World Joker/Side-B

番外編

残念系ガール

ヒスイの暴走小説。ですが、セレに押され気味です(笑)World Joker/side-B28話まで読破された方向け。


教会敷地内。

「セレ・・・っ!」

走って後を追いかけるヒスイ。
歩幅が違うので、捕まえるのにひと苦労だ。
セレは常に悠々と、それは今日も変わらない。

「ヒスイ、どうしたのかね?」
「はぁはぁ・・・まーくんのことなんだけど」

健康的に息を切らしながら、セレの懐に入る。

「結婚するんでしょ?一度家に挨拶にきて。お兄ちゃんは私が説得するから」
「・・・・・・」
(何週間か会わない内に、随分と飛躍したものだ)

「お誘いは嬉しいのだがね―」
「えっち、したんでしょ?」

セレの言葉を遮り、ヒスイが言った。

「お祝いも兼ねて、クッションあげたら、まーくん喜んでたよ」

※あくまでヒスイのポジティブビジョン。

「そうかね」

と、セレ。
じわじわ笑いが込み上げてくる。

(この様子では、さぞ彼も困惑していることだろう)

そろそろ誤解を解いてやるべきか、とも思ったが。

(なかなか面白い、やめておこう)

しばらくセレが黙っていると。
ヒスイは心配になったのか。

「まーくんと、うまくいってる???」
「さあ、どうだろうね」
「・・・・・・」

セレの返答に呆れるヒスイ。
はぐらかされてばかりで、一向に話が進まない。
極めつけは・・・

「ところで、どこにいるのかね?先程から姿が見えないのだが」

“見えない”即ち“視界に入らない”。
身長差が引き起こす現象だ。
セレの言っていることは嘘ではないが、それは前だけを見ているからで。
下を向けば、ちゃんとヒスイがいる・・・少々意地悪な冗談だ。

「っ〜!!セレのばかぁっ!!」
 

同日・・・赤い屋根の屋敷にて。

「お兄ちゃん、あのね・・・」

コハクのシャツを引っ張り、ヒスイは思い切ってこう告げた。

「私っ!欲しい物があるんだけど!!」
「!!」
(おねだりするヒスイも可愛いぃぃぃ!!!)

ヒスイが自分から物を欲しがるのは珍しいことで・・・コハクのテンションが上がる。

(どんなものでもプレゼントするよ!!)

満面の笑みでヒスイを抱き上げ。

「何が欲しいのかな?」
「えっと・・・理由は言えないんだけど・・・」と、ヒスイ。

「いいよ、今は訊かない」

すると、耳元でコソコソ・・・

「・・・え?」

一旦床に下ろすと、ヒスイはレトロ特集の雑誌を持ってきて、コハクに見せた。

「お兄ちゃん、この乗り物、知ってる?」
「これ・・・ねぇ・・・」

知らない訳ではないが、そういえば、近頃見かけない。しかも。

(これ、僕も乗ったことないんだよね・・・ヒスイがいきなり乗れるとも思えないし・・・転んで怪我でもしたら大変だ・・・しっかり練習させてからじゃないと・・・そもそも、何でこれが欲しいんだ???)

「やっぱり無理かな・・・生産中止って書いてあるし」
「無理じゃないよ」コハクが笑顔で即答する。

「これならすぐ作れるから」
「ホント!?」
「うん」

とはいえ、まずは、材料の調達をしなければならない。

(人手が欲しい・・・と、なると)

「ヒスイ、オニキスのところへ行こうか」


そして、国境の家。

「これなんですけど」

今度はコハクがオニキスに例の雑誌を見せた。

「乗ったことあります?」
「いや、ないな。下町には風習が残っているかもしれんが・・・」
「まあ、これ、王族の乗り物ではないですもんね」

コハクの軽い挑発に。

「天使の乗り物でもないと思うが?」

オニキスが言い返したところで。

「そうですね。僕も乗ったことないんですよ」

自分も同じ、と。
コハクは潔く認め、協力を仰いだ。

「何とかなりませんかね?」
「ふ・・・相変わらず、人を巻き込むのが上手いな」
「それほどでも」

ヒスイのためなら、どんな苦労も厭わない者同士、結託は早い。
コハクとオニキスはしばしの談議ののち、出発した。

『ヒスイに教えられるように、乗り方もマスターしてくるから』

それまでヒスイを預かって欲しいと、スピネルに耳打ちして―。
それから2時間・・・コハクとオニキスはヒスイ所望の品を持ち帰った。
更に、練習させること1時間。
日が暮れかかった頃に・・・

「ちょっといってくるね!!」

と、意気揚々のヒスイ。
それなりに、乗れるようになっていた。

「うん、気をつけて行っておいで」

ひとまず役目を終え、爽やかに送り出すコハク・・・こっそり後を付けるつもりだった、が。

「行かせんぞ。少しくらい自由を与えてやれ」
と、オニキスが肩を掴む。
続けて・・・
「パパ、ボクの淹れた紅茶飲んでいって。パパほどじゃないけど、評判いいんだよ」

スピネルまでもが、コハクを引き止めた。

「そんなに心配しなくても、ママだって子供じゃないんだから」
「・・・・・・」
(やれやれ、やっぱりこうなるか)
 

場面は変わり・・・教会内研究室。

そこには、研究員のアズライトがいた。
休日の空き部屋を、私用で少々拝借していたのだが、窓から見える光景に目を疑う。

「サルファー先輩の・・・お袋さん?」
(えーと、何に乗ってるんですか)

届くはずもない心の声で尋ねるアズライト。
ワールドクラスの美少女が・・・何故か『竹馬』に乗って、敷地を徘徊している。
教会屈指のエクソシストと言われているだけに、怪しさ倍増だ。

「めっさ可愛い顔してるけど・・・」
(残念系だな、あの人・・・)

アズライトは、密かにそう確信した。

「セレぇぇぇっ!!」

ヒスイは、見廻り中のセレを竹馬で追っていた。

「これでもう“見えない”なんて言わせないわよ!!」

間もなく追いつき、得意顔で、並んで歩く。

「竹馬で身長差を埋めるとは・・・考えたね。君は頭がいい」
と、笑うセレ。

「敬意を表して、ゆっくり話を聞こうじゃないか」

そう言って、ぴたりと立ち止まる・・・と。

「え!?ちょっ・・・」
(こんな筈じゃなかったのにぃぃ!!!)

想定外の対応に慌てふためくヒスイ。
竹馬で、その場に留まるというのは・・・初心者にはかなり難しいのだ。
じっくり話をするつもりでいたが、もはやそれどころではない。

「わ・・・わわっ・・・」

トットットッ!
トトトトト!!
ステップがどんどん早くなり・・・

「あー!!!!」

大きく前方へと傾く・・・このままでは、顔面強打、だが。
辛うじてセレに救われた。

「話の続きはどうするかね?」
「・・・今日はもういい。くやしいから帰る」

竹馬を甘く見ていた。
練習不足が否めない。

「待ってなさいよ!必ず乗りこなして―」

「同じ目線に立ってやるんだから!!」

ヒスイは、そう捨て台詞を吐いて。
再び竹馬に乗り、トコトコ去っていった。

「総帥・・・人妻苛めはヤバイんじゃないですか・・・」
「おや、アズ、見ていたのかね」

人妻苛めとは心外だ、と語る一方で。

「実に楽しいね」

「欲しくなってしまうよ」
「・・・・・・」
(総帥、あんたって人は・・・)

視線を辿った先は、残念系竹馬少女。
このまま聞き流してはいけない気がして、息を吸う。

(ここでツッコまなくて、いつツッコむって?)

「・・・そんなに欲しいんですか、竹馬が」

すると、待っていたかのようにセレが笑い。
いつもの一言。

「さあ、どうだろうね」



+++END+++


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