World Joker

107話 女の子、ください。



こちら、先発組。トパーズ&メノウ。
メノウはニヤニヤ笑いながら。

「ず〜いぶんあっさりしてんじゃん?」

と、トパーズを覗き込んだ。

「もっとヒスイにちょっかいかけると思ってたのにさ」

コハクとの大喧嘩を期待していたのだ。ところが。
トパーズはヒスイに指一本触れず、屋敷を後にした。まさに“立つ鳥跡を濁さず”だ。

「案外、すぐ帰ってくる気だったりしてな」

悪戯な、メノウの発言。そこでトパーズが足を止める。

「お?図星?」
「・・・3年だ。3年で戻る」

10年はかかると言われているプロジェクトだが・・・休みなしで働くという。

「おいおい、過労死すんなよ?」
「過労死?してたまるか」

煙草を咥えたトパーズが鼻で笑う。
それから・・・ヒスイの姿を思い浮かべ、言った。

「まだまだ口説き足りない」

何十年かかろうが、口説いて口説いて口説き落としてやる。と、決意を語るトパーズ。

「あはは!いっちょまえに言うようになったなぁ、お前も」

と、メノウが笑い声をあげた。

「ガキ扱いするな、ジジイ」

トパーズはヘッドロックでメノウを捕らえ、デコピン連発。

「あはは!そういうトコがガキだって・・・」

痛くないはずはないのに、メノウは笑っている。
孫とのじゃれ合いが楽しくて仕方がないのだ。

(そろそろ引退しようかと思ってたけど)

トパーズに過労死されても困る。

「ま、俺も協力してやるからさ!旨い飯、食わせてくれよ?」



翌日。赤い屋根の屋敷、リビングにて。

新しいクッションは、心機一転のスカイカラー。
いつも通り、ヒスイはそこで昼寝に勤しんでいた・・・のだが。

「・・・・・・」
(おかしいわね・・・)

なかなか寝付けない。これまで、どんなことがあっても、眠れない日などなかったというのに。

「・・・・・・」
(なんでだろ・・・)

隣が空き過ぎて、なんとなく位置取りがうまくいかないのだ。やたらと寝返りが多くなる。
そんなヒスイを見て。

「そろそろもうひとり・・・」

と、影で呟くコハク。
できれば女の子が欲しい。と、密かに願う。

(責任を感じて欲しくないから、ヒスイには言わないけど)

「男の子は若干リスクが・・・」
(女の子の方が、家庭内が平和な気がする・・・のは僕だけ???)

「ヒスイの妊娠は僕の方である程度コントロールできるけど、性別まではなぁ・・・」

両腕を組み考えるのは・・・男女の産み分けについて、だ。
母体の血液が酸性かアルカリ性か。まずはそこから始まる。
酸性→女の子誕生。アルカリ性→男の子誕生。極端な言い方をすれば、こうなる。※コハク調べ。

「野菜より肉を食べた方が、酸性化して女の子が産まれやすいっていうけど・・・」

ヒスイは徹底したベジタリアン。肉は一切食べない。
つまり。この段階ですでに男の子を産み易い体質と言える。他にも・・・

「歳の差のある夫婦で、夫側が年上だと男の子が産まれ易いとか・・・」

「絶頂してから射精すれば、男の子ができる可能性が高いとか・・・」

諸説は色々あるが、思い当たることばかりで。
これでもかと、男の子が産まれる条件が揃っている。

「う〜ん・・・どうしようかな」

何かしらの手を打つとすれば、セックスの仕方しかない。

「セックス中、ヒスイを興奮させないように・・・」

愛液等の分泌物が増えれば増えるほど膣内はアルカリ化するのだ。

(セックスに時間をかければ、それだけ中がアルカリ性になる・・・その前に出さないと・・・)

ヒスイがイク前に。濡れる前に。浅いところで射精が望ましい。

「・・・って。難しいな・・・」

顎に手をかけ、思案すること、1分。

「よし、こうしよう」

コハクは強く頷き、キッチンからリビングへ。ヒスイを迎えに行った。


ヒスイはうつ伏せで、空色のクッションに顔を埋めていたが、いつもの寝息は聞こえてこない。眠っていないのだ。

「ヒスイ」

コハクが呼ぶと。ヒスイはすぐに体の向きを変えた。

「お兄ちゃん、どうしたの?」

と、ぱっちり目を開ける。
コハクはヒスイに顔を寄せ・・・

「お昼寝の相棒、欲しくない?」
「相棒?それって・・・」
「うん、子供」

そう言ったコハクの顔を、ヒスイはじっと見上げ・・・

「・・・うんっ!欲しい!」

と、抱き付いた。

「じゃあ、先にベッド行ってて」
「うんっ!!」


20分後・・・
子作りエッチを控えたヒスイは早々に服を脱ぎ、裸でコハクを待っていた。

「お待たせ、ヒスイ」
「お・・・おにいっ・・・!?」

ベッドから身を乗り出すヒスイ。そのまま転げ落ちそうな驚きぶりだ。
なんとコハクは・・・女装していた。
シックな黒のドレスを完璧に着こなしている。ロングのカツラを被ったその姿は、女性的で。限りなく麗しく。見慣れているはずのヒスイでもみとれてしまう。

(お兄ちゃん、綺麗・・・シトリンかと思っちゃったけど)

胸に詰め物はしていなかった。

「どうかな?」

女神が如く、ヒスイに微笑みかけるコハク。
女装はあまりしたくないのが本音だが、この際そんなことは言っていられない。

(同性的な外見でヒスイを油断させて・・・隙を見て一気に仕込む!!)

・・・という作戦だった。コハクは本来頭の良い男だが、機転を利かせすぎて完全におかしな方向へいっている。

「すごく似合ってる・・・けど・・・」と、ヒスイ。

(お兄ちゃん・・・何する気だろ???)

油断どころか、すでに警戒している。
本日のエッチテーマをまるっきり理解できないのだ。

「えっと・・・このままえっちするの???」
「うん」

にっこり、有無を言わせない笑顔で、コハクはベッドに乗り上げ。軽々とヒスイを押し倒した。

「お姉ちゃんだと思って、リラックスしてね」

・・・と、コハクは言うが。

「む・・・無理に決まって・・・」

仰向けに倒されたヒスイは少なからず動揺していた。
上半身は美女だが、下半身は野獣。どんなに綺麗な女顔をしていても、男は男だ。

ドレスの下でしっかり勃起している。

(子供作るのに・・・なんでお兄ちゃんがお姉ちゃんになるの???)

女装エッチの意味が、本当にわからない。このシチュエーションはいつにも増して変だ。
戸惑っているヒスイに、ちゅっ。コハクが容赦なくキスを浴びせる。
おでこから、目元、頬、そして首筋。

「あ・・・やぁ・・・」

突然“お姉ちゃん”となったコハクを直視できず、気恥ずかしそうにヒスイが顔を背けても、コハクはキスをやめなかった。
ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。
コハクの唇が触れた場所が、次々と熱を持ってゆく。

「あ・・・だめ・・・おにぃ・・・ん・・・」

コハクはヒスイの頭を両手で持ち上げると、その唇にキスをした。
深く・・・喉の奥まで、舌を落とす。

「ん・・・ぁ・・・」

舌を入れられてしまったらもう・・・拒めない。
ふにゅふにゅ、舌で舌を捏ねられ。ヒスイの唇の端から唾液が溢れる。
情熱的なキスに翻弄され、気がつけば両脚の間にコハクを迎え入れていた。

「あ・・・は・・・はぁ・・・」

コハクの肩に掴まりながら、濃厚なキスを続ける。
相手が“お兄ちゃん”でも“お姉ちゃん”でも、ヒスイの体はすっかりその気だ。

「僕が男だということは忘れて・・・」と、コハク。

ヒスイの腰から下をドレスで覆い隠し、膣口に亀頭を密着させる。

(あれ?もうこんなに・・・)

そこはコハクが思った以上に濡れていて。
軽く亀頭で押すと、更に愛液が滲み出てきた。

(間に合うかな)

透き通った愛液の薄膜を亀頭で破り、ヒスイの膣口を拡げるコハク・・・

「んく・・・ッ!!!」

びくん!とするヒスイの体を押さえつけ。

「気のせいだよ。まだ何もしてない」

ペニスに意識が向かないよう、ヒスイの唇を強く吸って。小さな顔を撫でながら、口の中に何度も舌を入れた。

「ッぅ〜・・・・・・!!!」

ヒスイの頭に血が昇る。

(ぜったいうそっ・・・!!)

膣粘膜で感じる熱は間違いなくコハクのものだ。

(おにいちゃんのさきっぽちょっとはいってるもんっ・・・!!)

「うっ・・・う・・・」膣口がヌルッとする。

(なんか・・・おと・・・してる)

耳をすませるまでもなく聞こえる・・・黒の生地で遮られた、その向こう側で。
くちょくちょ・・・亀頭に膣肉がほぐされている音だ。

「あッ・・・うぅぅんッ・・・・おにいちゃ・・・うそ・・・ばっかり・・・はぁ・・・ん・・・」

抗いながらも、感じずにはいられない。

「はぁ・・・あぁッ・・・」
「ヒスイ」

コハクは上品な微笑みを浮かべ、ヒスイを見つめた。
その表情から、下半身の様子は読み取ることができない。

「大丈夫だよ、いい子だね〜・・・」と、コハクはまたヒスイにキスをして。

「ん〜・・・・・・!!!!!」(なにが!?なにがだいじょうぶなの!?)

もがくヒスイ。両脚をじたばたさせると、きゅっきゅっ、膣肉と亀頭が一層擦れ。快感に、襲われる。

「っひ・・・ッ!!おにぃ・・・ん・・・!!」
「ヒスイ・・・じっとして・・・」

コハクがキスで黙らせようとすればするほど、穴まわりがどんどん濡れてくる。

「・・・・・・」
(さっきからずいぶん濡れてるみたいだけど・・・興奮させちゃった・・・かな?)

今では滴り落ちるほどだ。上半身と下半身のギャップが、いつもよりヒスイを興奮させ、かえって仇になっていた。

「あ・・・はぁ・・・はぁはぁ・・・あ・・・んッ」

両脚を開いたまま、ヒスイが息を荒げる。
手前の快感とは裏腹に、膣奥で何かが淀んでいる。

(なんか・・・もやもやする・・・)

それをペニスで掻き散らして貰えたら、どんなに気持ちいいかと思う。
けれども、今日はなぜか亀頭以外のものが入ってこないのだ。

「ヒスイ?」

ヒスイは真っ赤な顔でコハクを睨み、震える唇で訴えた。

「・・・んで、ちょっとだけ・・・なの?こどもつくるって・・・いったのに・・・んッ・・・!!!」

自ら腰を使い、膣肉で亀頭を撫で回す。ぐにゅぐにゅ・・・淫乱な交接で、コハクを誘った。

「も・・・おにいちゃ・・・でもおねえちゃ・・・でもいい・・・から・・・もっとおくのほう・・・さわっ・・・て・・・ほし・・・」

ヒスイからコハクへ。無自覚の言葉責め。

「ヒスイ・・・」
(そんなに可愛い顔して言われたら・・・っ!!!)

作戦放棄で、思いっきり抱いてしまいたくなる。そこでふと我に返り。

「・・・・・・」
(確かにこれは不自然だなぁ・・・)

と、今更ながらに思う。
挿入を控えすぎて、セックスをしている気がしないのだ。ヒスイが怒るのも無理はない。

(やっぱり・・・事前にちゃんと話をしておけば良かったな。うん、僕が悪い)

「ん・・・は・・・おにぃちゃ・・・」

「ヒスイ・・・」

ちゅうちゅう。膣肉が亀頭を吸っている。目にした途端、愛しさ爆発だ。

(こんなになるまでヒスイを我慢させるなんて、何をやってるんだ僕は!!)

 

 

さようなら、女の子。こんにちは、男の子。

 

 

先にヒスイをイカせる、本来のセックススタイルに戻すことにした。
仕切り直すこともできるが、コハクはこのまま子作りすることに決めた。

「お・・・おにいちゃ!?」

カツラを投げ捨て、ドレスを脱いで。 
省いてしまった前戯に戻る。
ちょん、と、舌先でヒスイのクリトリスをつつき、熟れ具合を確かめてから、包皮を剥いて、その実を食する。
こうしたかったのを、コハクも我慢していたのだ。ゆえに、がっつく。

「あんッ・・・あんんッ・・・くぅぅんッ」

膨れたクリトリスにコハクの舌がねっとり巻き付く。
吸われると、堪らず。甘ったるい声が出てしまう。

「ふあッ・・・んッ!!んんッんッ・・・!!」

蕩けて。痺れて。指を咥え、喘ぐヒスイ。カクカク腰が揺れた。

「あ・・・ぁ・・・」

得も言われぬ快感が膣を突き抜けてゆく。
涙腺まで緩んで、涙が溢れ・・・薔薇色に上気した頬を伝った。

「はぁぁぁぁん・・・おにいちゃ・・・おにいちゃ・・・」

ヒスイはひたすらコハクを求め。

「うん、今度はちゃんと入れるからね」

と、コハクが返事をした。

「っひッ・・・!!!」

ずッ・・・ぱんッ!太い針で水風船が割られたかのように。
ペニスの挿入で、どばッ!ヒスイの膣から愛液が大流出する。
当然、中もビチャビチャだ。

「ひッぁ・・・んッ!!」
「ごめんね、ヒスイ。こっちの方が好きだよね」

シーツに両手をついて、コハクが腰を前後する。
ずッずッずッ・・・ヒスイの膣内で激しくペニスが動いた。

「うッ・・・あ!!!!」

突かれると、同時に声が出る。
膣奥と喉奥が直結しているかと思うほど、深くペニスを感じ。

「あ〜・・・あぁッ!!あッ・・・あー・・・!!!」

挿入リズムに合わせて、喘ぎは長くも短くもなった。

「あッあッあッ!!あッ!あッ!!」

コハクの腕に掴まり、背中を反らせるヒスイ。
そうして上を向いた乳首にコハクが口をつける・・・と。

「ッ!!ふぁん・・・ッ!!!」

ヒスイは先に達し。

「おにいちゃ・・・はやく・・・」

受精するため、コハクを急かした。

「うん」

笑顔でコハクが応じ。ペニスが太くなる。
その先端はヒスイの子宮口にぴったりくっついていた。

「今、届けるよ」
「あ〜・・・おにぃ〜・・・んんッ・・・」

精液の注入が始まった。
脈動するペニス。コハクが射精しているのがわかる。

「んッ・・・」
(すご・・・なかまで・・・きそう・・・)

ヒスイの膣内はたちまち熱い精液で溢れ。

「好きだよ、ヒスイ」

それとは別に、コハクの甘い囁きが耳から入ってきた。

「ん・・・」

ヒスイは涙で濡れた銀の睫毛を伏せ。幸せに浸った。
長い射精が終了し。

 

「・・・できた?」

息を切らしながら、ヒスイが尋ねる。
コハクはなんとも愛おし気にヒスイを抱きしめ。百発百中の妊娠予告

「は〜い、できました〜」

こうして、しばらく余韻に浸った後、 コハクがペニスを抜く・・・と。
ヒスイは機嫌が良さそうに、ベッドの上でゴロゴロ転がった。

「くすっ。嬉しそうだね、ヒスイ」
「うん、だって子供産んだら、お兄ちゃん喜んでくれるでしょ?」
「うん?」
(それは確かに喜ぶけど・・・)

子作りは、ヒスイが寂しくないようにと思ってしたことだった。

「お兄ちゃん、もしかして、気付いてないの?」

ヒスイは不思議そうな顔でコハクを見上げ。

「私よりお兄ちゃんの方が、子供欲しがってるんだよ」
「・・・え?僕が?」

ヒスイの指摘に、コハクが瞬きする。

「うん。お兄ちゃん、結構子供好きだもん」

見てればわかるよ。と、ヒスイ。

「そうかな?」
「そうだよ」
「・・・・・・」
(そうか、なるほどね)

コハクは更に数回瞬き。そして、苦笑いで認める。

「うん、まあ・・・ヒスイの次に、だけど」
「お兄ちゃんってば」

笑うヒスイの唇に親指を置くコハク。それからゆっくりと・・・唇を重ねた。

(いいか、男の子でも女の子でも)

性別など、些細なことのように思えてきた。

(僕達の子供だ。産まれたら、愛するに決まってる。そうだ、これからも・・・)

ヒスイと、子供と、楽しく暮らそう。





第2章<終>次ページから新章となります。




→ Side-Bへ(第3章より先にこちらをお勧めします)
→ 第3章へ
→ 後日談へ
→ ―外伝―願わくば、世界の終わり。バーチャル王子の花嫁候補
ページのトップへ戻る