World Joker/Side-B

番外編

ウエディングフォト[後日談]



熾天使被害者の会、緊急招集――

焼け野原と化した、マモンの庭園にて。
前回同様のメンバーが顔を揃える。

惨状を目にしたテルルは・・・
「凶暴な本質はそう変わらぬものよ」
提案者の割に、他人事のようなセリフを吐き。
ベルゼブルとアバトンは声を揃えて。
「「熾天使一家に関わるとロクなことにならない」」
羽音煩く、ここぞとばかりに主張した。
「テルルが招待しろなんて言うから!酷い目に遭ったよ!」
マモンは10歳の外見に見合った言動で、テルルに詰め寄った・・・が。
一方で、プラズマがある事に気付き、発言した。
「しかしあれですな、ヴィーナスの林檎は無事で何より・・・」
「!!それなんだけどね!」
聞いてよ!と、今度はプラズマに迫るマモン。
「“花嫁”が守ってくれたんだ!」
「何ですと!?ヒスイたんが!?」
混戦の最中、樹の周辺に結界を張っていたのだという。
ヒスイにしてみれば、美味しい果物を失いたくなかったというだけで。
所有者であるマモンへの気遣いなどは一切ない。
けれどもマモンは、その姿にいたく感動したらしく。
ヒスイが、美しきメシアに見えたのだ。
そしてなんと、ヒスイの像を建てたという。
「見たいであります!!」と、プラズマ。かなり興奮した様子だ。
微妙にベクトルこそ違うが、二人は盛り上がり。
特別公開という話になった。
魔界の職人を集め、不眠不休で造らせたヒスイ像。
完成はしたものの、お披露目前のため、そこには大きな布が掛かっていた。
「楽しみでありますな!!」
「それじゃ!!いくよ!!」




その、少し前。赤い屋根の屋敷では。

「あれぇ〜?パパ、どっかいくのぉ?」
次女アクアが顔を出した。
目的はヒスイだが・・・白いシャツを着てクッションに埋まっている。
エッチの後のお昼寝タイムだ。
しっかり眠ってはいるものの、ヒスイは頬を上気させたまま。
度々、コハクの名を口にした。
「あ・・・んぅ・・・おにいちゃ・・・」
夢の中ではまだコハクに解放されていないらしく。
「や・・・おにぃ・・・」
夢にまで縺れ込むほどの、濃厚な交わりが、直前まで行われていたことを物語っていた。

「ちょっとマモンのところにね」と、機嫌良さげにコハクが答える。
先日招待を受けたお礼に、今度はこちらが招待するという。
その手には招待状・・・しかし。
「何企んでるのぉ〜?」
「わかる?」
娘の視線に、コハクが軽く肩を竦める。
「やっぱり、ヴィーナスの林檎は味がいいからね」
ヒスイが喜んで食べるのだ。
生でも良し。定番のアップルパイから、焼き林檎に、コンポート・・・
用途は多々あるため、安定供給できれば、それに越した事はない。
「買い付けてもいいんだけど、キリがないし。できることなら、彼の方から好意で贈って貰えたらな、と」
そのために必要なものは何かと考えた結果、“友情”という結論に至る、が。

・・・それはもう、友情とは言えない。

話を聞いていたアクアは、何かを閃いたらしく。
「だったらぁ〜、アクアも一緒に行く〜」
続けてコハクに考えを明かした。
「協力したげる〜」


「アクアも、ママの喜ぶ顔が見たいから〜」




そして、スフェーン。マモンの庭園。

「おおお!!」
ヒスイ像を前に、プラズマが感嘆の声をあげる。
純金の等身大。瞳には翡翠が嵌め込まれている。
材料に関しては、趣味が良いとは言えないが、造形は確かにヒスイで。
アキハバラに美少女フィギュアを卸している業者も参入しているらしく、デザインのクオリティは高い。
「素晴らしいであります!!」と、褒め称えるプラズマだったが・・・
そこから急に声を小さくして言った。
「しかし、熾天使に見つかると、色々ヤバイかもしれませんぞ」
「ヤバイ?どうして・・・」
「ヒスイたんの著作権は、熾天使が・・・」


「僕が、何かな?」


「「!!」」
熾天使コハクの、あまりに突然の登場に驚き。
抱き合って、飛び上がる、マモンとプラズマ。
そんな二人をよそに。
「散らかしたまま帰っちゃったから、ちょっと気になって」
散らかした・・・というレベルではないのだが。
コハクは爽やかな笑顔で。
「あと、僕の娘がね、君と友達になりたいみたいなんだ」
そう言って、笑顔のまま、マモンを見た。
「ハロ〜」紹介を受けたアクアが一歩前に出る。
「と・・・“友達”!?」
ヒスイと似て異なるタイプのアクアにタジタジのマモン。
「アクアの〜、子分にしたげる、ってこと〜」
“友達“と“子分”は同義語とは言い難いところだが。
アクアはお構いなしに話を進めた。
「アクアは〜、強欲だから、気が合うと思うよぉ〜、ね〜」


「エピちゃん」


「!?」
「“エピドート”で、エピちゃんだよぉ〜」と、アクア。
それがアクアの決めた、マモンの名前だ。
「・・・・・・」
契約を強要されている。
一度は口を噤んだマモンだったが、コハクの手前、返事をしない訳にはいかず。
メンバーが気の毒そうに見守る中、自棄になって叫んだ。

「エピドート!!」

こうして、マモンは名前を得る事になり。
アクアの悪魔・・・子分という立場となった。
「これからよろしくねぇ〜、エピちゃん」
「・・・・・・」



以下、プラズマ脳内。
自分は熾天使の息子サルファーに名を付けられ。
テルルは熾天使の息子の息子に名を賜ったと公言している。
そしてついにマモンまでもが、熾天使の娘に名を押し付けられた。
間接的にではあるが。
(吾輩達はことごとく、熾天使の傘下に入っているのでは!?)





それから小一時間後・・・赤い屋根の屋敷。


「お兄ちゃんっ!何よ!コレっ!!」


目を覚ましたヒスイは、廊下で黄金の像を発見した。
マモン改め、エピドートの元から、コハクが回収してきたものだ。※無断で
趣味が良いとは言えないとコハクも思っていたが、ヒスイのカタチをしている以上、ぞんざいには扱えず。
ひとまず設置してみた。
「マモンからのプレゼントなんだけど、どうかな?」
苦笑いでヒスイにそう尋ねると。
ヒスイは、怒った顔で一言。



「ギラギラして、気持ち悪いよ!!」

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