World Joker

90話 恋を叶えて


 

 

 

「二人ともここにいたんだね」

「「スピネル!!」」

 

 

ジストと同じく27歳のスピネルはすっかり大人びて。

もう女装はしていない。男性スーツ姿だ。

一見この学校の教師に見えるが・・・

「プールに落ちたって聞いたから心配したよ。怪我とかしなかった?」

プルプル!ジストとヒスイが揃って頭を左右に振った。

スピネルは笑みを浮かべ。

「無事ならいいんだ。邪魔してごめんね。二人の服乾かしておくから」と、扉を閉めた。

「あれ?なんでスピネルがここに?」と、ヒスイ。

「ごめんっ!言うの忘れてたっ!」ジストが両手を合わせた。

スピネルの大学卒業後の進路であるが・・・

城勤めを勧める姉シトリンと、学校勤めを勧める兄トパーズの間で奪い合いの末。

トパーズと同じ女子校で文系の教師として勤務していたが、少し前に転任してきたのだという。

「この学校で3年生の副担任やってるんだ」

「え・・・そうなの?」驚きが重なる。

1年にジスト、2年にアクア、3年の副担任にスピネルとは。

よく揃ったものだと思う。

 

 

3限目の途中から授業に参加し、あっと言う間に昼休み。

(高校生活って・・・結構忙しいのね)

今のところヒスイの仕事ははかどっていない。

昼になったらなったで、ジストは女子から告白の呼び出しを受け。

 

「ヒスイ、ちょっと待っててっ!戻ったら昼メシ一緒に・・・あれっ?ヒスイ??」

 

ヒスイはそそくさと教室を出て、校舎裏へ向かっていた。

人気のない穴場を見つけたのだ。
途中、職員室の前を通ると、スピネルを訪ねてきたらしき女生徒が固まっていて。

「・・・・・・」

息子達のモテることモテること。

(スピネルも彼女つくらないもんね。本命とはどうなってるんだろ??)

「・・・ジストもスピネルも大きくなっちゃって。アクアもだけど、何あのおっぱい」

子供達の成長は、嬉しいような、寂しいような。

「・・・さて、っと。お兄ちゃんのお弁当食べよ」

ヒスイの場合、学園生活はこれしか楽しみがない。

植え込みに囲まれた芝生の上で、ひとり弁当を広げ・・・

 

「お兄ちゃん、ごちそうさま」

 

愛夫弁当を残さず食べたあと、眼鏡をかけて、植え込みから顔を出すヒスイ。

生徒達が往来しているのが見える・・・昼休みは他のクラスの悪魔を探すのに丁度良いのだ。

レンズ越しに悪魔を見ると、頭上に種族名が表示される。

その悪魔が何年何組の誰かは、ヒスイが調べなければならないが。

40〜50人に一人。それくらいの割合で見つけることができた。

(割と同族が多いみたいなのよね・・・)

人間との混血悪魔。中でも半吸血鬼が多いように思われる。

実はこれは重大な発見なのだが、この時は知る由もなく。

「ふぁ〜っ・・・」

ヒスイ、大欠伸。

「なんかねむい・・・」

眼鏡を外し、ケースにしまう。この時点で、睡眠>任務だ。

5分だけ・・・と、目をつぶるが、ヒスイが5分で起きられる筈もなく。
そのまま10分、20分と過ぎ・・・昼休みの半ばに差し掛かった頃。

 

 

「ヒスイっ・・・!」

 

 

ジストにより発見された。ヒスイはまだ、眠っている。

「やっと見つけた・・・」

ジストは、ヒスイを探し回って汗だくだった。

昼休みに告白されるのは珍しいことではないが、告白された帰りにまた告白され・・・なかなかヒスイの後を追うことができなかったのだ。

(ヒスイって目離すとすぐどっかいっちゃうし。ひとりにしとくと危ないし)

「そういうとこが可愛いんだけど・・・」

呟いて、ヒスイの寝顔を覗き込む。

(あ・・・口開いて寝てる)

無防備な寝顔にドキッ。ときめきが性欲を刺激する。

(っ・・・やば・・・!!)

先程の触れ合いを思い出し、むくむくとペニスが膨れた。

「ダメだって・・・ここ学校・・・」

自身の下半身に言い聞かせるが、今にもはち切れそうだ。

(ここんとこヌイてなかったから・・・)

精子が・・・種が、出たがっている。

ヒスイに植え付けることはできないが、せめてその近くに蒔きたい・・・男の本能が疼く。

「っ・・・」

幸運にも近くに人の気配はなく・・・勃起ペニスを引き出すジスト。

片手で乱暴にシゴく。目の前にヒスイがいれば、どう弄っても射精できる。

(溜まってんの出せば・・・)

落ちついてヒスイと向き合えるはず。その一心で、激しくペニスを擦り上げ・・・

「ん・・・ッ!!」

ヒスイを汚さないよう、先端を手で覆いながら。

ビュルッ!!久しぶりの射精。

「は・・・ぁ・・・」

見るからに濃い精液が、ボタボタと芝生に落ちた。

「はぁ・・・っ・・・は・・・」

クチュクチュ・・・ヒスイの寝顔を見ながら、最後の一滴まで絞りに絞って。

「すげ・・・手ベトベト・・・」

近くの水道で手を洗い、ヒスイの元へ戻る。

ヒスイはまだ眠ったままだ。

「う・・・ごめん・・・ヒスイ」

スッキリした後はいつも罪悪感に襲われる。

深々とヒスイに頭を下げてから、時計を見ると、予鈴まであと5分あった。

「予鈴鳴ってからでも、走れば間に合うよな」

ギリギリまでヒスイを眠らせてあげたい。

そんな思いから、時間を気にしつつも、ヒスイの隣に寝転がるジスト。ところが。

 

 

ZZZZZzzzz・・・

 

 

ヒスイにつられて、ジストまで。揃って爆睡だ。

予鈴が鳴っても、本鈴が鳴っても、起きない。

「ママ?ジスト?」

そこに助っ人、スピネルが現れた。

たまたま受け持ちの授業がなかったからだが、渡り廊下を歩いている時に、二人の気配を感じたのだ。

近くの植え込みを覗くと案の定。ヒスイとジストはお昼寝中で。

向かい合わせで丸くなり、それは気持ち良さそうに眠っていた。

(任務中だって聞いたけど、この二人で大丈夫なのかな)と、スピネルは苦笑い。

似た者親子は、同じ失敗をするのだ。

「ジスト、起きて」まずはジストを夢の世界から呼び戻す。

ジストは「あと5分〜」などと寝ボケていたが、授業がとっくに始まっていることをスピネルが告げると、一気に目を覚ました。

「うわ・・・っ!?もうこんな時間っ!?」

授業をサボるつもりはこれっぽっちもなかったのだ。

午後の授業が始まってから、すでに30分が過ぎていた。

今更戻っても悪目立ちするだけだ。

「だめだなぁ・・・オレ。こんなはずじゃなかったのに」

そう言って、両手で髪をくしゃくしゃにするジスト。

「くすっ。女の子にはモテるのにね」

「そんなの・・・スピネルだって・・・」

赤い顔で少し口を尖らせる。その仕草はいくつになっても憎めない。

「それにオレ、ヒスイでしかヌケないし」と、ジストはヒスイの寝顔を見つめて言った。

「ジスト・・・」

恋する横顔。よく知るオニキスのそれと重なる。

これまで幾度となく目にしてきたその横顔は、見ている方が切なくなるときがある。

「・・・・・・」

(同じ日に産まれた、ボクの兄弟)

 

 

恋を叶えて、幸せになって欲しいけど。

 

 

(ジストは立場的に・・・どう考えても無理だ)

「・・・ジスト」

「んっ?」

「どんなに好きになってもママは・・・」

「うん。わかってる」ジストははっきりとそう答え。

「心配かけてごめん。でもオレ、大丈夫だよ。何か期待してるわけじゃないし」

 

 

ヒスイが笑ってくれれば、オレも笑ってられるから。

 

 

「・・・そう。ならいいんだ。ママ起こそうか?」

「うん」

 

 

 

「ね・・・ねむい・・・」

息子二人に起こされ、なんとか立ち上がるヒスイだったが・・・

眠気が抜けない。足がもつれる。まるで酔っ払いだ。

数歩進んだところで、大きく転倒。

弁当箱と眼鏡ケースがヒスイの手を離れ飛んでいく。

「ヒスイっ!!大丈夫っ!?」

「眼鏡っ!!割れてないよねっ!!?」

教会から特別に貸し出された仕事道具だ。眠気も吹き飛ぶ。

慌てて眼鏡ケースを拾い、蓋を開けるが・・・

「なんで???眼鏡が・・・ない・・・」

 

 

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