1話 恋愛確率100%
ヒスイが産んだのは、双子の男の子だった。
これは・・・出産直後の話。
「また賑やかになるなぁ」
女の子ではなかったが、コハクは嬉しそうだ。
が、しかし。
「見ての通り、二人とも“銀”でね」
「・・・・・・」
コハクの話し相手は、トパーズだ。
他には誰もいない。
「例のものは持ってきてくれた?」と、コハク。
トパーズは無言のまま、古い冊子を机の上に投げ出した。
早速コハクが手に取り、目を通す・・・
「・・・成程、ね。これで髪の色を変えることができる訳か」
「ホラ」
と、続けてトパーズがコハクに投げ渡した小瓶には、魔法薬。
遠い昔、シトリンがオニキスの娘になりすますために使っていた・・・髪を黒く染めるものだ。
「“金”にする気か」
トパーズが鼻で笑う。
「うん、まあ」
小瓶を翳しながら、コハクはそう返事をした。
“銀”の実子の、ヒスイに対する恋愛確率は現在100%・・・将来に懸念がないといえば嘘になる。
「そこでちょっと考えたんだけどね」
「“銀”という自覚がなかったら?」
「同族愛に溺れることもない―か?」
トパーズは相変わらず意地悪な物言いで。
「馬鹿馬鹿しい。反吐が出る」
「だろうね」
コハクは苦笑いで肩を竦めた。
「“銀”だから、じゃない。何でも血筋のせいにされてたまるか」
恋愛確率100%の仮説に、トパーズが異議を唱える。
「うん。君が言いたいことはわかるよ。だけど、一度は試してみるべきだと思うんだよね」
「・・・・・・」
ここまで腹の内を明かすのは、コハクにしては珍しい。
「クク・・・オレに同じ罪を背負わせるつもりか」
強気な笑みに。
「まあ、そういうこと」
強気な笑みで。コハクは言った。
「ただし、強制じゃない。どうする?」
「・・・・・・」
そこで、ブチッ!トパーズは、コハクの頭髪を思いっきり毟った。
「・・・ずいぶん抜いてくれたじゃないか。何、今の、日頃の恨み?」
と、ぼやきながら金の髪を掻き上げるコハク。
トパーズはクールに受け流し。
「“色”の情報を読み込ませる」
コハクの髪を数本、瓶の中へ落とす・・・それはすぐ液体に溶けて消えた。
魔法薬の完成だ。
「これが君の返事、ってことでいいのかな」
「面白そうな“実験”だからな。付き合ってやる」
こうして・・・
人知れず、金の髪を与えられることになったのは、のちにアイボリーと名付けられる赤ん坊。
「君に魔法をかけるよ。幸せになれる魔法・・・か、どうかはわからないけど」
「僕は君の・・・」
コハクはそこで一旦言葉を切り。
アイボリーの隣に並ぶ、銀髪の赤ん坊の頭を撫で、言った。
「君達の幸せを願うよ」
双子の誕生。そして同時に、ひとつの秘密が産まれた。
「・・・大罪かな、これは」
トパーズの去った部屋で、ひとり呟くコハク。
「まあ・・・今更、ひとつやふたつ増えたってどうってことないけど」
(でも・・・)
ごめん、ヒスイ。