裏部屋T No.12

春雷


新月の夜。外は、嵐。
窓に打ちつけられる激しい雨音をBGMにして。
「あッ・・・んッ!!」
ベッドの上、ヒスイを抱くトパーズ。
後背位から、騎乗位、座位・・・そして正常位。
あらゆる体位で、イカせて、イッて。
「あッ・・・トパ・・・っ!!」
もっと奥まで触れたくて。
ヒスイの両脚を割り開き、腰を深く落とす。
「あッんッ!!」
ぐちゅ・・・捲れた陰唇を押し潰す音が、雨音に混じる。
「あ・・・はぁ・・・も・・・やめ・・・」


「・・・・・・」
もう何日も、こうして同じことを繰り返している。
ベッドのサイドテーブルには、血液入りのボトルが置いてあり、ヒスイが空腹を訴える度、口移しで与え、黙らせ。
自分から離れることを許さなかった。
ペニスも膣も擦り切れそうなのに。絶えず膣はペニスを濡らし。ペニスは膣を濡らす。


「ん・・・つぅ・・・」
ヒスイはトパーズの肩を掴み、押し戻そうとしていたが。
「は・・・あ・・・あんッ・・・あ・・・」
トパーズの下で腰を揺すっているうちに、押しているのか、引いているのか、わからなくなっていった。
「あ・・・だめ・・・だめ・・・あぁ・・・ッ!!」
トパーズが強引にペニスを突き入れると。口では拒んでも、カラダは悦んで。
「――あッ!!あぁッ!!」
中出しされる度、女として達した。


「・・・・・・」
抱くことでしか、ヒスイを自分のものにできない――苛立ち。
それこそ、狂ったように抱き続け。
この雨が、いつから降り出したのかさえ、覚えていない。


「はぁはぁ・・・あ・・・」
子宮の快感のままに。ヒスイがトパーズの腰に両脚を絡める。
「・・・舌出せ」
「ん・・・」
トパーズはヒスイの顎を掴み。あどけないその舌を舐めた。
エロティックな舌遣いで、ヒスイを煽り。
「ん・・・ふ・・・」
舌を絡め、愛し合った末に、唇を重ねた。


――その時。


落雷の音と共に、家の照明がすべて消え。
二人は暗闇に包まれた。
「え?停電?」
驚いた顔で、ヒスイがまばたきをする。
「・・・関係ない」
トパーズは、交差したヒスイの脚を振りほどき、ピストンを再開した。
ぐぶん・・・ッ!!
暗闇の中、ヒスイの膣が鳴る。
ぬぢゅッ!ぬぢゅッ!ぬぢッ!ぬぢッ!
「!!あッ!!ふぁ・・・あぁッ!!あッあッあッ・・・あッ!!」
そこは再び性感に目覚め。粘りのある愛液を襞の間にたっぷりと浮かせていた。
「あッ!!う゛ぁ・・・ッ!!トパ・・・ぁ・・・」
滑りがよくなるにつれ、抽送の勢いも増し。
甘く痺れる腹の中、先濡れしたトパーズのペニスが、より奥へと入ってくる。
「あッ!んんッ!!」
キュンキュン、ときめく子宮。
「はぁぁ・・・ん」
ヒスイは背を反らせ、堪らないといった具合に、爪先でシーツを捩り上げた。
「あ・・・トパ・・・トパぁ・・・」
イキかけのヒスイがキスを欲しがり、トパーズの頬に触れる。
「・・・・・・」
トパーズはそれに応じ。
暗闇に紛れ、二人は何度もキスを交わした。


「ん・・・」(あ・・・おくで・・・ちゅー・・・してる・・・)
子宮口と亀頭も、同じくキスをしている。
感情剥き出しの、とびきり濃厚なキスだ。
ぬちゅくちゅと夢中で吸い合う音が、膣内に響いて。更なる熱を呼び起こす。
「はぁ・・・ん・・・」
唇と唇の間、吐き出す息も熱を帯び。
その頃にはもう、トパーズのペニスはヒスイの膣肉に溶け込んで。
「あ・・・あ・・・」
精液が、子宮に向けて昇ってくる感触だけがあった。


「――あぁぁ・・・ッ!!!!」


新たな精液が、子宮に溜まっていた精液を突き抜け、天井を叩く。
「あ・・・ん・・・」(いきおい・・・すご・・・)
射精によるペニスの痙攣。膣もまた痙攣し、よりひとつになってゆく――
「あ・・・あ・・・ん」
全身を震わせ、ヒスイは嬉しそうにしていたが。
「・・・・・・」
セックスを止めたら、あやふやな関係に戻ってしまいそうで。
男と女でいるために、あとどれくらい性交が必要なのか・・・先が見えないのは、この暗闇のせいだけではなかった。
風と雨と雷の音を聞きながら、トパーズは一旦ペニスを抜き。
「もう一回だ」
ヒスイの両脚を掴んで拡げた。

ところが。

ヒスイは、ぷいっと顔を背け。
「お腹すいた」
血はもう飽きた、と、口を尖らせた。
「炊きたてのご飯食べたいっ!」と、ベッドの上、駄々を捏ねる。
「・・・・・・」(この女・・・)
切り替えが早すぎて。
積み重ねた官能の時間が嘘のように思えてくる。
トパーズが、イラッとしたところで。ヒスイが言った。
「もういいでしょ?えっちしてもしなくても――」



「私はずっと、トパーズの傍にいるよ?」



「・・・・・・」
ヒスイにとっては何気なく。当たり前のこと。しかし。
“抱くことでしか、ヒスイを自分のものにできない”
そう思っていたトパーズにとっては違っていた。
「・・・・・・」
愛を綴る言葉より、不思議とその一言で心が晴れる・・・
「あ!停電直ったみたい!」
ささやかながらも、ベッドライトに明かりが燈り、暗闇から解放された二人。
外はいつの間にか静かになっていた。

そして次の瞬間。

トパーズは、笑った。
これまで見せたことのないような笑顔で。
「ちょっ・・・トパーズ!?どうしたの!?」
えっちしすぎて、おかしくなった?と、ヒスイが心配そうに覗き込む。
「バカ、おかしいのは、お前だ」
そう言って、笑いながらヒスイにキスをするトパーズ。
「メシにするぞ」
「うんっ!!」
二人はベッドから抜け出し、キッチンへと向かった。
「ね、トパーズ!桜が咲いたら、お花見行こ!お弁当持って!」←作るのは当然トパーズ。
トパーズは、笑いを残した顔で、ヒスイの鼻を摘んだ。
「調子にのるな、バカ」









それは、雷鳴轟く、春の嵐のように。

過ぎ去れば、うららかな日々―――



+++END+++

[ 世界はキミのために世界に愛があるかぎり世界に咲く花世界に春がやってくるWorld Joker / Side-B ] + 番外編 + 読切短編

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