World Joker

短編(No.04)

コクヨウ×アクア



“銀の女は子供ができにくい”
(・・・どこがだ)
アクアマリン。コハクとヒスイの間にできた6番目の子供だ。
 (あの女・・・ボコボコ産みやがって)
 舌打ちの嵐。
 子沢山で散々周囲を巻き込んでいることは知っていたが、ついに自分にまでしわ寄せがきた。

 数日前のこと。
 「夫婦水いらずで旅行がしたいから、アクアのことよろしくね」
と、ヒスイ。
 「アクアがコクヨウのところに行きたいって言ったのよ。私に文句を言われても困るわ。じゃあね」
 無責任なところは何年経っても変わらない。
 「いってらっしゃい〜v」
アクアが手を振る。
コクヨウが一言も言い返せないうちにヒスイの姿は消え、アクアと二人取り残された。

 初対面ではなかった。
メノウとコンビを組み、エクソシストの寮で生活していたため、何度も顔を合わせる機会があった。
 (このガキ・・・嫌いだ)
 銀の獣に抱き付いて毛を毟る。
 幼さ特有の残酷さが顕著なタイプだった。
 「いもうとがほしいから、きょうりょくするの」
ヒスイを見送ったアクアがくすくすと笑う。
 (意味わかってんのか!?コイツ)
 「あのね?きょうはおみやげがあるんだよ」
 「・・・・・・」
とにかく深入りしたくない。コクヨウは顔を背けた。
 「おじいちゃんじきでんのま・ほ・う」
ふさふさとしたコクヨウの体毛に顔を埋め、アクアが呪文を唱えた。
 「な・・・」
 銀の獣、返上。本来の吸血鬼の姿に戻っている。
 「わぁ〜・・・こくよ〜かっこいい〜v」
ぱちぱちと拍手。しかしコクヨウの気分は最悪だった。
 「ふざけんな!ヒトを勝手にいじんじゃねぇ!!」
サンゴを失ってから、元の姿に戻りたいと思うことはなかった。
 過去を忌むように、本来の姿にも憎しみに近い気持ちを抱いていた。
 「獣に戻せ」
 自分にはそれがお似合いだ、と思うのだ。
 「い・や」
いくら怒鳴られようがアクアは全く動じず、一歩も譲らなかった。

そして今に至る。
 「ね〜こくよ〜・・・ねてばっかりじゃつまんないよ〜」
 「・・・・・・」
 服を着て、ふて寝。この際アクアは無視することにした。
 「こくよ〜。こくよ〜。こ〜く〜よ〜」
 「・・・・・・」
 「こ〜く〜よっ!」
 「・・・うぜぇ!!あっち行け!!・・・って・・・」
アクアを追い払おうと顔を上げて・・・唖然。
 「オマエ・・・何で服脱いでんだ?」
 「えへへっ♪」
 驚くべき巨乳。12歳の体つきとは思えない。
 「ね〜、こくよ〜、えっちしよ〜?」
 「12で男と寝ること考えんな!ボケ!」
 「ど〜してぇ?あくあね、もうあかちゃんうめるの。だからえっちしても いいよ、って」
 「・・・誰が言った」
 「おじいちゃんv」
 (あのヤロウ・・・)
 額に血管が浮き出すほど腹が立つ。
 「でね、こくようはあくあのものだから、すきにしていいよ、って」
 「・・・それは誰が言った」
 「ぱ・ぱv」
 (畜生・・・極悪天使め・・・)
 「ね〜・・・しようよぅ〜。えっちってすごぉくきもちいいんだって〜」
 天使の微笑み。悪魔の言葉。
 (あいつら一体どういう教育してんだ!!?)
 性教育しかしていないように思える。
しかも、タチが悪いことに似ているのだ。最愛のサンゴに。
コクヨウは意地になって叫んだ。
 「オマエとは死んでもやんねぇよ!!」

その頃・・・
「アクアね、コクヨウのこと好きなんだって」
 旅行の準備をしながら、口を押さえてヒスイが笑う。
 「だからもう迎えに来なくていいよ、って」
 「あはは・・・我が娘ながら大胆だなぁ」
 頭を掻いてコハクも笑う。
あまりに早い娘の巣立ち。
 「まぁ・・・いっか。恋愛は素直が一番だからね」



+++END+++


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