World Joker

73話 連日恋愛



 

 

 
モルダバイトの苦い夜は更け。

対照的に、グロッシュラーの甘い朝。

 

コハクはいつもと同じ時間に目を覚ました。

しかし、ここはラブホテル。

朝食の準備も、お弁当づくりも、しようがない。

その分ヒスイの寝顔を見ていられるので、嬉しくもあるのだ・・・が。

「う〜ん・・・まいったな」

見事な朝勃ち。ベッドサイドの時計は4時ジャストを指していた。

(時間はまだあるし・・・もう一回したいんだけど・・・)

仰向けで熟睡しているヒスイを覗き込む。

(起こすのは可哀想か)と、思いつつも。

体が勝手に・・・とか、今夜の分の前倒し・・・などと、理由をつけて。

ヒスイの額、瞼、頬と順にキスを落とすコハク。

唇を何度か重ねるうちに、ヒスイも目を覚まし、うっすら瞼を開けた。

「おにいちゃ・・・おはよ・・・」

「おはよう、ヒスイ」

言ってすぐまたキスをして。今度は舌を入れる。

「ん・・・は・・・」

舌で舌を愛撫するうちに、その気になったヒスイも舌を動かし始め。

くちゃくちゃ、絡み合い、もつれて。

「はぁ・・・はぁ・・・ん・・・っ・・・」

息を荒げるヒスイの口の端から、混ざり合った唾液が垂れた。

 

「ふぁ・・・おにいちゃ・・・んッ・・・ぅ」

それから首筋、鎖骨・・・流れるようなキスを受け。

ちゅっ。乳頭にもキス。

続けて乳輪ごとベロリと舐め上げられ、尖り立ったと同時に、口の中へ。

「あ・・・ッ!!んんッ!!」

コハクの口内はとても熱く。ヒスイは早くもその熱の虜になった。

「あ、あッ・・・」

乳首に唾液が滲み込んでくる・・・それがもう快感で。

「はふ・・・」「はぁ・・・」

ヒスイの口から度々吐息が漏れた。

右の乳首も左の乳首も同じように濡らされ、下半身も自然と濡れてくる。

 

 

「・・・いい?」

 

 

濡れた先端をヒスイの膣口に押し当て、コハクが尋ねた。

「うん・・・」

ヒスイが返事をするまでもなく、そこはヒクヒクと動いて、ペニスを歓迎していた。

「好きだよ・・・ヒスイ」

愛の囁きと共に、腰を沈めるコハク。

「おにいちゃ・・・ん・・・く・・・ッ・・・」

朝イチでペニスを挿れられることには、何の抵抗もない。

指も舌も使わず、ペニスのみで少々強引に膣穴を拡張されるのも気持ちの良いもので。

まだ何の刺激も受けていない、まっさらな膣でペニスを味わうのだ。

「は・・・ぁぁんッ・・・んぅッ・・・んんッ・・・」

「よしよし・・・」

しばらくの間、ヒスイにペニスを貪らせ。

それから「少し動かすね」と、コハクが腰を弾ませた。

「んぐ・・・ッ!!」

硬く芯の通ったペニスに、入口から奥まで一直線に貫かれ。

凹と凸の狭間で、ぐちゃりぐちゃりと卑猥な音が鳴り続く。

それはヒスイの膣内がいかに潤っているかを知らせる音でもあった。

 

 

「あッ・・・はッ・・・!!おにいちゃ・・・ッ!!」

 

 

ぎゅっ!コハクの首に両腕を巻き付けるヒスイ。

力を込めて・・・コハクに何かを訴えようとしている。

「ヒスイ?」

「ここ・・・や・・・かがみに・・・うつる・・・」

どうやらヒスイは天井の鏡に抵抗があるらしかった。

両脚を大きく開き、股間にコハクを受け入れ、喘ぎ乱れている様が丸映りなのだ。

「うん。すごく可愛い顔してるでしょ」

ちゅっ。ちゅっ。ヒスイの火照った頬に何度もキスをして、コハクが言った。

「み・・・みえてないくせに・・・っ!」と、益々照れるヒスイ。

「知ってるよ。いつも見てる」

「っ・・・!!」

コハクに甘い言葉をかけられ、顔から火を噴きそうだ。

「じゃあ、ヒスイが上になる?」と、コハク。

「う・・・」(それはそれでちょっと・・・)

上になる=騎乗位だ。ヒスイにとっては恥ずかしい体位で。

滅多にしないものだから、余計そう感じる。

(でもっ・・・!)

天井の鏡に映る、淫乱な自分を見るのも嫌で。

目をつぶれば済むことなのだが、どうしても気になってしまうのだ。

「どうする?」

「・・・上いく」

 

・・・とは言ったものの。騎乗位は、自らペニスを取り込まなければならない。

「これ・・・にがてなんだも・・・」

ヒスイは半ベソで、コハクの股間に跨り。

ペニスを手で持って固定し、膣口を亀頭にくっつけた。

「ん・・・ッ!!」これだけで眩暈がする。

恐る恐る腰を落とすと、ぐちゅ・・・膣口を亀頭が抜け。膣肉にめり込む。

「ひぁ・・・んッ!!」

自分でしたことに驚いて、ビクンとなるヒスイ。

痛みはないが、何ともいえない圧迫感・・・さっきよりペニスが大きく感じるのだ。

「うぅん・・・ッ・・・」

コハクの下腹に両手をついて、挿入半ばで動きが止まる。

が、開いた膣口からペニスへと愛液が伝っていく様子が丸見えで。むしろエロい。

「うッ・・・えッ・・・」

この時ヒスイは、コハクのペニスをとても長いもののように感じていた。

さっきまで全部入っていたものなのに、受け入れられる気がしない。

「大丈夫・・・全部入るよ」

「あ・・・ッ・・・おにい・・・ッ!!」

ヒスイは、下になったコハクに両手を引かれながら、ゆっくりとペニスに膣肉を被せていった。

「んーッ!!んッ!!んんッ!!」

途中、何度も喉を反らせながら、なんとかペニスを膣に納め。

「はぁ・・・ッ、はぁ・・・はぁ・・・」ヒスイはすっかり泣き顔だ。

「は〜い、よくできました」

おいで。と、コハクが両腕を広げると、ヒスイは上体を伏せ、ぴったり密着。

コハクは下からしっかりとヒスイを抱きしめ。

 

 

「ね、ヒスイ、アソコ絞めて」

 

 

と、言おうと思ったが。

(無理だろうなぁ・・・)

血でも飲ませればまた違うのだが。

しきりに恥ずかしがっている今のヒスイには厳しい要求だ。

自分で腰を動かせと言うのも酷な気がして。

コハクはヒスイを片腕に抱き替え、フリーになった方の手でアナルをつついた。

「あん・・・ッ!!」

途端に、膣が締まる。本人の意志とは関係なく、体だけの反応だ。

度々そうやって“膣締め”の訓練をしているのだ。

 

「ん・・・ッ!んぅッ!!」

コハクの指にアナルを弄られ、ヒスイの膣肉がギュウギュウとペニスを締め上げた。

その力はいつもより強く。

「っ・・・」(すごいな・・・こっちが先にイカされそうだ)

込み上げる射精感。コハクは「そろそろイこうか」と、ヒスイを誘って。

お尻を両手で掴み、下から激しく突き上げた。

「おにいちゃ・・・あく・・・ッ!!!」

ずくん。ずくん。深く響く。堪らずヒスイもコハクの上で腰を揺すり始めた。

「あッ!あッ!!あぁぁッ!!あッ!あ!おにぃ・・・ッ!!」

慣れない体位で迎える絶頂。ヒスイは一際よがって。

「やッ・・・!!きもちい・・・よぅ・・・おにいちゃ・・・ぁ・・・!!あ・・・ッ!!!あつぅッ!!」

膣奥に精液を撃ち込まれながら、エクスタシーを極めた。

「あぁッ!!あぁッ!!あッ!!あッ!!あッ!!は・・・・・・」

 

「ヒスイ・・・」

「おにいちゃん・・・」

こうして二人同時に達し、幸せいっぱいのキスをして。

コハクは、空っぽになったペニスをヒスイから引き上げ、閉じた膣口の周りを添え付けのティッシュで拭った。

「ん?」

ゴミ箱に目をやると、未開封のコンドームがちゃっかり捨ててあって。

(ヒスイが捨てたのか)と、こっそり笑う。

(最初から中出しで慣らしたから、当たり前だと思ってるんだろうけど)

ヒスイの行動が嬉しくて堪らない。

 

ラブホテルでの一泊は、素晴らしい愛のメモリアルとなった。

 

 

 

AM 8:20

 

朝食を近くの喫茶店で済ませ、出社。

コハクが一緒なので、ヒスイの身だしなみもバッチリ整っている。

「じゃ、またね!お兄ちゃん!」

何だか今日は仕事がバリバリできそうな気がして、ヒスイは元気よく最上階の社長室へ向かった。

「またね、ヒスイ」コハクは笑顔で手を振り。

「さて、僕も行こうかな」と、腕時計を見た。

「そろそろメノウ様が出社する時間だ」

 

アンデット商会、グロッシュラー支店。1階ホールにて。

 

「お?コハク?」

「おはようございます」

コハクは義父メノウに頭を下げた後、「少しお時間いただけませんか?」と、にこやかに願い出た。

メノウが承諾すると、二人は連れ立って、社内の休憩所へ移動した。

始業時刻を過ぎているので、さすがにそこには誰もいない。

「メノウ様、僕のこと避けてるでしょ」と、話を切り出すコハク。

「あー・・・まあね」

言われてみればそうか、と、メノウは頭を掻き。

「んで?俺に何か用?」

「用という程でもないんですけど。たまには主従水いらずでお話するのもいいかな〜と思いまして」

「主従?へぇ・・・一応俺のことまだ主って認めてんの?」

「そりゃそうですよ」

苦笑するコハクを見て、メノウは更にこう言った。

「はっきり言えば?お前がわざわざこの時期に俺んトコくるなんてさ」

「随分と不老不死を勧められているようですが、どうなのかな〜と。まあ不老不死はあり得ないにしても・・・」

「眷属?」

「そうそう」コハクは笑顔で何度か頷き。

「今すぐ答えを出せと言ってる訳じゃないですよ?ただ、そろそろ考えた方がいい歳でしょ?」

「はっきり言うなぁ・・・お前。ま、言えって言ったの、俺だけどな」

今度はメノウが苦笑いだ。

「これでもわかってるつもりなんですけどね」と、コハク。

「わかってるって?何を?」

 

 

「メノウ様がたまにしか家に帰ってこない理由」

 

 

「・・・・・・」

一瞬、メノウの表情が硬くなった。が、すぐに戻り。

「お前に隠してもしょーがないか」と、また笑った。

 

 

「“こっち”にあんまさ、未練残したくないんだよ」

 

 

メノウは自分から話し出した。

「可愛いすぎんのも困りモンだよな〜」

家にいる時は、孫の面倒を良く見るメノウだが、長く居着くことはなかったのだ。

「ヒスイが子供産んで、その子供がまた子供産んで。次はどんな奴だろって、それが楽しみでさ。いつサンゴんトコいってもいいって思ってたのに、欲が出てきたのもホントだし。お前らと一緒にいればいるほど、そういう気持ちが強くなるモンだから、ちょっとマズイかなって」

「・・・メノウ様」

「ん?」

「メノウ様は何かと“むこう”を意識しているようですけど・・・」

 

 

サンゴ様がいるのは“むこう”じゃない。“こっち”だ。

 

 

「サンゴ様を知るコクヨウや僕。サンゴ様の血を継いだヒスイやトパーズ。皆が生きる世界にこそ、サンゴ様は存在する。と、思いませんか?」

「“こっち”に残りたいと思うのは悪いことじゃない」と、続けてコハクは述べた。

するとメノウはどこか挑戦的な眼差しで。

「種族本来の寿命を無視しても?」と、コハクに問う。

「ははは、それ言われちゃうと耳が痛いんですけど」

反撃を受けたコハクは失笑し。

「一般的に正しいと思われる答えを、あえて選び取る必要はないってことです」そう、答えた。

「何を言ったところで、ヒスイはメノウ様の気持ちを優先するでしょうから。メノウ様をその気にさせときたいんですよ。僕的には、ですけどね」

「あー・・・お前“亡くした”ことないもんな」

家族や友人、自分と深く関わった者を。

「そうですね。だから僕は“亡くす”のが怖いんだと思います」

「怖い?お前が?」

「ええ、まあ」コハクは相槌を打った。

(ここまで言っても、メノウ様の答えは変わらないだろうけど)と、思いながら。

 

「・・・お前ってさ、ホント天使っぽくないよな」と、メノウ。

そういうところが気に入っているのだ。

コハクもそれを褒め言葉と捉え、「ありがとうございます」と、笑った。

「そういえばメノウ様、熾天使の寿命ってご存知ですか?」

「知るワケないじゃん。生粋の熾天使って世界にお前ひとりだろ・・・って・・・マジ?」

「はい。だから僕も知らないんですよね」

コハクは割合暢気な口調で。

「子供が作れるから、不死ではないと思いますけど。ヒスイに会うまで結構無駄に生きてきたんで、もしかしたら明日かもしれないし?」

百年、あるいは千年先かもしれない。

「まあ、こればっかりは考えてもしょうがないんで、とりあえずは・・・」

 

一日一日を後悔のないように、精一杯生きていきたいんです。

 

・・・という、ベタなセリフでまとめた。

コハクが言いたいことは、ただひとつ。

 

 

「という訳で、ヒスイを返して・・・」

 

 

「だ〜め」訴え空しくあっさり却下。

「“憎まれっ子、世に憚る”って、ことわざ知ってるだろ?お前みたいな奴が一番長生きすんだよ」

「はは・・・それじゃあ、憎まれっ子として世に憚ってみるとしますか」

しれっとした顔でコハクが言うと。

「もう充分だろ」と、メノウのツッコミが入る。

「んじゃ俺、そろそろ行くわ。これでも結構忙しいからさ」

 

「戦いの準備で、ですか?」

「祭りの準備で、だよ」

 

 

 

 

こちら、モルダバイト城のとある一室。

 

そこは客間のようなもので、女装少年3人が滞在していた。

「二人ともどうかしたの?」と、スピネル。

ジルとフェンネルの二人は、昨晩から口もきかなければ、目を合わせようとさえしない。

「なんでもねぇよ」ジルは言ったが、何でもないという顔はしていない。

一言でいえば、憔悴。そんな顔だ。

「ちょっと酒が残って、調子わりーだけ。夕べ結構飲んだしよ」

二日酔い、と、言い訳するジル。

スピネルに対しての態度はいつもと変わらなかった。

ただ今日は・・・フェンネルが間に入ってこない。

(スピネル様・・・申し訳ありません)

ジルがスピネルに対し何をしようが見て見ぬフリだ。

と言っても、会話の最中、ジルはスピネルの肩に手をかけたり、顔を近付けたりしたが、それ以上エスカレートはしなかった。

 

昨晩、王妃シトリンの口から新月の戦が告げられ。

「おっと、こーしちゃいらんねぇな」

結果的に自国を裏切り、モルダバイト側につくことになった、グロッシュラー第5王子ジルの心中も複雑だった。

これから自分は何をすべきなのか、計りかねながらもじっとしてはいられず。

ジルは早々に部屋を出ていった。

 

 

「・・・昨日ジルと何かあった?」

 

 

フェンネルに対し、スピネルが優しい口調で尋ねた。

答えを強要したり、急かしたりする気配はない。

まるで、聞かなくとも答えを知っているかのような態度だった。

フェンネルが黙ったままでいると・・・

「自分の国と戦うことになったんだ。ジルも落ち着かないよね」

ジルの深酒をさりげなく弁護するスピネル。

「もしかして・・・口説かれた?」と、くすくす笑いながら言って。

するとフェンネルは。

「違います・・・!!」と、らしからぬ強い口調で否定した。

それから決まりが悪そうに瞳を伏せ。

「彼に少し絡まれて・・・不快な思いをしたものですから・・・」

「でもね、ボク思うんだけど・・・ジルが男のボクにわざわざちょっかいかけるのって、フェンネルの気を引きたいからじゃないかな」

「気を・・・引きたい?」

「うん。フェンネルはジルのことどう思ってる?もし好きなら、ジルについていってもいいんだよ?ボクのことは気にしないで。オニキスもきっとわかって・・・」

「そんな・・・っ!!なぜそんなことをおっしゃるのですか!?私はスピネル様が・・・!!」

日頃無表情なフェンネルが悲しみの色を見せた。これにはスピネルも驚いて。

「え?フェンネル?」

「いえ、何でもありません・・・」

フェンネルは取り乱したことを謝罪し、深く一礼した後、足早に部屋を出ていった。

 

「フェンネル・・・?ボク、いけないこと、言った??」

 

 

 

決戦の日を迎えても、3人が和合することはなく。

ジルとフェンネルに至っては、数年後の再会の時まで、言葉を交わすことすらないのだった。

 

 

 
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