World Joker

25話 フリータイム



空が紺色に覆われる時間。
コランダムは昼と夜の気温差が激しい国だった。
少し開いた窓から入る風がひんやりと冷たい。

くしゅんっ!

自分のくしゃみで目を覚ましたヒスイ。

「あっ!もうこんな時間!!」

フェンネルを手に、慌ててベッドから飛び降り走る・・・その先で。

ドンッ!

「わぷっ!!あ、お兄ちゃん!!」

思いっきりコハクにぶつかった。

「ヒスイ、迎えにきたよ」

優しげな笑顔でヒスイを腕に抱くコハク・・・同時にベッドが目に入った。

(ちょうどいいな)

考えるのは当然、えっちの続きだ。

「あのね、お兄ちゃんにお願いがあるんだけ・・・ど?」
「うん」

返事をしながら、ひょいとヒスイを抱き上げ、えっち再開の場へ急ぐ。

「お兄ちゃん?話、聞いてる?」
「聞いてるよ」

ベッドに腰掛け、コハクはにこやかに微笑んで言った。

「いくらでも協力するよ。この後・・・ね」

お姫様だっこでヒスイを膝にのせ、ワンピースのスカートを捲る。
レースのショーツに指を入れ、恥丘を経てヒスイの陰部に触れた。
そこは先程ペニスで擦った場所で。
再びその気にさせるのは容易だった。

「お・・・にぃちゃん、まっ・・・」
「今度はちゃんと最後まで・・・ね」
「あっ・・・!」

まるで弦楽器でも弾くように、股間でコハクの指が動く。
応えて、奏でる、愛のメロディー。
布の下で、鳴り響く。

「ほら、もうこんなにくちゅくちゅしてるよ?」
「そう・・・なんだけどっ!んっ!!」

コハクの意地悪な指先が強引にヒスイの内部へ侵入し、本格的に活動を開始した。

「うぅ・・・ん!!おにぃ・・・」

中心部へ強い刺激を受け、堪らずヒスイの腰が反り、両脚が浮く。その時。

「あ・・・」

コトン・・・コロコロ・・・

自発的にヒスイの手を離れ、フェンネルがベッド下に隠れた。

「な・・・」
(ナニ変なトコに気回してるのよっ!!)

気を遣われて。かえってそれが恥ずかしい。

「っ・・・!!」

歯を食いしばり、ヒスイが待ったをかけた。
濡れた粘膜を夢中で弄るコハクの手に自分の手を重ね、懸命に訴える。

「あとで・・・まとめて・・・じゃ・・・だめ?」
「うん?」
(まとめてえっち?)

まとめて、というのもおかしな表現だが、ヒスイらしい。

「くすっ・・・いいよ」

コハクは聞き入れ、ヒスイの蜜壺から指を抜いた。
 
「僕は何をすればいいのかな?」
「はぁ、はぁ、絵を描いて欲しいの」

下半身の疼きが治まらないまま、ヒスイが話す。
フェンネル自身が理想とする姿を描き出し、それを元に変身トレーニングをするという。
良い具合に筆記用具も揃っていたので、早速一枚・・・ベッド下から拾い上げたフェンネルと打ち合わせの末、絵は30分程で完成した。

「ヒスイ、描けたよ」

ところがヒスイは。
うとうと・・・待っている間に眠気が再発し、床の上で膝を抱え、うたた寝の真っ最中。

「今日は暑かったからなぁ・・・」

吸血鬼であるヒスイの疲労は相当なものだと、コハクも理解していた。

「ヒスイ、おいで〜」

コハクが屈んで背中を向けると、むにゃむにゃ・・・寝惚けたヒスイがおぶさった。

「ちゃんとベッドで寝ようね」

店主と取引をしたのだ。
ウィゼとの関係を追及しない代わりに、無料で宿を提供するという。
新しくできたばかりの港前ホテル。今夜はそこで宿泊予定だ。
今日は一度もヒスイの中に出していない。
コハクもまた下半身に熱を残したままだったが、穏やかな口調で。

「今日はおあずけだね」

続きは・・・また明日。

 

翌日。港近くの空き地にて。メンバー全員揃ってのフリータイム。

「世界を進歩させるのは、短い時を生きる“人間”だ」と、トパーズ。
「いい事言うじゃん」

隣にはメノウもいる。
コランダムでの大きな収穫。
それは、人間ならではの交通手段のひとつである乗り物だった。
車輪が二つ、サドルとハンドル・・・ 

「なにそれ?」

と、ヒスイ。

「自転車だ」

素っ気なくトパーズが答えた。
理数系の男、トパーズはこの町が気に入った様子で。
昨日観光の際に、見つけてきたのだそうだ。
何台かモルダバイトに持ち帰るという。
初めての自転車に、子供達・・・主にジストが大はしゃぎ。

「見て見て!兄ちゃんっ!」

銀髪をなびかせ、初乗りの自転車で軽快に走る。

「あっ!ヒスイっ!!わっ!!」

ヒスイの前を通過すると、意識がそちらに集中し、ジストは派手に転倒した。

「大丈夫?」

ヒスイが上から覗き込む。

「全然平気だよっ!!ヒスイも乗ってみる?」
「うんっ!!」

ジストの誘いに大きく頷くヒスイ。

「乗り方はオレが教えるよっ!!」

と、ジストは大はりきり。だが・・・

「馬鹿め。無理に決まってる」

トパーズがせせら笑いで二人を見下した。

「なんでよっ!」
「なんでだよっ!」

ヒスイとジストのコンビが食ってかかる。対して、トパーズは一言。

「お前じゃ足が届かない」
「・・・・・・」

黙り込むヒスイ。
確かに自力でサドルを跨げない・・・屈辱だ。更に。

「は〜い、ヒスイはコッチね」

いきなりコハクに抱っこされ、補助輪付きの子供用自転車に乗せられた。
ちびっ子ヒスイでも、これならば地面にしっかりと両足が届く。

「お兄ちゃんっ!!子供扱いしないで!!」
「まぁ、まぁ、騙されたと思って、漕いでごらん?」
「・・・・・・」

ヒスイが怒った顔でペダルを踏む。と・・・

「わ・・・ぁ・・・すごい」

ゆっくりと、自転車が動き出した。

「ちゃんとヒスイ用も用意してあったんでしょ?」

トパーズの隣に立ち、コハクが言った。

「・・・・・・」

可愛いからって、苛めちゃ駄目だよ?と、無言のトパーズを肘で突いてからかってみたり。
ヒスイと自転車が走る方向に顔を動かしながら、コハクは今日もトパーズの神経を逆撫でした。

はぁ〜っ・・・お馴染みの、溜息。

わざとトパーズを煽るようなコハクの言動に呆れるオニキス。

「まったくあいつは・・・」
「やらせとけよ。構いたいだけなんだから」と、メノウ。
「そうなのか?」
「そうなんじゃん?あいつもホラ、歪んでるから」

あれがコハク流の、親の愛であると説く。

「タチは悪いけどさ、無関心よかずっといいだろ?」
「そうだな」

オニキスも納得し、両腕を組んで笑った。
こちら、運転中のヒスイ。

「ちょっと見た目はカッコ悪いけど、いいじゃない」

歩くよりもずっと早く、風を切って走る自転車。
補助輪の回る音が少々耳に付くが、驚くべきスピードだ。
景色がどんどん過ぎてゆく。

「すごいわ!コレ!」

ヒスイが感動に浸っていると・・・

シャァァァ!!

一台の暴走自転車に呆気なく追い抜かれた。
運転手は、娘のアクアだ。

「・・・・・・」

同じ子供用でも、補助輪ナシ。
しかも立ち漕ぎ・・・優れた運動神経で完璧に乗りこなしていた。

「こんなのカンタンじゃ〜ん」

アクアに鼻で笑われ。
ヒスイの闘争心に火が付いた。

「何よっ!私だってすぐ乗れるようになるんだからぁっ!!」


 
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