World Joker

127話 デレヤン?


永遠の、ライバル――

「・・・今は、そんな事を言っている場合ではないだろう」と、オニキス。
「いいえ、ライバルはライバルです」コハクが笑顔で言い返す。
「僕に何かあった時は、どうぞ遠慮なくヒスイを奪って――」

「全力で、守ってください」

「・・・って、どういうつもりですか、これ」
“行かせんぞ”という顔で、オニキスが道を塞いでいる。
コハクは溜息ひとつ。続けてこう語った。
「・・・天界で暮らしていた頃は、いつ死んでもいいと思っていました」
「・・・・・・」
「メノウ様に会って、ヒスイに会うのが楽しみになって。ヒスイを育てるのが生き甲斐になった。そのヒスイが今度は僕の子供を産んでくれるようになって、また楽しみが増えた」
「・・・・・・」
「いつ死んでもいい、なんて、今は思っていませんから、無茶はしません――これで通して貰えますか?」

二階、マーキュリーの部屋。

(お父さん・・・?)
窓越しに、コハクの飛び立つ姿が見えた。
(こんな時間に、どこへ・・・)

エクソシストの制服を着ているが、仕事という雰囲気ではない。

「・・・・・・」

さすがに胸騒ぎがして、一階へ降りると、リビングにはすでにアイボリーがいた。

「あーくん、お父さんが・・・」
「だなー・・・」

アイボリーもまた、窓の外に目を遣りつつ、両腕を組み、言った。

「コハクって、ほとんどデレてるけど、基本病んでるよな。ヒスイいないとマジでヤバイし。病み体質はコハク譲りなんじゃね?まー」
「うるさいよ」と、マーキュリーは一蹴。
「それで?どうするの?」
「トパーズんとこ行く。兄弟で力合わせんなら、誰かが指揮執らねーと、だろ?」
「そうだね」

事情など、知らない。
けれど、何かが起ころうとしているのは感じ取れる。
夜明け前、二人はコスモクロアへと向かった――

その頃・・・二階、夫婦の部屋では。

「ヒスイ、起きているか?」
何度かノックをして、オニキスが入室する。

「・・・・・・」

コハクに限って、やりっ放しということはなく。
愛らしいベビードールに身を包んでいるヒスイ。
オニキスの気配に、黙って起き上がった。
じっと見上げるその顔は、どこか虚ろで。

「・・・ずっと、泣いていたのか?」

オニキスが指で目元を拭う。
そこに涙はなかったが。

「――っ!!泣いてないっ!!気持ち良かっただけで・・・っ!!」

そう答えたヒスイの瞳から、一気に涙が溢れ出した。

「私・・・っ・・・お兄ちゃんがいなくなるって・・・・わかってたのに・・・とめられなかっ・・・」

そんなヒスイをそっと抱きしめるオニキス。

「・・・無茶はしないと言っていた。コハクを信じろ」
「・・・・・・」

しばらくして、ヒスイは泣きやんだが・・・

「お兄ちゃん・・・探しに行かなきゃ・・・」

オニキスを押し退け、ふらふらと歩き出した。

「待て、ヒスイ」オニキスの手が、ヒスイの細い腕を掴む。
「離して!!」

ヒスイはそれを振りほどこうとしたが、振りほどけなかった。
根本的な力の差は勿論だが、セックスで体力を消耗しきっていて、体が思うように動かない。

「っ・・・」それでも抗おうとするヒスイに。
「しっかりしろ」と、オニキスが声をかける。
「コハクしかいなかったあの頃とは違う。お前は――」
「違わない・・・っ!!」

オニキスの言葉を最後まで聞かずに、ヒスイが声を張り上げる。
そこから更に呼吸を荒げ。

「はぁっ・・・はぁっ・・・お兄ちゃんが・・・いなかったら・・・息が・・・できなく・・・なる・・・息が・・・できなくなったら・・・死んじゃう・・・よ・・・」
苦しげにそう告げると、意識を失った。
「・・・・・・」(ショックによる過呼吸か・・・)
オニキスはヒスイをベッドまで運び、小さなその手を両手で握った。
「オレでは・・・支えにならんのか?」答えがないのは承知の上で、問いかける。
「・・・・・・」(オレでなくとも構わん)

メノウ殿やトパーズ、子供達では、だめなのか?

「お前には、コハクの愛しか伝わっていないのか?ヒスイ・・・」



場面は変わり・・・こちら、モルダバイト城。

「お父様?いらっしゃいませんこと?」
「タンジェ!?こんな時間にどうしたんだ!?」

もうすぐ夜明け・・・という時間に、タンジェがジンの元に訪れていた。
火急と思われる、その用件は――

「良いお医者様を紹介していただきたいのですけれど」

――だった。

「それって・・・まさか・・・サルファーくんが・・・?」
「ええ、撃たれましたの。何者かに。いつもなら、すぐに治る程度の傷ですのよ?それが・・・」

傷口がなかなか塞がらず、出血も止まらない状態だという。
“誰にも知らせるな”と、サルファーに釘を刺されたというが。

「わたくし心配で・・・どうしたらよいものか・・・」

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