World Joker

20話 くすぐりえっち。


 

 

 

その頃、子供達の部屋では。

「はいっ!終わりっ!」

怪我人スピネルに対し、ジストによる魔法治療が行われていた。

「ありがと、ジスト」

「ううんっ!」

このくらいならいつでも治すよ、と照れて。

ヘヘッ・・・ひとさし指で鼻の下を擦るジストに、スピネルが微笑みかけた。

「もうひとつお願いがあるんだ」

 

 

「え?男の服?」

 

 

「うん」

スピネルはジストに男物の服を借りたいと申し出た。

この船旅には女物の服しか持ってきていなかったのだ。

「なんかあったの?」

「うん、ちょっと」

スピネルが言葉を濁す。

ジストは好奇心こそ旺盛だが、無理矢理聞き出すような事はしない性格だ。

心配そうな顔をしつつも、「こんなのしかないけど・・・」と、シンプルなTシャツとジーンズをスピネルへ差し出した。

「ありがとう。ちょっと借りるね」

スピネルが女物の服を脱ぐ。

「えっ・・・ここで着替えるのっ!?」

「くすっ。男同士だよ?」

「そ、そうだけど・・・」

焦るジスト。くるり、背を向け両手で目を覆う。

「着替えたら言って」

「うん」

なりふり構っていられない状況。

今後を考え、動きやすい服装をする必要があった。

更に、自分への戒めでもある。

(フェンネルを元に戻すまで、女の子の格好はしない)

 

 

「いいよ」

 

スピネルの声を合図にジストが向き直った。

「・・・・・・」

何とコメントすればいいかわからない。

男の格好をすると、スピネルはちゃんと男に見えた。

(不思議だ〜・・・)

ジストが感心していると、そこに。

 

コンコン。ノックの音がして。

 

近くにいたスピネルが扉を開けた。

「ジスト、贈り物だよ。新しい友達から」

「うん?」

部屋脇の壁に立て掛けられていたのは、ロール状に巻かれた、空飛ぶ絨毯。

「あっ!!」

ジストはすっかり諦めていたのだが。

周囲を見回す・・・“お友達”の姿はもうなかった。

「良かったね」と、スピネル。

 

 

「うんっ!テルルっ!!ありがとっ!!」

 

 

 

夫婦の部屋。

 

 

「お兄ちゃんっ!!」

「ヒスイ!?」

驚いたのは、その服。

ヒスイが姿をくらましていたのはほんの10分程だが、破け飛んだ筈のチャイナドレスを着て戻ってきたのだ。

復元魔法が使えるのはメノウかトパーズ・・・ヒスイの報告がなくともすぐにわかった。

「・・・・・・」

「あのね!これトパ・・・」

無邪気に駆け寄ってくるヒスイの顔を両手で包んで持ち上げ。

唇を、重ねる。

再会のキスという生温いものではなく、すぐに舌を入れ、愛しいヒスイの舌を強く絡め取った。

「あ・・・むっ・・・ん・・・おにぃ」

ヒスイはまだコハクに「ごめんなさい」を言っていなかった。

ヒスイの顔を見るなり、謝ったのはコハクの方で。

毎度の事ではあるが、ヒスイ的にはちゃんとした謝罪ができないまま。

「あ・・・ぅ・・・」

舌で舌を舐められ、口内が唾液で溢れる中、一言謝罪を・・・ヒスイが唇を動かしたところで。

「は・・・おにぃ・・・まっ・・・」

「ヒスイ・・・」

突然、コハクの唇が離れた。

 

 

「・・・アップルパイ、食べる?」

 

 

オニキスに先を越された事を聞いた後、ホテルの厨房を借りて作った。

ジストの招集がかかるまでの僅かな時間ではあったが、何とか完成した。

“ごめんね”の気持ちがたくさん詰まった、ヴィーナスの林檎のアップルパイだ。

 

 

「はい、あ〜ん」

「あ〜ん」

 

外はサクサク、中の林檎はとても甘い。

心持ち糖度高めにしてあるので、付け合わせは甘さ控えめのダージリンティだ。

「美味しい?」

尋ねるコハクの眼差しは優しく。

「うんっ!!」

モグモグと口を動かしながらヒスイが頷く。

それから紅茶を一口啜り。

「あの・・・ごめんなさい」

やっとここでヒスイも謝る事ができた。

「すぐに話せば良かったのに、お父さんとこ逃げちゃって・・・」

「いいんだよ」

(男3人に本気で押さえ付けられたら、びっくりするのは当たり前だ)

その直後では逃げたくもなるだろう。

「ごめんね・・・怖い思いさせて」

「ううんっ!お兄ちゃんが謝る事なんてひとつもないよ!」

ムキになって否定するヒスイの頭を撫で、「僕も悪かったんだ」と、コハク。

笑顔でヒスイの口の周りに付いたパイの皮を取って食べた。

ヒスイはアップルパイの味を堪能しつつ、せっせと口へと運び、完食。

紅茶を飲み干し、ごちそうさまを言った後。

「お兄ちゃんっ!」

たたた・・・席を立ったヒスイが小走りに移動、コハクに抱きつき顔をスリスリ。

えっちOKのサインだ。

 

 

「いいの?」

「うんっ!」

 

 

見る度勃起しているコハクのペニス。

亀頭に触れる・・・ヒスイの指先に付着した粘液が短く糸を引いた。

欲情に次ぐ欲情の証だった。

裸で向き合う二人。

ヒスイの体は誰の唇がつけたものかわからないキスマークだらけで。

「お兄ちゃんがスッキリするまでしていいよ」

自分の所有者であるコハクに対し、申し訳なく思う気持ちがあるらしく、瞳を伏せたヒスイが自分から脚を開いた。

「ありがとう。でも・・・」

 

「ヒスイが気持ち良くなるのが先だよ」

 

コハクは、ヒスイの窪みに指を伸ばした・・・が。

(そういえば・・・)

複数に無理矢理指を入れられた場所である事を思い出し、引く。

「おにいちゃん?」

「・・・今日は指やめようね」

ヒスイの陰裂に顔を近付け、代わりに舌を出した。

「あ・・・」

正面から肉の合わせ目を舌先で割り開くと愛液が滴り落ちてきた。

ヒスイも欲情している。

「はッ・・・あ・・・あン」

アップルパイのお礼に、甘酸っぱい蜜をたっぷりとコハクに飲ませた。

膣口からちゅるちゅると吸い上げ、ごくんごくん・・・コハクの喉が鳴って。

 

 

「おにいちゃ・・・おいしい?」

「うん、すごく・・・美味しいよ」

 

 

仰向けに倒れたヒスイ。

コハクは、ヒスイの太ももに添えた両手を前に押した。

ぐぐっ・・・開脚しながらヒスイのお尻が浮き、性愛器官が露わになってゆく。

「ヒスイ・・・」

優雅な笑みを浮かべたコハクの顔が再び接近し、割れ目に貪り付いた。

息もできないほど顔面を密着させる。

「ンっ!!そ・・・んな・・・くっつけ・・・」

自分の中にコハクの鼻先が入っているのがわかる。

「あンッ!うぅんッ!!」

鼻先による中央愛撫、コハクの舌はアナルへと伸び、きゅっと締まった穴を突いた。

「うッ・・・くッ!!こっち・・・で、するの?」

「しないよ」

ただ愛でたいだけ。

挿入のための舌戯とは少し違う。

どこまでも愛したくて。

コハクはヒスイの性器全体を後ろから前へ、べろりと舐め上げた。

「ンンッ!!」

割れ目の先端にキス。

そこには快感の爆弾が埋まっている。

「・・・・・・」

(さて、どうするか。指で剥くのは反則かな・・・)

コハクがそんな事を考えていると。

「お・・・おにいちゃ・・・」

指を使わないコハクに代わり、恐る恐るヒスイの指が伸びてきて、自ら包皮を剥いた。

ヒスイなりに気を遣っての事だった。

「ヒスイ・・・」

その細い指によって捧げられた肉粒をこれでもかと愛し尽くす。

コハクは、充血したヒスイの肉粒を丸ごと口に含み、舌表面に乗せた。

「あッ・・・んッ・・・!!」

ねちゃねちゃと粘つく音と共に、肉粒が上下左右に激しく動く。

ぐにぐにと方々から舌で撫で付けられ、かと思えば、急に尖りを押し込められたりして。

「うッ・・・んんッ!!」

一点の快感にヒスイは脳天から爪先まで支配され・・・

「アッ、アッ、アッ、ア・・・!!」

ぴくんぴくん・・・過剰に反応を示した。

「はぁ・・・ぁ、おにぃちゃ・・・」

あまりの快感に自身の一部を摘出した指先から力が抜ける・・・すかさずコハクは肉粒を唇で挟み込んだ。

噛む気はないが、軽く歯を当て、刺激する。

それから唾液を塗りたくり、膨れ上がった突起を吸った。

「あッ!!んくッ!!」

大声でヒスイが喘ぐ。

肉粒をそのまま飲み込まれてしまうのではないかと思うほど強く吸引され。

膣口から大量の愛液を漏らし、ヒスイは甘えた声を出した。

「ふぇ・・・っ!!おにぃちゃぁ〜・・・」

「よしよし、いい子だね〜・・・」

肉粒責めは一時中断。

コハクはヒスイを褒めながら、包皮に添えられた指先をベトベトになるまで舐めた。

「ヴ〜・・・っ」

「ヒスイ、顔真っ赤・・・」

赤面したヒスイはそれこそ林檎のようで、何とも愛らしい。

コハクは、ヒスイの頬に何度も何度もキスをした。

「ひぁ・・・っ、おにいちゃんってばっ」

 

 

唇が触れる度、ヒスイが幸せそうに笑うから。

 

 

もっと笑わせたくなって。

「ちょっとだけ・・・おしおきしちゃおうかな」

「え?おにぃ・・・あっ!!」

 

 

あは・・・っ!!あははははっ!!

 

 

昔から、おしおきといえばコレだ。

ここぞとばかりに、コハクの器用な指先がヒスイの脇や足の裏をくすぐる。

「あっ・・・やぁんっ!!んふっ!!んん〜っ!!」

嫌がりながらも、ヒスイは笑いが止まらず。

「んっ!あ!はぁ!はぁ!あはっ!!」

犬の降参と同じポーズで、じたばたと動かす脚の付け根は深く潤んでいた。

くすぐっても濡れるのは新発見だ。

(ヒスイ、可愛いぃぃ〜!!!)

笑い悶えるヒスイをくすぐり倒し。

 

全く予期せぬタイミングでにゅるっ・・・コハクのペニスがヒスイの膣内に滑り込み、一気に奥を突いた。すると。

 

「あッ!!」

ビクンッ!!ヒスイの体が大きく跳ねて。

「あぁ〜・・・」半ベソで、痙攣。

それはすぐにコハクのペニスへと伝わった。

(あ、ヒスイ、イッちゃった)

自分がイク事より、ヒスイがイク事の方が優先なので、どうという事はないが。

「ごめんね、驚いた?」

「はぁ。はぁ。もぉ〜・・・おにいちゃんはぁ〜・・・」

強引なくすぐりプレイにヒスイは口を尖らせたが、こういう口調の時は本気で怒っていない。

「ごめん、ごめん」

唇へのキスで機嫌をとるコハク。

は〜・・・っ。ヒスイは大きく息を吐き、言った。

「死ぬかと思ったよ」

「くすぐったくて、かな?」

コハクはすべてお見通し、だ。

んべっ!照れ隠しに舌を出しながらも、ヒスイは正直に答えた。

 

 

「・・・気持ち良くてっ!」

 

 

 

ホテル地下1階。バー。

 

 

「お待たせしました」

太陽がないため時間の感覚が麻痺してきたが、深夜と呼べる時間帯だ。

何をしてきたか一目瞭然の姿でコハクが現れた。

慌ててシャワーを浴びたらしく、髪がまだ濡れている。

「ヒスイは・・・」

「ぐっすり眠ってますよ」

余程懲りたのか、カウンターテーブルの上に並んだグラスの中味は二つとも水だ。

「フェンネル、見せて貰えますか」

「ああ」

オニキスはフェンネルを包んでいた布を広げた。

コハクが上から覗き込む。

「考えられる原因としては、素材の老朽化ですが・・・例えそうだとしても、たかが悪魔一匹に折られるような代物じゃない。フェンネル本人に訊いてみないと何とも・・・」

魔剣の声は所有者にしか聞き取る事ができない。

ましてや折れてしまっては、完全に沈黙の状態だった。

「そうか・・・」

ちなみにコハクの魔剣マジョラムは、赤い屋根の屋敷に置いてきた。

ヒスイの洋服や愛用の品をごっそり持ち込んだので、そこまで手が回らなかったのだ。

「・・・スピネルは大丈夫ですか。あなたに貰った杖だと言って、それは大切にしていた」

「・・・・・・」

それを知っているからこそ、早急に何とかしてやりたいと、壊れたフェンネルを回収したのだが、果たしてそれは正しかったのか、今になって迷う。

(スピネルを部外者にするべきではなかったのかもしれん)

 

 

「スピネルはあなたが思うほど子供ではないと思いますよ」

 

 

オニキスの心中を見透かしたようにコハクが言った。

気付いているのだ。

オニキスも然り。

「・・・スピネル、こっちへ来い」

巧みに物影に身を隠していたスピネル。

オニキスの後をつけてきたのだ。

「二人に話があるんだ」

顔を見せるなり、スピネルはそう訴え。

「どうです?参加を認めては」

コハクはスピネルの味方をした。

女装を封印し、素に戻ったスピネルからは真摯にフェンネルを思う気持ちが感じられた。

「・・・いいだろう」

保護者であるオニキスの許可が下り、スピネルが加わった。

バーには他に客もいない。

「これ」

早速スピネルは先刻入手した名刺を大人二人に見せた。

「・・・・・・」「・・・・・・」

オニキスとコハクが同時に難しい顔をする。

「・・・信用、できるかな?」

「・・・・・・」「・・・・・・」

オニキスにとっても、コハクにとっても、アンデット商会の印象は・・・悪い。

しかも名刺の裏に書かれた住所はこの国のものではなく、船で移動する必要があった。

「知っているか?」

オニキスが横目でコハクに尋ねた。

「誕生して間もない国家なので・・・」

詳しくはわからないが職人の名は知っている、と、コハクが回答した。

「ここへ行くのが一番手っ取り早いとは思いますけど」

「・・・次の行先は決まりだな」

「そうですね」

 

とはいえ。

 

当初の目的をまだ達成していないのだ。

タロットを手に入れなくては、スフェーンに来た意味がない。

「明日にでも決着をつける」

クールにオニキスが言い放つ。

コハクはからかう様に笑って。

「何で稼ぎます?ルーレットですか?それともスロット?」

 

 

「ブラックジャックだ」

 

 

 
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