World Joker

―外伝―

TEAM ROSE



[ 35 ]
見張られた部屋では――


「あ・・・ッ!!あぁッ!!」


ヒスイの生々しい喘ぎが響き渡っていた。
「んぃ・・・ッ!!あ・・・はぁ・・・」
「クク・・・いいぞ、その調子だ」
上気したヒスイの頬に口づけ、トパーズが囁く。

ベッドの中、籠る熱、混ざり合う匂い。

「ッ!!あぁ・・・ッ!!」
トパーズの下、涙目のヒスイが髪を振り乱す。※コハクが編んだ髪は解かれました※
ヒスイの臍から少しばかり下がったところに、トパーズの指が押し込まれている。

――“関元”というツボである。

手のひらに始まり、ありとあらゆるツボをトパーズに刺激されていた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・あッ!!」
痛いやら、気持ちいいやらで、それこそ喘ぎに似た声が出てしまう。
トパーズは、ヒスイの両脚を抱え上げ、“三陰交”と呼ばれる踝近くのツボを中心に責めてから、ヒスイをうつ伏せにした。
「!?ふぁ・・・ッ!!あ・・・!!」
腰あたりのツボをトパーズの指先が探り。
「っあッ!!んッ!!ん――!!!!」
一点を強く押されると、相当効いているのか、ヒスイは枕を噛み締めた。が・・・


「声を殺すな。聞かせてやれ。ホラ」


今度は首の後ろ“風池”というツボを掴み上げられる。
「んあぁぁ・・・ッ!!」
喉を反らせ、ヒスイはどこか艶めかしい声を漏らした。
トパーズは、一族の中でも特に綺麗な指をしている。
ヒスイの素肌の上、その指先をわざと遊ばせて。
ヒスイが戸惑っているところに、絶妙な力加減でキメてくるのだから堪らない。
「あふぁ・・・はぁはぁ・・・」(トパーズ・・・ツボ押し上手過ぎ・・・)
コハクが見たら『お仕置き決定』の悦に入った表情で、ヒスイはぐったり・・・だ。
トパーズに触れられた場所がじんじんと熱く痺れ、身動きが取れない。

閉じられた扉の向こうには、メイドが一人。
他にも、監視カメラの役割を果たす魔道具が室内の装飾品に紛れている。
映像も音声もなかなかのものが撮れているはずだ。

ベッドを軋ませながら、ヒスイの背中に胸元を寄せるトパーズ。
それから耳元で。
「どこまで知ってる?」と、ヒスイに質問した。
「あ・・・えっと・・・あーくんとまーくんが攫われて・・・」
「あいつはどうした?」
「お兄ちゃん?あーくんとまーくんを探してるけど・・・」
「・・・・・・」
トパーズにとって、コハクは天敵以外の何者でもないが、こういう時は使える存在だ。
「・・・・・・」(問題は・・・)
「ね・・・トパ・・・」
「なんだ」
「ジストは?大丈夫なの?人質になってるかもって、オニキスが・・・」
「・・・人質より面倒なことになってる」
「人質より面倒なこと?」
そうヒスイが復唱した時だった。
二人の真上の空間に歪みが生じ・・・


「あーとまーを返せ!!」


グングニルを手にしたジストが突如姿を現した。
「―――!!」
トパーズを狙った鋭い鋒先は神の爪で止めたが。
少しでも反応が遅れていたら、命はなかったであろう一撃だった。
「この・・・馬鹿が・・・」
と、トパーズが力尽くでジストを撥ね退けるも。
ジストはすぐさま体勢を整え、グングニルを構えた。


「ちょっと!!何やってるのよっ!!」


そこに飛び出す、ヒスイ。
「家族の喧嘩は竹刀で、っていう決まりが・・・」
などど、相変わらずズレた対応をみせた。
どういった理由からか現時点ではわからないが、未だかつてなく凶暴化しているジストの前に出ることは、自らを危険に晒す行為でもあった。
「ヒ・・・スイ・・・?」
ジストの視線が瞬時にヒスイへと移り、手を伸ばす・・・
我を忘れた状態でも、どうやらヒスイだけは特別のようだ。
そこでトパーズが。「寄るな」と、一言。


「今のお前にその資格はない」


続けてそう言うと、ジストを蹴り飛ばした。
「え!?ちょっ・・・何して・・・」
状況が呑み込めず混乱するヒスイ。
「あいつは今、マトモじゃない。お前はどっか行っ――」
トパーズがヒスイに気を遣った瞬間。ジストが蹴りを返してきた。
交差させた両腕で受け、トパーズの体が飛ばされることはなかったが、間髪入れず繰り出された拳が銀髪を掠めた。
しかもそこが燃え落ちるという異様な事態だ。
ジストの本気は誰も見たことがないだけに、予測がつかない。
そのうえ――


自分の子供との戦い難さといったら。


舌打ちをしたところで、どうにもならない。
神の爪を伸ばし、盾のようにして、ジストの攻撃を凌ぐトパーズ。
ジストの動きを封じるべく、神魔法を唱え始めた。しかし。
「!?」
ジストも同じ文言を口にする。
まだ教えていない、知る筈もない、神の言語だというのに。タイムラグすら生じない。
ジストの瞳は菫色から翡翠色へ。翡翠色から菫色へ。ゆらゆらと妖しい変化を繰り返している。
「・・・・・・」(トレース能力か)



・・・本当に面倒な奴だ。



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