World Joker

100話 猛獣注意


 

 

 

3階建ての家。トパーズ。

 

「・・・・・・」

ヒスイを帰した後、きっちり仕事は終わらせた。

失恋しようが仕事は待ったなしだ。あれこれ考えている暇はない。

空が明るく白んでくる頃。

気分転換のつもりで家を出て、咥え煙草で波止場まで歩く。

ヒスイがいない・・・喪失感を味わいながら、ひとり海風に吹かれ。

波止場に着くと、そこには、オニキス・カーネリアン・メノウがいた。

夜明けに際し、様子を見にきたのだ。

「・・・・・・」

トパーズは表情こそ変えないものの、さすがに少し驚いたようだった。

「よっ!元気?」

まずメノウが寄ってくる。

「・・・元気そうに見えるか?これが」

「ん〜でもさ、そんなに落ち込んでるようにも見えない。こうなること、覚悟してたんだろ?」

さらっとそうメノウが言うと。

トパーズは「うるさい、ジジイ」と吐き捨て。

「何しにきた」

「つれないこと言うなよな〜。慰めにきたんだろ」

「余計なお世話だ」そっぽを向くトパーズ。その時。

 

 

「トパーズ」

 

 

トパーズの名を口にしながら、オニキスが動く。

「話はメノウ殿から聞いた。お前にも苦労をかけてしまったな」

颯爽とした足取りでトパーズの前まで歩き。

「・・・気は済んだか」

「はい」

「そうか」

オニキスは、トパーズを見つめ。

「お前を子供扱いする訳ではないが・・・少し、触れてもいいか」

そう言って、トパーズの髪から頬にかけて軽く撫でた。

「どうすれば・・・」

 

 

“どうすればヒスイをオレのものにできるか”

 

 

「オレも考えたことがある」と、オニキス。続けて・・・

「考えたが、わからなかった」

「・・・・・・」

自分と全く同じ想いをオニキスが口にしたので、トパーズは顔を上げ、オニキスを見た。

オニキスは苦笑いで。

「オレも含めてだが・・・」と、前置きしてから言った。

「ヒスイを“もの”のように扱ってしまいがちだ。だが、ヒスイにも心があって、意志があって、自分の居場所は自分で決めている」

「・・・・・・」

「それを変えるのは、容易ではないぞ?」

静かな口調で諭すオニキス。対するトパーズの表情は・・・揺るがない。

すると、オニキスは頷き。

「それでもまだ、お前が諦めないと言うのなら・・・」

 

 

 

競うか。どこまで、愛せるか。

 

 

 

「・・・・・・」

トパーズは無言の肯定をした。

「馬鹿な子だねぇ・・・」

そう呟くカーネリアンは、熱い涙を流しながら、横からトパーズを抱きしめ。

「何だって応援してやるからさ。アタシに相談しとくれよ」と、両腕に力を込めた。それから。

「さ!今日は飲むよ!!」飲み会決行だ。

トパーズの肩を抱き、笑うカーネリアン。

「見な。この顔ぶれ。ダメな大人ばっかりだよ」

諦めの悪い大人が2名。

亡くした男、もしくは女が忘れられない大人が2名。

計4名。いずれも新しい恋愛をする気が全くないという・・・

「あはは!うまいこと言うじゃん!」メノウ、大ウケ。

「違いない」と、オニキスも笑う。それぞれ、自覚はあるのだ。

こうして、ダメな大人同士、パーッと飲もうということになり。

「俺達ダメな大人さ〜♪」メノウが妙な歌まで歌い出す。

行きつけの居酒屋に向かう途中・・・

「ところでこの島どうしたんだい?」

カーネリアンがトパーズに質問した。

この海域に本来島など存在しないのだ。

トパーズは煙草に火をつけながら。

「古代から移動させた。どのみち消滅する島だ。問題ない」

そこでメノウが。

「まだ開拓が済んでなくてさぁ」

残り1/3ほどある未開拓地区は、過去に絶滅したはずの猛獣がウヨウヨしているという。

「・・・・・・」足を止めるトパーズ。

帰り道をヒスイに教えていなかったことに気付く。

わざと・・・ではない。ただ単に言い忘れただけだが・・・

(あのバカのことだ・・・)

今頃、猛獣区域に迷い込んでいるに違いない、と、思う。

トパーズは、急用を思い出したと言って、体の向きを変えた。それから。

「お前に借りたいものがある」と、カーネリアンの肩に手を置き耳打ちする。

「・・・今、持ってるか?」

「ちょっと待ちな」

カーネリアンは財布を漁り、一枚のコインを取り出すと、それをトパーズに握らせた。

「やるよ。アタシはもう使わないからね」

 

 

 

トパーズは来た道を引き返していった。

「何あれ?」と、メノウ。

「イカサマ用のコインだよ。裏も表も同じになってんのさ」と、カーネリアンが答える。

「あの子、何に使う気だろうねぇ・・・」

 

 

 

 

案の定。猛獣区域では。

 

「帰れ・・・って言われたって・・・帰れないよ」

3階建ての家から出たヒスイは、いくらも歩かないうちに、呆然と立ち尽くす事態へと陥っていた。

「ここ・・・どこ???」(さっきまで街だったよね???)

整備された無人の街を、勘を頼りに進んだら・・・この始末だ。

街から一変、鬱蒼としたジャングルへと。

「ええと・・・何て言うんだっけ、こういうの。遭難?そうそう、遭難!」

自分が置かれている状況にしっくりきたのはいいが・・・

「どうやって帰ればいいんだろ?」

ここがどこか。どうやって帰るのか。トパーズから何も聞いていない。

首を傾げるヒスイ。そんな中。

バキバキバキ・・・木が倒れる音がした。

(何?今の音・・・)

ヒスイが注意を向けた・・・次の瞬間。

「・・・え?」

バッチリと目が合った、それは・・・

(きょ・・・恐竜っ!!?)

図鑑で見たことがある。ティラノサウルスだ。とてつもなく獰猛な肉食獣である。

間もなくヒスイは“食糧”と認識され。

「きゃぁぁぁぁ!!!」(なんでこうなるのよっ!!!)

ティラノサウルスに追いかけられる。

(このままじゃ・・・食べられちゃう・・・っ!!)

逃げ足を止め、ヒスイは魔法のステッキを構えた。戦おうというのだ。

「えいっ!!」

ヒスイが一声発すると、ステッキからハートのビームが出た。

淡い水色をしている。それがティラノサウルスの足に命中し。

パキパキパキ・・・氷が張った。

体の一部を凍結させることにより、ティラノサウルスの動きを止めたのだ。

ピンチからは脱したが、ヒスイは早くも息が切れている。

「はぁ・・・はぁ・・・何なの・・・これ・・・」

いきなりサバイバルだ。

そしてお次は・・・頭上から攻撃を受ける。

「わ・・・っ・・・!!」(今度はプテラノドン!!?)

飛空タイプの恐竜だ。
ヒスイは制服のベストを掴まれ、一気に上空へと引き上げられた。

飛行には慣れているものの、コハクに抱えられて・・・とは訳が違う。

「ちょっ・・・離しなさいよ・・・っ!!!」

両脚をじたばたさせて抵抗するヒスイ。
だが、プテラノドンには通じない。

 

 

「絶対生きて帰るんだからぁぁぁぁ!!!!」

 

 

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