125話 愛に、喘ぐ
赤い屋根の屋敷――夫婦の部屋。
「・・・ん」
ヒスイが静かに目を覚ます。
「あれ?」(家に戻ってる・・・)
きょろきょろと辺りを見回し・・・
(夢???)
軽く首を傾げるが。
「・・・ううん、夢じゃない」
眠気が薄れるにつれ、これまでの出来事が鮮明になってきた。
「どうしよう・・・」(クラスターのこと、お兄ちゃんに話す?話さない?)
選択を迫られ、どくん、ヒスイの胸が鳴る。
焦りと、痛みと・・・様々な感情が交錯し、困惑するヒスイ。
その時。
「ヒスイ」
コハクの声と共に、部屋の扉が開く。
「!!お・・・おにいちゃ・・・」
「遅くなってごめんね」
ベッドで見上げるヒスイに、ちゅっ。ただいまのキスをした。のだが・・・
ヒスイの唇は、明らかに強張っていて。
「・・・ね、ヒスイ。お風呂の前に、もう一回しようか」
「え・・・おにぃ・・・」
「は〜い、万歳して」
コハクの言葉に、反射的に従ってしまうヒスイ。
マーキュリーのパーカーを捲り上げられ、その下に着ていたシャツのボタンを外される・・・
「ちょっ・・・ま・・・」
ベッドの上、抵抗を試みるも。
「!?」
脱がされた服がいつの間にか手首に絡まり、まるで手錠のようにヒスイを拘束していた。
「え・・・あ・・・」
近付くコハクの顔は、いつものように甘く優美なものだったが、どこか切なさを忍ばせていて。
それに気付いた瞬間、キスを受け入れてしまう。
「ん・・・」(おにいちゃ・・・ん・・・)
ちゅっ。ちゅっ。何度か唇を重ねたあと、上唇と下唇の間を、コハクの熱い舌先が抜ける・・・
ヒスイの舌を舐めほぐし、歯列をなぞり、口内のありとあらゆる部分を愛撫する。
「んん・・・」(くちのなか・・・ぜんぶ・・・とけちゃ・・・う)
深く長いキスに委ねた口内・・・そのカタチまで変わってしまいそうだ。
「はぁ・・・ぁ」
コハクと、蕩けた舌を絡め合う度、脳が官能に侵され、思考が奪われてゆく・・・
(どうすれば・・・おにいちゃんをまもれるのか・・・かんがえなきゃ・・・いけない・・・のに・・・)
続きを期待して、ショーツが透けるほど、濡れている。
「はぁっ・・・はぁっ・・・ん・・・」
「まだだよ、ヒスイ」
ちゅくっ、ちゅ、んちゅ・・・
両手で頭を持ち上げられ、終わらないキスをしながら、溢れる涙。
「ん・・・あ・・・」
それが快楽からか、自身への情けなさからか、わからないまま、火照った頬を伝ってゆく・・・
ひとつだけはっきりしているのは。
(私のカラダ・・・気持ちいいこと、覚えすぎた)
「あ・・・はぁ・・・んッ!!おにぃ・・・」
僅かな乳肉を、ふにふにと優しく揉まれ、艶めかしい息を吐くヒスイ。
「あ・・・あんッ!!」
少々強めに摘まれた先端。
そこに触れるか触れないかのところまで舌を伸ばし、コハクが唾液を垂らす、と。
悦び、ぴくぴくとして。一層鮮やかに色付いた。
続けて指先で軽く捩じられ。乳腺に怒涛の快感が流れ込んでくる。
「!?ひぁうん・・・ッ!!」
よほど気持ちが良かったのか、ヒスイは大きく仰け反り。
「あぁぁ・・・ッ!!」
乳首だけ、先に達してしまう。
チェリーレッドの肉粒をビンッ!と勃たせ、弾けて、くたり。
「はっはっ・・・あ・・・ぁ・・・おにいちゃあ・・・」
「くすっ、そんなに気持ち良かった?」
コハクは笑いながら、そこがふたたび勃ち上がるまで、舐め続けた。
「あ゛ッ・・・!う゛ぁッ・・・!」
震えながら尖り立っている左右両方の乳首から、コハクの唾液を滴らせ、ヒスイが喘ぐ。
コハクの愛撫は止んでいたが、乳房には快感が残っていて。
息もできないほど、熱く痺れていた。
「はぁはぁ・・・」
その状態で、するすると脱がされるショーツ。
今度はクリトリスにコハクの唇が触れ。
ちゅ・・・キスのあと、ぬちっ・・・肉芽を押し潰すように舌をあて、包皮から弾き出す。
「――!?んひぃッ!!」
電気ショックに似た快感に、堪らずヒスイが身をよじる、が。
両手が不自由な上、片脚を掴まれているため、逃れることができない。
「あぁッ!!あー・・・!!!」
同じ頃――赤い屋根の屋敷一階では。
双子兄弟が、夕食をとっていた。
先に食べるよう、コハクに言われたのだ。
「コハク・・・帰ってきてから、なんか変じゃね?」と、アイボリー。
「そうかな、いつも通りだと思うけど」マーキュリーは視線を流し、適当に答えた。
「・・・・・・」←アイボリー。
ヒスイがコハクとセックスをしている時間帯は、決まってマーキュリーの機嫌が悪い。
(もう慣れたけどな)
マーキュリーとの会話を諦め、アイボリーが黙々と食べ始めた、その時。
リビングの窓をノックする音が聞こえた。
「・・・ん?オニキス?」
アイボリーが窓を開ける、と。
「ヒスイは――」
「上」アイボリーが二階を指差す。それで充分通じるのだ。
「そうか」
「ヒスイに急用とか?」
「いや・・・」ヒスイに“呼ばれた”気がしたのだ。
「・・・・・・」
幸せなはずの鼓動に、鈍い痛みが混じっている。
ただでさえ、良くない事が起きている最中だ。見過ごす訳にはいかない。
「・・・嫌な予感がしてな」
するとアイボリーも。両腕を組み、言った。
「俺もそー思う。とにかく、あがって待ってろ」
「ああ、そうさせてもらう」