World Joker

78話 開かない扉



 

 

 
人間界の、とある民家。

 

扉の前に立つのは、アンデット商会代表取締役カルセドニーだ。

片腕に花束を抱え、コンコン、扉を叩く・・・が、何の返事もない。

「お母さん、私です。お体の具合はどうですか」

扉越しに声をかけるも・・・物音ひとつ聞こえてこない。

「やっぱり・・・会ってはくださらないのですね」

そう言って、カルセドニーは持っていた花束を扉の前に置いた。

「今夜、素晴らしいショーをお見せしようと思ったのですが・・・残念です」

また来ます、お大事に、と。扉に背を向けるカルセドニー。

 

彼は知らない。

 

開かない扉の向こうには、もう、誰もいないことを。

 

 

 

 

モルダバイト城、バルコニー。

 

(だめだろ・・・このままじゃ・・・)

シトリンの口の中にある己がペニスに意識を持っていかれそうになりながらも、必死に考えるジン。

(オレは・・・コハクさんみたいに、愛する女性のためなら迷わず手を汚せるほど強くはないけど・・・でも、いやなんだ・・・)

シトリンひとりに国を背負わせているみたいで。

(王だって・・・こんなこと許すわけない)

この事態を想定していなかった訳ではないのだ。

(こうなったら・・・あれを使うしか・・・)

「シトリン・・・っ!!」

心を奮い立たせ、フェラチオ拒否。

「な・・・なんだ?」

今までにないジンの行動に怯むシトリン。口元を拭いながら立ち上がる。

そんなシトリンの両肩を掴み、ジンは言った。

 

 

「頼むから・・・今日は・・・オレにさせて」

 

 

「んっ・・・」ジンから、キス。

「おい・・・ジン・・・っ!?ばか・・・お前・・・何して・・・」

シトリンのショーツを一気に下までおろし、足首を掴んで、脱がせる。

それからすぐ、シトリンの両脚の間に自身の片足を差し入れ。

閉じることができないようにしてから、左手の指先を揃えて、膣口の愛撫に向かわせた。

「うくっ・・・!!」

いきなり膣内に指を入れられ、シトリンの腰が揺れる。

「んん・・・っ」

セックスは、シトリンの気が向いた時しかしないので、挿入の機会はそう多くない。

それ故に、若い膣肉は張りがあって、少しきつい。のだが。

 

指先が、焦っている。

 

これでは逃げられてしまう。一刻も早くペニスで繋いでおくべきだと、本能の警告。

(立ったまま入れるなんて・・・しかも無理矢理・・・)

シトリンの了解を得ずに、ペニス挿入。

こんなに無茶なセックスはしたことがない。が、今シトリンに逃げられる訳にはいかないのだ。

指で膣口を開きながら、亀頭を押し込むジン。

「あ・・・っ!おいっ・・・そ・・・んなに・・・ガッつく・・・な・・・っあっ!!」

ジンの亀頭が入口から徐々に上がってくる。

少々痛みを伴うが、愛する男のペニスによるものだと思えば、それも快感で。

「は・・・ッ!!あッ!!!」

より深くペニスを受け入れるべく、自然とシトリンの片脚が浮く。

結合部からはしっかりと愛液が滲み出ていた。

(シトリン・・・)

無理矢理だったにも関わらず、受け入れてくれたのが嬉しくて。

ジンもこの時ばかりは夢中になって、シトリンとの結合を深めた。

 

 

「いいぞ・・・ジン・・・おまえのが・・・いいところに・・・あたっ・・・て・・・うぅ・・・んっ・・・はぁ・・・」

 

 

ジンの肩を掴む手に力がこもる。

そんなに悦ばれたら、突き上げるしかない。

「は・・・シトリ・・・」

唇を求めながら、ジンは激しく腰をぶつけた。

「あっ・・・は・・・はぁ・・・んっ・・・うぅ」

若干低めで、色っぽい、シトリンの喘ぎ。

バルコニーの手摺りに腕をかけ、コーナーに体を預け。

ぐぷっ。かぱっ。

完全に開いた膣が、ペニスを飲み込んでは、吐き出す。

「くっ・・・ジン・・・はやく・・・出せ」

ググッ!シトリンの膣が締まる。射精をペニスに命令しているのだ。

「でも・・・いいのか?」

中出しを躊躇うジン。

避妊のため、いつもはコンドームを被せているのだが、今日は生挿入だ。

「なにを言う・・・おまえが・・・入れたくせに」と、ジンの首筋に両腕を回すシトリン。

ペニスを喰い締めながら、強気に笑う。

「構わん・・・今日は・・・中に出せ」

「シトリン・・・」

何とも嬉しい申し出だが・・・

(出したら、行っちゃうだろ)

射精してペニスを抜く前に、やるべきことが残っているのだ。

ジンはシトリンの膣内で粘りに粘り。

「はっ・・・!はっ・・・!あっんっ!!!ジン・・・っ!!」

シトリンを先に達かせてから、射精・・・してすぐ。

右手をシトリンのお尻へと伸ばす・・・

絶頂の隙をついて、事は起きた。仕掛けたのはジンだ。

 

 

「ジン、お前・・・尻の穴に何か入れたな?」

 

 

「・・・ごめん」

こんな時のために、眠りの粉を座薬にしていたのだ。

無論、シトリンの足止めをするつもりで。

即効性はかなり高い。すぐにも眠りに落ちる・・・はずなのだが。

次の瞬間、首の後ろに衝撃が走った。

「!?」

シトリンに殴られたのだ。ジンの意識が断たれる。

「シト・・・リ・・・ン」

「・・・・・・」

脱力するジンの体を抱え、膣肉の間からペニスを引き抜くシトリン。

「・・・薬など私には効かん。が、お前の気持ちは受け取ったぞ、ジン」

シトリンは猫の姿に戻り、バルコニーから飛び降りた。

「すまんな。私は行く。もう、時間がない」

 

 

 

 

そしてこちら・・・赤い屋根の屋敷では。

 

(時間が、ない)

隠蔽戦争の要となるコハクは・・・焦っていた。

「アクア〜、こ〜ふんしてねむれな〜い」

娘の寝かしつけに手こずっているのだ。公開エッチの余波、だ。

「ぐちゃぐちゃ音さして〜、ママぁかわいいよね〜」

思い出し、子供ながらに恍惚としているアクア。

「ママがあんあんしてるとこ〜もっとみた〜い」

「・・・・・・」

(大丈夫かな・・・まさかアクアにまで襲われたりしないよね?)

一抹の不安を覚えつつ、時計を見るコハク。

時刻は・・・今すぐ出発しなくては間に合わないところまできていた。

預けにいく時間すらない。

(まいったな・・・)

エッチして、遅刻。その瀬戸際だ。オニキスの呆れ果てた顔が目に浮かぶ。

「・・・しょうがない。一緒においで」

コハクはアクアを背中に乗せ、慌ただしく飛び立った。

 

「パパぁ〜?どこいくの〜?」

「夜のお散歩だよ」

「こんなにいそいで〜?」

「うん、まあ」

エロ系5歳児アクアは、戦争に直面しているこの状況をまだ理解していなかった。

(思うようにいかないものだなぁ〜・・・子供って)

予定外の大荷物を背負い、苦笑いで目的地へと向かうコハク。

(まあこれも、ヒスイがくれた幸せのひとつなんだけど)

背中の重みを感じながら、また、苦笑い。

 

そして、モルダバイト未開発地区、入口。

そこには眠りの粉が入った袋がどっさりと積まれていた。

数十ほどある袋の中身を空から撒かなければならない。

モルダバイト、グロッシュラー、双方の軍勢が姿を見せる前に・・・だ。

「ちょっとここで待っててね」

アクアを地上に残し、コハクは眠りの粉袋を抱え、上昇した。

未開発地区周辺の人口はそれほど多くないので、本気を出せば、仕事は早い。

すべての粉を撒き終え、コハクが地上に戻ると。

「キラキラして〜キレイだったよ〜」と、アクアはご機嫌。

上空から天使が粉を撒く様子は、子供の目にはファンタスティックに映ったらしい。

「パパもぉ〜見た目はキレイなのに、おしいよね〜」

「・・・惜しいって、何が?」

「べっっにぃ〜。アクアよくわかんないけど、そんな気がするの〜」と、とぼけるアクア。

 

 

親子でそんな会話をしているうちに、モルダバイトVSグロッシュラーの戦いが火蓋を切った。

 

 

再びアクアを背中に乗せ、上空を巡回。敵の奇襲に備える。

「早速、だね」と、コハク。

オニキスの読みは正しかった。

戦いの中心地とはまた別に、モルダバイト軍の背後を取る形で、グロッシュラーのアンデット兵が出現したのだ。当然、殲滅対象となる、が。

コハクは周囲を見回した。移動スピードを上げるため、武器を持ってこなかったのだ。現地調達するつもりだった。

ところが、思った以上に使える物がない。

「パパ?何してるの〜?」

「武器になりそうな物を探してるんだけど・・・」

「アクア持ってるよ〜」

アクアは大きなバックを持参していた。

その中には主におしゃれ道具が詰まっているのだが、取り出したのは、なんと・・・

「はは・・・包丁・・・ね」

武器としては微妙だ。それに、なぜアクアが包丁を持っているのかが気になる。

「ママ、フルーツの皮むけないじゃん〜。だから、アクアがむいてあげようと思って〜」

練習のため、果物と一緒に持ち歩いているのだという。一本は練習用、もう一本は新品で。どちらもちゃんとケースに入っている。

「トパ兄に買ってもらったの〜」

「う〜ん、包丁かぁ・・・」

(二本あれば戦えないこともないけど・・・)

ビジュアル的に、問題があるように思える。

包丁、両手持ち。あまりカッコ良くはない。

(なんか、猟奇殺人者みたいだ・・・)

コハクの場合、似たり寄ったりだが。

「・・・まあ、いいか」

愛しきヒスイが見ている訳でもないので、カッコ良く決める必要もない。

迫るアンデッド兵の数はざっと数百。魔獣も数体混ざっている。

コハクはそれらを一瞥し。

「気の毒に」と、冷笑を浮かべた。

「死んでなお、戦いに駆り出されるなんてね」

 

 

 

生は有限。死は無限。

 

 

 

「君達にプレゼントしよう。真の“永遠”を」

 

 

 
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