パラレル<先生×生徒シリーズ>

短編(No.03-3)

オニキス×ヒスイ


「う・・・ん」

気が付くとそこはカーテンに囲まれたベッドの上だった。

保健室。

ヒスイの瞳に白い天井と不機嫌なトパーズの顔が映る。

「・・・さっさと服を着ろ。オレは行くぞ」

屋上で脱ぎ捨てた下着と上着が頭上から降ってきた。

「え?トパーズちょっと・・・」

ズキン・・・と、噛まれた首筋が痛む。
ヒスイは傷口を押さえて、トパーズを呼び止めた。

「・・・時間がない。気が向いたら後で治してやる」

次の授業が始まる時間。1分前。

「・・・・・・」

まだ頭がクラクラした。
(・・・もういいや)
ヒスイはサボりの決意を固めた。
(次の授業こそは出ようと思ってたけど)

保険医はいなかった。
トパーズが去った後、救急箱をあさり、絆創膏を入手。
噛み傷をとりあえずそれで隠す。
それから制服を着て一息。

「・・・ヒスイ。生活指導室だ。来い」

間もなくオニキスの声が保健室に響いた。

「オニキス・・・」
「・・・立てるか?保険医が戻る前に移動した方がいい」

ブラックリスト。
午後の授業には殆ど顔を出さない(出せない)ヒスイ。
他の教師からしてみれば、問題児だった。
保険医も当然いい顔はしない。

オニキスに連れられ生活指導室へ。

「・・・ここで休んでいけ」

こちらも職権乱用・・・“生活指導”の名目でヒスイを匿う。

「あの・・・」
「何だ?」
「何も聞かないの?授業をサボった理由とか」

絞られる覚悟はできている。
オニキスの授業には出た試しがなかったのだ。

「あいつらに振り回されているだけだろう?いつものことだ。聞くまでもない」
「オニキス・・・」

良き理解者。ちゃんとわかってくれている。
今更ながらじ〜んと感動。

「・・・これを」
「ん?」

オニキスに手渡された一冊の本。
ヒスイは早速冒頭部分に目を通した。

「あ・・・コレ、面白いかも・・・」

興味を惹かれ、瞳が輝く。

「・・・だろう?」

ヒスイ専用の微笑みを浮かべるオニキス。
それから自分も本を開いて視線を落とした。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

心地よい距離感。
決して遠くなく、だからと言って触れるほど近くもない。
(なんとなくホッとする・・・こういう時間も悪くないわね)

「はじめて会った頃はもっと意地悪だったよね」

しばらくして、ふと、ヒスイがそう口にした。

「・・・あの頃は・・・・若かった」
「くすっ。お互いにね」

かつて夫婦だった思い出に苦笑い。
そして呟く。

「・・・お前は・・・あの頃と少しも変わっていない」

想いは・・・遠く。
なのに今も、胸を焦がす。

「・・・ヒスイ?寝たのか?」

聞き慣れたヒスイの寝息。
椅子に深く腰掛けて俯いている。
膝から滑り落ちそうな本を取り上げて、オニキスは時計を見た。
本日最後の授業が始まる時間。

「・・・まぁ、いいだろう」
(このまま・・・オレの傍で)

「どのみち次はコハクの授業だ」

 
+++END+++

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