World Joker

―外伝―

願わくば、世界の終わり。[1]


オニキス×ヒスイ中心のストーリーです。
 

 
愛と血に飢えた男の、とある土曜の朝。

 

「・・・く・・・」

ベッドで渇きにうなされる。

「オニキス」

そこに差し伸べられた手はスピネルのものだった・・・が。

「ヒ・・・スイ・・・?」

うっすらと瞳を開けて呟くオニキス。

「うん。そうだよ」と、スピネルは返事をした。

(オニキスがボクとママを間違えるのは、すごく喉が渇いてる時だけ)

それだけ強くヒスイを求めているのだ。

「・・・スピネルか」

そんな中でも、オニキスはすぐに気付き、見誤ったことを謝罪した。

「ボクの血、飲む?」と、スピネル。

ベッドのオニキスを覗き込むようにして。

「あなたがボクに与えてくれたもののひとつを返すだけ。どうってことないよ」

以前からそう言ってオニキスを口説くも。

オニキスは一切応じようとしなかった。そして今日も。

 

「子供に牙を剥けるか」

 

「・・・・・・」

(“子供”そう言ってくれるのは嬉しいけど・・・思ったほどママの代わりにはなれないみたいだ)

こんな朝を迎える度、もどかしく思う。

「・・・心配するな」

オニキスの手が、スピネルの髪に触れた。

 

「じき・・・ヒスイがくる」

 

 

 

・・・渇いた夜。

 

女性器の合わせ目をめくり、ヒスイの中へ、深く舌を入れる。

求めるは、愛の露。

 

夢は・・・そこから始まった。



「あ・・・んんッ!」

「・・・・・・」

喉に流れ込んでくる甘い液体。

ヒスイの中で舌を動かしながら、(これがヒスイの味なのか)と、ぼんやり思う。

 

「んッ・・・オニっ・・・」

 

両脚をV字に押し開くと、色鮮やかに濡れた入口がとても愛らしく。

ぐっ、ぐちゅっ・・・。

ペニスの先端を少し押し込む、と。

とろり、温かな愛液がペニスを伝ってきた。

「あ・・・まっ・・・」

そこでヒスイが不安気な声をあげた。

今にも泣き出しそうな顔で、抗うような仕草を見せる。

正面で開いた両脚には明らかに力が入っていた。

「・・・もっと力を抜け」

性交に慣れているはずのヒスイの反応とは思えない。

(相手があいつではなくオレだからか・・・)

「・・・・・・」

「う・・・ッ、ん、んんッ・・・!!」

半ば強引に挿入しながら、ヒスイの唇にキスをする。

 

「ッ・・・あぁんッ!!」

 

日夜コハクにほぐされているであろう場所は、意外にもきつく。

たっぷり濡れている割には、緊張した状態だった。

「い・・・っ・・・いた・・・」

オニキスのペニスをヒスイが痛がり、先に進むのは困難で・・・

 

 

突き抜くのは簡単だが、それをしないのは、愛しているから。

 

 

「・・・・・・」

男のペニスなど今更恐れるものでもないだろうに。

処女のような顔をするから、自分だけのものと錯覚してしまう。

オニキスは、指と舌とペニスの先端で愛撫を繰り返し、ゆっくりと・・・ヒスイの細い径を拡げていった。

 

 

「ヒスイ・・・」

「あ・・・ぜんぶ・・・入っ・・・」

 

 

みちっ、みちっ、結合部がいっぱいいっぱいの音を鳴らす。

「うッ・・・ううぅん!!」

ヒスイは涙目でオニキスにしがみついた。

「・・・痛いか?」

そんなヒスイを抱きしめ、銀の髪を撫でながらオニキスが尋ねると。

ヒスイは「ちょっとだけ」と強がり、そして。

「はじめてだから」と答えた。

(初めて・・・だと?)

「・・・・・・」

(ああ・・・そうか)

これは・・・夢なのだ。

嫉妬と快楽の悪夢にオニキス自身が気付く。

それならばもう終わらせてしまえ、と。

「あ・・・・・・ッ!!」

ヒスイの股間で振り抜く腰。

「あッ・・・やッ・・・ああんッ・・・!!」

ギシギシ、軋んでいるのはヒスイかベッドか・・・もうそれさえわからない。

「・・・・・・」

腕の中で、もがき喘ぐ小さなヒスイ。

夢だとわかっているのに、愛しくて愛しくて離したくない。

背中に爪を立てられることさえ嬉しくて。

「あんッ・・・!!」

ヒスイの首筋に噛み付き、血を啜る。

いつものように我慢をする必要はないのだ。

オニキスは更なる欲情をのせたペニスでヒスイを突き乱し。

 

 

「あッ・・・あはんッ!!あッ、あ・・・おにい・・・ちゃ・・・」

 

 

・・・達したヒスイの口から出た言葉で、最悪の目覚めを迎えた。

 

 

 

 

愛と血に飢えた男の、とある日曜の朝。

 

「・・・・・・」

夢でヒスイを抱いた朝は、気分が良くない。

しかも、こんな時に限って朝早くからヒスイが顔を出すのだ。

「オニキス?大丈夫?うなされてたけど」

夢の中のヒスイに、だ。

現実のヒスイはちょこんとベッド脇に立っていて。

「おはよう」の笑顔。

嬉しい半面、罪悪感から溜息が出る。

「血、飲むでしょ?」

ヒスイはそのつもりで来ていた。しかし。

「いや・・・今は・・・」と、オニキス。

確かに喉は渇いているが、あんな夢をみた直後では、ヒスイに触れるのも憚られる。

「?喉、渇いてないの??」

男の事情を知らないヒスイは不思議顔だ。

ちょうどそこで。

「ママ」

気を利かせたスピネルがヒスイを呼んだ。

「先にこっちで紅茶飲もうよ」

「ん!」

紅茶大好きのヒスイはスピネルの元へ。

 

(すまんな)(任せて)

 

言葉なく視線を交わす、オニキスとスピネル。

こうしてオニキスにはしばしの猶予が与えられ。

 

その後。

 

オニキスは自身をコントロールし、何とか食事=ヒスイにありついた。

「お腹、いっぱいになった?」

「ああ・・・屋敷まで送る」

・・・と、その前に。

モルダバイト城下で三年に一度行われるバザールの日であることを思い出す。

各国から行商人が集まり、珍しい品物が売りに出される一大イベントなのだ。

「・・・一緒にどうだ?」

日曜日の午前、ひとときのデートにヒスイを誘ってみる。

ヒスイのことだから、どうせまた「お兄ちゃんと〜」
で、応じはしないだろうと諦め半分だったが、その返事は意外にも・・・

 

「うん、いいよ」

 

「では、行くか」ふっと、オニキスが笑う。

それから、オニキスとヒスイはほとんど同時にスピネルを見て言った。

 

「「スピネルも一緒に」」

 

「ボクは・・・」断るつもりで口を開くスピネル、だが。

遠慮する間もなくヒスイに手を引かれ。

「いこっ!」

「・・・お邪魔じゃない?」

スピネルが申し訳なさそうにオニキスを見上げる、と。

「そんな訳があるか」

微笑みと共に、オニキスの大きな手がスピネルの頭にのせられた。

「・・・うん」

心なしか嬉しそうにスピネルが頷き。

 

三人はバザール会場へ向かった。

 

 

 

 

モルダバイト城下。噴水広場、バザール会場。

 

「わ・・・すごい人だね」と、ヒスイ。

「手を」「うん」

人混みの中、オニキスとヒスイは手を繋いで歩き出した。

傍らで、そんな二人を見守るスピネル。

 

 

(手を繋いでいいってことは、えっちしてもいいってことだと思うな)

 

 

男と女の気持ちとして、そういうものではないか、と。

スピネルなりに考える。

(オニキスとママは自然に手が繋げる関係で、心も体もすごく近いところにあるのに・・・)

なかなかそうはならない二人だ。

 

その二人が・・・というか、ヒスイが足を止めた。

必然的にオニキスの足も止まる。

「ね!見て!あれっ!」

ヒスイが見つけたのは・・・特大の棺桶。

そこは見るからに怪しい出店で、ドス黒いオーラを放っていた。

黒魔術関連の道具がずらりと並んでいる。

他に客もいなければ、店員もいなかった。

それをいいことに、ヒスイは棺桶の傍に寄り・・・

棺桶と言えば、吸血鬼の寝床である。

ヒスイが興味津々なのもわからなくはないが。

「おい、何を・・・」

いつものごとく、オニキスが止めるのも聞かず。

試し寝。棺桶に入り、横になるヒスイ。

「あ、コレいいよ!」何やらえらく感動している様子だ。

「ね、オニキスも入ってみて!」

力が漲るなどと言って、眷属であるオニキスを空きスペースへ誘い込む。

「・・・・・・」

向かい合わせで身を寄せ合う二人・・・

「どう?」

「・・・・・・」

棺桶の効能より、ヒスイの体温が気になるオニキス。

そしてスピネルは、二人の様子を笑顔で見守っていた。

 

 

・・・そこに潜む罠を知らずに。

 

 

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