World Joker/Side-B

65話 エロティックダーリンズ




本の中の監獄。

「おーい。コハク。ヒスイのこと運んでやって」

クーマンが名を呼ぶ・・・と。

「はい」

早すぎる返事と登場。
近くで待機していたとしか思えない。
無論、セレも同行している。

「・・・いつからそこにいたんだよ」
「“クーマン”と、ヒスイに命名されちゃったあたりから、ですかね」

これからは僕もそう呼びます、と、笑うコハク。
ヒスイを引き取ると、早速。

「あ、そうだ。クーマンさん」
「なんだよ」
「“命をかけて愛する”っていうのは、なにも死ぬことだけを指している訳じゃない。生きることも、その意味に含まれています。少なくとも、ヒスイはそのつもりで言ってますから、お忘れなく」
「・・・・・・」
「ところで」と、そこにセレが割って入った。

「まーくん、行かせてしまって良かったのかね」

するとクーマンが。

「腹黒い大人の騙し合いに巻き込むことないだろ」

セレとコハクに背を向け、伸びをした。

「一理あるかな」
と、セレ。
コハクもまた相槌を打ち。
それからこう申し出た。

「クーマンさん。そろそろヒスイに血を飲ませたいんで、ご協力お願いします」
 

ヒスイを連れ、全員、一旦本の外に出る。

「便利ですね、これ」

クーマンから譲り受けたその本の、空白のページを捲ると、コハクはそこに新たな“部屋”を描いた。
赤い屋根の屋敷の、夫婦の寝室だ。
ヒスイが落ち着く環境を、と、配慮してのことだった。
絵心のあるコハクが描いただけあって、完璧に再現されている。
ただし、そこには、男が4人。
クーマン、セレ、コハク、そして・・・コハクの分身、B。
ベッドに横たわるヒスイの脇にずらりと並ぶ。

「お前等二人でヒスイを介抱する気?」
と、クーマン。
吸血行為と直結するセックス込みで言っている。

「「はい」」
コハク本体※以下、コハクAと、コハクBが揃って頷く。
本来、独占欲の強い者同士、ヒスイを巡り、上手くいくはずがないのだが。

「ヒスイに血を与えることも、ヒスイと交わることも、僕にとっては、どちらも同じくらい幸せなことなので ―」

「今回は、折半できました」

コハクAとコハクB、どちらともなくそう語る。

「ヒスイの血液バランスを整えるには、1/3以上の献血が必要ですよね?」

だとすれば、貧血は必至で。

「何かあった時、ヒスイを守れないようじゃ、本末転倒ですから」

コハクAもコハクBも、ヒスイを独り占めしたいのは山々だが、愛すればこその我慢をすると決めたのだ。
セレの“目隠し”をクーマンに頼み。

「「それじゃあ、始めようか」」
 

※性描写カット


 
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