World Joker

82話 快感のあと

 

セックスの・・・嵐のような時間が過ぎ。


「ふ・・・っ・・・は・・・」

ヒスイの荒れた息づかい。股間も大荒れの状態だった。
中出しに次ぐ中出し。潮吹き。そして、愛液。
グッショリ。ベトベト。ドロドロ。すべて快感の跡だ。
口で血液を吸い、膣で精液を吸い。
興奮しきった女体は、なかなか鎮まらなかった。
そんな中、コハクはセックスのアフターケアに取り掛かった。
草の上に仰向けで横たわり、ぐったりとしているヒスイ。
コハクは、その脱力した両脚を開き、ケアの必要な股間を露わにした。

「あっ・・・おにいちゃ・・・!?」

ヒスイの膣口に指の腹をあて、優しく撫でる。

「あっ・・・!ふぁ・・・んっ!おにいちゃ・・・」

くちゅ。くちゅ。そこに残っていた体液を使って。
激しい運動の後のマッサージ・・・のようなものだ。

「あっ・・・んっ!!!」
(だめ・・・感じちゃ・・・)

膣口の表面でヌルヌルと動くコハクの指。
アフターケアをしているだけで、期待すべきものではないのに。
自分だけその気になってしまうのが恥ずかしい。と、その時。
ぐちっ・・・

「あ・・・ッ!!」

入ってこないと思っていた指が、不意に入ってきて。

「あぁ・・・んッ」

羞恥心とは裏腹に、感じてしまう。

「ヒスイが歩いてる時に、中から出てきちゃうと困るでしょ?」と、コハク。

ヒスイの膣容量をオーバーして、中出ししまくったのだ。当然、漏れる。

「だから、今のうちに出しておこうね」

そう言って、指を曲げ。コハクは、ヒスイの膣内から精液を掻き出し始めた。

「あッ!!!うぅぅんッ!!」

ぬるっ。ずぽ。ぬるっ。すぽ。
膣壁にべっとり張り付いていたものが、少しずつ膣外へと排出されてゆく・・・

「ぅ・・・おにぃちゃ・・・」
「ん?痛いかな?」

作業を中断し、コハクが上から覗き込む。
するとヒスイは頭を左右に振り。

「や・・・ぜんぶ・・・だしちゃ・・・」
「・・・・・・」
(か、可愛いぃぃぃ!!)

心の中で、萌え叫ぶ、コハク。
膣内に精液を残して欲しいと懇願される・・・中出しした側としては、嬉しいことこの上ない。

(ヒスイぃぃぃ!!!愛してる!!!)

今日もまた、頭のネジが何本か飛んだ。

「大丈夫だよ、ちゃんと残すから」
「んぁ・・・んッ!!」

コハクは平静を装い、優美な笑顔で作業を続行した。しかし。

「も・・・いい・・・」

ヒスイは精液除去作業を嫌がり。更に、男殺しの一言。

「せっかくもらったのに・・・すてるの・・・やだ」
「・・・・・・」

愛のビックウェーブ。第2波がきた。

(ダメだ・・・可愛すぎる・・・)

あまりの愛しさに眩暈がする。萌死しそうだ。
思わず、指を奥まで入れてしまう。

「あく・・・っ!!」

膣内で、発情する指先。

「あッ・・・あぁんッ・・・」

たちまち感応し、生温かな愛液が分泌される。
肉襞がにゅぐにゅぐと鳴った。

「それじゃあ、もう掻き出すのはやめるから」

と、コハク。

「このままイッちゃおうね?」
「ん・・・」

ヒスイは素直に指での愛撫を受け。

「んッ・・・ん・・・ッ!」

ちゅぽちゅぽ。コハクが指を出し入れする度、両脚を広げていった。

「んッ、んッ・・・あ・・・」

懸命に膣を開放しているのだ。

「ああッ!おにいちゃ・・・おにいちゃ・・・」

草を掴んで喉を反らせ。コハクの指をもっと感じたい・・・その一心で、腰を前に突き出すヒスイ。何とも淫らな格好だ。

「あッ・・・あんッ・・・!!」
「うん。もっと欲しいよね」

と、コハクは指を追加挿入し。ヒスイの膣奥をまさぐった。
あんあんと、ヒスイは感じまくり。
膣口から泡を吐きながら、髪を振り乱した。

「あッ、あッ、あッ、はぁ・・・んッ!!」
「ヒスイ、こっち向いて。キスしよう」

ヒスイと唇を合わせ、仕上げに入るコハク。

「んッ・・・んぅ・・・」

ちゅぅっ。ちゅっ。ちゅっ。
キスをしながら、ヒスイの子宮口を指先で撫で擦る。

「んんん・・・・・・ッ!!!」

疼く場所にぐりぐりと与えられる摩擦の気持ち良さと言ったら。

「あ・・・ッ!!!んん・・・!!あぁッん!!」

とにかく快感に喘ぎたくて。ヒスイはキスどころではなかった。
何とか振り切ろうとする・・・が、コハクが追って唇を塞ぐ。
そして、間もなく。

「んは・・・ッ!!!あ・・・」
「よしよし、イッたね〜・・・」

コハクの指先に膣の収縮が伝わってきた。
精液を求め、きゅうきゅうと指を締め上げてくる。

「あッ・・・ふ・・・」
「ごめんね、あげられなくて」

膣と連動し、震えるヒスイの唇を、コハクは優しく吸った。
快感も、幸せも、絶頂。

「ふはぁ・・・あん」

ヒスイは、コハクの唇と指でイキ果て。うっとりしている。
何しにここにきたか、それさえも忘れてしまいそうだ。

(えっと・・・何だっけ・・・まだやることがあったような・・・)

ほんのりと、アロマの香りがするハンカチで股間を拭われながら、考えるヒスイ。

「は〜い。パンツ穿こうね」

コハクにパンツを穿かされ・・・

「・・・あっ!私、カルセドニーのところに行こうと思ってたんだ」

どこにいるかわからないけど、と、『魔葬』によって一変した戦場を見下ろす。
グロッシュラー兵は撤退し。もうほとんど残っていなかった。
魔葬の影響で、シトリンは猫に戻り、ウィゼのハニーサックルはただのナイフに。
二人は戦いを切り上げ、それぞれ大切な者の元へと向かっていた。

「カルセドニーとちょっと話がしたいから」

と、ヒスイ。

「・・・・・・」

その“話”は、ヒスイにとって必要なものであろう。
そう判断したコハクは、ヒスイを引き止めずに。

「気をつけていっておいで。僕はメノウ様のところへ行ってるから」
「うんっ!」

 

未開発地区の一角にて。

「よっ!」

メノウが声をかけたのは・・・カルセドニーだ。

「・・・・・・」

ショックを受けているのか、カルセドニーの返答はない。
ただ黙って、役者の消えたステージを見ている。
しばらくして。

「何を・・・したのですか?」

と、メノウに尋ねた。

「魔力封印ってヤツ」

さらりとメノウが答え。

「・・・メノウ、あなたの目的は何なのですか?」

そこに、トパーズが現れた。

「グロッシュラーの軍隊は、本来こんなに弱くない」

と、メノウの代わりに話し、煙草の煙を吐く。
グロッシュラーは数々の国を攻め落としてきた、戦争のプロだ。

「それがなぜ、こんなにあっさり破れたか」

授業モードのトパーズが続けて語る。

「敗北の主な原因は、“過信”だ。魔力を得たことで、自分達が優位に立ったと思ったんだろう」

アンデット商会の商品やノウハウを積極的に取り入れ、戦争に用いた。それが敗北を招いた、と。

「今回はまぁ、相手が悪かったっちゃ悪かったけど」

明るい口調のメノウが間に入った。

「グロッシュラーがいつも通りに攻めてきてたら、モルダバイトも苦戦してたかもな」

そうさせないために、魔兵器を売り込んだんだけど。と、メノウの話が続く。

「思ったほどいいモンじゃないって、あいつらもこれでわかっただろ」

前々から、グロッシュラーはモルダバイトを狙っていて。侵略の準備が進められていた。
アンデット商会が介入しようがしまいが、戦争は起きていたのだ。

「グロッシュラーが欲しがってるモンをチラつかせて、戦争をちょっと早めただけでさ」

味方のフリをしてグロッシュラーを煽り、内部から仕掛けた・・・そういうことだ。

「アンデット商会の商品を大量に売り付けたから、財源も底をついたハズだし」

これで、グロッシュラーは当分どこの国とも戦争できない。

メノウによって戦力を削ぎ落とされたのだ。

「・・・では、貴方がたは初めからグロッシュラーを潰すために、入社を希望した、ということですか?」
「・・・・・・」

そこでトパーズが口を閉ざす。
トパーズの場合、そんなに大層な目的ではなく。ヒスイの日記欲しさに・・・あとは成り行きで現在に至っている。

「俺はまあ、半々かな」

と、メノウ。それからカルセドニーを見据え、言った。

「魔女の遺言でさ」
「・・・魔女の・・・遺言・・・」

アンデット商会代表取締役のカルセドニーが知らない訳はなかった。
取り乱すことこそなかったが、カルセドニーは表情を硬くして。メノウの次の言葉を待った。

「お前、まだ10歳だろ?子供の悪戯で、死者が出んのはマズイって、母ちゃんが心配してたぞ〜?」

メノウのノリは相変わらずユルい。

「母は・・・死んだのですか?」
「死んだよ」
「そう・・・ですか」

と。開かない扉の理由を知ったカルセドニーは、不自然なほど落ち着いていた。

「優しい魔女だったよ」

遺言の不成立でメノウが命を落とすことのないよう、その内容は極めて単純なものだったのだ。
今、明かされる、遺言。成立したからこそ、話すことができる。

「これから起こる戦争で、息子の造り出した魔道具が、誰の命も奪わないように、ってさ」

自身の命と引き替えに、そう願っただけ。

「俺がこうして生きてるってことは、死者ゼロ」

もとより死者のアンデット兵はその数に含まれない。

「母は・・・他に何か言っていましたか?」
「人間らしく生きてくれってさ」
「人間らしく?私は人間では・・・」

“エルフの姿をした人間”ではなく。
“人間の能力しか持たない不憫なエルフ”なのだと思っていた。
カルセドニーが反論すると。

「人間だろ。半分は」

メノウはめずらしく厳しい口調でそう言って。

「息子のために命をかけた母親の血を誇りに思えよ」
「・・・・・・」
「できれば、不老不死の研究はやめて欲しいってさ。そうそう改心する性格じゃないから、遺言には加えないでおくけどって。笑ってた」
「・・・あなたはどう思いますか?メノウ」
「ん?俺?そうだなぁ・・・」

カルセドニーの質問に、メノウは少し考えてから。

「この前さ、俺の家族の話したじゃん?」

頷くカルセドニー。ヒスイのことも、この時聞いたのだ。
メノウは頷き返し、ひと呼吸おいてから言った。

「ヒスイが産まれて、サンゴが死んで。そん時思った」

命は・・・いつか失われるものだから、新しく得ることができるんだ、って。

「たとえば、永遠の命を手に入れたとして・・・人間はどうなる?」

教えてくれよ、先生。と、トパーズを肘でつつく。
面倒そうな顔をしつつも、トパーズはバトンを受け取り。

「人間だけではなく、すべての生物に言えることだが・・・」

と、話し出した。

「子孫を残す必要がなくなり、生殖機能を失う。生殖機能を失えば、性別の意味もなくなる―以上だ」
「ついでに性欲もなくなるし」

そう、メノウが付け加え。
それは困るよなぁ。と、一旦トパーズに話を振ってから、再びカルセドニーに向き直り、言った。

「失わないってことは、得る必要がないってことだからさ」

停滞する世界。

「新しい命が産まれない世界を、人間が望むと思う?」
「・・・・・・」
「不老不死が本当に価値のある“商品”なのか、もうちょい考えてみれば?ま、あとはお前の好きにしなよ」
「・・・わかりました。私はこれで失礼します」

何に対しての“わかりました”なのか、わからないが。
カルセドニーはあくまでも礼儀正しく一礼し、退席した。
それからすぐ。

「メノウ様」

ひょこっと、木の後ろからコハクが顔を出した。

「お?何だよ、立ち聞きか?」

コハクは否定せず。

「いいこと言ってましたよ、メノウ様」
「・・・命ってさ、親から子へ流れてくモンだろ。流れが止まれば、淀む。簡単な話だよな。ま、俺もヒスイが産まれてなきゃ、わかんなかったかもしんないけど」

と、メノウは夜空を仰いだ。そこに月はないが、無数の星が瞬いて。
視線を地上に戻すと、かつての戦場は静かで、祭りのあとのようだった。

「メノウ様」

再び、コハクが名を呼ぶ。

「ん?」
「命に永遠はなくても、愛に永遠はあると思いますよ」

サンゴ様はきっと・・・メノウ様を永遠に愛してる。

「・・・何、お前、俺のこと泣かそうとしてんの?」

そう言って、笑うメノウ。コハクも肩を竦めて笑い。

「信じたいんですよ。僕も」

ヒスイに、永遠の愛を残していけるって。
 

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