World Joker

124話 甘えるときのように


『教えてくれるまで、絶対離れないんだからぁっ!!』

しっかりと胴体に抱きつく・・・体勢だけでいえば、コハクに甘える時のようだが、今回は事情が違う。
ヒスイはこの言葉通り、トパーズから離れず。

再び、コスモクロア、三階建ての家へ――
※メノウは早々に離脱※
更に、トパーズの部屋までずるずると引き摺られていった。

「ちょっ・・・黙ってないで、何とか言いなさいよぉっ!!」
「離れる気がないなら、このままオレのものになればいい」トパーズはさらりとそう答え。
「そんなこと言ってられるのも、今のうちなんだからぁっ!」・・・と、ムキになったヒスイが吠える。
「トイレにだってついてくしっ!お風呂にだって・・・」
「クク・・・上等だ」むしろ歓迎する、と、意地悪に笑うトパーズだったが・・・
「学校にもついてくよ!?母でーす!って!!」
「・・・・・・」←それは嫌だ。

トパーズは一拍置いてからこう言った。

「・・・あいつはただの新任教師だ。お前には関係ない」
「嘘っ!!じゃあなんで、記憶を封じたりしたの?」
「・・・お前が知って何になる」
「お兄ちゃんに関係あることでしょ!?知りたいに決まってるじゃない!!」

お願い――トパーズの体に顔を埋め、抱きつく両腕に力を込めるヒスイ。
それからしばらくして・・・

「・・・クラスターは“神守りの一族”だ」
「神守り?何それ」
「いいか、心して聞け」
トパーズは詳細をヒスイに話して聞かせた・・・すると。

「――じゃあ、あのひとが、お兄ちゃんを殺そうとしてるの?」

聞き返すヒスイの声は、らしくないほどの冷たさを帯び。
生き生きとしていた表情が、人形のように完璧な美しさで固まる様が窓に映る。
それを見ていたトパーズもまた眉を顰めた。
予想以上の、過剰反応・・・そして。

「そんなの絶対許さない・・・っ!!」

感情を一気に爆発させたヒスイが、腕を解き、走り出す。
目指す先は――クラスター。それだけは明白で。

「!!ちょっ・・・離し・・・」

ヒスイの腕を掴むトパーズ。

「なにす・・・」

そのままヒスイの体を引き戻し、強引にベッドへと連れ込む・・・
そこでヒスイの動きを封じるように、上からのしかかった。

「冷静になれ」
「無理・・・っ!!」

トパーズの説得に耳を貸さず、足をじたばたさせるヒスイだったが、力では敵わず。

「!?やめ・・・」

トパーズに両手首を押さえ込まれ、額にキスを受けた。
次の瞬間、ふっと全身から力が抜ける・・・
ヒスイは意識を失くし、ベッドの上、大人しくなった。

「兄貴――」

このタイミングを待っていたかのように、スピネルが入室する。
ヒスイと共にトパーズを探し、結果こうして出発点である場所へ戻ってきていた。
“神守りの一族”についても、ヒスイの影で聞いていた。
無論、それはトパーズも承知の上だ。

「ママは?」
「眠らせた」
「記憶戻したの、マズかったかな」
「どうせ隠し通せない」

クラスターに、ヒスイの存在を認識されている以上は。
とはいえ、メノウが代理に立ったことで、もう少し時間が稼げると思っていた。
一方、スピネルはベッドで眠るヒスイに寄り添い、乱れた髪を直しながら。

「ママは嘘が下手だから、このまま帰したら、パパにバレるよ。どうする?」



こちら、コハク――
天使の羽根による空路ではなく、裏道をひとり歩いていた。

「・・・・・・」(『見つかる前に見つける』とは言ったものの・・・)

ジンの忠告は正しい。
今、自分が目立つ行動をすれば、シトリンの犠牲が無駄になる。

「そうなると、情報戦・・・か」

かつて天界のあった空を仰ぎ、思い返す・・・遙かな過去。

「厄介な神だったけど――」

(子供を作れる体にしてくれたことだけは、感謝してたんだけどな)

ページのトップへ戻る