裏部屋W No.01
LOVE FANG
[前編]
愛しさで、牙を剥く。傷付けるつもりはないのに――
場所は、エクソシスト教会の最上階。
総帥セレナイトの愛弟子、ということもあり、マーキュリーには特別な部屋が与えられていた。
スイートルーム風の・・・そこは皮肉にも、初めて夢精をした時の景色に似ていた。
「・・・ん?まー・・・くん?どうしたの?え?あれ?ここ・・・どこ???」
眠るヒスイを攫い、ベッドへ連れ込んだマーキュリー。
マウントポジションを取ったところで、ヒスイが目を覚ました。
きょとんとした顔で、上に乗ったマーキュリーを見ている。
「丁度良かったです」
マーキュリーはにこやかに微笑むと、無造作にTシャツを脱ぎ捨てた。
性差のない、優しげな顔立ちをしてはいるが、体はもう男の色気を含んでいる。
マーキュリーは笑顔でヒスイを見下ろし、こう告げた。
「今から貴方を犯します」
「なんで?」と、ヒスイが聞き返す。
するとマーキュリーは。
「言いましたよね?一生童貞は嫌だって」
「・・・・・・」
改めてそれを言われてしまうと、何も言い返せない。
ヒスイは口を噤んだ。
「心配しなくても、ちゃんとゴムはしますよ」
「――なら、好きにすればっ!!」
そう言って、ベッドの上、両手両足を投げ出すヒスイ。
むすっとした様子で、顔を背けている。
一方、マーキュリーは。
「ご協力、感謝します」と、告げ。
ヒスイの白シャツのボタンを順に外していった。
「っ・・・」
マーキュリーの視線に晒される裸体が静かに緊張する中・・・
「んッ・・・」
首筋を撫でられ、戸惑うヒスイが目を細める。
マーキュリーはそこから手を滑らせ、肩、胸脇、腰と、小柄なヒスイの輪郭をなぞった。
その過程で、ヒスイが怯えていることに気付いたが、あえて知らないふりをして。
股間に手を差し入れると、中指と薬指をヒスイの膣に捻じ込んだ。
「――っ!!」
反射的にヒスイが腰を退こうとしたため、マーキュリーは親指をヒスイのクリトリスに乗せ、包皮越しに強く揺さぶった。
「!!ひあ・・・ッ!んッ!やめ・・・」
途端にヒスイの腰から力が抜ける。
「あ・・・んぅ・・・」
クリトリスの愛撫と膣の愛撫を、マーキュリーが同時に行うと、ヒスイは肩を竦め、小さく喘いだ。
「・・・・・・」
ヒスイの襞に指を絡めながら、膣内を探るマーキュリー。
他の男の精液が残っていると思っていたが、そういう手触りではなく。しっとりと滑らかなものだった。
ほぐせばほぐすほど、愛液が分泌され。クチュクチュといやらしい音が響いてくる。
「!!んッ・・・そこ・・・だめ・・・」
マーキュリーが深く指を入れると、子宮に触れられることを恐れたのか、ヒスイが抗う仕草を見せた。
両手でマーキュリーの肩を掴み、押し離そうする・・・が。
愛液を纏った指先が、容赦なくヒスイの子宮口を撫で回した。
「あぁ・・・ッ!!」
マーキュリーの肩を掴んだまま、ヒスイが喉を反らせる。
「――ここ、ですよね。突かれて、悦ぶのは」
「んッ・・・!ひッ・・・!ちが・・・」
見え透いた嘘をつくヒスイ。
「認めるまで止めませんよ?」と、マーキュリーは激しくそこを擦りあげた。
「ひッ・・・んッ!!んん・・・ッ!!」
激増する愛液。膣口から、たちまちお尻の方まで流れ。シーツへと染み込んでゆく・・・
「はぁっ!はぁっ!あッ・・・あ!!」
マーキュリーの下、ヒスイは腰を跳ね回らせて逃れようとしたが、その度に捕まり。
「やめ・・・おねが・・・あぁ・・・ッ!!」
お仕置きとばかりに指先で刺激を送り込まれた。
「あッあッ・・・」
痺れて、徐々に拡がる両脚。太腿の内側がじっとり汗ばむ。
日々“開発”が進んでいるヒスイのそこは、ヒスイが思うよりずっと感じやすくなっていたのだ。
「んぁ・・・あ・・・!!」
そしてついに。
「――ひぐ・・・ッ!!あ!!」
責められる子宮口に、生温かい絶頂液が滲んで。
マーキュリーの指を咥える膣全体がキュゥゥッと縮みあがった。
「・・・まさかこれだけでイッたんですか?お母さん」
「イッ・・・イクわけないでしょっ!!」
ムキになって否定するヒスイ。
「お○ん○ん、挿れるなら、さっさと挿れればっ!!」
強気な口調で、下からマーキュリーを睨む。
「そうですね」と、マーキュリーは頷き。ヒスイの膣から指を抜いた。
弛んだ膣口からトロ・・・ッと、愛液が漏れる。
そこから立ち昇る銀の雌の甘い匂いが、強烈にマーキュリーの雄を煽った。
マーキュリーは自身の勃起に手をかけ、言った。
「そうします」
[後編]
「後ろ、向いて下さい」
ベッドの上、挿入は後背位で行われた。
上半身を伏し、お尻を上げているヒスイ。
マーキュリーは、汗で湿ったその尻肉を掴み、中心で蠢く膣口に亀頭をあてがった。
ズプズプと、ゴム付きのペニスがヒスイの中へと沈んでゆく・・・
「っ!!」
ヒスイは両手でシーツを握り締め、目を瞑っている。
イッた直後だったため、敏感かつ狭まった膣で、マーキュリーを迎えなければならなかった。
「はっ・・・はっ・・・あ・・・んぐ・・・ッ!!」
いつもと違うペニスはすぐには馴染まず。
その質量、弾力、幹の太さや、括れの角度・・・様々な情報を集めるべく膣が狂ったように煽動する。
「ん・・・ッ・・・」
思わず漏れそうになる嬌声をヒスイは必死に押し殺した。が、次の瞬間、若々しいペニスの抽送が始まった。
「あっ・・・待っ・・・!!あッんッ!!」
ヌチュッ・・・クチュッ・・・、ヒスイの肉壺に浸けるように、ゆっくりとペニスを前後させるマーキュリー。
ヒスイの下腹をまさぐり、中にある自分のペニスの動きを追う。
「はぁっ・・・はぁっ・・・あ・・・まー・・・くん・・・はぁ・・・」
ヒスイの艶めかしい息遣いを聞きながら腰を振るうちに、ペニスと膣の温度が同じになり、ゴムをしているにも関わらず、互いの境目がわからなくなった。
「・・・・・・」(これがひとつになるってことなのかな)
自分しか感じていない幸せだとわかっていても夢中になる。
それと同時に、何ともいえない切なさが込み上げてきた。
「・・・一回出しますね」
マーキュリーはそう言って、律動を早めた。
ズッ、ズッ、ズッ・・・ズプッ!ズプッ!
「ん・・・!ん・・・!」(なに・・・これ・・・)
セックスには慣れているはずのヒスイだが、マーキュリーのペニスは痛いほど硬く。
本来苦手なゴムのせいか、無機質なものにすら思える。
「はっ・・・あ・・・!!あぁ・・・ッ!!」(あそこ・・・こわれちゃ・・・)
膣奥でそれを受け止める度、両脚から力が抜ける。
「あうッ!!あッ・・・あッ・・・あうぅ・・・んッ!!」
ヒスイは余裕なく喘ぎ・・・そして。
「あ・・・」(まーくん・・・イッた・・・のかな?)
はっきりとはわからないが、ヒスイの膣からペニスが撤退してゆく・・・ゴムの先端を引き摺るようにして。
「はぁはぁ・・・も・・・気が済んだでしょ?」と、ヒスイ。
ところがマーキュリーは。
「まだです」と返答し、美しい笑みを浮かべ、再びヒスイに迫った。
「こっちを向いて、脚、開いて下さい」
「・・・・・・」(べつに・・・息子だし・・・一回も二回も変わらないわよね・・・うん)
ヒスイはマーキュリーの言葉に従った。
いつの間にか皺だらけになっていたシーツの上、仰向けになると、肘で上体を起こし。
拡げた両脚の間から、新しいゴムを被ったペニスが自分の中へ入っていくのを見送って。
そのまま後ろに倒れた。
「んん・・・あ・・・」
膣いっぱいに広がる圧迫感。
マーキュリーのペニスが動き出すと、膣内で熱が氾濫し。
「は・・・」(おなか・・・あつい・・・)
右腕を額に乗せ、半分顔を隠すようにしながら、ヒスイが銀色の睫毛を伏せる。
「んッんッ・・・」
ペニスが入ってくる度、押し出された愛液が陰唇を伝って落ちたが、膣内にはまだたっぷり愛液が残っていた。
見た目に反し、成熟しているヒスイのカラダ・・・ねっとりと濡れた膣はマーキュリーにとっても快感で。
「罪深いひとですね、息子の・・・でこんなに濡れるなんて」
グチュッ、グチュッ、という音の合間にそう口にする。
「っ!!そんなんじゃ・・・」
言い返そうとするヒスイだったが・・・
「ここだって、まだ触ってもいないのに勃ってますよ」と、痼った乳首を指で弾かれた。
「―――!!!!」
マーキュリーのペニスに女芯を貫かれたまま、背中を大きく反らすヒスイ。
下半身の交わりで否応なく生まれる快感を、乳首から逃がすようにして調整してきた。
それで何とか絶頂を避けていたというのに。
「かはっ・・・あ・・・あ・・・」
呼吸を乱し、涎を吐き出すヒスイ。
「なるほど、そういう事ですか」と、マーキュリーは口元を歪ませ。
ヒスイの乳首を捩り上げた。
「!!ひッ・・・あ!!」
「イッてもいいんですよ?お母さん」
腰を密着させ、グチュグチュ、ヒスイの中を掻き回す。
「あッ・・・やめッ・・・おねが・・・んん・・・ッ!!あ!!」
結合部から、大量の泡が溢れ。
ヒスイのカラダが、抗えぬ官能に震え出す――
「ん!あ!あ!」
このまま達すると思われた、その時だった。
「!?まーく・・・なかで・・・なんかでて・・・」
一転して硬直するヒスイ。
知らぬ間に、男の蜜が散かれ。膣襞にまで入り込んでいる。
「え・・・」(だってゴムして・・・)
答えを求め、マーキュリーを見上げる。
すると、マーキュリーはこう回答した。
「もしかしたら――」
「ゴムが破けてしまったのかもしれませんね」
「気が付きませんでした。すみません」と、謝るも。
(嘘に決まってるだろ)←マーキュリー、ブラックボイス。
二回目は破けるように、細工をしておいたのだ。
当然、抜く気はない。
マーキュリーがピストンのスピードを上げるなか。
「や・・・やめて・・・ッ!!」
ヒスイの声が急に現実味を帯びる。
「やめると思いますか?」
マーキュリーは上からヒスイを覗き込み、言った。
「中途半端な同情で受け入れるくらいなら、最初から嫌がって泣き喚けば良かったんだ」
そうしたら、誰かが助けてくれたかもしれないのに。
「残念でしたね、お母さん」
「――っ!!」唇を噛むヒスイ。
それから涙目で。
「赤ちゃんできたらどうするのよ!」と、怒鳴った。
マーキュリーは顔色ひとつ変えずに。
「責任取りますよ」
「トパーズ兄さんのように」
そこで、パンッ!!ヒスイがマーキュリーの頬を叩いた。
「・・・・・・」
『トパーズと同じだと思わないで!!』
―――と、ヒスイが言った訳ではないが。
平手打ちの意味は恐らくそんなところだろうと解釈した。
それでもマーキュリーは怯まず。
今度はヒスイの両手首を抑えつけた。
「忘れないで下さいね。僕は貴方を犯しているんです」
「!!んー・・・!!」
強引にヒスイの唇を奪い、射精に向け激しく腰を振る。
ブチュッ!ブチュッ!と、ヒスイの膣を突き刺す音が、けたたましく部屋に響き渡った。
「あッ・・・いやッ・・・あぁッ!!」
宙を掻く、ヒスイの爪先。それがピンと伸びる。
「―――!!!!」
膣内に精子が放たれたのだ。
「あッあ・・・アッ・・・・・・」(なか・・・だされちゃっ・・・)
子宮で感じる禁忌の熱。
ビクッ!ビクッ!と小さなカラダが痙攣し、愛らしい翡翠色の瞳が瞼の裏を彷徨う。
「アッ・・・アッ・・・・・・あ・・・・・・ぁ・・・」(まだ・・・でて・・・)
予期せぬ膣の白濁に伴い、ヒスイの意識も白く塗り潰されていった・・・
・・・完全なる静寂が訪れ、間もなく。
「ちょっとヤリ過ぎじゃね?まー」
カーテンの裏から、双子の弟アイボリーが姿を見せた。
ずっと同じ室内にいたのだ。
ベッドまで歩み寄り、ぐったり横たわっているヒスイを眺める。
目を瞑ったまま、ぴくりとも動かないヒスイ。
「中に出したの、掻き出しといた方がいいよな」
マーキュリーの精液で塞がっているヒスイの膣口に指を伸ばす・・・と。
「・・・ん?」
不意にヒスイと目が合った。
「うぉっ!?ヒスイ!?失神してたんじゃねーのかよ」
「失神?するわけないじゃない、これくらいで」
ちょっと疲れただけ、と、体を起こすヒスイ。
「シャワー浴びてくる」
そう言って、ベッドを下りた。
直立すると、マーキュリーの精液が内腿を伝ったが、気にも留めず。バスルームへ――
「・・・あれ?」と、そこで首を傾げるヒスイ。
「なんで、あーくんが同じ部屋にいるの???」
普通に会話をしたものの・・・
「もしかして・・・」(全部見られてたんじゃ・・・)
カーッとヒスイの顔が赤くなる。
ヒスイはバスルームの扉に向かって叫んだ。
「あーくんとまーくんのばかぁっ!!もう知らないんだからっ!!」
「・・・なあ、まー」
「何?」
「ヒスイに、ちゃんと気持ち伝えれば?好きじゃなきゃ、あんなことしないだろ」
「・・・どんなに想ったって、どうせ僕のものにならないんだから、(“好きだ”なんて)言う意味ないよ」
「でもさ、トパーズはたぶん、言ってるぜ。ヒスイに“好きだ”って」
その差なんじゃね?と、アイボリーはマーキュリーの頬を指した。
見事、ヒスイの手形が残っている。
「始めから犯すつもりだったんだから、いいんだよ、これで」
マーキュリーは溜息混じりに言って、袖机に置いてあった眼鏡を手にした。
それを見たアイボリーが笑う。
「お前が眼鏡かけてるのってさ、俺が金髪にしてるのと同じような理由じゃね?」
「さあね」と、一度ははぐらかしたマーキュリーだったが、ふと思い当たったのか、苦笑いを浮かべ。
「もしかしたら――そうかもしれないね」
+++END+++