World Joker

57話 シュガーパーティ



 

 

 
こちら、モルダバイト未開発地区。

 

 

「去勢っ!?」

「そう、去勢」

 

 

恐れおののくジストの前で、コハクはにこやかに言い放った。

その様子をニヤニヤとメノウが傍観している。

「去勢・・・」

呟くジスト。確かに発情しすぎだ。

今だって悶々とヒスイのことを考えているのだ。

が・・・去勢となれば、男として当然抵抗がある。

(でも・・・)

ヒスイと一緒にいたい。

決断までそんなに時間はかからなかった。

去勢をすれば、今まで通りヒスイの息子でいられるのだ。

(ヒスイにエロいことする心配もなくなるし・・・)

 

 

「・・・するよ。去勢」

 

 

「よく言った」と、メノウがジストの背中を叩く。

「わっ・・・?」

なぜかここでもメノウとコハクは笑っていて。

ジストは不思議顔のまま尋ねた。

「ねぇ、じいちゃん」

「ん〜?」

「去勢すんのって、どんくらい時間かかんの?」

もうすっかりジストはその気だった。

「あはは!何?もうヒスイんとこ帰りたい?」

図星だったらしく、カーッ・・・赤くなる。

準備に1〜2日かかると言われ、ガッカリだ。

「・・・で、メノウ様」

ジストに続いてコハクが“工場への地図”についての話を切り出した。

 

「・・・取引ですか」

「そ。“四神”、お前なら知ってるだろ?」

東の青龍・西の白虎・南の朱雀・北の玄武。

一部地方で神として崇められている伝説上の生き物である。

実際に存在するのかさえ定かではない。

「・・・まあ、知らない訳じゃないですけど」

「その細胞をさ、ちょっとずつ取ってきて欲しいワケ」

「・・・・・・」

(面倒なことになったな・・・)

それを何に使うかより、ヒスイを置いていかねばならないことが気がかりだ。

「出張、よろしくな!」

約束してくれるなら地図は先に返してもいい、と、太っ腹にメノウは言った。

「父ちゃん!オレも手伝うよっ!」

どのみち去勢が済むまでは家に帰れない。

「月曜も学校休みだしっ!」

都合の良いことに、月曜日は祝日だった。

「それじゃあ、お願いしようかな」と、コハク。

身の振り方が決まったジストは元気いっぱいに頷いた。

「うんっ!!」

 

 

 

一方こちら、赤い屋根の屋敷。

 

「起きろ」

自室に引き返したトパーズはヒスイを叩き起こし、ポストに投函されていた例のカードを鼻先に突きつけた。

「ん〜・・・?招待状?」

ヒスイはまだ眠そうに目を擦りながらそれを見た。

「ふぁ〜っ・・・なにこれ・・・“シュガーランド”?」

アンデット商会が新たに着手したアミューズメント産業。

その大元とも言えるテーマパークプロジェクトが“シュガーランド”だ。

そこで、オープン前の視察を兼ねたパーティが開かれるらしい。

幹部社員とご家族の皆様・・・ということは、一族すべてが該当し。

遅れて社員契約書にサインをしたオニキスの元にも同じものが届いていると思われる。

招待日付は明日・・・

「じゃあ、お兄ちゃんと一緒に・・・」

「・・・・・・」

ヒスイの『お兄ちゃんと一緒』発言にムッとした顔のトパーズ。

どうしてやろうかと、持ち前の意地悪心が疼いた、その時。

一階玄関に気配を感じた。誰かが帰宅したようだ。

 

その誰かは、コハクだった。

 

「・・・・・・」「・・・・・・」

二階から下りてきたトパーズと見事はち合わせる。

ヒスイの顔を一目・・・と思い、四神狩りに旅立つ前に屋敷へ寄ったのだ。

ジストは“工場への地図”を持って一足先にモルダバイト城へ向かっていた。

「くす・・・ジストかと思った?」と、コハク。

「別に」と、トパーズ。

今日もまた険悪ムードだ。

 

 

「ジストは僕が預かるから」

 

 

これまでのジストの事情を説明し、コハクが言った。

するとトパーズがそれに対抗するように。

 

 

「なら、ヒスイはオレが預かる」

 

 

「ソレ・・・どういう意味?」

怪訝な表情でコハクが聞き返す。

トパーズは例のカードをコハクにも見せた。

「シュガーランド?」

絶好のデートスポットを予感させる響きだ。

「明日、ヒスイも連れていく」

「・・・・・・」

トパーズにヒスイのエスコートを任せてなるものか!!と、思う。

(ギリギリスレスレのところまで手を出すに決まってる!!)

とはいえ、メノウとの約束を破る訳にはいかず。

悔しくも、同行できそうにない。

(なんて切ない・・・)

思わぬところにエッチのツケがきた。嫉妬で気が狂いそうだ。

「・・・で、ヒスイは?」

「オレの部屋」

トパーズは勝ち誇った笑みで言った。

聞くなり、階段を駆け上るコハク・・・危機感が募る。

バンッ!!

トパーズの部屋の扉を蹴破る、と。

(ああ、ヒスイ!!無事で良かった!!)

 

すやすや・・・ヒスイは再び眠りについていた。

 

 

 

いそいそと、眠っているヒスイをトパーズの部屋から運び出し。

「可愛い僕の眠り姫・・・」

夫婦のベッドの上、何度かヒスイの頬を撫でてから、眠りを覚ますキスをする。

「ん・・・おにいちゃぁ・・・」

甘えた声とともに、ヒスイがうっすら瞳を開けた。

「おかえり〜・・・」ふんわりと微笑むヒスイに「ただいま」と、もう一度キス。

そのままヒスイの口内へ舌を差し入れる・・・

「あむ・・・」

ヒスイはすぐそれに吸いついた。

両腕をコハクの首に回し、くちゅくちゅ、夢中で舌を絡ませる。

寝ボケていても、コハクの前ではちゃんと女になるのだ。

「ふ・・・はぁ・・・」

コハクが唇を離すと、混ざり合った唾液が糸を引き。

頬を染めたヒスイが両脚をモゾモゾ動かした。

するとすぐ、コハクの指がヒスイの割れ目をツンとつついて。

「あんっ・・・!」

可愛らしい声で、コハクのシャツを掴むヒスイ。

「あ・・・やぁ・・・」

ショーツ越しのにゅるにゅるとした手触り・・・ヒスイの愛液が染み出してきていた。

「濡れちゃってるね」

確信犯だ。濡れるようなキスをコハクがしているのだ。

「じゃあ、こうされると気持ちいいよね?」

コハクは笑顔でそう言いながら、ヒスイの溝を指先で強く擦った。

「あっ・・・!おにいちゃ・・・・!!」

続けて、下腹部から滑り込ませた指先で濡れた陰部に直に触れ。

同時に、ぴくんっ!ヒスイの体が跳ねた。

「何でイキたい?ヒスイ」

指でも舌でもヒスイの好きなモノでイカせてあげる、と、コハク。

「指がいい?」ぷるぷる、ヒスイは頭を振り、ノーサインを出した。

「舌がいい?」同じくぷるぷる頭を振って。

コハクが自らペニスを示し、「やっぱりコレがいい?」と尋ねると、ヒスイは恥ずかしそうに頷いた。

 

 

あれだけ愛し合った後でもまだ愛し合える。いくらでも愛し合える。

 

 

・・・あまり時間はないのだが。

(せめて一回・・・)

離れ離れになる前に愛の充電をしておきたい。

 

「よしよし、いい子だね〜・・・」

 

ヒスイをあやしながらショーツを脱がせ、膣口を軽く指で慣らしてから、ペニスを通す。

「うっ・・・うぅうんっ!!」

コハクの太さに合わせて拡がる膣肉・・・確固たる挿入感に身震いするヒスイ。

コハクがペニスを動かす度、膣内に満ちた愛液が、くぷんくぷんと幸せそうな音を響かせる。

「あ・・・あぁぁ・・・」

ヒスイは早くもイキたそうに腰をくねらせた、が。

「もうちょっとだけ我慢してね」

「んぁ・・・っ!!」

ヒスイをペニスで激しく擦りながら、唇を重ねるコハク。

奪われた唇を取り戻すかのように、何度も何度も。

「あっ・・・ん・・・」

「ん・・・んぅ・・・」

「んっ・・・は・・・」

「はぁ・・・ん・・・」

「んっ・・・んっ・・・んっ!!」

 

「・・・ヒスイ、聞こえる?」

 

キスでヒスイの声を封じつつ、性器同士が愛し合う音に耳を向けさせる。

コハクはヒスイの両脚を更に大きく開き、その中心でペニスをゆっくりと前後させた。

 

くちゅっ、ぐちゅっ、ぬちゃっ、にゅぷっ・・・

 

「・・・ね?すごくえっちな音、してる」

「っ!!やぁっ・・・」

言葉で責めてから、ぐんっと一気に奥を突く、と。

「ひぁんッ!!」

ヒスイはいとも簡単に達し。

火照った頬、潤んだ瞳でコハクを見た。

「は・・・おにいちゃ・・・きもちい・・・」

「ヒスイ・・・」

ヒスイの言葉が嬉しくて、両腕でしっかりと抱きしめる。

(四神狩りかぁ・・・行きたくないなぁ・・・)

ずっとヒスイとイチャイチャしていたい。

(・・・なんて)

自分の腑抜けっぷりに、笑いが込み上げる。

「・・・あのね、ヒスイ。僕、これからちょっと出かけなきゃいけないんだ」

「え・・・?」

「今夜は帰れないから、アクアと一緒に寝るように・・・んっ?」

(そうだ!アクアだ!!)

自分で言った事にハッとするコハク。

(アクアを味方につければ・・・よしっ!!)

明日の心配は半減できる。素晴らしい閃きだ。

(トパーズの好きにさせてたまるか!!)

「おにいちゃん?」

「ヒスイ」

コハクはヒスイの両手を握り。

 

 

「少し遅れるかもしれないけど、僕も必ず行くからね」

 

 

 

 

翌日。

 

シュガーランドを目指し、グロッシュラーの奥地へ足を踏み入れたのは、トパーズ、ヒスイ、そして・・・アクア。

「・・・・・・」

数学教師にあるまじき、大きな誤算だった。

同じヒスイいじめの趣味を持つ、鬼畜系の妹アクア。

何やら企み有り気な瞳でヒスイにべったりだ。

思わず舌打ちしたくなるほど、トパーズにとっては邪魔な存在で。

そこにコハクの影を感じる・・・

(・・・今に見てろ)

トパーズもデート気分だったのだ。

 

ところが。

 

シュガーランドへの道のりは遠く、生垣で造られた緑の巨大迷路が、三人の行く手を阻んでいた。

テーマパークのアトラクションにしては随分と本格的で、挑戦的だ。

「問題ない。迷路は得意だ」トパーズが言った。

 

 

アンデット商会主催、シュガーパーティの始まりである。

 

 

 
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