パラレル<上司×部下シリーズ>
短編(No.19-1)
コハク×ヒスイ
※「世界はキミのために」のパラレル現代ストーリーです。本編とは一切関係ありません。
一流と呼ばれる企業で、営業成績No.1。
部課長にも一目置かれる期待の若手、コハク。
“私は、この先輩が苦手だ”
(顔がイイ男なんてロクなもんじゃないわ!普通でいいのよ!普通でっ!)
営業アシスタントとして入社して一週間。
「ヒスイちゃん、これコピーお願いねぇ〜」
「ヒスイ!茶汲んできな!」
人使いは荒いが、気の良い先輩陣。
おかけで、人見知りが激しいヒスイでもなんとかやっている。
(ただ、どうしてもコハク先輩が・・・)
外回りで社内にいることが少ないのがせめてもの救い。
珍しくディスクワークをしているコハクを、チラッ、様子伺い。
目が合う。
にこっ。
コハクに微笑みかけられるも、見ないフリ。
(カ、カッコイイのは認めるわよ。でも・・・)
口の上手い男は信用しない主義だ。
顔良し。頭良し。仕事もできて、人当たりもいい、一見紳士。
間違いなくモテるタイプだ。
遊んでいるに違いないと思う。
「ヒスイ、ちゃん」
「・・・何ですか」
思いっきり警戒するヒスイ。
「今夜空いてる?」
「空いてませんっ!!」
(冗談じゃないわ!私をその辺の尻軽女と一緒にしないで!!)
ツンと、新入社員にあるまじき態度の悪さ。
コハクに誘いを受けると、嬉しいどころかむしろ頭にくるのだ。
「・・・・・・」
(ガード固いなぁ・・・)
コハクからすれば・・・一目惚れだった。
理屈じゃない。
本能が求めているのだ。
18歳。
成人前の、まだ少女とも言えるあどけなさが残るヒスイに心奪われて。
入社1日目から声をかけているが、一向になびかない。
(そうだ!ここはひとつ強引に・・・)
「そろそろ、キミの歓迎会をね」
「おっ!イイねぇ!やるか!!」
「ホホホ・・・いいわねぇ・・・」
コハクの口から出た言葉に、いち早く反応したのは同僚のカーネリアンと
オパール。二人ともノリノリ。大盛り上がりだ。
周囲も賛同し、流石のヒスイも断りづらいムード・・・
「急で悪いんだけど、何とか都合つかないかな?」
コハクは笑顔で。
口調も柔らかいが、“YES”しか受け付けないという雰囲気を醸し出していた。
「・・・ウチ、門限9時なんですけど」
父親がとても厳しいのだと付け加え、先手を打つヒスイ。
(二次会なんて絶対御免だわ)
「9時ね?了解」
それでも約束を取り付けたコハクは上機嫌で。
内心、ほくそ笑んだ。
(帰すつもりはさらさらないけど)
数時間後。
「何だよ、早速“お持ち帰り”かい?」と、カーネリアン。
「う・・・ん。むにぁ〜・・・」
コハクの腕の中には泥酔したヒスイの姿があった。
「随分飲ませていたものねぇ〜・・・」※未成年の飲酒は禁止です。
「アハハ!最初からソレが目当てか!」
「ご協力感謝します」
コハクはしっかりとヒスイの肩を抱き、テイクアウト体勢。
「僕、このコと結婚するつもりなんで。これから既成事実作ってきます」
それではお先に〜と、早々に居酒屋を後にした。
「既成事実っておい・・・まさかアイツ種付けする気じゃないだろうね・・・」
「そのようねぇ〜・・・ホホッ」
「ヒスイ・・・他に男いないよな?」
「大丈夫だと思うけれど・・・いたとしたら・・・悲惨ね。止める?」
「どうせ無駄さ」
「そうねぇ〜。ヒスイちゃんみたいな照れ屋さんにはコハクぐらい強引な男がお似合いよねぇ〜」
適当な理由をこじつけカーネリアンとオパールは二人を見送った。
会社近くの居酒屋。
居酒屋近くの高級マンション。
その一室に連れ込まれ・・・
「うぅ〜・・・ん〜・・・かえるぅ〜」
ヒスイは酔いが回り、体が思うように動かなかった。
意識も朦朧と、自分が今、誰と何をしているのかさえ定かではない。
とはいえ、自分の家でないことだけはわかるらしかった。
「・・・もうすぐここがキミの家だよ、ヒスイ」
結婚を前提にヤル気満々のコハク。
じたばたともがくヒスイを押さえ込んで、早速キス。
「顔がイイ男はキライなのっ!!絶対浮気するからぁ!!」
美しく整ったコハクの顔を押しのけ、据わった目でヒスイが睨んだ。
「私だけを一生愛してくれるヒトじゃなきゃヤっ!!」
(可愛いこと言うなぁ・・・)
コハクが萌える。恋愛特有の胸の高鳴りを以て。
「・・・愛するよ、一生」
「ちょっと訳ありの体質でね、僕も初めてだからよろしく」
ネクタイを解き、童貞宣言。
ベッドで泥酔しているヒスイの上に乗り掛かり、額から鼻先、顎に軽くキス。
唇は容赦なく濃厚なキスで塞ぐ。
「ん・・・ぅ」
ヒスイはやっぱり酔っていて。
コハクが舌を絡ませると、同じ動きで応えた。
舌先を擦り合い、互いに感触を貪る。
吐き出す息も、熱い。
ブラウスのボタンを外し、ヒスイの温もりと肌の匂いを感じながら、自分も服を脱ぎ捨てるコハク。
小振りの乳房を揉み込んで。
乳首を指で転がし、口で吸う。
「んっ・・・ん・・・」
ヒスイの少し鼻にかかった悩ましげな声。
酔うと性欲が増すタイプらしく、セックスの前戯に抵抗もしない。
むしろ歓迎とばかりに背中を反らせていた。
(なんか・・・慣れてるっぽいけど・・・バージンだよね?)
そうであって欲しいと願う。
「あ・・・せんぱ・・・」
ヒスイの腹部と太股を撫でていた右手は更に下へと移行し、指先が秘部へと消えてゆく・・・
「あ・・・くっ・・・」
ふっくらとした肉芽の愛撫。
脚を挟み、股間を開かせ、それはもう入念に。
「あ、あんっ!は・・・ぁんっ!!」
快感が高まり、体全体が敏感になっているヒスイ。
勃起したコハクのペニスが下腹部に当たり激しく興奮していた。
コハクが軽く手を添えただけで、大きく脚を開き、惜しげもなく入口を晒す。
それはつまり挿入をねだる仕草で。
「そんな格好してると・・・入れちゃうよ?」
お互い初めてなので愛撫にたっぷり時間をかけるつもりでいたが、本能的には早く入れて擦りたい。
入口に亀頭をあてがい、初心者らしく見ながら挿入。
「マナー違反だってわかってるけど、中に出させてね」
あえて避妊はしない。
「全部僕のものにしたいんだ。好きだよ、ヒスイ」
「んくっ・・・!!あっ!あぁ!!」
コハクの腰が落ちるのと同時に、感じたことのない圧迫感がヒスイの喉元まで込み上げた。
あとはもう、突かれる度、喘ぐしかなく。
「あ!あ!ぁ!んんん!」
「う・・・っ!」
初めて知る快感・・・コハクも堪らず。
迸る精液。
自分でも信じられないほど多量に噴出し、すべてをヒスイの膣に流し込んで。
「あぁぅっ!!んっ!!んぅ・・・」
間もなくヒスイも絶頂を迎えた。
「ああ・・・少し血が出ちゃったね」
全身に酔いがまわっていたせいで痛がりはしなかったが、紛れもなく処女の証。
ヒスイの意識がもう殆ど残っていないのをいいことに、脚の付け根に顔を埋め、血液も愛液も、さらには自分で吐き出した精液までも舐め尽くす。
ぺちゃっ。ぐちゅ。ぐちゅ。ごくんっ。
(・・・セックス最高!!)
翌日。
昼近くに目が覚めて・・・サーッ・・・
たちまち青ざめるヒスイ。
全裸。股の間に残る違和感。着ていたはずの服はなぜかハンガーに掛かっていた。
「やぁ、おはよう」
コハクは見慣れたスーツ姿で、ヒスイにミルクティーを運んできた。
「カラダ大丈夫?痛みは?」
「っ・・・!!ひどいっ!!はじめてだったのにっ!!!」
酔っぱらって処女喪失、泣いても泣ききれない。
「うん。ごめんね」
言葉では謝っても、コハクの表情に反省の色はない。
「それで、実は結婚を・・・」
「・・・は?」
火に油のプロポーズ。
「責任取るとかそういう問題じゃないでしょっ!!バカぁっ!!!」
ヒスイは近くにあった目覚まし時計をコハクに投げつけた。
「え!?わ・・・」
ゴンッ!
自慢の顔に見事ストライク。
その隙をついてハンガーから服を引ったくり、ヒスイは部屋を飛び出していった。
「・・・怒った顔も可愛いなぁ・・・」
(それにしてもヒドイ嫌われようだ。まぁ、無理もないけど)
愛してもらえるように。
これから頑張ろう。
時間はたっぷりある。
だって僕達は・・・
入社早々、大遅刻のヒスイ。
なりふり構わず会社へ走り込む。
ところが・・・
「アンタ、今日付で退職してるよ」と、カーネリアン。
「今度は送別会ねぇ〜・・・」と、オパール。
「な・・・なんで・・・」
退職届けなど書いた覚えも、出した覚えもない。
「なんでだって?イヤだねぇ〜、このコは!」
「寿退職だろっ!」
「寿退職でしょう」
カーネリアンとオパールが声を揃えて言った。
「こ・・・ことぶきぃ〜!!?」
「ホホホ。左手の薬指をご覧なさいな」
オパールに言われるがまま、視線を自らの左手へ・・・
「えぇっ!?何これ!?」
先輩に対する言葉遣いにまで気が回らない。
左手の薬指に光るは、サイズぴったりの結婚指輪。
しっくりいきすぎて全く気付かなかった。
「さっきコハクが報告に来たのよぉ」
ヒスイの退職届けはその時提出したという。
「僕達結婚しました!って。それはもう晴れやかに」
「な・・・」
パクパクと、金魚の口。
あまりの驚きにヒスイは言葉を失い。
おめでとう!
式には呼べよな!
今度遊びに行っていい?
・・・祝福の声に見送られ、会社を去った。
(う・・・嘘でしょ・・・)
ヨロヨロとした足取りで家路に就く。
(とにかく寝よう。寝ればきっとなんとかなるわ・・・)
「ただいま〜・・・」
家族は3人。父親のメノウと母親のサンゴ、そして自分。
「おかえり」
いつも仕事で忙しない父親が今日は珍しく家にいた。
それこそが運の尽き。
「さっきお前の彼氏が来てさ!」
「!?ちが・・・」
「面白い奴だったから、婚姻届けに同意しといた」
「な・・・」
「男いるんならもっと早く紹介しろよな〜」
なんという根回しの良さ。
しかも父親は大いに気にいった様子で。
「幸せになれよ!」
「お父さんっ!ちがっ・・・」
「ホラっ!サンゴからも何か言ってやりなよ」
「お母さんっ!話を・・・」
怒濤のように過ぎゆく会話。いつもは聖母さながらに優しい母親が鬼に見えた。
「ヒスイ、体に気をつけてどうか幸せに・・・はい。荷物まとめておいたわ」
「俺さぁ、海外赴任が決まったんだ。サンゴは当然連れてくけど、お前就職したばっかだし、どうしようかな〜って思ってたんだよね」
まさに渡りに船!とメノウが笑って。
「結婚してあいつと暮らすんなら丁度いいや!ってんで、この家売りに出したから」
「えええっ!!!?」
「じゃ!元気でな!」
ポイッ!と。家を放り出され。
「何なのよっ!!お父さんも先輩もっ!!」
ロストバージン。
失業。
帰る家もなく。
「迎えにきたよ」
そこに、コハク。
右手でヒスイの荷物を持ち、左手でヒスイの手を引く。
「・・・・・・」
ヒスイは完全脱力状態で、怒る気力さえ失っていた。
「・・・してる時、何度も言ったんだけど。覚えてなさそうだから、もう一度言うね」
優美な顔に浮かぶ苦笑。
「好きなんだ。キミが。僕と一緒に、毎日笑って暮らそう」
「結婚・・・したの?私達」
「うん。そう。もう少し落ちついたらちゃんと式を挙げようね」
エレベーターの中でそんな会話をして。
「キミの家は今日からここ」
扉の前で足を止める。
「はい、家の鍵とクレジットカード。自由に使っていいから」
「・・・・・・」
ここまできたら潔く。
どうせこれ以上無くすものなんてないし。
騙されたついでにもう少し騙されてみようかな。
ふと、そんな気持ちになって。
「・・・私、すっごくヤキモチ妬きだよ?」
「うん。いいよ。僕もだから」
「好きになったら束縛しちゃうかも」
「うん。して。大歓迎。だから・・・」
『安心して、僕を好きになってね』
「ヒスイからの電話には絶対出るし。メールは3分以内に返信するし。ヒスイの写真を肌身離さず持ち歩いて“僕の奥さん”って皆に自慢するよ」
「それはやりすぎっ!」
照れたヒスイのツッコミが入った。
「・・・へんなヒト」
「お褒めにあずかりまして」
くすっ。くすくすくす・・・
コハクの受け答えが可笑しくて、ヒスイが笑い出す。
ヒスイの笑顔が嬉しくて、コハクも笑う。
「ヒスイ、目閉じて・・・」
扉の前でキスを交わし。
「さ、入って」
「ん・・・」
パタン・・・。
玄関にて。エピローグ。
「あれ?会社に戻らなくていいの?」
「今日は記念すべき日だから、お休み貰ったんだ」
「・・・ね、ヒスイ?」
「何?」
明日からここで、いってらっしゃいのキスしてね。
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