番外編(お題No.03)
H・バレンタイン
“バレンタイン”と“コハク×ヒスイ受攻逆”ネタをドッキング。コハクとの絡みがメイン。※これはえっちなバレンタインのお話です。
2×××年。2月14日
それは・・・一粒のチョコが巻き起こした事件。
モルダバイト城。厨房。AM10:00。
「ローズ・・・上手いわねぇ・・・」
「当然です。メイドですから」
ヒスイはインカ・ローズと共にチョコレート作りに勤しんでいた。
ローズも手作りのチョコレートは初めてというが、その腕前はたいしたものだった。
(我ながらナイスな出来だわ!これで今度こそシンジュを落とす!!)
シンジュに片想い中のローズは並々ならぬ思いで取り組んでいる。
今年は義理チョコなしの本命一本だ。
「でも・・・ローズってラブラドライトの“お姫様”でしょ?」
「私は“お姫様”ってガラじゃないですね。働くの好きだし。それよりも、ヒスイ様の方がずっと“お姫様”です」
ローズは引きつった笑いでヒスイを見た。
「だって、ホラ。なんにもできないし」
「・・・・・・」
ローズの手ほどきを受けてもヒスイは失敗ばかりしていた。
ローズにとっては簡単なことでもヒスイにとっては難しかったのだ。
「なんですか・・・ソレ。う○こ?」
形も色もアヤシイ。
とても口に入れるものとは思えない仕上がりだ。
「ト・・・トリュフよ!失礼ね!」
(まぁ・・・ヒスイ様の作ったチョコなら男どもは食べるわね。たとえ見た目がう○こでも)
これ以上付き合いきれない。
これからシンジュにチョコを渡してデートに誘う予定なのだ。
「私、ラッピングしてきますね。ヒスイ様もあとはラッピングで誤魔化すしかないんじゃないですか?」
「・・・・・・」
ヒスイは黙っている。
自覚はしているのだ。
見た目がう○こだということを。
(自分で作ったものだけど・・・味見するのが恐いわね・・・)
「こうなったら魔法で・・・見た目だけでも・・・ブツブツ・・・」
ローズが厨房を出て行った後もヒスイの試行錯誤は続いた。
そしてこれが男達に大きな災いをもたらすことになる・・・。
「・・・できたわ。私もやればできるじゃない」
見た目はハート型。
味は・・・わからない。
「まずは誰かに毒味・・・じゃない、味見を・・・」
ヒスイは皿にチョコレートを乗せて廊下へ出た。
モルダバイト城。廊下。AM11:00。
(オニキス!!丁度いいわ!)
向かいからオニキスが歩いてきた。
ヒスイはオニキスに駆け寄った。
「はいv」
笑顔で皿を差し出す。
「・・・なんだ。これは・・・」
「チョコレート。今日はバレンタインでしょ。だからあげる。今すぐ食べて」
「・・・・・・」
明らかに味見役だ。
しかしそれがわかっていても食べてしまう・・・悲しい性なのだ。
皿には小さなハート型のチョコがたくさんのっている。
オニキスはむすっとした顔のまま皿からチョコを一粒取った。
ヒスイの作ったものは100%まずい。
それもよく知っていた。
(・・・が、これはただまずいだけではない・・・どうもおかしな味が・・・)
「・・・オニキス?」
ヒスイは覗き込んでチョコの感想を待っている。
「・・・まずい」
「え?やっぱり?ごめん」
ヒスイは視線を皿の上のチョコに移した。
(魔法で味は変えられないのかな・・・)
「・・・償いは体でしてもらおう」
オニキスの口から信じられない言葉が出た。
ヒスイは耳を疑って顔をあげた。
「!!?」
(目が据わってる〜!!!?)
オニキスはヒスイの手首を掴んだ。
「痛い!離して!」
ヒスイは皿を落としてしまった。
チョコが床に散らばる・・・。
「・・・離すものか」
オニキスは強引なキスでヒスイの唇を塞いだ。
「んん〜っ!!なに・・・する・・のよっ!」
ヒスイはオニキスの唇を噛み切って抵抗した。
「・・・・・・」
唇を噛まれて一旦引いたものの、オニキスは流れ出す血をそのままにもう一度ヒスイにキスをした。
「!!?」
今度はオニキスがヒスイの唇を噛んだ。
そこから血を吸いはじめる・・・
二人の口は血だらけだった。
「・・・・・・オ・・・ニキス・・・の・・・ばかぁ〜!!」
ドスッ!バキッ!
ヒスイはオニキスを殴り飛ばした。
火事場のクソ力・・・オニキスの体は向かいの壁に当たってズルズルと沈んだ。
「最低!!」
原因は自分のチョコだというのにヒスイはオニキスの安否も確かめず走り去った。
モルダバイト城。厨房。AM12:00。
(どれどれチョコレート作りははかどっているかな?)
コハクが厨房を覗きにきた。
(ヒスイが手作りのチョコレートをくれるなんて・・・嬉しいなぁ・・・)
最高に上機嫌だ。
今日の予定も決めてある。
(ヒスイのチョコ食べて、デートして、甘くロマンチックな夜を・・・むふふ・・・)
「・・・あれ?誰もいない・・・」
台の上にチョコが分類されている。
小さなハート型のチョコは数個の皿に分けられており、近くに名前の書いた紙が置かれていた。
“お兄ちゃん”“お父さん”“その他義理”
コハクはきょろきょろと周囲を見回した。
「味見♪味見♪」
“お兄ちゃん”と書かれた皿からチョコを一粒・・・ぱくっ。
「!?」
ドサッ。
チョコを飲み込んだ瞬間、コハクが倒れた。
「なんだ・・・これ・・・体が硬直して全然動かない・・・」
頭と口は無事だった。
金縛りにでもあったかのように、とにかく体が動かない。
「ヒスイ・・・チョコに何か・・・しちゃった??」
「おかしいわね・・・なんであんなことに・・・」
ヒスイが難しい顔で厨房に戻ってきた。
台の上で山積みになっているチョコの匂いをくんくんと嗅いでみる。
(・・・自分で確かめるしかないわね)
ぱくっ。ごくん。
ヒスイはチョコを飲み込んだ。
「ヒスイ〜・・・」
どこからともなくコハクの声が聞こえてきた。
「お兄ちゃん!?」
コハクが床に転がっている。
「何・・・やってるの・・・?」
「ええと・・・」
コハクは返答に困った。
(ヒスイだって一生懸命作ったんだから・・・チョコのせいだなんていったら可哀想だよなぁ・・・)
「持病が・・・」
「持病?お兄ちゃんそんなのあったっけ?」
「急に発病したんだ」
「・・・チョコで?」
「そうチョコで・・・あ・・・」
「・・・・・・」
「あ!でも味は良かったよ!ウン!ちょっと体が動かなくなっただけで・・・でも、あの、ヒスイは・・・食べないほうが・・・」
「食べちゃった」
「え・・・食べちゃった・・・の?」
「うん。でも別に何ともないよ?」
と、いったそばから服を脱ぎ始めた。
「ヒ・・・ヒスイ??」
「何?」
言葉と行動がバラバラだ。
「あれ?」
ヒスイは自分で自分の行動が把握できなくなっている。
「なんか・・・体が勝手に・・・」
動けないコハクの服を脱がせる。
「こんなとこで・・・しちゃ・・・だめだよ・・・」
口ではそう言っているのに、もうコハクの上に乗っている。
はじまりの合図に、こってりとしたキスをして、コハクの体に舌を這わせる。
「や・・・わたし・・・何やってるの・・・」
<天国ヘツレテイッテア・ゲ・ル。>
続けてヒスイの口から出たのは悪魔語だった。
ヒスイ自身何を言っているのかわからない。
が、コハクには通じる。
(ヒスイが・・・僕を天国へ・・・ああ・・・いいかも・・・頭と口とあそこが無事でよかったぁ〜・・・)
ヒスイは人格分裂を起こしていた。
「あ・・・どうしよう・・・お兄ちゃん・・・止まらないよぅ・・・」
<オイデ・オイデ・ハヤク・ナカヘ>
(このシチュエーション・・・ものすごくマニア心がくすぐられる・・・)
コハクは完全に陶酔し、ヒスイに身を任せた。
「や・・・あ・・・」
<ホシイ・ホシイ>
指で自分の入り口を開く。
そこにコハクを迎え入れる。
「あ・・・ん」
激しく腰を上下に動かす。
「おにいちゃん・・・わたし・・・凄いこと・・・してる・・・よ・・・あ・・・うぅ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「うん・・・スゴイよ・・・ヒスイ・・・。ホントに天国・・・イキそう・・・」
「ちが・・・うのに・・・こんなこと・・・したいんじゃ・・・」
<イク!イク!モウダメ・・・>
同じく厨房。PM3:00。
「はぁ・・・っ・・・ホント・・・もうだめだよ・・・」
ずぶすぶと鈍くくぐもった音が厨房に響く。
「なんで・・・やめられない・・・のぉ・・・」
<マダ・タリナイ・・・モット!モット!>
「痛いよう・・・」
(僕はいいけど・・・さすがにちょっと可哀想だなぁ・・・でも体が・・・)
「ああっ・・・はあっ・・・」
ぽたぽたとコハクの上に、ヒスイの汗と涙が落ちる。
「おい〜・・・ちょっとは場所選べよな〜・・・」
メノウが厨房に入ってきた。
「メノウ様!丁度良かった・・・んむっ・・・」
助けを求めようとしたコハクの口をヒスイは長いキスで封じた。
「泣かせるのは、程々にしとけ」
メノウはちらっと二人をみたが、スタスタと横を通り過ぎた。
「お!チョコじゃん!そういや今日バレンタインかぁ・・・どれ」
メノウは“お父さん”と書かれた皿からチョコをつまんだ。
「ああっ!!」
コハクは大声をあげた。
ぱくっ。
ごくん。
(ああ・・・メノウ様まで・・・)
「う・・・っ・・・」
メノウが苦しそうに胸を掴んだ。
「メノウ様!?」
(今度は何だ!?)
「う・・・わぁぁ〜ん!!」
(・・・泣き出した・・・)
「サンゴぉ〜・・・!なんで死んじゃったんだよぅ〜・・・」
メノウは床に座り込んでわんわんと泣きはじめた。
精神年齢が著しく低下している。
「俺を置いていくなんて・・・サンゴぉ〜・・・サンゴぉ〜・・・」
「・・・え?あれ?ヒスイ??」
泣いているメノウを見て、ヒスイがコハクから離れた。
<ホラ・オトウサン・ナカナイノ>
裸のままメノウを抱き締める。
(ええ〜っ!?何!?この展開・・・)
「くすん。サンゴぉ〜・・・」
メノウはヒスイの胸に顔を埋めて泣きじゃくった。
<カワイイヒト。>
ちゅつ。
「わぁぁ〜!!」
メノウの額にヒスイがキスをした。
「ちょっとヒスイ!?何やってるの!?」
「サンゴ・・・」
メノウはもうヒスイとサンゴの区別がつかなくなっていた。
ヒスイの髪に指を絡めうっとりとしている。
(まずい!これはヒジョ〜にまずい!!)
しかし体が動かない。
(このままじゃまずい!やられる!!)
この事態を止めなくては・・・
誰か!誰か!誰でもいい!
(この際オニキスでもいいから・・・)
「わああ〜っ!!」
厨房に足を踏み入れたラピスが鼻血を噴いた。
(・・・最悪なのがきた・・・)
「ぼく・・・ヒスイ様にもらったチョコの・・・お礼を言おうと・・・思って・・・はぁはぁ・・・」
媚薬効果が時間差で現れた。
ラピスは一番出来の悪いチョコをヒスイに食べさせられていた。
「う・・・っ・・・。あ・・・」
床に転がって悶え始める・・・
「サンゴぉ〜」
「はぁ。はぁ」
(地獄のピンク絵図・・・。どうするんだ・・・これ・・・)
正直途方に暮れてしまう。
「メノウ様っ!!ヒスイとやったらいくらメノウ様でも絶対許しませんからねっ!!」
「サンゴぉ〜・・・。少し胸が小さくなった気がするけど・・・ま、いっか」
「よくない!!」
コハクは激しくツッコミを入れた。
(チョコひとつ、つまみ食いしただけで・・・なんてこった)
「な・・・っ!?何やってるんですかぁっ!!!!」
大地を揺るがすシンジュの怒声。
ローズにまともなチョコを貰ったシンジュだけは無事だった。
「シ・・・シンジュぅ〜・・・」
コハクにとっては救世主だ。
「はやくメノウ様止めて。ヒスイのことサンゴ様だと思ってる」
「!!」
シンジュは慌ててメノウの元へ向かった・・・が、床に転がっていたラピスに足を掴まれた。
「シ・・・シンジュさぁ〜ん・・・」
「な・・・なんですか?」
「すきですぅ〜。ぼくと×××してくださぁ〜い・・・」
「ちょっ・・・離してくださいよっ!訳の分からないことを言わないでくださいっ!!」
「シンジュさぁ〜ん・・・」
「サンゴぉ〜・・・」
(何だ・・・この空気の乱れは・・・私一人でどうにかできるのか!?)
※どうにかできました。
モルダバイト城。宮殿2F。PM6:00。
「ご・・・ごめんなさいっ!!」
オニキス・コハク・メノウ・ラピス・・・特製チョコの被害者達にヒスイは深々と頭を下げた。
コハクはまだ動けない。
腰にタオルを巻いただけの情けない格好をしている。
仕方なくオニキスが肩を貸していた。
そのオニキスも右頬が腫れている。
ヒスイに殴られ、奥歯が折れたのだ。
メノウは泣きすぎで顔がパンパンに膨れている。
ラピスは鼻にティッシュを詰めたまま、まだ夢の世界から帰ってこない。
揃いも揃った美形が・・・悲惨な光景だった。
“恐るべし・・・バレンタイン・・・”
こうしてヒスイのチョコは男達に深い傷跡を残した。
実家。バスルーム。PM10:00。
コハクはやっと体が動くようになった。
ヒスイと二人、バスルームでシャワーを浴びる。
「ホントにごめんね・・・」
ヒスイは自己嫌悪の嵐だった。
「大丈夫。誰も怒ってないよ」
コハクは濡れているヒスイの頭を撫でた。
そして苦笑い。
「ヒスイだって大変だったでしょ?」
「う・・・」
理性があっただけに、記憶が鮮明で、思い出すと火を噴きそうな恥かしさだ。
「見せてみて」
「・・・ん・・・」
ヒスイは素直に足を開いた。
「やっぱり擦れてるね・・・痛い?」
「・・・ちょっと・・・あ・・・」
コハクが優しく舐めた。
熱を持ったその場所を、そっと舌で愛撫する。
「ん・・・おにい・・・ちゃん・・・」
「・・・今日はもう入れないから・・・安心して・・・」
翌朝。
「腰がイタイ〜・・・」
ヒスイはひどい筋肉痛でベッドから起きあがることができなかった。
「もう最悪。お兄ちゃんにチョコあげたかっただけなのに」
「もらったよ。ちゃんと」
コハクがベッドに紅茶を運ぶ。
「忘れられない思い出を」
と、悪戯っぽく笑って。
「来年はちゃんとするもん!」
ヒスイはきまりが悪そうにぷいっと横を向いた。
コハクはよしよしとヒスイの頭を撫でた。
「来年は、僕と一緒に作ろうね」
(たぶんそれが一番安全だ・・・)
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