裏部屋T No.04
チョコレートタイム
「え?チョコ?ないよ」
ヒスイは嘘をつくと目が泳ぐ。
今、まさにその状態だった。
「・・・・・・」
今日は2月15日。
つまり、昨日はバレンタインデー。ところが。
一日待っても、なぜか自分にはヒスイのチョコレートが届かない。
「トパーズは学校でいっぱい貰ったんだからいいでしょ」
「・・・・・・」
全部断った。
家に持ち帰ったのは、知らないうちに職員室の机に積まれていた差出人不明のチョコだけだ。
「良くない。よこせ」
本命から貰えなければ何の意味もない。
トパーズなりにヒスイのチョコレート獲得に必死だったりする。
「だから、ないってば!!」
「・・・・・・」
大人しくチョコレートを出したら、今日は勘弁してやろうと思っていたが。
「・・・やったのか?アイツと」
「?今日はまだだよ」
きょとんとした顔でヒスイが答えた。
「・・・なら、先にやらせろ」
※性描写カット
この女は、オレに抱かれる意味がわかってるのか?
どうせ「息子だから」とか、甘っちょろい事考えてるに決まってる。
「・・・・・・」
ベッドの上、ティッシュで下腹を拭いているヒスイに詰め寄る。
「トパーズ?なにを・・・あっ!!んんっ!!」
※性描写カット
ヒスイの心はいつも見当違いなところにあって、どんなに手を伸ばしても届かない。
所有権が自分にはないとわかっていても・・・抱きたくて。
そしてまた、虐めたくなるのだ。
「・・・縛らせろ」
「ト・・・トパ・・・ちょ・・・まっ・・・あんっ!!」
※性描写カット
憎くて。愛しくて。
愛しくて。憎くて。
やっぱり・・・愛しい。
「あっ・・・」
「んっ・・・トパーズ・・・」
「っ・・・バカ」
最後の一滴までヒスイの中に落とし、トパーズはヒスイの縄を解いた。
ヒスイはすぐに眠ってしまった。
トパーズも・・・眠い。
今日は久々の休日だというのに、朝からこれだ。
セックス直後の一服は格別なのだが、それさえも放棄して、トパーズはヒスイの隣に倒れ込んだ。
死んだ様に眠ること2時間。
「・・・・・・」
トパーズが起き上った。
寝起きでも、裸のヒスイに即欲情。
Zzzz・・・ヒスイはうつ伏せで爆睡中。
手足に縄の痕が残っていても、あどけない寝顔だ。
ぺちっ!
お尻を叩いても起きない。
「・・・・・・」
※性描写カット
「うひゃぁ!」
ヒスイが飛び起きた。
寝惚けた顔でキョロキョロ・・・
「あれ?トパー・・・ズ?」
「早く入れさせろ」
トパーズは両手でヒスイの腰を掴み、力強く引き寄せた。
「・・・あっ!!んっ!?」
※性描写カット
「え?あれ?トパーズ?」
ヒスイから離れ、拾い上げたのは銀色の小箱。
縦横15cmほどの小箱には朱色のリボンが結んであった。
それを勝手に解く。
「!!だめっ!!」
ヒスイがベッドから飛び降り、猛然と突進してひったくった。
サッと両手で後ろに隠す。
「・・・何を隠した?」
「べ、べつに何も・・・」
「見せろ」
「やだっ!!」
小箱を巡り揉み合いになり・・・
「あっ!」
ヒスイの手から箱が落下。
蓋が外れ、床に歪な塊が数個転がった。
際どい黄土色だが、たぶんそれは・・・チョコレート。
ヒスイは膨れた顔で一個拾って。
「・・・どうせう○こみたいなのしか作れないもん」
それでも今年はうまくいった方だと思っていたのだが。
トパーズの部屋に入ってすぐ山になっているバレンタインチョコを見つけた。
その中でいくつか手作りのものを発見し、一気に自信喪失。
そして、出しそびれた。
「そっち食べればいいでしょ」
「・・・妬いてるのか?」
ニヤニヤと笑ってからかうトパーズ。
「妬いてない」
「妬いてる」
「妬いてないってば!!ちょっと!!何笑ってるのよっ!!へっ?」
トパーズはヒスイの手首を掴み、指先のチョコレートをパクリと食べた。
ヒスイは目をぱちくりさせてトパーズを見上げた。
「ち・・・」
噂に聞いていたヒスイのチョコレートは想像以上にマズく。
ビターの概念を超え、凶悪な苦味があった。
食感も何か変で。
ヒスイの手作りじゃなかったら、とっくに吐き出しているところだ。
「トパーズ?大丈夫?」
「・・・大丈夫じゃない」
“甘さが足りない”と言って、トパーズはヒスイの唇を求めた。
「ん・・・」
苦いチョコレート。その分、キスは甘く。
何度も、何度も、キスをして。
足りない甘さを補う。
ヒスイの心は・・・案外近くにあるのかもしれない。
そんな事を思う、一日遅れのチョコレート・タイム。
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