World Joker

30話 もっと、もっと。


 


 
「ヒスイっ・・・!」

コハクはすぐに追い付き、背中からヒスイを抱きしめた。

「トイレ、いく?」

「ううん」

もぞもぞ・・・コハクの腕の中でヒスイは向きを変え。

ぎゅっ・・・正面からコハクに抱きついた。

(やっぱりさっきのアレ、気にしてるのかな?自分で言って、ドツボってたし・・・)

凹む事があると、甘え癖に輪がかかるヒスイ。

(僕はいつでも大歓迎だけど・・・)

落ち込んだままにはしておけない。

「ヒスイ、あ〜んして」

ヒスイの口へチョコ一粒。

コハクのポケットにはいつも餌付け用のお菓子が入っているのだ。

「ん?もっとかな?」

ペロッ・・・チョコを食べたヒスイがコハクの指を舐めた。

それから、「こっちがいい」と、指先を甘噛み。

「くすっ・・・いいよ」

コハクは人差し指をヒスイの口内に入れた。

「あ・・・ぅ」

奥まで指を伸ばし、歯牙を撫でると、ヒスイは悦んで小さな舌を弾ませた。

ちぅちぅと。コハクの指に吸い付きながら、唾液を溢れさせ、口角からとろとろ滴らせる。

その姿はあどけなくも、淫らで。

(ヒスイ・・・可愛いぃぃぃ!!)

 

 

二人は近くの倉庫に身を隠した。

無論、愛し合うために。

 

 

「見せて、ヒスイ」

「ん・・・」

ショーツを脱がせ、仰向けに寝かせると、ヒスイは大きく足を開き。

いつもより大胆に、弄って欲しい場所をコハクに見せた。

「はぁ・・・おにぃ・・・ちゃん」

甘えたくてしょうがないのだ。

女として、コハクを感じたがっているのが一目でわかった。

「ヒスイ・・・」

早速コハクが手を伸ばす。

「あッ・・・ん!!」

割れ目にコハクの指が触れると、ヒスイは一層頬を赤らめ、悦んだ。

(今日はまた・・・すごいな)

感動の濡れ具合。ほんの少し指先を浸けただけでも、入口の肉がぷちゅぷちゅと吸い付いてくる。

周辺もベタベタになっていた。

すべて、繋がりたい気持ちが具現化したもの・・・激しく求められ、コハクの胸と下半身がキュンとなる。

(ヒスイィ!!愛してる!!甘えっこ万歳!!)

「ん・・・おにいちゃ・・・」

「よしよし、いいこだね〜・・・」

(これなら・・・入るな)

人差し指と中指、同時挿入。

コハクはヒスイの中心に真っ直ぐ2本の指を立てた。

 

「んく・・・ッ!!」

 

一気に滑り込んできたコハクの指に、ペニス並みの反応を示すヒスイ。

「あッ・・・んんッ!!」

濡れ肉がきゅっと締まり、絡み付く。

「嬉しいよ・・・こんなに・・・欲しがってくれて・・・」

震えるヒスイの唇を啄みながら、コハクの息も微かに乱れて。

二本の指を交互に動かし、後に備えて、ヒスイの膣内を丁寧にほぐす。

 

「あ、ァ、あン・・・」

 

中と入口で、ねちゃねちゃ、水音が鳴っている。

指で十分な快感を与えられていたが、本能という大いなる意志が男性器を求め。

ヒスイはコハクの指から逃れるように腰を揺らした。

「は・・・おにぃ・・・ちゃ・・・」

「もう我慢できない?」

コハクは優しい口調でそう尋ね、指の腹でヒスイの膣壁を強く擦った。

「んぁッ・・・あッ・・・は!!」

内側から込み上げる欲情の熱にうなされるヒスイ。

「うく・・・ッ」

何も言えずに、頭を縦に振った。

「じゃあ・・・最後にココ、触らせてね?」

コハクが中指を曲げた。

ヒスイの膣内にある秘密の場所をグッと押す・・・すると。

「あ・・・・・・ッ!!」

コハクが指を抜くのと同時に透明な液体が噴き出した。

それは愛液とは質の違うもので、割合さらっとしている。

「や・・・ぁッ!!」

羞恥と快感でヒスイは今にも泣き出しそうだ。

「大丈夫、綺麗だよ」

ヒスイの瞼にキスをしてから、ズボンを下ろす・・・コハクの屹立したペニスが現れた。

「ふ・・・あッ・・・おにぃ・・・!!」

 

 

ズズッ・・・ペニスの前進する音が膣内に響く。

 

 

「う・・・ッ!!あぁンッ!!」

徹底的な愛撫の直後だ。

ヒスイは蕩けるような快感に見舞われた。

「おっ・・・にぃ・・・ちゃぁ〜・・・あぅ」

膣内に挿入された確かな愛情。

自分の中にコハクが存在している悦び。

意識すると、異様に股間が熱くなる。

「あ、ぁ、あぁッ!!あッ!!あぁぁン!!」

内部で大きな塊が動いている。

ひっきりなしに出入りを繰り返す肉の尖りが、愛しく、気持ち良く。

穴に入ってくる度に、甘えた声を出す。

「うッ・・・ぁ、おにぃ・・・」

 

 

「よしよし・・・もっと、もっと、ね」

 

 

コハクがそう言った途端。

出入りの速度が増し、肉壁への摩擦が一層強くなった。

その快感に身を委ねると、すぐに痙攣が誘発され。

「やッ・・・うッ!!い・・・ッ!!」

まだ終わりたくない、もっともっと繋がっていたい。

ヒスイは堪えに堪え、無我夢中でコハクに縋り付いた。

「あッ!!あッ!!あ!!」

そのまま、半ベソをかきながら突き上げられ・・・いよいよ限界。

牙を剥き出し、新鮮な精液を熱望して喘ぐ。

「お・・・にい・・・ちゃ・・・あぁンッ!!」

「うん」

コハクは頷き、すぐさまヒスイの希望に応えた。

「あッ・・・!!」

ぐぐっ、ヒスイの太股に手をかけ、更に大きく開いて。

深く、腰を落とす。

ヒスイの奥の奥までペニスを沈め、コハクはそこで吐精した。

「あぁ〜・・・はふ・・・っ」

痺れる股間に温かな幸せが広がる。

それはヒスイにとって安心の素でもあった。

 

 

 

カーネリアンってトパーズのお母さんみたいだね。

 

 

 

実の母親でありながら、何とも無責任な発言。

その上、トパーズに対し母親のように接するカーネリアンを羨ましく思ったり。

少々自己嫌悪に陥っていたのだが。

「ヒスイ、元気出た?」

「うんっ!ありがと!お兄ちゃん!」

「どういたしまして」

 

 

 

 

その頃、商会船では。

 

 

「遅かったではないか」

使えない平社員テルルより、営業部長ウィゼへ。

火に油の瞬間だった。

「てめぇ!!先にちゃっかり乗り込んでんじゃねぇ!!」

グロッシュラーをスポンサーにつけるという大義は果たしたが、研究材料の調達には失敗してしまった。苛立ちが募る。

しかしテルルはウィゼの怒声もどこ吹く風で。

ウィゼが手にしているナイフに目を留めた。酷く刃こぼれしている。

「なんじゃ、その様は。誰にやられた」

「てめぇにゃ関係ねぇだろ」と、ウィゼは甲板に唾を吐いた。

「誰にやられた?と、きいておる」

臆することなくテルルが質問を繰り返す。

おまけに無駄な威厳まで発揮し。

「・・・ったく、てめぇは何様だっての」

呆れ果て、怒る気も失せるもウィゼ。

「モルダバイトの前王妃だよ」

「ほう・・・その者は古代闇魔法の使い手であるぞ」

「へっ・・・面白くなってきたぜ」

(あのチビ王妃にゃ、“死んで欲しくない人間”がいる)

問いかけの後、一瞬見せた表情でわかった。

迷いがあるなら、そこを突くまで。

「うまくすりゃ、不老不死の王とセラフィムが釣れる」

(名前は・・・“ヒスイ”だっけか)

 

 

 

また会いたいもんだ。

 

 

 

 

モルダバイト。学園内廊下にて。

 

 

はぁ。はぁ。息を切らし、走るヒスイ。

「ごめんね!遅くなっちゃって!」

元気良く、理事長室に飛び込む。

「・・・何できた」

「?だって、約束したじゃない」

ちゃんと最後まで付き合う、と言ってヒスイはトパーズの傍に寄った。

「次は何する?」

「・・・・・・」

スピネルの予告通りとなった。

10年間行動を共にしたヒスイの事は手に取るようにわかると言っていたが、どうやらそれは本当のようだ。

「トパーズ?」

「・・・・・・」

 

 

ヒスイは約束を守っただけ。

 

 

それなのに、こんなにも愛しくなる。

すべては惚れた弱みとわかっていても、認めるのは悔しくて。

ぺちっ!トパーズはヒスイの額を軽く叩いた。

「いたっ!な、なに??」

「・・・お前の仕事はあれだ」

「・・・何あれ」

「魔道式複写機だ」

当然のことながら、生徒の数だけテスト用紙が必要だ。

教育機関付属の印刷所があるのだが、航海の日程が思いの外ずれ込んでしまい、入稿が間に合わなかった。

そのため今回は魔力で稼働する複写機を使うのだという。

大きな箱型。上部の蓋を開けると、その下は透明なガラス張りになっていた。

中には、細かい部品がいっぱい詰まっている。

ガラス板の上に原稿を置き、蓋を閉め。

「それからこれだ」

使用方法を説明しながら、トパーズがヒスイに持たせたのは。

「え?ビー玉??」

それは魔法で創り出したエネルギーの塊で、機関車を走らせる石炭のようなものらしい。

本体の脇にもうひとつ小さな箱があり、上面に丸い穴が開いている。

ビー玉の投入口だ。

「入れてみろ」

「うん」

早速一個投入。すると。

ピカァー!!ガラス板が光を放ち。

ゴウンゴウン・・・ガーッ!!本体が奇妙な音をたてた。

「わっ!!出てきたよっ!!」

本体側面の取り出し口からシュパシュパ飛び出すテスト用紙。

「1個で100枚は刷れる。動かなくなったら投入しろ」と。

トパーズからビー玉の入った小袋を受け取り、ヒスイは大きく頷いた。

「んっ!!わかった!!」

楽しい作業だった。

が、テスト科目は数学だけではなく。

数を揃えて、運んでの肉体労働。

作業終了する頃には、額に汗が滲んでいた。

「ふぅ・・・結構ハードだわ」

「次はこれだ」

着席すれば書類の山。

急を要するものと、そうでないものに分けるだけでも一苦労だ。

(こんなに仕事があったんじゃ、トパーズも大変ね・・・)

チラッ・・・上目遣いにトパーズを見上げるヒスイ。

ごくっ、息を飲んでから。

 

 

「あ・・・あんまり無理しないで・・・ね?」

 

 

赤面しつつ、カーネリアンを真似て言ってみる。が。

「だったらもっと手伝え」

「・・・・・・」

トパーズのクールな返答。母の想い、届かずだ。

(と、とにかくっ!今はコッチを頑張らなきゃ!!)と、自分を立て直し。

ヒスイは再び書類へ向かった。

そしてついに。

 

 

ZZzzz・・・

 

 

机に突っ伏し、爆睡。

「・・・・・・」

だらけ性のヒスイにしてはよく頑張った方だと思う。

トパーズの指がヒスイの白く柔らかな頬に触れた。

そのまま、寝顔を独占する喜びに浸る・・・が、それも長くは続かず。

コンコン。扉が鳴った。

「・・・・・・」

嫌な予感・・・扉を開けると、やっぱり。

そこには大きなバスケットを携えたコハクが立っていた。

「そろそろヒスイがお腹を空かしている頃かと思って」

夕食の差し入れと称し、強引に割り込むコハク。

「ん?ああ、疲れちゃったみたいだね」

コハクの入場さえ気付かず、睡眠続行のヒスイ。

「お疲れ様」

コハクは、ヒスイの頭をそっと撫で、髪にキスをした。

「後は僕が手伝うよ」

コハクの力を借りるなど、屈辱以外の何事でもなく。

「余計な・・・」

追い返すつもりでトパーズが口を開いた、その時。

コンコン。再び扉が鳴った。

「トパーズ、いるか?」

オニキスの声だ。

扉越し、何か力になれることがあれば、と続けて語る。

「は〜い」トパーズを差し置いて、コハクが扉を開けた。

コハクの出迎えを受けても、オニキスは特に驚く様子もなく。

「スピネルから聞いてな」

“航海のツケが回って仕事が大変みたい”と。

「・・・・・・」

全くその通りで。トパーズは返す言葉もなかった。

しばらくは泊り込みで仕事をする覚悟でいたのだ。

もしもスピネルが・・・ヒスイのヘバるタイミングを見計らって、オニキスを寄越したのだとしたら。また、驚かされる。

 

 

 

男3人と、眠るヒスイ。

 

 

 

「これだけ揃えば何とかなるだろう」オニキスが言って。

「たまには力を合わせてみますか」コハクが笑う。

 

 

 

夜空には、夏の星座。

新学期は目前だ。

 

 

 
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