World Joker

26話 今日も愛してる



 

 

夜になり、ヒスイは補助輪なし自転車の練習に出た。

 

 

場所は先程の空き地。勿論、コハク同伴で、だ。

ヒスイを転ばせてなるものかと、後ろの荷台をがっちり掴んだコハクが、自転車と共に走り続けていた。

「お兄ちゃん!離して!!」

「ははは・・・まだ危ないよ」

(今離したら・・・)

確実に転ぶ。重心も安定せず、ハンドル捌きもかなりアヤシイ。

「何回か転ばないと乗れるようにならないってお父さんが言ってたもん!」

と、いう事は。

転べば乗れるようになるのだと逆転の発想で、転ぶ気満々のヒスイ。

「いいの!転ぶんだから!」

「それはちょっと・・・」走りながらコハクは苦笑、そして。

 

「ヒスイ、羽根を出してごらん」

「羽根?」

 

コハクに与えられた熾天使の羽根。

小さすぎて空も飛べず、飾りのようなものだが。

「んっ!」軽く力んで解放・・・すると。

「わ・・・」

左右対称の羽根が風を含み、姿勢が安定。ハンドルのブレも減った。

「じゃあ、離すよ?」

コハクが手を離したのは、ほんの十数秒という時間だが、ヒスイには何時間にも感じられた。

「乗れたよ!お兄ちゃん!!」

「は〜い。よくできました」

転倒する前に素早くヒスイを自転車から降ろし、ご褒美のキス。

 

 

「は・・・むっ・・・」

 

 

続けてしっかりと顎を掴み、欲情の舌をヒスイの唇から割り入れた。

“下の口にも同じことがしたいんだ”

セックスの意思表示。前戯のキスだ。

周囲を照らし出す月光から逃れるように、ヒスイを薄暗い草むらへ連れ込む。

息もつけぬ程の濃厚キスを重ね、コハクはヒスイのスカートに手を入れた。

昨日の清楚なワンピースとは一転、本日はミニのフレアスカートだ。

「これは脱いじゃおうね」

「ん・・・」

中はもうだいぶ蒸していて、ヒスイが恥じらう。

愛液の染み広がったショーツをコハクに預け、草の上で四つん這いになり。

雌らしく、性交のための穴を向けてコハクを待った。

入れられるのは、指か、舌か、ペニスか。

緊張とともに、濡れてくる。

ヒスイ的には即ペニスを挿入されても構わないほど欲情していた。

ところが・・・ソコに与えられたのは、指でも舌でもペニスでもなく。

視線、だった。

 

 

「ヒスイのココ、今日もすごくえっちだよ」

 

 

「やっ・・・」

卑猥な言葉で責められたヒスイは耳まで赤くなった。

自分から見えないだけに、被虐的な気分になる。

「おにい・・・ちゃん、なにしてる・・・の?」

「見てるんだ。ヒスイの大事なトコロを」

暗闇の中でもはっきりと目に映る、性の不思議。

肉製の蕾と花びらと芽が、縦一列に並んでいる。

すべて愛しく思うが、やはり一番目を引くのは、自分のペニスを受け入れる場所だ。

 

 

「いつもここに僕のが入ってるんだな、って」

 

 

低く甘い声にヒスイは即反応。

とろ・・・っ。コハクの目の前で淫らな蜜を垂らした。

「くすっ・・・おいで、おいで、って言ってる」

この入口を抜ければ、ペニスに慣れ、程良く熟れた膣肉が迎えてくれる。

コハクのペニスは既に硬く反り返っていたが、下半身の欲望を堪え、まずは口でヒスイの陰裂を探った。

「やだ・・・やめ・・・あっ・・・」

びくんっ!!

コハクの息がかかり、体が前に逃げる。が、すぐに引き戻され。

「まだこれからだよ?」

ヒスイの尻肉とその間にあるものを舐め回すコハク。

「ヴっ・・・ん・・・お・・・にぃ・・・」

くちゅっ・・・ぺちゃぺちゃ・・・

舌で器用に愛液を練り、好みの濃度にしてから啜る。

しばらくそれを続けた後、挿入を控えた膣口に長いキスをして。

下見とばかりに、窄めた舌先を押し込んだ。

「あっ・・・ンッ!!」

入口付近に溜まっていた濃蜜を味わってから、伸ばした舌で濡れ肉を撫でる・・・口でするこの行為が、愛しいヒスイを内側から食べている気になって、興奮する。

ヒスイの味や匂いは、ペニスでは知る事ができないのだ。

そう思うと益々夢中になって。

コハクは、ヒスイの尻溝にぐいぐい顔を押し付け、中に埋めた舌を激しく動かした。

「あくっ・・・!!うぅんッ!!」

食される快感にヒスイが腰を大きく揺らす。

「あ・・・ぅ・・・」

少女の体でも、艶めかしく、欲情の香りを漂わせ。

より強く、より確かな刺激をコハクに求め始めた。

 

(そろそろコッチの出番かな)

 

 

「ん・・・はぁ・・・」

ヒスイの耳に、ベルトを外し、チャックを下ろす音が聞こえた。

それだけで悦びの愛液が溢れる。

お尻を向けたままなので、勃起を目にする事はできないが。

掴まれた腰、割れ目に近づく熱の塊。

それは、燃え盛る薪のようなペニス。

 

 

「入れるよ。ヒスイ、今日も愛してる・・・」

 

 

「あっ・・・・・・あぁぁンッ・・・!!」

満ち満ちた愛のオイルに着火し、昨日から体の奥で燻っていた炎が再燃した。

膣内が一気に燃え上がる。

「はぁ!あ!あぁん!!」

ぐつぐつ、とろとろした中をコハクのペニスが往復し、至るところが擦れ合い、加熱してゆく。

「はふっ!!おにぃ・・・ちゃ・・・あつぅ・・・」

シーツの代わりに草を掴み、悶絶するヒスイ。

「よしよし、大丈夫だよ」

一旦ペニスを外に出し、後ろから優しく髪を撫で、安心させてから。

両手でヒスイの腰を持ち上げ、強く奥まで突き込んだ。

 

 

「あっ!あ!あぁぁぁぁ!!」

 

 

ずぶっ!ずぶっ!と強靭なペニスが正確に的を突いてくる。

「うくっ・・・お・・・おにい・・・ちゃ・・・」

ヒスイはうわごとのようにコハクを呼んで。

奥を突かれる度、アナルがキュッと締まる様を見せた。

「あぁん!あっ!あぅっ!あ・・・あぁ・・・」

精を求める声。応えるようにコハクが腰を打ち付ける。

「あ・・・ん・・・」

ヒスイの全身から力が抜けた。

地面に崩れ落ち、両脚を伸ばす・・・後背位で絶頂を迎えた証だった。

「よしよし、いい子だね〜・・・」

ペニスが抜けないよう、ヒスイに覆い被さり、追ってコハクが精を放った。

ヒスイの上で腰を振り、最後の一滴まで出し尽くす。

 

 

「あ・・・ぁン・・・」

 

 

燃え滾った膣内がコハクの精液で鎮火されてゆく。

「は・・・はぁ・・・・・・」

ヒスイの視界に薄らと現れた、蛍の光。

こんな町にも蛍がいるのかと、ぼんやり思う。

しかしそれが、本当に蛍の光なのか、セックスの快感が見せた幻なのか、ヒスイにはわからなかった。

 

 

 

心地良い疲労感に身を任せ、地面に伏したまま、ぐったりとしているヒスイ。

コハクがシャツを脱いだ。

地面に敷き、その上でヒスイの体を反転させる。

セックス後のご褒美。

「ん〜・・・」

後背位で、性器以外の触れ合いが殆どなかったので、その分のキスと抱擁。

コハクは素肌でしっかりとヒスイの体を抱きしめた。

「おにいちゃん・・・あったかぁい〜・・・」

ぬくもりが伝える愛情。幸せそうにヒスイが笑う。

「こっちも・・・ね?」

「う・・・ん」

仰向けになったヒスイの中心。

くちゅ・・・指を入れるとやっぱりそこは温かく、たっぷりと濡れていて。

恋しくて堪らない。

出てきたばかりだというのに、またすぐ戻りたくなる。

甘いキスを続けながら、コハクは硬直の先をヒスイの入口にあてた。

「もう一回、入れてもいい?」

「うん・・・あ・・・」

ヒスイの返事と同時にググッ・・・ペニスを深く沈め、ふたりはまた、ひとつになった。

 

 

「ふっ・・・ううんっ!!おにぃ・・・あっ・・・あンッ!!」

 

 

 

 

連続で愛し合った後、コハクとヒスイは月明かりの下へ戻った。

 

 

再びコハクが転倒防止係となり、ヒスイを乗せた自転車の、荷台を掴んで、船まで走る。

どこまでも追ってくる月を見上げ、ヒスイが言った。

「明日の今頃は海の上かな」

航海に出て半月・・・子供達の学校の都合もあるので、そろそろ・・・という話になっていた。

「ジスト、夏休みの宿題全然やってないと思うし」

くすくす笑うヒスイ。夏休みが終わりに近付くと、毎年大騒ぎなのだ。

 

夜風に銀の髪が舞う。自転車に乗っているせいか、ヒスイはいつもより少しお喋りになって。

「来年はもっとのんびり航海できるといいね」

事件の連続だった航海を振り返る。

初の航海はアンデット商会のせいで散々な目に遭ったヒスイだが、全く懲りずに。

コハクが「夏休みの恒例行事にしようか」と提案すると、「うんっ!」と大きく頷いた。

「あれ?でも私何か・・・あっ!!」

突然ヒスイが大声をあげた。

ペダル漕ぎを止め、足をバタバタさせたので、降りたいのだと思い、コハクは自転車を傾けた。

足が地面に届くとすぐにヒスイは自転車から離れ。

「お父さんに大事なこと言うの忘れてた!」

「大事なこと?メノウ様に?」

「うん、あのね・・・」

聞き返したコハクの耳元でこっそり明かす。

「ああ、それは言っておいた方がいいね」

 

 

「私っ!いってくるっ!!」

「うん、いっておいで」

 

 

 

 

船上浴室にて。入浴中のメノウ。

 

「お父さんっ!」

いきなり裸の娘が乱入し。

(おいおい、タオルぐらい巻けよ〜・・・)

ヒスイの奔放ぶりには、父親のメノウも驚く。

「頭、洗ってあげる!」

何を思ってか、ヒスイは急にそんな事を言い出して。

「いいって。頭ぐらい自分で・・・」

バシャァ!

言葉半ばでお湯をかけられ。お風呂用腰掛けへ。

「え〜と・・・その」濡れたメノウの髪に触れ、ヒスイは話を切り出そうとしていた。そして。

「どうしてお兄ちゃんを召喚したの?」という質問を口にした。

「ん〜?理由は色々あった気もするけど・・・」

 

 

「ひとりでいるのが嫌になったから」

 

 

メノウは娘の質問にそう答え、今度は逆に何故そんな事を聞くのかと尋ねた。

「全部そこから始まったのかな、って」

「あ〜・・・そうかもなぁ」

コハクとは一番長い付き合いだ、などと言って笑うメノウを、ヒスイは鏡越しに見つめ。

(そうよね・・・)

 

 

お父さんがいなかったら、お兄ちゃんに会えなかった。

お兄ちゃんに会えなかったら、みんな、いない。

 

 

だから、お父さんにはたくさん「ありがとう」を言わなきゃいけないのに。

たった一度の「ありがとう」さえ、言うの忘れてて、ごめんね。

 

 

「お父さん」

「ん〜?」

 

 

「ありがと、船」

 

 

ちゃんとお礼言ってなかった、とヒスイは少し照れた顔で。

「来年も、再来年も、一緒に航海しよ」

瞳を伏せ、後ろからメノウの体に両腕を回した。

「う〜んと長生きしてね。お母さんの生まれ変わりに出会えるくらい」

「んなの無理に決まってんじゃん」メノウが肩を竦める。

「無理じゃない。無理じゃないよ」

ぎゅっ・・・ヒスイの両腕に力が込もると、なんとなく、言葉に詰まって。

「・・・なんだぁ?甘える相手が違うだろ」

「いいの。お父さんだから」

「・・・コハクと2、3発ヤッてきた?」

「うん・・・って、何でその話になるのよ!」

急に話題を変えられたヒスイが慌てる。

「もうっ!お父さんはぁっ!」

 

 

 

 

逆上せてきた、と言って、先に浴室を出たメノウ。

ひとり、甲板に立つ。

冷たい夜風が湯上りの肌に心地良い。

 

 

 

「んな事言われたらなぁ・・・頑張るしかないよな」

 

 

 

出港は夜が明けてからの予定だったが、船はもう動き出していた。

目的地は・・・モルダバイト。

 

 

こうして、ひと夏の航海は終わりを告げた。

 

 

 
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