世界に春がやってくる

13話 愛情確認SEX

 

「・・・ん」

うっすらと瞳を開けるヒスイ。

裏庭の見慣れた景色。

コハクではない、けれど知っている男の匂いに抱かれて。

(あれ?私・・・寝ちゃった・・・の?)

「そうだ!お兄ちゃんっ!!」

ガンッ!!

慌てて立ち上がり、オニキスの顎に頭突きを決める。

「・・・・・・」

「あ・・・おはよう、オニキス」

「・・・おはよう」

オニキスの朝の挨拶を待ってから・・・

「ごめん・・・痛かった・・・よね?」

「・・・・・・」

「痛い」と口にすることはなかったが、顎を撫でる仕草から痛みのほどは推し量れた。

「・・・そろそろ夜が明ける。行ってこい」

「ん!ありがと!」

オニキスに何度も手を振って走り出す。

 

 

 

“いちばん大切なものを、いちばん大切にする”

 

 

 

(私にはそれしかできないから)

 

 

「お兄ちゃんっ!!」

 

 

 

モルダバイト城下町の閑静な住宅街。

 

庭とテラスが付いた二階建てのコンドミニアム。

「505号室・・・ここね」

(何でこんなところに・・・)

数々の疑問はあれど、そんなものは後回しで。

 

ピンポーン。

「・・・・・・」

チャイムを押して待つ・・・が、返事がない。

ピンポーン。ピンポーン。

「・・・おかしいわね・・・」

 

 

室内のコハク。

 

ピンポーン。

(かまってられるか)

「一刻も早く編み上げて、家へ帰るんだ」

もうクリスマスまで待てない。

とにかく口実があればいいのだ。

思い立ったその日に大量の毛糸を購入し、不眠不休で編んでいた。

ピンポーン。ピンポーン。

「・・・うるさいなぁ・・・今それどころじゃない・・・」

(待っててね、ヒスイ。もうすぐ帰るよ)

 

 

屋外のヒスイ。

 

「ここで間違いないハズなのに・・・」

逸る気持ちを抑え、様子見に裏手へ回る。そこで・・・

「あ・・・」

窓ガラス一枚隔てた先に、最愛の夫の姿。

 

 

「お兄ちゃんっ!!」

庭に面していたのは客間だった。

家具も一通り揃っていて、なかなか快適そうな部屋である。

 

そこに、ベランダからヒスイが転がり込んだ。

 

「ヒ・・・スイ?」

コハクの傍らには毛糸玉がゴロゴロと転がっていた。

驚きで、手に持っていた編み棒をポトリと落とす。

「お・・・おにぃ・・・ちゃ・・・」

「・・・もうすぐクリスマスでしょ?全部編み上がったら帰ろうと思ってたんだけど・・・」

困った様に笑って、ヒスイを見つめる。

「そんな顔しなくても、トパーズの分だってちゃんと・・・」

(ファンシー柄の腹巻きだけど)

「おにいちゃんっ!!」

コハクの言葉を最後まで聞かずに、飛びつくヒスイ。

 

 

 

「ヒスイ・・・っ!!」

愛しい塊を強く、強く、抱きしめて。

「キツイこと言ってごめんね」

すかざす謝る。

ヒスイの髪に顔を埋め、深く・・・香りを吸い込んで。

ぶんぶんとヒスイが頭を振った。

開口一番、謝ろうと決めていたのに、涙が溢れて。

“お兄ちゃん”以外口から出てこない。

「ひっ・・・く」

ヒスイは涙と鼻水の啜り泣き状態だった。

 

 

「・・・好きなんだ」

 

 

コハクの告白。

 

 

「いつも言ってるけどね」

腕の中でこくこくとヒスイが頷いた。

「う゛〜・・・っ・・・おにいちゃぁ・・・」

「よしよし・・・大丈夫だよ」

甘い声でヒスイをあやす。

「・・・ヒスイがトパーズを想う気持ちも全部まとめて愛すから」

 

 

一息に告げる・・・愛の言葉。

 

 

一緒に生きていこう。

これからも、ずっと。

 

 

もう離すまい、離れるまいと、抱きしめる腕に力を込める。

「お・・・にいちゃ・・・ごめ・・・なさ・・・」

ふっ・・・うぇぇえん!!

不完全な謝罪の言葉を精一杯吐き出して。

泣きじゃくるヒスイの温もりに。

「好きだよ、ヒスイ」

キスをして・・・もうムラムラと。

13日間大人しくぶら下がっていたものが、収まる場所を思い出して、元気良く勃ち上がった。

 

「・・・いい?」

コクリ。

 

早速服を脱がせにかかる。

仲直りの仕上げはやっぱり、愛情確認SEXで。

 

 

 

ベッドの上。裸で向き合い、唇を舐め合って、キスをする。

お互いの存在を確かめるようにギュウギュウと舌を絡め、いつもの唾液交換。

 

(ああ・・・ヒスイの味・・・)

(ああ・・・おにいちゃんの味・・・)

 

そして、二人の味。

与えて、与えられて。

飲んで、飲まれて。

「んっ・・・」

くちゅ。くちゅ。ぢゅっ・・・

はぁ。はぁ・・・っ。

「ヒスイ・・・」

「おに・・・ちゃん・・・」

二人ともキスだけでイキそうになっている。

触れ合う肌の心地良さ。

これぞ至上の悦びと、寄り添って。

 

 

 

シーツの上に広がる銀髪。

「・・・ずっとね、何て言えばいいのか考えてた」

ヒスイの唇を指でなぞって・・・そこにキス。

「・・・嫌なんだ。この唇に、僕以外が触れるの」

たとえそれが息子でも。

“まとめて愛す”宣言をしたばかりだが、ソレとコレとは話が別なのだ。

「・・・うん。ごめんね、おにいちゃん」

ヒスイの瞳からは、ボロボロと涙。

コハクと再会してから、ずっと泣きっぱなしだった。

「わたしだって・・・おにいちゃんがほかのヒトとキスしたらイヤだもん」

「するわけないよ。僕の“世界”にはヒスイしかいない」

熱くなった唇同士を何度も重ね合わせて・・・

「今回だけ・・・アト残してもいい?」

 

 

 

ヒスイの肌は軽く吸うだけですぐ赤くなる。

「この唇にも、肌にも・・・触れていいのは僕だけ・・・」

独占欲、大爆発。

ヒスイに引かれては困るので普段は堪えているのだが、今回ばかりは我慢できない。

ヒスイは“僕のもの”であると、再認識させてこそ意味があるのだ。

「あ・・・おにいちゃ・・・ん・・・」

首筋、胸元、腕、腹、腿、足の甲まで。

ほとんど間隔を空けず、順番に吸っていく。

「んっ・・・そこは・・・や・・・あぅ・・・」

ジュルッ。

しっとりと濡れて息づく場所もしっかり吸って。

(一滴の愛液だって、他の奴にくれてやるもんか)

「ヒスイは・・・僕のものだ」

「うん・・・わたし・・・は・・・おにいちゃんの・・・もの」

ビクン、ビクンと体を震わせて、ヒスイが熱っぽく繰り返す。

 

 

「あっ・・・あぁ・・・んっ」

久しぶりなので、とにかくヒスイの顔が見たい、キスをしたい。

と、いうことで正常位。

斜め上から腰を振って膣口の上下を強く擦る。

「んっ、ぅ、んっ、あ、あっ、あぅっ!」

ヒスイの太股を大きく開いて身を乗り出し、ペニスを奥深くまで。

「はぁ・・・ん・・おに・・・ちゃ・・・あ・・・」

従順に受け入れるヒスイ。

そこ加える、愛動。

恥骨を押し付け、ヒスイの過敏な小粒、花ビラ・・・全て、円を描くようにしてグリグリ捏ねる。

「あん、あ、はっ、あ・・・」

ヒスイが美しく仰け反って。

「・・・綺麗だよ・・・もっと見せて・・・ヒスイ」

コハクは軽く腰を引いて、ヒスイの入口付近を小刻みに素早く擦り始めた。

「んっ!あ、ああんっ!おに・・・えっ・・・ぅ」

「ヒスイ?」

泣きっぱなしのヒスイがさらに涙の量を増やしたので、ぎょっとして。

「痛いの?」

動きを止めて覗き込む。

 

 

 

「おに・・・ちゃ・・・羽根、見せて・・・」

「羽根?うん」

ヒスイのリクエストに応えて、コハクが熾天使の羽根を広げる。

 

バサッ・・・

 

抜け落ち、降り注ぐ、金色の羽根。

 

ヒスイは黙って瞼を閉じた。

 

 

 

目をつぶっていても、感じる、光。

お兄ちゃんのいない“世界”は寒くて真っ暗だから。

 

私には、この光が必要なんだ。

 

お兄ちゃんの腕の中。

きっと私は、ここでしか生きられない。

 

 

 

「ヒ・・・スイ?」

両手を伸ばしてコハクの頬を包む。

「おにいちゃん・・・好き」

「ヒスイ・・・」

コハクの頬がほんのり赤く染まった。

ヒスイからの告白は、それこそ泣きそうなくらいに嬉しくて。

「・・・も・・・いなくなっちゃ・・・や・・・」

「ごめんね・・・もう・・・どこにもいかないから」

上から覆い被さって、再び強く抱きしめる。

 

 

「好きだよ、ヒスイ。大好きだ」

「くす・・・おにいちゃん、今日何回も言ってるよ」

ヒスイは泣きながら笑った。

「うん・・・でも・・・何回言ったっていいよね?」

「好きだよ」と、コハクがキス。

「わたしも、すき」と、ヒスイがキス。

「好きで好きでどうしようもない」

コハクがまたキスをして。

「愛してるよ、ヒスイ」

「わたしも、あ・・・」

照れ屋なヒスイの口からは滅多に出ない愛の言葉。

一旦詰まるが、意を決して。

「愛してるっ!」

 

 

(かっ・・・可愛いぃぃぃ!!!コレだよ!コレ!!)

 

 

「んっ!あ・・・ん・・・い・・・ぁ」

愛を再認識したところで、ヒスイの下半身に感覚が戻った。

ひときわ敏感になって、内側のコハクを感じる・・・

「お・・・にいちゃん・・・もっと・・・」

「うん」

より深い繋がりを求めて。

ヒスイの膝の裏側に両腕を通し、脚を開かせると、腰が浮いて性器が顕に露出した。

「あ、ああん!」

極めて結合の深い体位。コハクのペニスはヒスイの子宮まで容易に達した。

「う゛っ!んっ・・・!はぁ・・・はぁっ!」

牙を剥いてヒスイが喘ぐ。

愛液同様、快感の証だ。

 

 

もっと、見て、確かめたい。

 

ヒスイが、僕のものになっているところを。

 

 

「・・・感じる?ヒスイ。繋がってるよ」

「う・・・うん・・・ああんっ!ああ!」

いやらしく腰を動かしながら、結合部分と乱れるヒスイをじっくりと鑑賞する。

「も・・・そんなに・・・がまんできな・・・」

「いいよ。いつイッても。そうしたら僕もイクから」

1回で終わらせる気は毛頭ない。

ご無沙汰だった分までとことん愛し合うつもりだ。

 

 

まだまだ・・・鑑賞し足りないのだ。

 

 

足首を掴んで、脚を少しずつ持ち上げていくと、ヒスイの全身と割れ目に埋まる自分のペニスが更によく見えた。

ここは我慢のしどころで、激しく突き上げてしまいたいところを、ゆっくり・・・

「あ・・・ん」

深く、浅く、挿入して鑑賞を続ける。

焦らされて更に溢れるヒスイの愛液で、股間からネチャネチャと湿った音が漏れた。

「はぁっ・・・はぁ・・・おにいちゃぁ・・・」

ペニスを深層まで迎え入れたくて、コハクの腰に巻きつけたヒスイの両脚に力が入る。

「お・・・おに・・・ちゃ」

 

 

ブシュッ。ブチュッ。ブチュ。チュプッ。

 

 

「は・・・っ・・・は・・・」

コハクの息づかいも荒く。

(まずい・・・僕の方が先にイキそ・・・)

勃起も最大。

「あ、あ、あ、んはっ!!」

ヒスイも膨れる部分はすべて膨れて。

二人、汗まみれになりながら、なりふり構わず擦り合う。

 

 

「う・・・っ・・・ヒスイ!」

ついに先端から迸り、殆ど同時にヒスイの奥が痙攣した。

「お・・・にいちゃ・・・んんっ・・・あ・・・んっ」

 

 

 

繋がったまま余韻に浸るひととき。

 

 

熱い飛沫をたっぷりと浴び、満足気なヒスイ。

コハクで満たされたカラダは輝きを増し、色気を漂わせていた。

 

 

 

「ね、ヒスイ・・・」

髪を撫でて額にキス。

「こっちも・・・入れていい?」

コハクの指が後ろの穴に伸びる。

「うん・・・いいよ」

ヒスイが嫌がるので、普段はあまり挿入しない。

とはいえ日々のマッサージは欠かさず、その気になればいつでもアナルセックスできるようにしてあった。

開発の度合いは200%。

膣と同じように抽送しても全く問題ないほどに。

 

幸い天然のローションはたっぷりあった。

股の間に残った愛液を指先で掬い、アナルへ塗りつける。

四つん這いの後背位で、挿入開始。

「ん・・・ぅ」

「いけそう?」

「ん・・・だいじょうぶ・・・」

「痛かったらすぐ言ってね」

「うん」

 

 

「うっ・・・あっ・・・あぁ・・・」

難なく亀頭が沈む。

締め付けが強いのは入口付近だけで、その先は割合広くなっているのだ。

「くっ・・・う・・・」

 

 

(・・・快感を得たくてしてる訳じゃない)

 

確かめたいだけ。

 

(ヒスイがココを僕に許してくれるかどうかが重要で)

「おに・・・ちゃ・・・きもち・・・い?」

「うん・・・僕はね・・・気持ちいいよ」

 

 

だけど、ヒスイはそうじゃない。

 

(痛みを感じることはなくても、快感もないはずだ)

 

 

「すぐ終わるから・・・ちょっとだけ我慢して・・・ね」

「いいよ・・・うっ・・・おにいちゃんが・・・きもち・・・いいなら」

淫らな格好で、シーツに頭を擦りつけ、苦手な違和感に耐えている。

 

 

僕のために。

 

 

(この気持ちが嬉しいから・・・)

不安になると求めてしまう、愛情確認の場所なのだ。

 

「ヒスイ・・・好きだよ」

いつも思っていることなので、自然に口から出てしまう。

 

ちゅくっ・・・

 

「あ・・・」

コハクの指が割れ目に沿って。

優しく撫で回されるのが嬉しい。

「あ・・・はぁ・・・ん」

ヒスイが悦びに身を震わせて喘ぐ。

「ヒスイはこっちでイッてね」

弾む指先で、くちゅくちゅと掻き乱されて。

快感の極み。

「うっ・・・んはっ・・・おにいっ・・・」

涙が溢れる。

「ほらほら。泣かないの」

「おに・・・ちゃ・・・ごめ・・・んね」

「それはもういいから・・・ね?」

 

 

 

「ん・・・ふっ・・・あ・・・あ」

 

 

 

宥める声。交わる音。

ココロもカラダも溶け合って。

 

 

確かめる、愛。

 

 

 

ここはどこだろう。

と、考える余裕ができたのは、朝から晩まで愛し合った後だった。

「おにいちゃん・・・ここって・・・」

「ああ、間借りしてるんだ。誰の家だと思う?」

「全然わかんない」

「くす・・・あとで一緒に挨拶にいこう」

「ん!」

「でもまずは・・・」

顔を見合わせ、声を揃えて。

 

 

「「家へ帰ろう」」

 

 

赤い屋根の屋敷。

14日ぶりの帰宅。

 

 

「おいっ!ジストっ!!起きろっ!!」

乱暴に叩き起こしてくるサルファー。

「むにゃぁ〜・・・何だよぉ〜・・・」

寝坊すけジスト。

トパーズほどではないが朝には弱い。

「父さんが帰ってきた!!」

「ホントっ!?」

眠気ぶっ飛び。ベッドから飛び降り。

「ほらっ!行くぞっ!!早くっ!!」

サルファーが急かす。

その声も表情もはつらつとして。

「おうっ!!」

ジストも元気いっぱい。

 

 

ドダドダドダ・・・!!

 

 

階段を駆け下り、庭で水撒きをしているコハクの元へ。

「おい!父さんに“理由”聞くなよ!?」

空気を読むのが下手なジストに前もって釘を刺すサルファー。

「“なんでいなくなったのか”とか!“どこいってたのか”とか!」

「え?聞いちゃダメなの?」

「当たり前だろっ!大人の事情ってヤツが色々あるんだよ!!」

「大人の事情??なんだかよくわかんないけど・・・わかったっ!!」

 

 

競うように建物を走り出て。

 

 

「父さんっ!!」「父ちゃんっ!!」

エプロン姿のコハクに飛び付く兄弟。

ははは!

二人をしっかりと受け止め、いつもと同じコハクの笑い声。

羽根を広げ、子供達を包み込んで。

「ただいま。心配かけてごめんね」

「ううんっ!」

コハクのエプロンに顔を擦りつけ、サルファーは嬉し泣き。

 

 

(ああ、やっと・・・帰ってきた。“我が家”へ)

 

 

メノウの家であることも忘れ、子供達の熱烈な歓迎に感無量。

 

「父ちゃんっ!おかえりっ!!」

サルファーの分までジストが。

 

「おかえり!」「おかえりっ!」「おかえり〜っ!!」


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