番外編

3P未満。

 

「「ははは」」 

コハクの笑い声が重なる。

「「どうですか、メノウ様」」
「お前の努力は認めるけどさ」

魔法で己の分身を造り出すのはかなり難しい。
使い方次第で、戦闘に於ける攻撃力は何倍にもなる・・・が。

「「これでヒスイに2倍の愛を!!」」

(熱心に訊いてきたかと思えばコレかよ・・・)

目の前に並ぶ、コハクA、コハクB。
嫌な予感がする。
コハクが何の為にこの魔法をマスターしたか。
今更、後悔しても遅い。
分身の呪文をコハクに伝授・・・エロの片棒を担いでしまう結果となりそうだ。

(わりっ!ヒスイ)

 

夫婦の部屋。

「「ヒスイ」」
「え・・・!?」

シャワーを浴びて待っているようにと、コハクから事前に言われていたので、ヒスイは裸で、ちょこんとベッドの上に座っていた。
コハクが増殖して現れたとなれば当然驚く。
今夜のセックスは3Pなのだということを理解できないまま、目をぱちくり。
その仕草は幼く、愛らしい。

「どっちが本当のお兄ちゃん?」
「「どっちも本当の僕だよ」」

※本体はAです。

コハクAとコハクB。
自分達もすぐ裸になり、ヒスイを近くに呼び寄せた。
挟んで左右に立ち、頬にキスをして。

「「ヒスイ、してくれる?」」
「え?え?」

AもBも見事な勃起。
しかし、色も形も角度も全く同じで、どちらから咥えればいいか迷う。
散々迷った末・・・

「ん・・・と」

床に膝を付き、コハクBのペニスを口に含んだ。
すると・・・

「いい子だね〜・・・」
「あっ・・・おにいちゃ・・・ん!?」

コハクAが背中から抱き締め、乳房を優しく撫でた後、ピンクの乳首を指先で強く摘み上げた。

「ん・・・っ!!」

それを合図にヒスイの体が受け入れの準備を始めるのだ。
コハクAは後ろからヒスイの陰部へと腕を伸ばし、指で中央の割れ目を広げた。

「あ・・・んっ!」

早くも内側に溜まった愛液がトロトロと流れ出し、コハクの指先から手の平まで濡らした。

「うっ・・・うぅん・・・」

口いっぱいにコハクBのペニスが入っているので、発言もままならず、喘ぎ声も鼻にかかってしまうヒスイ。
初めての3Pに困惑し、どこに神経を集中すればいいのかわからなくなっていた。

「だめだよ?口から出しちゃ」

疎かになったフェラチオをコハクAが甘く諫める。

「想像してごらん?今ヒスイが咥えているソレがね・・・」
「もうじきココに入るんだ」
「あんっ・・・!!」

ビクンッ!!
内側の敏感な粘膜に中指を押し込まれたヒスイの体が震えた。

「んっ!!はぁ、はぁ・・・」
「だから、頑張らないと・・・ね?」

指での愛撫は自ら制限を設け、ヒスイの中には中指一本しか入れない。
ペニスを欲しがらせる為に、焦らすのだ。

「そうそう、もっと頑張って、ね?」

そう言って、コハクBも頭を撫でる。
ヒスイの舌が微かに動き、チロチロと弱々しい愛撫が返ってきた。
必死なのがわかる。

((可愛いぃぃ!!))

AもBも当然同じ事を思う。
チュクチュク・・・

「あ・・・はぁ・・・っ」

コハクAの指戯に感じ、徐々にヒスイの体が崩れ落ちてゆく。
これまで仁王立ちだったコハクBが、今度は膝を付き、ヒスイの口の高さに合わせた。
フェラチオを続行させる意向で。

「んむっ!えむ・・・っ!!」
「は〜い、入れるよ〜・・・」

ヒスイが四つん這いになるとすぐ、腰を掴まれ、コハクAのペニスが挿入された。
子宮へと続く通路に楽々と滑り込んでくる。

「はぐ・・・っ!!」

ヒスイは思わず咥えていたコハクBのペニスを噛んでしまった。

「ごめ・・・おにい・・・あうッ!!」

ズンと。
バックから深く重い第一撃が打ち込まれ、言葉が途切れる。
何度も言い直そうとするが・・・

「ごめ・・・あんッ!」
「おに・・・んッ!!」
「あうッ!!あうゥッ!!」

ヒスイの言葉を遮るように、腰を強く叩き込み、コハクAが邪魔をするのだった。

「うっ・・・う゛っ!!」

前と後ろでペニスが動く。
ヒスイの頭に軽く手を添え、フェラチオもコハクBがリードしていた。
初めての3Pに対処しきれず、ヒスイはもう口を開け、ペニスを舌の上に乗せているだけだ。

「あくっ・・・はっ、はっ、あ!!」

体の奥を突かれる度、ヒスイの息は熱く口内にこもった。
咥えたペニスは更に熱く、喉の奥を突いてくる。

「んはぁ・・・っ!!」

膣内はいつもより少し乱暴に掻き乱され、結合部から愛液が床へと糸を引いて滴った。

「「よしよし」」

二人のコハクは腰を揺らし、全身にうっすら汗を滲ませて笑った。

「「そろそろイク?」」

快楽の頂点へ。
ヒスイを絶頂へ導く為、A・B両者の動きが加速する。

チュプッ・・・チュクッ・・・
ヌチャッ!ヌチャッ!クチャッ!

上半身と下半身で。
狂ったように交錯する音。

「んぐっ・・・!!」

為す術なく至るところを擦られ、ヒスイは悶絶。

「ヒスイ・・・気持ち良かったらおしっこしてもいいからね」
「っ・・・!!や・・・!!」

いつかヒスイにおもらしさせたい・・・密かな野望を抱きつつ、コハクAはぬかるんだ肉壁に更なる摩擦を加えた。

「えっ・・・ぅ・・・ぅっ・・・」

嗚咽を漏らしながらも、シーツを握り締め、耐えるヒスイ。
繰り返し、繰り返し、秘口を突き開かれ、眩暈がする。

「うくっ・・・!!うぅぅ・・・いっ!!」

そして・・・限界の痙攣。

「あくっ・・・!!」

ヒスイは最後の逆襲とばかりに、膣肉でコハクAのペニスを締め上げた。
同時に、口に咥えていたコハクBのペニスも力の限り吸った。

「「ヒスイ・・・」」

精を絞られる悦びに、コハクA・Bは同じ反応・・・ペニスを脈動させた。

「・・・口に出すのも久しぶりだね」

と、コハクB。
中出し主義なので、口内射精はあまりしないが、今回はBが担当する。

けふ・・・っ!!

ヒスイの口から精液が溢れた。
追って直ぐ背後から。

「ヒスイ・・・好きだよ・・・」
「あ・・・!!」

3Pに興奮したコハクの放出は長らく続き、ヒスイの小さな膣に大量の精液が注入された。
ペニスを抜いた途端、逆流する程に。

「うっ・・・あぁん・・・おにぃ・・・」

ピクピク全身をふるわせ、ヒスイは涙声で喘いだ。
上の唇にも、下の唇にも、コハクの精液がたっぷりと付着し。
その姿が愛おしくて堪らない。

「「・・・すごく綺麗だよ、ヒスイ」」

終了直後の女性器を覗く。男二人。
ヒスイの暗がりは、ヌルヌルと濡れたままヒクついていた。
体から二本のペニスが抜かれ、それはヒスイに与えられた休憩時間・・・なのだが。

ピチャピチャ・・・

いやらしく舌を鳴らすのは、コハクB。
フェラチオのお礼とこじつけ、ヒスイのふっくらした肉の合わせ目を舐める。
体を楽にして・・・と言う割には、時折深く舌を入れたりするのでタチが悪い。
そんな風に舐められ続けたら、鎮まる筈もなく。

「あ・・・はぁっ!!」

下半身の熱にうなされ、ヒスイの意識は朦朧としていた。

「おいで、ヒスイ」

今度はコハクAがヒスイを呼んだ。

「う・・・ん」

薄れかけた意識・・・それでもヒスイはコハクの言葉に従うのだ。
愛液を落としながら床を這ってゆき、コハクAの腕に抱かれる。
そのまま導かれ・・・騎乗位。
あれほどの精液を吐き出した後とは思えない、硬く熱いペニスに跨り。

「おにいちゃ・・・ん・・・う゛っ・・・あぁんっ!!」
「そうそう、いい子だね」
「おにいちゃぁん・・・」

甘えた声でコハクの胸に伏すヒスイ。
1対1のセックスに戻り、安心したのも束の間・・・

「じゃあ、君は後ろの穴ね」

AからBに指示が出る。

「!?やっ・・・やめ・・・」

アナル挿入を聞いたヒスイは露骨に嫌がった。
痛みがないよう開発はされているが、昔からどうも苦手なのだ。
そもそも、二本のペニスを胎内に収める事自体、どうかしていると思う。
コハクAのペニスを股に挟んだまま、慌てて身を起こそうとするが・・・

「動いちゃだめだよ?」

コハクAが下から抱き締め、ヒスイを固定した。

「ヒスイのお尻は本当に桃みたいだね」

続けて、お尻にコハクBの唇が触れ、それから両手で尻肉が広げられる・・・

「んひゃぁっ!!おにぃちゃ・・・」

ペニスの先端が当たった、と思った次の瞬間。

「んぐっ!!あ・・・あ・・・くっ!!」

強引に菊の中心が貫かれた。
慣れてはいても、軋む、小さな体。

「さ・・・さけちゃ・・・あうッ!!」

その叫びは男二人を益々興奮させ・・・

「はっ、はっ、あ、あん、ああっ!!」

ヒスイは二本のペニスに上からも下からも突き捏ねられた。

「うくっ!!ん、はぁっ!!あぁぁんっ!!」

麗しい銀髪を振り乱し、泣いて喘ぐ。

(も・・・だめ・・・)

セックスで失神しやすい体質で、まだ若く不慣れな頃はよく意識を失っていたヒスイ。

「う゛っ!!うっ・・・」

痺れて、下腹部の感覚がない・・・今夜は覚悟を決めた方が良さそうだ。
ところが。
フィニッシュは意外な方向へ展開してゆくのだった。

「ちょっと待って。僕もソッチでイキたいんだけど」

ここで初めてコハクBが文句を言った。
1回目に正規の中出しをしたのはコハクA。
次は自分の番と主張し、コハクBはアナルからペニスを抜いた。

「うっ・・・」

抜かれたヒスイが低く呻く。

「早くソコ空けて」
「・・・・・・」
「こういうのって順番でしょ?」

3Pの基本ルールだ。

「・・・・・・」

従って、本体であるコハクAが追い払われる。

(なんか・・・おかしいぞ)

本来、自分の分身は自分でコントロールできるのだ。
しかし、コハクの場合は違っていた。

「いっぱい頑張ったから、ご褒美・・・ね」
「んっ!」

ベッドの上で舌を絡めるキスをしてから、1対1の最もノーマルな体位で、両脚を大きく開いたヒスイの股間にコハクBが深く腰を沈めた。

「あっ・・・おにいちゃ・・・」

正面から互いの恥骨が擦れ合い、ベッドがギシギシと鳴る。

「アッ!アッ!おにぃちゃ・・・!!」
「・・・・・・・・・」

順番待ちの、コハクA。
選手交代が待ち遠しい。
ヒスイの上で激しく前後するコハクBのお尻を睨みながら。

(なんとなく・・・ヒスイが犯されているように見えるのは何故なんだろう)

「お・・・おにいちゃ・・・ぁ」

行為真っ只中のヒスイと目が合う。

(ああ・・・ヒスイ・・・!!)

我慢しきれずベッドの傍に寄るが、そこでコハクB。

「ヒスイ。“お兄ちゃん”はこっちだよ」
「んむ・・・っ・・・んん」

目の前でヒスイの視線と唇を独占される屈辱を味わうコハクA。

「・・・・・・」
「っ・・・ヒスイ」
「あっ・・・はぁ・・・」

結局コハクBが射精を済ませるのを見届けて。

(なんか・・・腹立つ)

「・・・次、僕の番ね」

と。
コハクAはコハクBを押し退け、ヒスイの上に乗った。

(得策とは思えない・・・気がしてきた)

挿入のため、両脚を開かせると、ヒスイの膣内はもう精液で溢れていて。
間違いなく自分のものではあるが、覚えがない。
分身を使って挑んだ3P。

(僕自身の喜びは半減するんじゃないか?コレ・・・)

自分の数が増えれば増えるほど、ヒスイとするキスの回数も、繋がっている時間も減っていく・・・と、すれば。
簡単な計算だ。

(これじゃ、2倍どころか1/2だ)

「はぁ、はぁ、おにい・・・ちゃん?」
「ちょっと待っててね、ヒスイ」

コハクAはヒスイから離れ、コハクBの元へ向かった。
消すのは簡単だが、一発殴らないと気が済まない。
そのつもりで前進し、コハクBに言い放つ。

「僕の分身のくせに」
「分身は君のほうでしょ?」

コハクBの憎々しい返答に、コハクAの怒りは倍増した。
無論、コハクBは自分を分身とは思っていない。

「「ヒスイは僕のものだ」」

しっかりと、台詞が被る。

「・・・・・・」「・・・・・・」

“殴ってやる”という衝動に駆られたのもほぼ同時で。
互いに顎を狙ったパンチが繰り出された。
決着は呆気なく。
クロスカウンターで、互いの意識が同時に飛んだ。
分身、コハクBは消えたが・・・

「おにいちゃんっ!?」
「ヒスイ・・・ごめ・・・ん・・・」

愛しいヒスイの顔が見えない。
いつしか声も聞こえなくなって。

今夜、失神したのはヒスイではなくコハクの方だった。

数分後。
冷たいタオルが額に乗せられ、コハクは両目を開いた。

「お兄ちゃん!!大丈夫っ!?」
「うん」

自業自得の鈍い痛みが顎に残る。
何ともマヌケな結末・・・。

「ねぇ・・・お兄ちゃん」

ヒスイは裸のまま床に座り、上半身を起こしたコハクの顔を覗き込んだ。

「お兄ちゃんは、私が二人欲しいと思う?」
「思わないよ」

自分が増える事は考えても、ヒスイを増やす事は考えなかった。

「・・・・・・」
(世界にひとりしかいないから、愛しいんじゃないか)

魔法で造り出すヒスイの分身には何の魅力も感じない。

「私も同じだよ。お兄ちゃんはひとりでいい」

ヒスイは頬を染め、はにかんだ笑顔で言った。

「いっぱいいても、好きすぎて迷っちゃうから」

(ヒスイ・・・)

愛がある事が前提だとしても、己の欲望のまま、ヒスイの体を酷使した。
それなのに。嬉しい言葉。
さすがのコハクも反省、だ。

「ヒスイ〜・・・ごめんね」
「?怒ってないよ」
「うん・・・でも、ごめん」
「・・・好きだよ、ヒスイ」
「うん、私も」

愛を告げ、甘く蕩けるキスをして。

「お詫びに、美味しいミルクティー淹れるね」
「うんっ!」

何千何万と訪れる、夫婦の夜。
愛の営みに失敗することもある。
そんな時は、気分を変えて。

真夜中のティータイム。

 

+++END+++


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