64話 お菓子より甘いモノ。
「するだろ?去勢」と、少年祖父メノウ。
「うん」ジストは、涙の跡を残した顔で頷いた。
早くして欲しいと催促までする。
「ヒスイと昼寝する約束したんだ!だからじいちゃん、お願いっ!」
明るい調子でメノウに手を合わせる。去勢に関しては何の迷いもないらしい。
「こっちは準備オッケーなんだけどさ」
言いながら、メノウはトパーズを見た。
「・・・・・・」
トパーズは両腕を組んだまま、微動だにせず。協力的とは言えない態度だ。
一方。準備オッケーと聞き、先走ったジストは、ベルトを外し始めた。
いそいそとズボンのチャックに手をかけたところで・・・・
あはははは!!メノウ、大爆笑。
「ちょっと待てって。お前、ソレ、勘違いだから」
「え?だって去勢って、ちんちん弄ったりすんじゃないの?」と、ジスト。
まずはポカンとした顔で。それから徐々に恥ずかしさが込み上げてきた。
「オレ・・・てっきりそうだと・・・」と、赤面しながらベルトを締め直す。
「コレだよ、コレ」
メノウはズボンのポケットから取り出したものをジストに見せた。
「へっ・・・?これって・・・」
「そ、指輪」
それを右手の中指にするだけでいい、と、メノウは言った。
「昔、コハクが使ってたヤツなんだけどさ、お前に合わせて改良してあるから」
「父ちゃんの・・・なの?」
元々“兄妹”として暮らしていたコハクとヒスイ。
「あいつもほら、“妹”に欲情しまくってたからさ。ひとつ屋根の下でソレはマズイだろ〜って事で、俺が作ったの」
邪な気持ちでヒスイに触れようとすると体が動かなくなる。
指輪には、そんな効能があるという。
「ヒスイが18まで貞操守れたのは、この指輪のおかげってワケ」
兄妹の関係を守るためにコハクが身につけていた指輪を受け継ぎ、今度はジストが親子の関係を守るために身につけるのだ。
「そっか!!」
コハクのおさがりと聞いて、ジストは嬉しそうに顔を綻ばせ。
メノウは深く頷いてから、説明を続けた。
「この指輪しても、性欲なくなんないから」
「えっ?そうなの!?」
「そのムラムラはさ、男として大事なモンだろ。要はヒスイに手出しできなきゃいいだけで、自慰は全然オッケー」と、メノウ。
「するよっ!オレ!ひとりエッチしまくる!!」
ジストは妙なところに気合いが入っている。
『悪いようにはしない』
(父ちゃんが言ってたのって、このことだったんだ)
「ま、そういうコトだからさ」
メノウは指輪を持ったまま、トパーズの前まで移動し。
「これにちょっとばかし魔力込めてくんない?」
「・・・・・・」
「安心したろ?」
ニヤニヤ。メノウは、トパーズの心中を見透かすような笑いを浮かべた。
「クソジジイ。はじめからそう言え」
「コハクのヤツが言わなかったみたいだからさ。俺も便乗してみた」
「・・・・・・」
メノウ&コハクの凶悪コンビ。両方殴り飛ばしたい衝動に駆られながらも、トパーズは指輪を受け取った。
軽く握り、神の魔力を込める・・・
「・・・手を出せ」ジストに向かって言い。
「うんっ!」ジストが右手を差し出すと、その中指に指輪を通した。
「ありがとっ!兄ちゃん!あっ!じいちゃんもっ!!」
これで気兼ねなくヒスイの所へ戻れる。
ヒスイと一緒に昼寝できるのが、嬉しくて堪らない。
ジストは右手を高く翳した。
これは、“お守り”。
(ヒスイとオレの関係を守ってくれるものなんだ!)
外すと大変なことになるのだが、それは後の話で。
翳した手を引き戻し、ジストは指輪にキスをした。
「これからよろしくなっ!」
同じく白い森で。
「お兄ちゃんっ!」「ヒスイ」
再会、即、抱擁・・・とはいかなかった。
アクアを背負っているため、コハクの両手が塞がっているのだ。
「あ、アクア、寝ちゃったんだ?」
ヒスイが横から覗き込んだ。
恐ろしく悪知恵が働く子供でも、まだ5歳。あどけない寝顔だ。
(いいな・・・おんぶ・・・)
ちょっぴりアクアが羨ましいヒスイ。
(でも、お兄ちゃんの背中はひとつしかないから、今は我慢しなきゃ・・・)
「・・・あっ!そうだ!」
(アクアを私がおんぶして、それで、お兄ちゃんにおんぶしてもらえば・・・!!)
Wおんぶ。
(・・・できる訳ないじゃない。そんなこと)
「・・・・・・」
(べっ、べつにヤキモチとかじゃないからっ!!)心の中で、慌てて言い訳。
(私は“お母さん”なんだからっ!我慢できるもん!)
「我慢、我慢・・・」
「ヒスイ?どうしたの?」
コハクの声にドキッとする。
「!?」(私っ!今、口に出して言っちゃった!?)
今更口を押さえても、手遅れだ。
「くすっ。おんぶ?」
「ちっ・・・ちがう・・・もん」ヒスイの語尾が弱くなる。
コハクにじっと見つめられると、いまだにモジモジしてしまうのだ。
「もう少し待ってね」と、コハクは優しい口調で。
アクアをおぶったまま、身を屈め、ヒスイと唇を合わせた。
「ん・・・ぁ・・・」
コハクの唇が離れ、途端に口寂しくなるヒスイ。
もっとキスをしていたくて。
ヒスイは、無意識にコハクの唇を追いかけた。
「ヒスイ?」
「っ!!」
我に返って、超赤面。コハクには、当然見抜かれる。
(ああ、甘えたいのか・・・可愛いなぁ〜・・・)
今日もまた、心にじんと滲み込む愛らしさ。
甘えたそうにしているヒスイを放っておけるはずもなく。
「・・・もう歯は痛くない?」
「う・・・うん・・・あ」
かつて腫れていたヒスイの右頬にキス。
続けて、唇にキス。それから・・・
「ヒスイ、口開けて」
「んぁ・・・」
うっとりした顔で、従うヒスイ。
何が貰えるのかは、わかっている。
「は・・・・・・むっ・・・」
ゆっくりと、深く、コハクの舌が差し込まれた。
「ん・・・・・・」
ついさっきまで、膣奥で動いていた舌。
その舌が今は口の中で動いている。
膣内も口内も違わず丁寧に舐め回され。
「は・・・ぁ・・・・・・」
歯の裏、舌の根・・・くまなく舌で愛撫される悦びと快感で、ヒスイの口角から唾液が溢れた。
(やっぱり・・・どんなお菓子より・・・おにいちゃんがいい・・・)
何よりも甘く感じる。虫歯になる心配もない。
ヒスイは、コハクの舌が纏う蜜を絞り取るように、口を窄めて何度も吸った。
「ヒスイ・・・」
「ん・・・」
それからまた、コハクのキス。
「ん・・・んっ・・・は・・・」
ヒスイは息をするのも忘れ・・・そして。
「あ・・・」
カクン、膝が折れる。
「ヒスイ、立てる?」
手を差し伸べてやりたいが、そうもいかず。
コハクはもどかしく思いながら、ヒスイが自力で立ち上がるのを待った・・・が。
ヒスイはぺたんと座り込んでしまい。
ミニスカートの裾を押さえ、真っ赤な顔で俯いている。
(ヒスイ・・・)
その仕草でわかる。
スカートの下はどうしようもなく濡れていて。
今か今かとペニスを待ちわびている筈だ。
「・・・・・・」
(この際アクアが一緒でも・・・)
強行、子連れエッチ。
ところが、コハクがそう思った矢先に、グイッ!後ろから髪を引っ張られ。
「・・・アクア?起きちゃった・・・のかな?」
「ね〜、パパたちぃ、えっちするの〜?アクアみたぁい〜」と、すっかりお目覚めのアクア。
「す、するわけないでしょっ!!」照れたヒスイが意地を張り。
(あっ・・・ヒスイ・・・そんな・・・)コハクはガッカリだ。
「・・・でもまあ、これで良かったのかな」
そう言って、先を見据えるコハク。
立ち並ぶチョコ木の影に身を潜めていたカルセドニーが、コハクの声に応じ、姿を見せた。
「ヒスイさんとお話の途中だったもので」
心なしか・・・顔が赤い。※10歳なので、恋愛に纏わるものに免疫がありません。
「例の件、考えておいて下さい。良い返事を期待していますよ」
カルセドニーはヒスイの傍に寄り、小声でそう耳打ちした後・・・
「本題は、“メノウ”についてです」