World Joker

92話 熱帯夜

 

 

 

本当は、学校に忘れものなどしていないが、家に帰るに帰れず。

ジストは再び中央広場まで戻った。

空いているベンチに腰掛け、ぼんやり・・・

「・・・・・・」

恋の病・・・とよく言うけれど。

こんなにも進行が早いものなのか。

何を求めるでもなく。穏やかに。のんびり恋をしていたかったのに。

「何だよ・・・これ・・・」

ヒスイへの恋心は緩やかな上り坂。今まではそうだった。

それが、一緒に学校へ行くようになってから、急斜面を一気に駆け上ったように。

胸が・・・苦しい。

と、その時。頭の上に重い鞄をのせられた。

「何してる」

「兄ちゃん!!」

ベンチの後ろにトパーズが立っていた。

「兄ちゃん・・・」

なぜか・・・ホッとする。

「兄ちゃんも今帰り?」

教材が詰まったトパーズの鞄をジストが抱えて歩く。

「なんか二人で歩くの久しぶりっ!兄ちゃん、いつも仕事忙しそうだもんな」

トパーズの隣で他愛のないお喋りをしながら、段々とジストが元気を取り戻す。

トパーズが一緒なら、家に帰るのも怖くない気がした。ところが。

「オレもさっ!今ヒスイと一緒に仕事してて・・・」

ジストがそう口にした途端、トパーズが足を止めた。

「・・・もういっぺん言ってみろ」

「?だから、ヒスイと一緒に仕事・・・兄ちゃん?」

“ヒスイと一緒に仕事”二度聞いたトパーズは身を翻し。

 

 

「行くところができた。お前は先帰ってろ」

 

 

 

 

エクソシスト教会。司令部。

 

そこには総帥セレナイトと向き合うトパーズの姿があった。

「ヒスイとジストを同じ任務に就かせるとは、どういう了見だ?タヌキオヤジ」

冷静な態度ながらも、セレに喰ってかかるトパーズ。すると・・・

「君はヒスイの息子だが、ヒスイのことが好きだろう」

「・・・・・・」

「ジストもヒスイの息子だが、少なからずヒスイを想っている」

「・・・・・・」

「君は、それに気付いているから、ここへ来た。違うかね?」

「・・・・・・」

トパーズの無言は主に肯定の意味で用いられる。

セレもそれを知った上で話を進めていた。

「カーネリアンも心配していることだし、君に“土産”を持たせてやろうと思ってね」

「“土産”?誰が頼んだ?余計なお世話だ」と、トパーズが突っ撥ねる。

それからセレを見据え、言った。

「オレは・・・」

 

 

ヒスイを連れていく。

 

 

 

 

赤い屋根の屋敷。

 

「おにい・・・ちゃん?」

部屋に明かりはついていた。ついていたが、コハクの姿もメノウの姿もない。

屋敷にヒスイひとりだ。

「誰もいないの?」

キッチンのテーブルには夕食が並べられている。ヒスイとジストの分だ。

火を使わずそのまま食べられる、冷製パスタ、有機野菜のサラダ、じゃがいものスープ、デザート諸々・・・と、もうひとつ。
コハクの置き手紙。

 

今夜は遅くなります。

 

任務を早く片付けたいから〜云々、理解を求める文章と、もちろん愛の言葉もしっかりと綴られていた。

「お兄ちゃん・・・」

手紙を胸にあて、コハクを想う。

「仕事だもん、仕方ないよね」

わかっていても、寂しい。コハクと離れることに慣れていないのだ。

「学校であったこと、色々話したかったのにな・・・」

 

 

 

それから数時間後・・・

 

「ただいま〜」

 

小さな声で呟きながら、コハクが帰宅した。

(ヒスイはもう寝てるよね?)

物音をたてないように、裏口からそっと入ると・・・

「ヒスイ!?」

キッチンの椅子に腰掛けたまま、ヒスイは眠っていた。

現代用語辞典を開き、その上に突っ伏している。

(現代用語辞典?学校で困ったことでもあったかな?)

不思議に思いながらも、とにかくベッドに運ぼうと、コハクがヒスイの肩に手をかける・・・と。

「んぁ?お兄ちゃ〜・・・おかえり〜」ヒスイが目を覚ました。

「お兄ちゃんに話したいこと、たくさんあって・・・だから、待ってた」

眠い目を擦りながら話す。

「ヒスイ・・・」(僕と話をするために待っててくれたなんて・・・っ!!)

嬉しくて顔が崩れる・・・ところを引き締める。

ヒスイの前ではいい顔を見せたい。ここで気を抜く訳にはいかなかった。

「ごめんね、遅くなって」「ん・・・」

まずはヒスイと唇を合わせ。

「・・・今、紅茶淹れるね」

「うんっ!」

 

「・・・でね、そのコッパーって子に応援団に誘われたんだけど、断ったの」

生徒会長のコッパーは、応援団の団長でもあった。

ヒスイはチアガールとしてスカウトされたのだ。

「チアガールってあれでしょ・・・ポンポン持って飛んだり跳ねたり・・・」

できる訳がないと、ヒスイが拗ねた顔をする。

「チア・・・ガール?」(いいぞ!!それ!!絶対可愛い!!)

盲点だった。コスプレ新境地だ。

コハクのボルテージが急上昇する。

チアガールの衣装を着たヒスイに応援してもらえたら。

きっと、どんなことでも頑張れる。

(まずはポンポン作らないと!!フワフワのやつを!!スカートはうんと短くして。パンツのバックデザインにも凝るぞ!!)

それからそれから・・・

(型紙起こして、生地買いに行って・・・)

その前に任務を片付けなくてはならないが、一層気合いが入る。

(よしっ!やるぞ!!)

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

コハクの妄想露知らず、ヒスイが見上げる。

「んっ?」

「これね、ジストに買って貰ったの!」

「これ?」(りんの玉じゃ・・・)

コハクはもちろん知っている。

「何だかわからないけど、露店で見つけて」と、ヒスイ。

「ああ、そういうこと」くすり、コハクが笑う。

「ヒスイ、これはね・・・」

耳元に口を寄せ、それが性具であることをヒスイに告げた。

「え?」ヒスイは耳から赤くなり。

「使ってみる?」コハクが冗談で言うと。

「うん」と、赤い顔で頷いた。

「折角買って貰ったんだから、一度は使ってみないと・・・」

「・・・そうだね」

セックスで道具を使うのはあまり好きではないのだが。

(注射器で失敗してるしなぁ・・・)

事情が事情なだけに、駄目とは言えない。

「じゃあ、ベッド行こうか」

「うんっ!!」

「っと、先行っててくれる?今準備するから」

「ん!わかったっ!」

 

 

 

寝室にて。

 

いそいそと服を脱ぎ、ベッドに飛び乗るヒスイ。

すぐにコハクがやってきた。お湯の入った器の底にりんの玉が沈んでいる。

「これはね、温めて使うんだ」

「へ〜・・・」

女性器・・・つまり、膣に入れるものなのだと、コハクはヒスイに説明し。

「こっち、慣らしておこうね」

「ん・・・」

仰向けでヒスイに両脚を開かせてから、お尻の下に枕を入れ、高さをつけた。愛撫し易くするためだ。

片方の手でヒスイの陰唇を摘み、隙間に舌を入れるコハク・・・丁寧に内側の粘膜を舐め出した。

「あ・・・や・・・そんなとこ・・・んぅっ・・・」

舌先で擦られ、次第に辺りがヌメってくる。

「は・・・あぁ、あ・・・」

柔らかく温かいコハクの舌に尽くされ、膣口から愛液が滲み出しているのだ。

コハクは、ヒスイの膣口にキスをしては舌を入れ、少しずつ膣肉をほぐし始めた。

ぐちゅぐちゅ。そして、どろ・・・っ。

コハクの舌戯に応え、膣内から愛液が溢れる。

「うッ・・・ん・・・ッ!!」(やだ・・・たくさんでてきちゃっ・・・)

枕を愛液で汚すのは抵抗があったが、自分で分泌量を調整できるはずもなく、結局は垂れ流す。

「はぁ・・・あッ!おにいちゃ・・・あんッ!!」

コハクはもう片方の手でヒスイのクリトリスを押さえた。

指と舌を同時に使い、ヒスイに更なる愛撫を加える。

「ああ・・・ッ!!あ!!」

クリトリスと膣の間で循環する快感。

「あッ、あッ、あッ・・・」

ヒスイもじっとしていられず、コハクの髪を掴んで腰を揺らした。

「うッ・・・ぅ・・・おにいちゃぁ・・・」

すると今度は舌と指が入れ替わり。クリトリスに舌が被せられた。

繰り返し舐め上げられ、コハクの唾液でクリトリスも濡れてくる。

「ふは・・・ぁ・・・」

コハクは、その先端を吸いながら、ヒスイの膣に親指を向け。

ぷしッ!!開かれた瞬間、ヒスイの膣口が飛沫を上げた。

「ん・・・ッ!!!」

ぐりぐり、ぐりぐり、膣に親指を捻じ込まれ、驚くヒスイ。

「あ・・・!!!」

(ふと・・・いっ・・・!!)

親指の挿入は慣れていないのだ。

(なんかいつもとちが・・・)

「はぁはぁ・・・あ・・・あぁ・・・」

コハクの親指と一緒に、膣口がぐにぐにと動く。

ぬぽッ!コハクが指を引き抜くと。

指先に付いた愛液が伸びて。美しく弧を描いた。そして。

ぐにゅぅッ・・・再び親指を入れた時の音からして、ヒスイの膣肉が充分にほぐれていることがわかった。

「あ・・・ッ!!あッ!!ああッ!!」

(やらしい音するなぁ・・・ヒスイ・・・可愛い・・・)

ぬぽッ!ぐにゅッ!ぬぽッ!ぐにゅッ!

こうして、親指を何度か抜き差ししたあと・・・

 

 

「そろそろ・・・入れてみる?」

 

 

「う・・・ん」

2個で1組となっているりんの玉。1個は直径1〜2cmほどで。

もう1個は、それより若干小さいつくりになっている。

愛を宿すため、りんの玉に口づけをするコハク。

それから、指を使って順番に玉をヒスイの膣内へ落した。

「・・・少し体動かしてみて?」

「ん・・・あッ・・・!!」

膣内でりんの玉が繊細に震動する。

ひとつは空洞、ひとつは玉の中に玉が入った二重構造で。

その二つがぶつかり合うと、何ともいえない美音を響かせるのだ。が・・・

「あふッ・・・う・・・」

なにぶん初めての経験で・・・異物感と快感が半々だ。

「気持ちいい?」と、コハクが尋ねる。

「よ・・・よくわかんな・・・」ヒスイは涙目で答えた。

「脚開いて、ヒスイ」

「ん・・・」

コハクに言われるがまま、ヒスイが脚を開くと。即、膣口に亀頭をあてがわれ。

ジュボッ・・・!!勢い良くペニスが追加挿入された。

「おにいッ・・・!?あく・・・ッ!!!」

「りんの玉はね、こうやって使うんだよ」

膣内で、ペニスと一緒に動く、りんの玉。

「ひッ・・・ぁ・・・!!」

ペニスに弾かれた玉が膣粘膜を滑り。時には膣壁に食い込み。

また、時には子宮口にあたり、裏の方まで丸い玉が回り込んだ。

「うッ・・・うぅぅんッ!!!」

ぶっといペニスがジュボジュボと膣内を往復する中、縦横無尽にりんの玉も転がる。

「あん!あん!あ・・・んぐ・・・ッ!!」

亀頭と子宮口の間に玉が挟まり・・・そのまま押し上げられ。

「ひぐ・・・ッ!!」

強い刺激を受けたヒスイが大股開きで泣き喘ぐ。

「あ・・・はぁ・・・ッ!!!」

反らした喉元に、すかさずコハクが唇を寄せた。

そこに何度もキスを落とし、痕が残らない程度に吸って。

「あ・・・ッ!!ん〜・・・!!!」

指を絡め、上からヒスイと唇を重ねる。

「・・・・・・」

(ヒスイ、気持ち良さそうだな)

りんの玉は女を悦ばせる性具として有名だ。

ヒスイは今、りんの玉とペニスと、どちらに感じているのか。

なんとなく釈然としないまま、コハクは腰を振り続けた、が。

「あッ!あぁ・・・!!!おにいちゃ・・・ん・・・む」

喘ぐヒスイをキスで黙らせ、考える。

「・・・・・・」

昔から、道具を使うのはあまり好きではなかった。

(何でかなぁ〜と、思ったら。ああ・・・そうか、僕は・・・)

 

 

道具にまで、嫉妬するんだ。

 

 

自分以外の物が、ヒスイを喘がせる。それが嫌なのだ。

ピタリと、コハクの動きが止まった。

「お・・・にぃ?ど・・・したの?」

頬を紅潮させ、不思議そうな顔をしているヒスイにまたキスをして。

ズルンッ・・・ペニスを引き抜くコハク。

「・・・中の、そろそろ出していい?」

 

 

 

「よしよし、いい子だね〜・・・」

ヒスイをしゃがませ、トントンと腰を叩く。

「ん・・・ぅ・・・あッ・・・」

下向きになった膣口から、りんの玉が出てきた。

それをもとの器に戻すとすぐ、後ろからヒスイの腰を引き寄せ。

「続き、させてね」と言いながら、コハクは自身のペニスを掴み、亀頭をヒスイの膣口に押し込んだ。

「あ・・・ぁ・・・おにいぃ〜・・・」

「・・・好きだよ、ヒスイ」

「・・・っ!!たしも・・・っ!!」

ヒスイはうつ伏せで枕に顔を埋め、お尻を高く上げている。

その背中に覆い被さるようにして、コハクは上体を曲げ、両手をシーツについて。

結合部をより密着させると、深く挿入したペニスでヒスイの膣内を思う存分掻き混ぜた。

「あ・・・あ・・・はぁ・・・ッ!!」

ズコッズコッ。コハクが腰を前後する度。

カクカクカク。ヒスイがお尻を上下させ。

摩擦された愛液がブチュブチュと鳴る。

「はぁはぁ・・・あ・・・はん・・・ッ!!」

二人は、息を継ぐのも忘れるほど、性器を激しく擦り合わせた。

 

 

モルダバイトにしては珍しく、蒸し暑い夜だった。気温25度を超える、熱帯夜。

 

 

ジメッとした空気が、二人を益々淫らな気分にさせる。

「あ、あ、あ、あッ!!」

ヒスイも絶頂間近・・・だったが、その時。

「!?」

ぽた・・・っ。と、一滴。

ヒスイの背中に、コハクの汗が落ちてきて。

「あ・・・」(おにいちゃんの・・・あせ・・・)と、思った瞬間。

「・・・あぁッ!!」

膣内に蓄積された快感が一気に弾け飛んだ。

「ふは・・・ごめ・・・」

夏の夜の、嘘みたいな出来事。

(汗でイッちゃうなんて・・・どれだけ好きなの、お兄ちゃんのこと)

「ヒスイ?」コハクも驚く。

ヒスイの絶頂に合わせて射精するつもりだったのだが、予定より早くイかれてしまった。

「わ・・・たし・・・おにいちゃんの・・・汗で・・・」

「汗?」言われて初めて自分が汗をかいていることに気付くコハク。

「おにいちゃん・・・めったに汗かかないから・・・」と、ヒスイ。

セックスをしている時も、コハクが乱れることは殆どなく。

汗をかきながら腰を振る姿など、そうそうお目にかかれるものではない。

「だから・・・」

それだけ夢中になってくれたのかと思うと。

「なんか・・・うれし・・・くて・・・イッちゃった・・・」

「ヒスイ・・・」(汗が嬉しいなんて・・・)

言われたコハクも、嬉しい。

「おにい・・・ちゃん」

「ん?」

「汗をかいたのは・・・今夜が特別・・・暑いから?」

「違うよ。ヒスイのことが好きだから」

汗もかくし、射精もする。

「あッ・・・おにい・・・」

ぐるんと、ヒスイの体の向きを変え。後背位から、正常位へ。

「あッ・・・んんッ!んん・・・んッ!!」

ユサユサ、腰を振りながら、ヒスイと何度もキスをして。

間もなくコハクは膣内射精した。

 

 

 

「はぁはぁ・・・」

繋がったまま、セックスのインターバル。

コハクのペニスもヒスイの膣も、互いの形を認識できないくらいグチャグチャに溶け合って。

それがとても・・・心地良かった。

「は・・・ふぁ・・・あついね、おにいちゃん」

「うん・・・あついね、でも・・・幸せだ」

そう言って、コハクはヒスイの手を取り、キスをした。

ヒスイは目を細め、笑い。

「うん、今夜も・・・」

 

 

幸せな・・・熱帯夜。

 

 

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