世界に咲く花

46話 シックスナインの夜

   

(あいつって・・・コハクさんのこと、だよな?)

話の流れからジンはそう推測した。

「あのあと・・・もう一回魔界へ行って、ヨルムンガルドと話したんだ」

微笑んでメノウが打ち明ける。飄々としながらも行動力はあった。

「ええっ!?」

ヨルムンガルドと言えば幻獣の類だ。

話には聞いていたが、魔界の存在共々現実のものとして認知するのも難しい。

人間界で生きる者にとっては。

「・・・ヨルムンガルドはもうすぐ死ぬ」

「え・・・?」

“死”と聞いてジンの瞳の色が変わる。

「・・・寿命なんだ」

病気は寿命が招いたものなのだと、メノウが説明した。

「人間界の海を手に入れたところでもう・・・助からない」

「そんな・・・」

そうだとしたら、この戦いに一体何の意味があるのか。

「コハクの奴がそれに気付いていれば・・・」

メノウの言葉はそこで途切れた。

  

魔界の海。

漆黒に浮かぶ朱い月。

そこに映る堕天使の影。

大きく翼を広げ、爪先が海面へ触れるほどに近付く。

<・・・モウ・・・此処ヘキテハイケナイ・・・>

<デモ・・・パパ・・・>

静かに響くヨルムンガルドの声。

サファイアが言葉に詰まる。

<オマエ二罪ヲ背負ワセテマデ生キ長ラエタイトハ思ワナイヨ>

<そんなコト言わないデ、パパ。大丈夫。コチラにハ“神”がイル。熾天使とモ手ヲ結んダ。きっと助カル>

懸命に語りかけるサファイアに返ってきたのは切ないほど無気力な返答だった。

<・・・私ハモウ助カラナイ>

<嫌ダッ!!そんなノ信じナイッ!!>

サファイアの瞳から溢れた涙が黒く淀んだ海面に吸い込まれてゆく。

<・・・オマエヲソンナ姿ニシテシマッタ私ヲ・・・許シテオクレ・・・>

サファイアの背中には羽根が8枚・・・普段は自前の2枚しか見せていないが、6枚羽根のサタンを殺して喰ったことで融合に近い状態になっていた。

魔界の頂点とも言われるサタンの能力。

手に入れたと同時に体を蝕み、本来の姿を失いつつあった。

眼鏡が手放せなくなったのもこの時からである。

<平気。またパパと一緒ニ暮らせるナラ>

どんな姿になったっていい。

罪を罪とも思わない。

<絶対に助ケル。待っテテ・・・パパ>

バサッ・・・。

無数の羽根が舞い散り、波紋を広げた。

オォォオ・・・

魔界の大気が揺れる。

世界蛇ヨルムンガルドの泣く声で。

<・・・サファイア・・・>

  

その頃。洋館では・・・

 

「おに〜ちゃんってばぁ〜・・・」

「ん〜・・・ヒスイぃ〜・・・」

グロッシュラーから早々に引き上げてイチャイチャ・・・。

コハクはヒスイを後ろから抱きしめ、お腹を撫でたり、お尻を触ったり、髪の香りを嗅いだり、首筋を舐めたりと好き放題だった。

 

(もうあまり時間がない・・・サファイアも焦ってきてる・・・問題はヨルムンガルドの毒じゃなくて・・・神の時間・・・)

「おにいちゃん?どうかした?」

考え事をしながらキスをすると、すぐに見抜かれてしまう。

鈍そうでも勘はいい。

「ん?何でもないよ」

シラを切ってコハクが微笑む。

「ね、ヒスイ、えっちしようか」

「うんっ!」

   

「ヒスイ。おいで」

ベッドの上から手招きする。

ぽてぽてとヒスイが寄ってきた。

服はもう脱がせてある。

「いっぱい舐めてあげる」

(っていうか舐めさせて)

こちらが本音だ。

“舐めてあげる”

こう言ったほうがヒスイが喜ぶことを知っているのだ。

「ん・・・」

ヒスイは嬉しそうに頷いて、うんしょ・・・とベッドに乗った。

恥じらいながらも、大きく開脚。

すでに舐めるものはたっぷり用意されていた。

(あぁ・・・ヒスイ・・・なんていい子なんだ・・・)

泣かせてしまったことに今更胸が痛む。

「おにいちゃん?」

いつもならそこに顔を埋める。

しかし今夜は違っていた。

まずは自分が仰向けに寝そべる。

「跨いで。ヒスイ」

「え?」

「僕の顔」

「・・・それってつまり・・・」

ヒスイの顔が赤くなる。

コハクの考えがなんとなくわかってしまったのだ。

「うん」

とびっきりの笑顔でコハクが頷く。

「う゛〜・・・」

笑顔のコハクにはいつも以上に逆らえない。

言われるがまま、ヒスイは股を開いてコハクの顔に跨った。

「よく見せて」

「ん・・・」

超至近距離での鑑賞。そして興奮。

甘酸っぱい香りが漂ってくる。

下半身の中心部に血液が集中してゆくのを感じた。

先が湿るのも時間の問題だ。

「ヒスイのココも僕のと一緒だから・・・ほら、こうすると・・・」

この体勢のまま動かないよう指示して、愛しい粒のある場所を指先でV字に広げる。

「あっ・・・」

可憐な声が弾けた。

ヒスイらしい小さな突起を舌先で擽る。

「うにゃぁ〜・・・」

(ヒスイはココの刺激に弱いんだよね〜)

素直な反応が可愛い。

(動物的な鳴き声をあげるトキは、“恥ずかしいけど感じてる”トキだ)

見上げても出っ張ったお腹に視界を遮られ、表情が見えない。

その分耳を澄ませる。

コハクは自信たっぷりに舌を動かしてヒスイの声を聞いた。

 

膨れて。尖って。熱を持つ。

まさに神秘の世界。

(ヒスイの体にこんな場所があったなんて)

はじめて見た時の感動は今でも忘れない。

「おにい・・・ちゃぅん・・・っ!!」

肉粒を舌でなぞって押し捏ねる。

「ひぁ・・・んっ!!」

ヒスイの体が小刻みに震えた。

「疲れたら腰落としていいから」

「僕の顔に座る勢いで」と、冗談を交える。

「それじゃ・・・おにいちゃんのかおがうまっちゃう・・・よ」

「いいよ。窒息したい」

「もぅっ・・・おにいちゃんはぁ・・・またそんなこといってぇ・・・」

幸せな笑い声。

「ヒスイ・・・もっと擦りつけて」

「・・・ん」

コハクが舌を突き出す。

そこにピンクの粒を押しつけるヒスイ。

「ふ・・・にゃぁ・・・」

降り注ぐ愛液で顔中ビショビショになっても全く問題ない。

ヌルヌルのしこりをヌルヌルの舌で刺激する。

「あう゛・・・っ!!」

笑い声の後には、グチャグチャとイヤらしい音が響いた。

 

「アァ・・・ン」

下腹から絞り出される快感の音調。

ねっとりとしたなかのコリコリ感が堪らない。

「ひふい・・・もっほこひ、うごかへる?」

訳:ヒスイ・・・もっと腰、動かせる?

舌の使い過ぎか呂律が回らない。

「んっ!ん・・・」

ヒスイは腰を前後に動かして性器全体をコハクの顔に擦りつけた。

(う・・・っ!!コレ最高!!)

割れ目に顔を挟まれる。

「あ・・・おに・・・ちゃ・・・」

ヒスイの溢れた愛液が舌に溜まる。

ジュルッ。ゴクン。

コハクは音をたてて啜った。

更に強い快感を与えるために舌を思いっきり突き出す。

「はぅ・・・ン」

ヒスイは喉を反らして喘いだ。

 

「ほのままむひかへて」

訳:このまま向きかえて

180度回転。

コハクはヒスイを自分の下半身のほうへ向かせ、舌での愛撫を続けた。

今度は後ろの穴を慈しむ。

「あ、あ、お、にい、ちゃ・・・」

コハクは快感を与えることに集中。

ヒスイは快感を得ることに集中。

それぞれ没頭。無我夢中。

 

(・・・あ)

虚ろなヒスイの瞳に映る物体。

なだらかな平面から真っ直ぐに突き出たモノ。

「おにいちゃん・・・」

ごくりとヒスイの喉が鳴って、手が伸びた。

体勢が自然と前屈みになる。

コハクの上にずっしりとお腹が乗って・・・重い。

が、それがまるごと愛おしい。

「ヒスイ・・・僕にもしてくれるの?」

ぱくっ。

頷くより先に、勃起した肉棒をヒスイが頬張る。

「あ・・・ヒスイ・・・」

「んっ・・・おにいちゃん・・・」

与えている快感と。

与えられた快感に。

共に酔いしれる。

「あは・・・んっ・・・!」

尖ったモノに貫かれたい欲望が高まって、ヒスイが挿入をねだった。

「おにぃ・・・ちゃん・・・」

「そろそろ欲しい?」

こくん。

「・・・じゃあ“入れて お願い 欲しいの”って言って」

「あぅ・・・いれて・・・おねがい・・・ほしい・・・の」

ヒスイはコハクの言葉を繰り返した。

四つん這いのまま、お尻を左右に揺らして誘う。

腿を流れ伝った愛液がシーツに染み込んでいた。

「ヒスイ・・・っ!!」

感情爆発。堪えていたのはコハクも同じだった。

興奮に任せてヒスイの中へと突っ込む。

「アンッ!!」

はっ。は。はぁ・・・っ。

過敏になった性器同士をこれでもかと擦り合わせる。

「ン・・・クッ!!」

先にヒスイの声が消えた。

きゅっと内側を収縮させて最後の奉仕。

コハクを瞬時に絶頂へと誘う。

「ヒ・・・スイッ!!」

情欲の液体が噴き上がる。

「ごめん・・・っ」

 奥で眠る命に謝罪。

続けてヒスイの膣内に熱い精液を噴射した。

  

「お兄ちゃん?何?最後の“ごめん”って」

やっと少し体が冷めてきたところで、思い出したようにヒスイが言った。

その問いかけにコハクは苦笑いで答えた。

「びっくりさせてごめんね、ってこの子達に」

ヒスイのお腹に手を翳し、トントンと指でリズムを刻む。

「お兄ちゃんもそう思う?」

“この子達”

コハクが複数形で言ったので、くすりとヒスイが笑った。

「うん。そう思う」

コハクも笑って、二人、お腹の上で手を重ねる。

「また双子かな?」

「三つ子かも」

くすくすくす・・・

「何人産まれても大丈夫だよね。お父さんも、オニキスもいるし」

「・・・トパーズも」

コハクが付け加えた。

(父親なら尚更責任取ってもらわないと。子育ての苦労をとくと味わうがいい!!)
裏にはそんな思いが隠されている。

「うん・・・」

小さく返事をしてヒスイは話を続けた。

「サファイアも子供好きだって言ってたよ」

「よし。じゃあ、みんなで育てよう」

“二人で”がいつの間にか“みんなで”になっている。

「幸せはお裾分けしないとね」

傍若無人に勝手な決定。

隣でヒスイが頷いた。

  

・・・結局世界は二人を中心に回っている。

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