番外編
涙えっち
コハクのシャツ一枚で、昼寝中のヒスイ。
いつもの見慣れた光景・・・そこに双子兄弟※9才が現れた、が。
アイボリーとマーキュリーは何やらモメている様子だ。
「そういうイタズラはやめた方がいいよ。まるっきり変態じゃないか」
マーキュリーが怪訝な顔で見ているのは、アイボリーが手にしている小瓶だ。
モルダバイトの市場で格安で入手したそれには、体が透明になるという液体が入っているらしかった。
アイボリー曰く、透明化すれば、イタズラし放題・・・
「男の夢じゃんか!」
そう言って、ビンの蓋を開け。
一気飲みしようとするアイボリーを、止めようとするマーキュリー。
「離せよ!まー!最近付き合い悪・・・」
奪い合いの末、どちらが手を滑らせたのか・・・
すぐ脇で寝ていたヒスイの上に小瓶を落としてしまった。
しかも。そんな時に限って、目を覚ましかけたヒスイが欠伸をして。
大きく開けた口の中へ・・・
「!!苦っ!!」
ヒスイはすぐに小瓶を口から出したが、中身は空っぽ・・・
飲んでしまったのだ。すると、次の瞬間。
「わ・・・なにこれ・・・」
アイボリーとマーキュリーが茫然としている前で、ヒスイの体が消えた ―
傍目には、シャツだけが浮いているように見える。
「あ、そっか、これって・・・」
薬の存在を思い出し、自分が透明化したことを悟ったヒスイ。
「・・・・・・」
(これなら、イタズラし放題よね)
アイボリーと同じ考えで、シャツを脱ぎ捨てる。
こうして完全に姿を消し。
いざ逆襲の時と、ヒスイが構えたところで。
時刻は3時。
「ヒスイ、あーくん、まーくん。おやつの用意できたよ」
コハクが呼びにくる。
「・・・ヒスイ、どうしたの?」
床に転がっていた小瓶を拾うコハクに。
「コハク!聞いてくれ!!」
アイボリーが必死に事情を説明する。
「なるほどね」
懐かしい一品だ。
説明書きによると、子供のイタズラ用に調合されたものらしく、効果時間は短い。
30分ほどだ。
(だったら・・・)←コハク、心の声。
双子を見ると、“お仕置き”を覚悟した顔をしている。
コハクは笑いを堪えながら言った。
「あーくん、まーくん」
「とりあえず、おやつはおあずけね」
「おいで、ヒスイ」
見えないままのヒスイを連れ、夫婦の部屋へ。
「昔と逆だね。覚えてる?」
と、コハク。
上着を脱いだあと、ヒスイをお姫様だっこして。
向かう先は当然・・・ベッドだ。
「おにいちゃん???」
透明化している自分に、迷わず触れられるのが不思議だった。
けれども、コハクにしてみれば、簡単なことで。
匂いや、体温、息づかい、ヒスイのものを辿ればいいだけだ。
いつもと違うシチュェーション・・・ヒスイの反応が楽しみで。
そのためのエッチと言っても過言ではない。
※性描写カット
「その顔、可愛いね。もっとキスしたくなる」
「っ〜!!みえないくせにっ!!」
「見えなくても、わかるよ」
近付く唇。
「おにいちゃ・・・ん・・・」
待ちきれず、それぞれ舌を伸ばし、絡め、引き寄せ合う。
「んッ・・・ふぅ・・・んッんッ・・・」
※性描写カット
夫婦の部屋、添え付けのバスルームにて。
たっぷりの泡で、ヒスイの体を丁寧に洗うコハク。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
「あーくんとまーくんに“お仕置き”するの?」
「しないよ」
双子兄弟は面白いイタズラをする。
(そのイタズラに便乗することも、ままある訳で・・・)
共犯と思う時もあるのだ。
「お風呂上がったら、みんなで一緒におやつ食べようね」
「うんっ!」
・・・と、返事をしたあと。
ヒスイは赤い顔で俯き。
おずおずと、こう口にした。
「お兄ちゃん、あの・・・私、ほとんど透明だったけど・・・」
「うん、そうだね」
ヒスイが何を気にしているかは、わかる。
コハクはヒスイの肩を抱き寄せ、耳元で囁いた。
「でも―」
「気持ち良かったよ」
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