世界に咲く花

短編(No.12)

ヒスイ×トパーズ

※「世界に咲く花」完結後のお話です。
 誰もが知っているであろうコテコテのネタでいきますっ!!


ボンッ!
 「あ・・・」
みるみるうちに体が縮んで、広げた魔道書の上に座り込むヒスイ。
 唱えるべき呪文が・・・1行ズレていた。
 「小さく・・・なっちゃった・・・」
 (どうしよう・・・)
 全身でページを捲り、元に戻るための呪文を探すが・・・
「確かこの本には載ってなかったはず・・・ええと、どこで見たんだっけ」
 滅多に使わない類の呪文なので、うろ覚えだった。
どのみち他の本は本棚にキッチリ収まっていて、自分では取れそうにない。
 「誰かいないかな・・・」
 運良く扉は開けっ放しになっていて、すんなり通過できた。
 「ここから一番近いのは・・・トパーズの部屋ね」



 「トパーズ!トパーズってば!」
 「・・・幻聴か?」
ヒスイの声。しかし姿は見えず。
 「ここよ!ここ!」
ツンツンとズボンの裾が引っ張られ、視線を足元に落とす。と・・・
「・・・何してる」
 「呪文間違えて、小さくなっちゃったの」
 本棚の一番上、右端に元に戻るための呪文が記された魔道書があるはずだからそれを取って欲しいと頼む。
 「出勤前で忙しい時に悪いんだけど・・・お願いっ!」
 「くくく・・・」
すぐさま邪悪な笑い声が返ってきた。
 「断る」
 「え?」
トパーズに体を掴まれ、遙か上空へ。
 全長約5cm。ヒスイはおもちゃの人形よりも小さくなっていた。
 「丁度いい。朝飯代わりに喰ってやる」
ビリッ。
ひとつまみで服を剥かれ、裸に。
 「え!?」
 (喰う!?どういうこと!?)
 「ええっ!?嘘でしょっ!?」
 「嘘じゃない」
 迫り来るハチミツの瓶。
 「やっ!やめてっ!」
とぷん・・・ハチミツに首まで浸されたヒスイ。
 「くく・・・ハチミツ漬けだ」
そう言ったトパーズの楽しそうなこと。
 瓶の中で茫然としているヒスイを引き上げて・・・ベロッ。
それから口の中へ放り込む。
 「ひあぁぁぁっ!!助け・・・」
 「・・・・・・」
ハチミツとヒスイの味。少々髪が絡まるが、非常に美味。
 口内でどれほどヒスイが暴れようが知ったことではない。
 時計を見るともう家を出なければならない時間だった。
 「・・・煙草代わりに咥えていくか」


 学校。職員室。


はぁ。はぁ。
 (ホントに死ぬかと思った・・・)
 九死に一生を得たヒスイ。
テッシュで体を拭かれ、今度はトパーズのシャツの胸ポケットに入れられた。
 上着を着れば、全く目立たない。


 「この中で大人しくしてろ」
と、ヒスイに命令し、机の引きだしを開けて取り出したのは、指輪。
それを左手の薬指に嵌める。
 朝の日課だった。
 「え?なんで指輪・・・」
 「女避けだ。ここでは妻子持ちということにしてある」
 「へぇ・・・」
 実際子持ち。しかしその事には二人とも触れずに。
 「・・・これで随分違う」
 「ん・・・そうかもね」



 (ってぇ!何この空気っ!!)
 女子クラスの半数は目がハート状態で。
トパーズの授業を待ちわびていた。
 (トパーズは私が産んだんだからねっ!!)
 自慢めいた事を心の中で叫んだところで誰にも伝わらない。
 (危険だわ!いつもこんなところに身を置いているなんてっ!!)
 「ふっ・・・ぷしゅっ!!」
 鼻息荒く勇んだところで、くしゃみが出た。裸のままなので無理もない。
だが、タイミングが悪かった。
 小テストの真っ最中。
ヒスイのくしゃみは、静まりかえった教室に愛らしく不審に響いた。
 「何?今の」
 生徒達の緊張感が緩んで、張りつめた空気が壊れる。
 「騒ぐな。・・・オレだ」
 「うそぉ〜先生カワイイ〜」
くすくすくす・・・
生徒達の笑い声。
 「・・・・・・」
 (このバカ)
トパーズはスーツの上からギュウギュウとヒスイを握った。
 (く・・・くるし・・・ごめんってばっ!!)


 就業後。自宅。トパーズの部屋。


 
※性描写カット


 「やっ・・・だってばっ・・・!」
 「・・・・・・」
ヒスイが指にしがみついて。更に興奮。


 「・・・責任取れ」
 「えっ!?」
 (責任取れって・・・コレをどうしろっていうの!?)


 「ひあ・・・ぅっ・・・」


※性描写カット


 「アイツよりずっと若いからな」
 「失礼ねっ!お兄ちゃんだってこれくらい・・・わ・・・」
(ああ・・・まっしろ)
 目に入って、滲みる。
ヒスイは逃げるのを諦め、その場に倒れ込んだ。
 喉に詰まって息を吸うことさえままならない。
 (こ・・・こんなところで死ぬ訳には・・・)


そんなことを考えながら、ヒスイの意識は温かい白濁の世界へ沈んでいった・・・




(・・・イイ匂い・・・トパーズ?)
 一階のキッチンのから甘い香りが漂ってくる。
 目覚めても魔法は解けておらず、体は小さいままだった。
 (あれ?洗ってくれたのかな?)
いつの間にか全身綺麗になっていて、仄かな石鹸の匂いがする。
ベッド代わりのクッションはふかふかで、とても寝心地が良かった。


 「・・・ホラ」
 「わぁ・・・っ!」
トパーズがヒスイに与えたもの。
それは、生クリームたっぷりのケーキだった。
 間には果物がどっさり挟んであって。
 野菜と同じくらい果物が好きなヒスイは大喜び。
 「苺がボールみたいだよ!なんか得した気分っ!」
 上に乗っていた苺を抱え込んで齧り付く。


にぁ〜っ・・・・
「兄上〜?いるか〜?」
ちょくちょくトパーズの顔を見に来るシトリンは、部屋に入るなりヒスイの姿を見て驚いた。
すっかりお腹が満たされたヒスイは裸のまま昼寝中・・・。
 「のぁっ!母上っ!?何だ!その小ささは!」
くくく・・・
「お前も食え」
と、妹を焼きたてのケーキでもてなすトパーズは機嫌が良さそうで。
 「母上と・・・したのか?」
なんとなくではあるが匂いでわかる。
 「・・・ぶっかけてやっただけだ」
 「ぶ・・・ぶっかけ・・・」
 (相変わらず鬼畜な・・・しかし)
ヒスイが懲りている様子はない。
むしろ気持ちが良さそうに寝息をたてている。
 (苛めた後はこうしてちゃんと優しくしているのか)


モグモグモグ・・・
(兄上が母上の為に作ったケーキ・・・)
 「・・・美味い」
 程良く甘く。ヒスイの好物がいっぱい詰まったケーキ。
 (・・・愛して・・・いるのだろうな)


 「う〜・・・ん・・・おにい・・・ちゃ・・・」


 「!?」
 (母上!!この場面でソレはマズイぞ!!)
 「・・・・・・」
ヒスイの口から出た寝言に、ピクリとトパーズの眉が動く。
 (ああっ!ほらっ!怒ってしまったではないかっ!)
 「・・・元に戻して、嫌って程可愛がってやる」
 伸ばされる腕。
パッとシトリンが横切る。


 「母上っ!起きろっ!逃げるぞっ!」


 +++END+++


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