World Joker

番外編(お題No.34)

カミングアウト

World Joker107話以降の“コクヨウ×アクアのお話”。

<備考>
コクヨウの状態変化について
第1段階:獣(大型犬)→第2段階:半獣(獣耳と尻尾がある人型)→第3段階:完全なる人型
今回は第1〜第2段階。




コクヨウとアクアの愛の巣は、エクソシスト正員寮、405号室。
そして今、裸の爆乳娘と一匹の獣がベッドの上で向き合っていた。



※性描写カット

 

ピンコーン!チャイムが鳴り。
ピンコン!ピンコン!ピンコン!連射。
挙句にバンッ!扉が蹴り飛ばされた。

「やあ」

この挨拶は、コハクだ。

「お楽しみの邪魔しちゃって悪いんだけど」

コハクは赤ん坊のひとりを前に抱き、もうひとりを背負って。
ヒスイと手を繋いで立っていた。

「急な仕事が入っちゃって、少しの間ヒスイと子供達をお願いできるかな」
「ちょっとぉ〜・・・パパぁ〜・・・」

当然、アクアは不機嫌だったが・・・

「ママぁ〜!いらっしゃ〜い!」

ヒスイを見るとすぐ機嫌は直った。
アクアもまた結構なマザコンだ。

「いいよぉ。ママはぁ、アクアが預かってあげる」
「うん、よろしくね」

こうして。ヒスイと2人の子供が次女アクアに預けられることになった。
産まれたばかりの赤ん坊は双子で、ひとりは金髪、ひとりは銀髪。
2人とも瞳の色は同じ、翡翠色だ。
名前はアイボリーとマーキュリー。
子供達を並べてソファーに寝かせ。

「いい子にしてるんだよ」

ヒスイの頭を撫でて言い聞かせるコハク。

「うん〜・・・」

いつもの如く、ヒスイは眠そうだ。
コハクはヒスイにお別れのキスをして、窓から飛び立っていった。

「ママぁ〜、久しぶりぃ〜」

服を着たあと、改めて、豊満すぎる胸でヒスイを抱擁するアクア・・・

「ママの好きなお菓子、いっぱい作ってあげる〜」

餌付けする気満々である。
ところが。
何気なくヒスイが窓の外に目をやったことで、事態は急変した。

「あっ!!古本市やってる・・・っ!!!」

モルダバイトの古本市は、掘り出し物が多いのだ。
不定期に開催されるため、これは見逃せない。

「私っ!ちょっと行ってくるっ!!」
「え・・・ママぁ〜???」
「あーくんとまーくんはアクアの子分になるんだから!後よろしくね!」

と。
こういう時だけ素早いヒスイ。

「待てコラ!!ここは託児所じゃねぇんだよ!!」

コクヨウの叫びが・・・虚しく消える。
ヒスイの姿はもうない。
自称“子供嫌い”のアクアに託された双子。

「子分て・・・こんなおチビじゃ、使えないじゃん」

母親のヒスイがいなくなれば、やっぱり赤ん坊はぐずる。

「うるさいよぉ、ガキんちょ。泣いたら・・・ヤキ入れるよ?」

と、脅すアクア。
不思議と言葉が通じているようで、ピタリと双子は泣きやんだ。
・・・が、目がうるうる。
姉に空腹を訴えている。

「も〜・・・しょ〜がないなぁ・・・ちょっと待ってなよぉっ」

アクアは、寮の購買に哺乳瓶と粉ミルクを買いに行ってくると言い、キスでコクヨウを人型にしてから、部屋を出ていった。

「おま・・・どーすんだよ!!こいつら・・・」

コクヨウの叫びが・・・虚しく消える。
アクアの姿はもうない。

「・・・・・・」

赤ん坊と残され、どうしていいかわからないコクヨウ。
恐る恐る上から覗き込む・・・気になるのは、銀髪の赤子、マーキュリーだ。
どことなくサンゴに似ている気がした。
顔を寄せ、瞳が紅くないことを確かめると、ホッとして。

「・・・乳くせぇの」

クンクン、臭いを嗅ぐのは、獣の習性だ。

「食っちまうぞ、コラ」

指で頬をつつくと、感じたことのない手触りで。思わず何度もつんつんしてしまう。
それからゴクッ、唾を飲み。
マーキュリーを抱き上げるべく両腕を伸ばす・・・が。

「ただいまぁ〜」
「!!!!!!」

帰ってきたアクアの声に驚き、行き場をなくした両腕が妙な方向に曲がった。

「コクヨ〜?ど〜したの?」
「どうもしねぇよ!!」
「今ぁ、まーくんに触ろうとしてなかったぁ???」
「く・・・首でも締めてやろうかと思ったんだよ!」
「ふぅ〜ん」

ニヤリと笑うアクア。
コクヨウの代わりに、マーキュリーを抱き上げ。
一段と口元を歪ませて、手を離す。当然、落下だ。

「おま・・・っ!!ガキ殺す気か!!?」

コクヨウがスライディングキャッチを決め、難は逃れたが。

「あれぇ?なんで助けるの〜?首絞めて殺すんじゃないのぉ〜?」

と、ひやかされる。
真実をどこまで知っているのか・・・アクアの、鬼畜スマイルが眩しい。

「・・・・・・」
(クッソ!!この女、遊んでやがる!!!)

「あ、そだ。これぇ」

キッチンに立つアクアに投げ渡されたのは、育児玩具“ガラガラ”。
その名の通り、振るとガラガラ音が鳴る。

「購買で見つけて、買ってきたの〜。アクアが小さい頃、よくジス兄が振ってて〜」

昔を思い出して・・・ということらしいが。

「・・・・・・」
(どうしろってんだよ!!!)

こんなものを渡されても困る。
ベビー用品だけあって、何ともファンシーなデザインだ。
コクヨウ的にはかなり抵抗があった。

「アクアがミルク作ってる間、フリフリして、あやしてて〜」
「振るかよ!!」

そう叫んだものの・・・やっぱり双子が気になるコクヨウ。チラチラ横目で見てしまう。
アクアはヒスイより断然手際が良かった。
哺乳瓶の煮沸消毒、ミルクもちゃちゃっと用意して。
手の甲に一滴垂らし、味見も怠らない。

「・・・・・・」

そんなアクアの姿を見ながら、つい。
尻尾で、ガラガラを振るコクヨウ。
すると、双子が笑い出し。
その無邪気な笑い声に、お疲れ気味の心が癒されてゆくのを感じた・・・ところで。

「よっ!」
「!!」

突然声をかけられ。
驚きのあまり、コクヨウはガラガラを放り投げた。

「テメ・・・いきなり出てくんな!!」

と、キレる。
いつから、どこから、見ていたのやら・・・声の主はメノウだった。

「隠すことないじゃん。お前、子供好きだろ」
「!!んなワケあるか!!好きじゃねぇよ!こんな・・・丸くて柔らけぇの」
「素直になれって。俺達、義兄弟じゃん」

と、メノウは今日も明るい。

「うっせぇよ・・・」

コクヨウの態度が悪いのはいつものことなので、気にすることもなく。

「なぁ、訊きたいんだけどさ」

「“銀”の男は同族の女にしか勃たないってホント?」

トパーズもジストも、ヒスイにしか勃たないことはカミングアウトしている。

「・・・だったらどうだってんだよ」

コクヨウも遠回しにではあるが、それを認めた。

「だとしたらさ、お前もうアクアしかいないじゃん」
「・・・・・・」
「子供、欲しいんじゃないの?」
「・・・・・・」
「俺さぁ、親はいないし、兄弟もいない、親戚もいないだろ」

と、メノウ。

「この世界に、俺と繋がりのあるものがひとつもないって思ったら、なんかすっげぇ怖くなって。どうしても、自分の子供が欲しくなった」
「・・・・・・」
「結果的に、それがサンゴを死なせることになったから、弟のお前には謝らないといけないけどさ、でも俺は後悔してないよ」

そう言って、メノウはコクヨウを覗き込んだ。

「んで、お前はどうよ?確かな繋がり、欲しくない?」
「・・・なに言ってんだかわかんねーよ」

と、そっぽを向いて不貞腐れるコクヨウ。
わからないフリをしているだけだ。
メノウは苦笑した。

「ま、お前には親戚いっぱいいるけどな。サンゴのお陰で」

「ん〜?なに?コクヨ〜、子供欲し〜の?」

と、振り向くアクア。
メノウとコクヨウの会話が、キッチンまで丸聞こえだったのだ。

「知るかよ!!!」

コクヨウはやけくそになって叫んだ。

「アクア、子供嫌いだし〜。どうしよっかな〜」

すると、その一言で。
コクヨウの尻尾が、悲しげに折れ曲がった。
幸にも不幸にも、コクヨウの場合、感情がすべて尻尾に現れるのだ。
口で何を言おうと、尻尾が本音をカミングアウト。
周りは皆知っている。

「コクヨウ、子供欲しいと思うよ。だって・・・」

更に、戻ってきたヒスイによって、あっさりカミングアウトされ。

「んなっ・・・!?テメ、何デタラメ言ってんだよっ!!!」

裏返る、コクヨウの声。
恥ずかしい過去をバラされてはなるまいと、ヒスイに飛び掛かる。
しかし、次の瞬間。

「!!!」

コハクにラリアートされ、壁にめり込んだ。

「久しぶりに、調教希望、かな?」

仕事を終えて戻ってきたコハクは、バキバキ拳を鳴らし。

「ヒスイに怪我でもさせたら、どうなるかわかってるよね」
「・・・クソ、この極悪天使が」

唾を吐き、立ち上がるコクヨウ・・・実際に折檻された経験があるので、笑えない。
口では突っ張っていても、尻尾は怯えて。
可哀想な事になっている。その時。

「!!」
(殺気!?)

コハク目掛けて、何かが投げつけられた。
瞬時に身構えたが、よく見るとそれは哺乳瓶。
コハクは2本続けてキャッチした。

「ちょっとぉ〜、パパぁ〜、それ以上コクヨ〜苛めたら許さないからね」

と、アクア。

「ははは!冗談だよ。半分はね」

コハクは笑って誤魔化し。
哺乳瓶をコクヨウに持たせた。

「はい、これ。続きお願いするよ。僕達これからデートしてくるから」

そう言って、ヒスイの手を取り、口づける。
コクヨウはもはや眼中にない。

「なんでオレがやんなきゃなんねぇんだよ!!」

と、怒鳴るコクヨウ。口では反抗するが・・・尻尾はパタパタ喜んでいる。
つまり、そういうことだ。
皆が一斉に笑い、最後にコハクがこう説いた。

「君もそろそろ慣れておいた方がいいよ。来たるべき日のために、ね」

コクヨウが、自分の子供を腕に抱く。
それはたぶん・・・そう遠くない未来の話。

・・・かも?


+++END+++


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