World Joker

―外伝―

TEAM ROSE



[ 22 ]


話せば長くなる――と、前置きし、更に続けるリヒター。
「ウチの主人なんすけどね、まあ、オタクってヤツで。あ、オタクって意味、わかるっすか?」
コハクJr.とヒスイが頷く。
「少し前に主人から命令されたんす。“モルダバイト”っていう、オタクの聖地で、流行してる美少女アニメのグッズを買ってくるように、って」
「・・・・・・」「・・・・・・」
思いがけないところで、モルダバイトの名が挙がったが、コハクJr.もヒスイも素知らぬふりをしていた。
「オタク嫌いのリディには内緒で、ってことで、表向き休暇を二週間ほどいただいたっす」
問題はそこから、と、リヒター。
「実はっすね」
モルダバイトへは行かず。休暇を満喫。
「美少女アニメのグッズは適当に作ったっす」
バレることもなく。主人は大いに気に入ったというが。
そこで、驚くべき偶然が起きていたのだ。
「おれが想像で描いた絵と、姫さんがそっくりで。参りましたわ」
頭を掻きながら、悪びれなくリヒターが笑う。一方で。
「・・・へぇ、そう」
コハクJr.は、心中穏やかではない様子・・・
「主人は“オレの嫁”とか言い出すし、あ、ネクラ系のオタクなんで、もともと引きこもりがちだったんすけど、一段とエスカレートしちゃって」
つまり――と、リヒターがまとめに入る。
主人の居場所を明かしたのは、“外”からの来客が荒治療になればと思ったから。
女子が苦手という話をしたのは、ヒスイを遠ざけるためだった。
ちなみに、情報自体は嘘ではない。
「姫さんに会うと、色々面倒なことになりそうなんすわ」
「ああ、そういうことね」と、コハクJr.
当たり前と言えば当たり前だが、その口調は大人の時と変わらない。
(“オレの嫁”と、ヒスイを混同されたら確かに面倒だ・・・っていうか・・・)
“オレの嫁”の存在が、そもそも許せない。
押収するに限る!が、今はともかく。
「・・・ヒスイ」背後のヒスイに声を掛ける。
「ん?何?お兄ちゃん」
「リアルガーのことはオニキスに任せて、僕等は引き返そう」
「え、でも・・・」と、ヒスイ。
渋ったのには理由があった。
ヒスイ的には、オリジナルのコハクと合流したいのだ。
そうでなければ、わざわざ男の娘(仮)になってまでついてきた意味がない。
・・・のだが。
コハクJr.とリヒターの間で話がまとまってしまった。
リヒターは森の地図をコハクJr.に渡し。
「サーセンね。折角来て貰ったのに」と言うと。
返せる恩なら返しますんで――そう付け加えた。
するとコハクJr.は。
「じゃあ、早速ひとつ。この場所、君の相棒やご主人様は知っているのかな?」
「知らないはずっすよ。どうぞごゆっくり」
「え、ちょっ・・・」
ツリーハウスの扉を開けたリヒターを、引き止めようとするヒスイだったが。
コハクJr.に腕を掴まれる。
「!?」振り向けば、にっこり笑顔で。
「ね、ヒスイ。今の話、聞いてた?」
「あ、うん、聞いてたけど・・・」
少し休んでいこう――コハクJr.が提案し、笑顔のままこう続ける。
「ここは安全だ。待っていれば、じきオリジナルが来るよ」
「!!ホントっ!?」
「うん」
「じゃあ待つ!」
・・・と、その瞬間。
(あ・・・)
安心したせいだろう。
ヒスイの身体に発情の兆候が現れた。
長年培ってきた満月の淫力によるものだ。
満足げに閉じているアナルとは裏腹に、膣が物欲しげに開きかけている。
「っ・・・!!」(おしりでしかしてないから・・・)
本来なら、今頃ノーマルセックスをしている筈なのだ。
必死に隠そうとするヒスイだったが、コハクJr.は無論お見通しで。
「いいよ、しようか」と、ヒスイの前に立つ。
「そっ・・・そういうつもりじゃないからっ!!」
ヒスイは慌てて否定し、二、三歩、後ろに下がった。
その姿はどこまでも可憐で、天使そのもの。
性的なものを全く感じさせない。
コハクはコハクでも、流石にJr.ver.は受け入れ難かった。
全力で拒絶するヒスイに。
コハクJr.は一歩詰め寄り。微笑みを深くした。


「心配しなくても、ちゃんと気持ちよくしてあげるよ」





その頃・・・ヴァンパイアハンター達の詰め所となっているシンナバーの宿場では。
二夜続けての吸血鬼の出現に加え、チームロゼの登場が大きな話題となっていた。
“チームロゼは敵か味方か”物議を醸し。
実際に遭遇したゼノは、得意気に自身の体験を語った。
「ヴァンパイアプリンセス・・・俺の邪眼にしっかりと焼き付いてるぜ。あらゆる女神を凌駕する美貌・・・深淵に佇む魔性に、魂を奪われそうになりながらも、俺は接触を試みた――」
・・・チームメイトの二人が寝込んでいるのをいいことに、都合よく話を盛っていた。


「へー、そんで?」


聞き慣れない声にゼノが振り向く。
そこには、亜麻色の髪をした少年と青年の姿があった。
同じヴァンパイアハンターの制服を着ている。


「面白そうな話、してんじゃん。俺達も混ぜてよ」



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