World Joker

―外伝―

TEAM ROSE



[ 20 ]

アナルで散々愛し合った後、ヒスイはベッドで眠りについた。
服は全て脱ぎ捨て、裸である。
そんなヒスイの身体を、蒸しタオルで丁寧に拭くコハク。
柑橘系アロマの精油を染み込ませているため、爽やかな香りがする。
「今度はちゃんと、ここでしようね」
人差し指で、軽く割れ目を弄ると。
「んっ・・・ふ・・・」
ヒスイは僅かに唇を震わせたが、そのまま睡眠を続行した。
「じゃあ僕は、シャワーを浴びてくるね」
次に備えて、と、もうひとつ。濡れた下着を洗濯するためだ。

リアルガーは、オニキスが何とかするだろう。
自分はヒスイさえ守れればいい。

それくらいの考えでいるため、気楽なものだ。



コハクが、ヒスイの眠るベッドから離れ、数十分が経った。
ヒスイの眠りは存外浅く。段々と意識が戻ってきていた。
そこに――コンコン!扉を叩く音がして。
「?」起き上がるヒスイ。
「ふぁ〜い・・・」
欠伸を交えながら、返事をし、扉を開ける・・・と。
「・・・・・・」(誰だっけ?)
「リヒターっす」
「あ!」と、そこでヒスイが慌て出す。状況を理解したのだ。
「私っ!“男の娘”だから!!女の子じゃないからっ!!」
「どこがっすか?」
「どこが・・・って・・・あれ?」(裸!?)
幼げな体つきとはいえ、女のものだ。
(お○ん○ん、ないのバレちゃった!?)
前を隠したところで、もう遅い。
「はじめから、姫さんは、姫さんにしか見えませんって」
リヒターは騒ぐこともなく、むしろ人当りのいい笑顔を見せ。
それから小声で、こう切り出した。
「姫さんに話が――あの怖いお兄さんは?」
警戒しつつ、室内を覗き込む。
「お兄ちゃん?たぶんシャワーだと思・・・」
ヒスイが、シャワールームらしき扉に目を遣った、その時。


「ん?」


そこから、コハクが出てきた。洗濯済みの下着を手に。
「・・・・・・」
ヒスイの裸を見られたことに対し、静かにキレるコハク。
危険を察したのか、次の瞬間、リヒターが動いた。
「え!?ちょっ・・・」
ヒスイを抱え上げ、逃走を図ったのだ。人外の者だけあって、かなり素早い。
「!!ヒスイ」
すぐさまコハクが後を追う。
・・・腰にタオルを巻いただけの姿で。
リヒターは、隣の部屋へと走り込み、バルコニーから飛び降りた。
当然、コハクも後に続くが・・・
手摺りから、身を乗り出したところで。
「!?」(落ち・・・)
見た目よりずっと老朽化が進んでいたのか、細工されていたのか、定かではない。
ヒスイに気を取られるあまり、いつもなら気付くことにも気付かなかった。
足場にした手摺りは脆くも崩れ去り、コハクは城の二階から落下した。
バキバキバキ!!と、枝木が盛大に折れる音を聞いたカーネリアンが、狼の姿で駆け付けた。
「何があったんだい!?」
「ヒスイが・・・攫われました。あの、リヒターとかいう奴に」
「何だって!?」
城の裏手は、樹海へと繋がっており。二人の姿はもう見えなかった。
「・・・・・・」←一旦黙るコハク。
この任務に就いてからというもの、ヒスイを逃してばかりいる。
エッチの後のヘマが圧倒的に多いということを、今更ながら痛感する。
カーネリアンも大体の事情を察したようで。
「天下の熾天使サマが、何やってんだかねぇ」と、チクリ、だ。
「敵地でよくまあ、イチャつけるもんだよ」
「はは・・・いい思い出になると思ったんですけどね」
コハクは乾いた笑いで答えた。
「・・・で、どうするつもりだい?その様子じゃ、手は打ってあるんだろ?」
そうでなければ、コハクがこんなに落ち着いている筈がない。
「分身をヒスイの護衛に付けました」
落下と同時に、分身魔法を使ったという。
「ですが――」
浮かない表情で、コハクは話を続けた。
「失敗しました」と、溜息ひとつ。
「失敗?どういうことだい?」
「“不完全”なんです。何があってもヒスイのことは守るでしょうが・・・ちょっと問題が・・・」
とにかく早く追わないと――そう言って、立ち上がるコハクをカーネリアンが引き止めた。
「アンタ、とにかく服着てきな。いくら顔が良くても、それじゃあ変質者だよ」
チームロゼのイメージダウンになりかねない。カーネリアンの言う通りだ。
「ヒスイはアタシが追うよ。この姿なら鼻も利くからね」
「・・・それじゃあ、ひとまずお願いします」
例え全裸でも。ヒスイの後を追いたいのが本音だが。
逸る気持ちを抑え、コハクは着替えに戻った。




一方――

城内を偵察中のオニキス。狙いは無論、この城の主リアルガーだ。が・・・
「・・・・・・」(外が騒がしいな)
途中で足を止め、溜息。
コハクとヒスイのことだ。
また何かトラブルが起きたに違いない。
そう思い、引き返そうとした時だった。
突き当りの壁の角度が不自然なことに気付く。
「・・・・・・」
気配を消しつつ、オニキスが近付くと、そこには隙間があり。
奥は部屋になっていた。いわゆる、壁回転式の隠し部屋というやつだ。
照明はなくとも、差し込む月光で、室内は充分見通せた。
(リアルガーの部屋か?誰もいないようだが・・・)
慎重に立ち入る・・・と。
(!?ヒスイ!?)
モルダバイト城に飾ってある肖像画とは似て異なる、アニメ塗りのヒスイ。
そのポスターが壁に貼られている。
(なぜここにヒスイの絵が・・・)

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