世界はキミのために

番外編(お題No.19)

両想いのプロセス

“イズから見たコハクとヒスイ”
   

天界で、いちばん、綺麗な、セラフィム。

 

返り血を、たくさん浴びた、裁きの天使。

  

六枚の羽根と長い、長い、金の髪。

 

今は・・・両方・・・無くしてしまったけど・・・

 

「・・・コハク、幸せ」

 

 

人間界で、コハク、全然、かまってくれない。

“花嫁”に、くびったけ。

でも、いい。

 

「コハク、幸せ」

 

 

 

「イズ、おはよ」

イズに声を掛けたのはコハクの“花嫁”ヒスイ。

「おは・・・よ」

「ダイヤは?」

「まだ・・・寝てる」

 

エクソシスト正員寮。食堂。

 

各部屋ごとに自炊できるようになってはいるが、正員食堂もあり、独身の男性エクソシストがよく利用していた。

ちなみに朝はバイキング方式。80種類も並ぶ気前の良さだ。

ボ〜・・・

イズ。

とりあえず着席しているが、テーブルの上には何もない。

いつもダイヤが用意してくれるのだ。

「はい、コーヒー」

ヒスイが気を利かせ、イズにコーヒーを持ってきた。

 

(コハクの“花嫁”ヒスイ。綺麗で・・・たまに優しい・・・)

 

「・・・コハク・・・は?」

「お兄ちゃんは部屋で朝ご飯作ってるよ」

ヒスイが食堂に顔を出した理由。

「トパーズが珍しく早起きして。果物が食べたいって言うから、取りにきただけ」

と、デザートコーナーから桃をテイクアウト。

トパーズにはとにかく甘いヒスイ。

アゴで使われ、すっかりパシリ化している。

「イズも食べにくる?」

こくり。

 

 

「・・・何だ、コイツは・・・」

 

ジ〜・・・

 

(コハクの“息子”トパーズ。コハクに似てる・・・けど、ちょっとこわい。現No.1エクソシスト・・・)

 

「やぁ、イズ。いらっしゃい」

エプロンをしたコハクが歓迎の笑顔で迎えた。

「作り過ぎちゃって、困っていたところなんだ」

いつも一緒に食べるメノウが昨日から出張だったのを忘れていた、と、説明。

 

 

 

天使達が、地上に降りて、20年近くの、歳月が、流れた。

 

コハクとヒスイは、いつも、らぶらぶ。

 

ヒスイを得た、コハクは、幸せ、そのもの。

 

顔は、天界にいた頃と、少しも変わらない、けど、見せる表情は、全然違う。

 

残酷な剣を、振るっていた、“セラフィム”。

 

でも、“コハク”は、包丁を振るって、ごちそうを、作っている。

 

自然な笑顔、鼻歌。

 

 

 

「どうしたの、イズ、にこにこして」

向かいに座るヒスイがじっとイズを見ている。

「・・・コハク、幸せ」

「うん」

「・・・ぼくも、幸せ」

「そっか。イズはお兄ちゃんのことが好きだから、お兄ちゃんが幸せだとイズも幸せってコトね?」

こくり。

「ん!イズが幸せなら、お兄ちゃんも喜ぶと思うよ」

「喜ぶ・・・」

「イズはお兄ちゃんの弟みたいなものだもんね。だから私のこと“お姉ちゃん”って呼んでもいいよ」

「ヒスイ・・・お姉ちゃん?」

「そう」

ヒスイは得意顔で頷いた。

くす・・・

「何で笑うの?」

「ヒスイ、小さい」

ぽんっ。頭の上にイズの手。

「お、大きさは関係ないのっ!」

 

 

「は〜い、できたよ〜」

コハクがテーブルに皿を置いた。

ふわふわのオムレツにトマトソースがたっぷりかかっている。

盛りつけにも凝っていた。

コハクは、ヒスイとイズのやりとりを聞いていたらしく、笑みが溢れている。

「トパーズ〜!朝ごはんだよ〜!」

ヒスイがトパーズを呼んできて、4人。

いつもと少し違う顔ぶれて朝食を楽しんだ。

 

 

 

「あれ?どうしたの?今度は暗い顔して」

「・・・・・・」

食後のミルクティーを飲みながら、のんびりと過ごしていたヒスイの元へ浮かない顔のイズが戻ってきた。

 

イズ。回想。

 

『コハク』

『ん?』

『・・・天界・・・覚えてる?』

『・・・忘れたよ。もう。昔のコトは』

 

 

食事の片付けを済ませ、次は洗濯!と、忙しなく動くコハクに質問。

その答えはあっさりとしたものだった。

昔話をする気はない、つまり、そういうことだ。

 

 

「ヒスイの、いない世界、は、コハクにとって、何の意味も、ないもので」

「イズ?」

「だから、コハクはみんな、忘れてしまった」

「・・・・・・」

「あの頃の、ケルビムのことも、ぼくのことも」

ミルクティーの甘い香りが漂う静かな空間にイズの声が響く。

ヒスイはゆっくりと瞬きをして聞いていた。

「どこか、いつも、つまらなそうにしてた、コハク」

「ぼくらには、優しくして、くれたけど」

「ココロから、笑ってる顔、なんて、見たコト、なかった」

「誰にも、本音、言わない」

「いつも、ひとりで、抱え込む」

 

 

「あ、その癖、今も直ってないよ」

真摯に耳を傾けていたヒスイ。

「大丈夫、大丈夫、って。全然大丈夫じゃないのに」

アヒルの絵がワンポイントのマグカップに半分顔を隠して、笑う。

「昔からそうだったのかぁ〜・・・」

こくこく。

イズが縦に首を振る。

ヒスイも同じように頷いて、また笑う。

「イズ、見てて」

「?」

ちょうどコハクが洗濯籠を抱えて、目の前を通り過ぎようとしていたところだった。

「お兄ちゃん」

「んっ?」

 

す・き。

 

呼び止めて、告白。

口だけの動きで、声は出さない。

それでも。

コハクは嬉しそうに笑った。

 

「あの笑顔は本物」

こくり。

ヒスイの言葉に、深く頷く、イズ。

またあとでね、とベランダに向かうコハクを見送って、二人の空間に戻る。

「これからだよ。今ならちゃんとお兄ちゃんの心に残るから」

「ココロに・・・残る・・・」

「うん。10年もすれば、思い出話、できるようになるよ」

 

 

 

コハクの思い出には、いつも、ヒスイが、いる。

 

ヒスイと一緒に、ぼくも、コハクのココロに残れたら。

 

とても、幸せ。

 

 

 

数日後。

 

夫婦の部屋へ再び訪れたイズが唐突に願い出た。

「・・・見たい」

「え?」

コハクとヒスイが声を揃える。

「ふたりの・・・えっち」

“えっち”という言葉をどこで覚えたのか。

しかし20年も経てば、イズとて標準語ペラペラだ。

「・・・ひょっとして、イズ、好きな子できた?」

やっぱりコハクは鋭い。

イズの言動の意味を一発で見抜いた。

こくり。

「ふぅむ。それじゃあ、協力しないとねぇ、ヒスイちゃん?」

にやりと邪な微笑み。

コハクはいつでも臨戦態勢なのだ。

煽られれば、すぐその気になる。

「・・・・・・」

コハクに“ちゃん”付けで呼ばれた。

たぶんロクなことにならないが、この場合、どんなに抵抗しても無駄だ。

文句を言ったところで、徒労に終わることもよく知っている。

ヒスイは口を噤んだ。

「“花嫁”は生涯ただひとりなんだ。失敗は許されない」

不真面目な真面目顔でそうこじつけ、ヒスイをベッドへと運ぶコハク。

「そうかもしれないけど・・・でも・・・」

ヒスイの体はすでにベッドの上だった。

イズもちゃっかり近くまで移動している。

 

 

「ん・・・っ」

キス。そして胸への愛撫。

イズに正しいHを教えるために、ヒスイの服を正式な手順で脱がせていく。

「や・・・っ・・・おにいちゃんっ・・・!!」

コハクは、ヒスイの背後から脚の付け根を掴んで、広げた。

ぐぐっ・・・

「んっ!んんっ!」

人前で脚を開けと言われても、応じられる筈がない。

おのずと両脚に力が入る。

「ヒスイ、聞いて。イズはね“僕のヒスイ”が見たいんだ」

「そんなこと言ったってぇ〜・・・」

「イズの視線に性的な意味はない。だから大丈夫!」

(何が大丈夫なのよっ!!)

全然大丈夫じゃない。

コハクの変態的思考回路は今日も全開だ。

「宝物は誰かに見せたくなるでしょ?“僕のヒスイ”をもっと自慢したいんだ」

ぐっ、とコハクの両手に力が加わる。

「いいよね?その綺麗な場所をイズにも見せてあげて」

「う゛〜・・・っ」

本来ならば秘密の場所を、コハクの一存で公開される。

ビクッ!

開ききったと同時にイズの視線が注がれ、トロリ・・・中心部から透明な蜜が溢れた。

「くすっ・・・ヒスイ、恥ずかしい?」

「恥ずかしいに決まってるでしょっ!お兄ちゃんのバカっ!!」

ヒスイは怒りながらも、覚悟を決めたようだった。

プイッと顔は横に背けても、息づく下半身は素直に晒し、イズの視線に耐えた。

「・・・ね?綺麗でしょ?」

こくり。

四六時中コハクの肉茎を押し込まれ、激しい摩擦を受けているとは思えない程、初々しいヒスイの性器。

(こんなの自慢してどうすんのよっ!!)

内心罵声を浴びせるヒスイ。しかしコハクには逆らえない。

ジ〜・・・ッ

「・・・・・・」

何もされずにただ見せているのも恥ずかしい。

観賞用の蜜液がお尻のほうまで流れていく。

「お・・・にいちゃん〜・・・」

ヒスイはコハクに救いを求めた。

「ん〜・・・それじゃあ、次のステップへ」

「あ・・・っ!やっ!」

付け根の奥をコハクが更に指で開いた。

興味津々・・・イズが顔を寄せる。

(あぁ・・・もう・・・)

体は好きにしていいから、このまま気を失いたい。

そんなことを考えるほど、常識破りな展開。

 

「それでね、ここに・・・」

「んっ!おにい・・・」

左手で入口を広げ、右手の指を潜らせる。

肉の狭間が指を咥え込む様をじっくりとイズに見せつけ、本数追加。

「まだ入るよね、ヒスイ」

「あん・・・っ!」

イズの目前で指3本。

ヒスイの割れ目に詰め込んでみせる。

「でも、慣れないうちは1本か2本でね」

こくり。

「・・・で、これを動かす」

「ん・・・っ・・・く」

ぴちゃ。くちゅっ。

泥濘を歩く音。

「んっ・・・あ・・・」

小刻みに、少々荒っぽく、内側の粘膜を掻き回して、お披露目。

「うっ、う、うぅん・・・っ」

恥辱と快感をこれでもかと与えられ、ヒスイが仰け反る。

「・・・ヒスイ、綺麗」

イズがうっとりと呟いた。

「うん。今でも充分綺麗だけど、ヒスイはね、もっともっと綺麗になるんだ」

「ん・・・ふぅ・・・あ・・・おにい・・・」

「んっ?」

見るとイズが挙手している。

「なにか質問?」

こくっ。

「ヒスイのそれ・・・なに?」

かあぁぁ〜っ。

イズの質問にみるみる顔が赤らむヒスイ。

「それ?ああ、これ?」

トロトロの愛液を指で掬い、粘度を確かめながら、エロ笑い。

「ヒスイ、教えてあげて?」

「っ・・・や・・・」

ぐちっ。ねちゃっ。

「あっ・・・あ・・・」

「コレだよ、ぐちゃぐちゃいってるコレ」

「あっ・・・はぁ・・・」

「ヒスイの口から、ちゃんと説明してあげて」

「ぅ・・・きもちが・・・いいと・・・いっぱいでちゃうのっ!おんなのこはみんなそうなんだからっ!」

「うん。よくできました」

ヒスイを背中から抱きしめて、ご褒美のキス。

 

 

「わかったかな?」

こくん。

「快感のバロメーターなんだ。量は多ければ多いほどいい。いっぱいになるまで我慢しなきゃだめだよ?」

こく・・・

「さぁて、じゃあ・・・」

コハクが素早く服を脱ぎ捨てる。

「よく見ててね」

全裸になって、勃起した股間のモノをヒスイの割れ目にあてがい、沈める。

「ここに、こうやってゆっくりと・・・」

「ん・・・おにい・・・ちゃん・・・」

熱く濡れたヒスイの膣口を丸く押し広げ、奥へと。

ずぷ・・・っ。

「あ・・・ん」

 

「は〜い。これでひとつになりました」

 

大股開きになったヒスイの上で結合宣言。

「・・・キモチ、いい?」

イズが覗き込む。

「うん。好きなヒトと繋がることができたら嬉しいよね?嬉しいから気持ちがいいんだ」

「嬉しい・・・から・・・キモチ・・・いい」

「そう。で、こうして腰を動かして、色んなトコロを擦り合わせると、もっと気持ちがいいからね・・・」

「あ・・・おにいちゃ・・・」

「と、いうわけで、授業はここまで・・・」

「おにいちゃ・・・ん、わたしもうイキそ・・・」

「うん・・・僕も」

微笑みとキスを交わして、加速。

イズがまだ見ていることはこの際どうでもいい。

「あぅ・・・あ、あぅっ!あぅうんっ!」

グチャリ、グチャリ、と、擦って、突いて。

一心不乱に体を重ねる二人。

「あ・・・くっ!!」

はぁ。はぁ・・・っ。

「でね・・・気持ちがいいと・・・どんどん・・・綺麗に・・・なるから・・・頑張るんだ・・・よ?」

コハクの言葉も絶え絶えに。

「お、にい、ちゃぁ〜・・・」

「・・・っ!ヒスイっ!」

 

 

イズは頭の中でおさらいをしながら、愛し合う二人が絶頂を迎える瞬間を見守った。

 

コハクが言った通り、ヒスイは、凄く、凄く、綺麗で。

 

昔、天界で見た時よりも、輝きが増したと、思う。

 

(これが・・・“えっち”)

 

そして。

 

“両想い”とはこの二人のことをいうのだろう。

 

「・・・ありがとう」

バサッ・・・

イズが窓から飛び立つ。

満足気な微笑みと、数枚の羽根を残して。

 

 

「これでイズもバッチリ・・・」

ベッドの上で、コハクがヒスイの肩を抱く。

「あれ?でも、両想い、なのかな?」

「え?」

「だって“好きなヒト”とは言ったけど“彼女”とか“恋人”とは言ってない・・・」

「あ・・・しまった・・・」

「まだ告白もしてないのに、こんなことしちゃったら・・・」

「まずい・・・それは犯罪だ・・・」

「だよね!?」

 

二人、慌てて服を着る。

  

 

「イズっ!!待ってっ!!」

「早まっちゃダメだ〜!!」




+++END+++


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