世界はキミのために

裏部屋U 短編(No.01)

王×王妃の緊縛ストーリー

※裏部屋U『Lovely Queen』後『SWEET HONEY LIFE』前のお話となります。


大安吉日。

モルダバイトで、各国の国王夫婦を招いてのパーティが執り行われた。

名目上は“親交を深める”だが、実情は“王妃自慢”。
各国の王が、自分の妻をここぞとばかりに飾り立て、連れてくるのだ。
開催地は毎年変わり、ついにモルダバイトに順番が回ってきたという訳だ。

オニキスとしては、正直ヒスイを見せ物にしたくはなかったが、こればかりは避けて通れない。
モルダバイトの王妃が絶世の美女という噂は各国に広まっていたので、今回はいつにもまして参加国が多く・・・オニキスが危惧していた通りの展開になった。

若干幼くはあるものの、異彩を放つヒスイの美しさに、ダンスの申し込みが殺到。
ヒスイはヒスイで、重要なパーティと聞いていたので、これもオニキスのためとぎこちない笑顔ながらも丁寧に対応していた。

 「・・・・・・」

その一方で。
オニキスは、国王としてあるまじき感情に悩まされていた。

それは・・・嫉妬。

ダンス中は他の男がヒスイの手を握り、腰を抱き、視線を交わらせる。
そしてダンスが終われば、手の甲にキス。
無論手袋はしているが、次から次へと相手が変わり、延々その繰り返しだ。

「・・・・・・」

どんなに嫌だと思っても、外交の場に私情は挟めない。
早くパーティが終わればいい・・・そればかり考える。

「オニキス様、近寄りがたい雰囲気になってます」

と、そこに側近のローズ。
オニキス狙いの王妃が数多くいる中、誰一人声をかけられないほど気難しい顔をしていたようだ。

「ヒスイ様を参加させたこと、後悔してるんじゃないですか?」

これまでは病欠※仮病が多かったヒスイだが、自分からこのパーティに参加すると言ったのだ。

「オニキス様を想ってのことです」
「・・・そうだろうな」
「もういっそ、隠してしまったらどうですか」

と、ローズ。

「ああ、本当にそうしてしまいたいな」

自分のもとに繋いでおきたい。

「あの女は・・・どうもそういう気にさせる」
「閉じ込めて、繋いでしまったらどうですか」

 更にローズが発破を掛けた。

「できるものならな」と、苦笑するオニキス。
「では、そのように」
「ローズ?おい・・・」

冗談と思っていたのだが、間もなく会場からヒスイの姿が消え。
オニキスは、ローズから任務完了の報告を受けた。

城内のとある一室。
受け取った鍵で扉を開けると。

「オニキス〜・・・」

弱々しいヒスイの声。

「・・・・・・」
(誰がここまでやれと言った・・・)

ヒスイは完全に監禁拘束されていた。
性的な意味も含めて、だ。
なにしろ裸で。

手も足も縄で縛りあげられ、柱に繋がれているのだ。
日頃の鬱憤を晴らすが如く・・・モルダバイトの王妃にこんな真似ができるのは、メイド長のローズくらいだ。
とはいえ・・・

「・・・・・・」

他に誰もいない部屋で。
自分の瞳にだけ映る、その姿の・・・何と美しいことか。
先程まで感じていた嫉妬心がそう見せるのか、この時にはもう定かではなく。

「オニキス、早くほどい・・・あッ・・・」



※性描写カット



(・・・こうしたいと思う気持ちが、オレの中に少なからずあったということか・・・)



※性描写カット 



「・・・・・・」何という後味の悪さ。
「・・・すまん」

慌てて拘束を解くが、ヒスイの体には赤く縄の跡が残って。
衝動的に、嫉妬心に身を任せてしまったことを後悔する。

「?」

気持ちのいいセックスの後、沈痛な面持ちで謝罪される意味がヒスイにはわからず。

「会場、戻らなくていいの?」
「その体では・・・無理だ」
「あ、そっか。ちょっと目立つ?」

ヒスイは暢気な調子だが、オニキスにとっては痛ましく。

「オニキス?」

オニキスはヒスイを強く抱きしめた。

「今日はもういい・・・」

ヒスイをベッドに寝かせ、オニキスは部屋を出た。

「どうでした?」

見張り役として部屋の外で待機していたローズが、待ってましたとばかりに尋ねる。
ずいぶんとヒスイの喘ぎ声が聞こえたので、高評価が得られると思ったのだ、が。
オニキスは苦々しい笑いを浮かべ、

「何とも言えんな」

と答えた。
愛する者の自由を奪って得る快楽とは何だ。
性器だけ愛してどうする。

そう、思うのに。
身動きが取れないヒスイを好き勝手に抱いて。
この女は自分のものだと酔い痴れた。

(愛は・・・時にひどく歪んだ感情を生むものだな)

「・・・もう二度とすまい」



ところが後日。
夫婦の寝室にて。

「じゃ〜ん。見て」

ベッドの上を指して、得意気なヒスイ。

「・・・何だこれは」
「えっと、縄でしょ、手錠でしょ、あと首輪と鎖と・・・」

ありとあらゆる拘束グッズが並ぶ。
先日の件が、妙な誤解を生んでいた。

「こういうの好きなら言ってくれればいいのに」
「いや、そういう訳では・・・」
「私、繋がれたりするの嫌じゃないよ?」

と、ヒスイ。

「どこにもいかないで、傍にいろってことでしょ?」

『そういうのって、ぜんぶ愛じゃない』

「・・・・・・」
(本当に、この女にはまいる・・・)

監禁も拘束も許すと言うのだ。
“ぜんぶ愛”。
その一言で片付けてしまった。

「これも愛・・・か」

嫉妬心も。独占欲も。
ひどく歪んでいるように思えても、確かに愛だ。

(目を背ける必要はないということか)

「ね?またしてくれる?」

縄を手にヒスイが見上げる。

「そうだな・・・」

オニキスはヒスイの額にキスをして。

「・・・たまになら、な」



+++END+++

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