、満足気なヒスイ。
ペニスに繋がれたまま、うっとりと余韻に浸る。
その様子をコハクは嬉しそうに見つめて。
「またあんあんしようね」
「うんっ!」
不機嫌な隣人、トパーズ。
「・・・・・・」
コハクと合流してから、ヒスイを取られっ放しだった。
真っ昼間から壁越しに聞こえるヒスイの声が不快だ。
その声もぷっつり途絶えたので、行為は終了したのだろうが、コハクにたんまり中出しされたと思うと、それはそれで腹が立つ。
「付き合ってられるか。バカバカしい」
毒づいて、トパーズは部屋を出た。
観光客で賑わう大通りを抜け、郊外へ。
人が少なくなったところで、煙草を咥え、火をつけようした、その時。
「兄ちゃんっ!!」
ドンッ!!背後からタックル。
ギュッ!!そのまま抱擁。
「ジ・・・スト?」
「兄ちゃんっ!元気だった!?」
ここにも大袈裟な人物がひとり。
トパーズの背中に柔らかい銀髪をぐりぐりさせて。
「ヒスイはっ!?父ちゃんはっ!?」
「・・・・・・」
わざわざ答える必要もない。
この二人に限っては、どこに行ってもやる事は同じだ。
「どうせ今頃ヤッてんだろ」と、メノウが素早く代弁した。
「よっ!元気そうじゃん!」
ハーモトーム組を迎えに現れたのは、ジスト、メノウ、アクア、スピネル・・・
一人足りない。オニキスだ。
「オニキスはさぁ」
不在の理由をメノウが話す。
「船から降りないでくれよォォ!!消えちまうよォォ!!」
「・・・・・・」
例の悪霊に泣きつかれるオニキス。
「ここは磁場がァァァ・・・」
磁場が悪いと猛アピールする悪霊。
世界の国々を“陰”と“陽”に分けると、ハーモトームは“陽”の国・・・船幽霊である自分には適さない環境なのだと言う。
「んで、居残る羽目になったってワケ」
可哀想になぁ・・・と、メノウは同情の笑みで肩を竦めた。
(ヒスイに会いたい気持ちは、この中の誰にも負けてないハズなのに)
オニキスの恋路は、とにかく障害が多いのだ。
船は港町の船着き場に停泊していた。
コハクとヒスイも乗船し、航海メンバー全員揃っての食事は、幽霊コックによるフルコースディナー。
オーナーヒスイの食生活に合わせ、野菜中心のメニューだ。
大人はワイン、子供はジュースで、まずは乾杯。
賑やかな夕食会が始まった。
話題が今後の行き先に及ぶと、コハクは、オニキスに憑いた悪霊の存在を明かし、次なる目的地を宣言した。
即、メノウが食い付く。
「へ〜、カジノかぁ・・・面白そうじゃん!」
娘も、孫も揃って頷く。
異議を唱える者はいなかった。
こちら、オニキス。
「・・・・・・」
会いたい気持ちは見事空振り。
ヒスイとの再会はずいぶん遅れて。
食事の席は遠く。話す機会もない。
ヒスイの両サイドでは相変わらずコハクとトパーズが火花を散らしている。
お構いなしで、豆腐ステーキを堪能しているヒスイ。
とにかく無事戻ってきたのだから、それだけで・・・と。
自分を納得させ、オニキスがグラスをテーブルに置いた、次の瞬間。
・・・やってしまった。
「俺に任しとけェェ!!」
そう聞こえて、オニキスが止めようとしたのも束の間。
「おい、やめ・・・」
「ちょ・・・オニキス!?ひゃぁ!!」
オニキスの体が勝手にヒスイを担ぎ上げ、逃走を謀った。
「・・・・・・」
トパーズはオニキスに対してのみ一歩譲る気持ちがあるらしく、ここは大人しく見送った。
「ヒスイ!!」
コハクは当然後を追うべく席を立った。
が、そこにメノウ。
「まぁ、いいじゃん。ちょっと貸してやったぐらいで、ヒスイの何が減るワケでもないしさ」
「・・・・・・」
(いや、何かが減る気がする)
コハクは言いたい事がありそうな顔をしていたが・・・
「ママの事だから、30分もしないうちにパパのところへ戻ってくるよ」
スピネルにまで諭され、渋々・・・柱時計を見る。
「・・・わかった。30分待とう」
逃走先はマスト上部に設置された見張り台。
一人用のスペースしかないが、ヒスイが小柄なので問題はなかった。
「血、飲む?」
「いや・・・血が飲みたくて攫った訳ではない」
「じゃあ、なんで?」
「・・・・・・」
無情なヒスイの質問・・・悪霊のせいにしても仕方がない。
ここまできたら開き直って。
「・・・お前と話がしたかったから」
「そう。じゃ、話そ!」
オニキスの言葉をヒスイは素直に聞き入れた。
「私、カジノって行った事ないから、すっごく楽しみ!」
スロットをやってみたい、と、ヒスイは張り切って。
「みんな揃ったし、やっとリゾートって感じだね」
オニキスに美しい笑顔を見せた。
「わ・・・月が近い」
会話が途切れて、ふと気づく、月の大きさ。
届きそうと言って、ヒスイは両手を伸ばした。
「・・・・・・」
ヒスイの無邪気な仕草に、抑えていた感情が煽られて。
「ヒスイ」
「ん?」
耳元で囁く、愛。
「・・・え?どうしたの?急に。酔ってる?」
「ああ・・・そういう事にしておいてくれ」
「変なの」
クスクスとヒスイが笑う。
「あ、そうだ。これあげる」
珍しく今夜はミニスカートではなく、ショートパンツを履いているヒスイ。
お尻のポケットから一枚の紙を取り出し、オニキスへ手渡した。
「ひとりだけ上陸できなかったでしょ?だからお土産買ってきたの。後で渡そうと思ってたんだけど」
「何だ、これは・・・」
「すごいんだから!!広げてみて」
勧められるまま、紙を広げる・・・結構な大きさだった。しかもそれは・・・
「魚拓・・・?」
土産用に複製されたものだ。
「・・・・・・」
ヒスイの趣味は時々謎だ。
ハーモトーム付近にしか生息しない魚なのだと、興奮気味にヒスイが解説。
「珍魚よ!珍魚!」
「珍魚、か」
ヒスイの土産物。使い道はないが、宝物には違いなく。
オニキスは苦笑いで、ヒスイに礼を述べた。
「じゃあ、私そろそろお兄ちゃんのところに戻るね」
時間にして約30分・・・スピネルが予告した通りだった。
ヒスイは縄梯子を下り、甲板に立つと、そこからオニキスを見上げて言った。
「いつでも話し相手にはなれると思うから」
話したくなったら呼んで!と、大きく手を振り走り出す。
ヒスイの姿はすぐに見えなくなった。
「帰しちまって良かったのかよォォ!!」
「ああ。これで十分だ」
ヒスイの眷属として生きながら、いつしか・・・愛されない日々に慣れ。
「想いを口にする事さえ、躊躇うようになっていたが・・・たまには言ってみるものだな」
ヒスイを攫って。一緒に月を見た。そして。
愛されたいと願う気持ちがまだ自分の中にある事に気付いた。
「お前のお陰だ」
オニキスがそう語ると・・・
「何みずくさい事言ってんだよォォ!!照れるじゃねえかァァァ!!」
オニキスの言葉が嬉しかったのか、クネクネと悪霊が怪しい動きを見せた。
「俺とアンタの仲だろォォォ・・・」
「・・・・・・」
(そこまで親しい間柄になった覚えはないが)
これも何かの縁か。
悪霊の輪郭や目鼻立ちがぼんやりしているのは、タロットが焼けてしまったからなのだそうだ。
「タロット、手に入れるぞ」
「オォォォ!!」
次なる目的地は・・・“陰”の国、スフェーン。