―外伝―
TEAM ROSE
[ 02 ]
セレが呼び鈴を鳴らす・・・と。
「オラ!これでイイんだろ!!」
乱暴な口調で突入してきたのは、一級エクソシストのコクヨウ。※人型※
抱えているのは、映写機だ。
天井に備え付けのスクリーンをセレが引き下ろし、コクヨウがフィルムのセットに取り掛かる。
ピンときた様子のコハクが。
「ヒスイ、ちょっと怖いかもしれないから、こっちへおいで」と、ヒスイを膝の上に乗せた。
「お兄ちゃん?これから何観るの?」
「映画だよ」(たぶん、吸血鬼のね)
「・・・・・・」
トパーズは知っていたのか、準備が整ったのを確認すると、カーテンを引き、照明を消した。
「それぞれ、スクリーンが見える位置に移動して貰いたい」と、セレの指示が入り。
間もなく、映画の上映が始まった。
コハクの予想通り、それは吸血鬼の生態を題材としたもので。
吸血鬼が、人間を呪い、襲い、殺し・・・中には臓器を食す者や、全身に血を浴びて喜ぶ者もいて。
かなり猟奇的な残虐シーンがスクリーンに映し出されていた。
「・・・・・・」
コハクの腕の中で鑑賞中のヒスイ。
(お兄ちゃんのとこ、きてよかった。完全にホラーじゃない・・・こういうの苦手・・・)
NGと思われるものは、「ここは観なくていいよ」と、コハクが目隠ししてくれる。
しかし音声までは回避できない。そして・・・
「吸血鬼って、こんなに怖いの!?」
ヒスイの感想第一声はこれだった。
フィクションにしても、描写がひどい!と、酷評するが。
「これが、人間から見た吸血鬼の姿なのだよ、ヒスイ」と、セレ。
しかも実話を元に作られた作品だという。
「・・・・・・」ヒスイ、絶句。
「大丈夫だよ、ヒスイ」
コハクは、そんなヒスイの体をすっぽりと包み込み、優しくあやした。
「吸血鬼をテーマにした数ある作品のひとつでしかないんだから、ね?」
そう言い聞かせる一方で“余計なことをヒスイに教えるな”という目でセレを見る。
コハクの視線に気付いたセレは、最後にこう締めくくった。
「ヒスイ、君ほど恵まれた吸血鬼はそういないのだよ」
するとコクヨウまで。コハクの腕の中にいるヒスイに向けて悪態をついた。
「テメーは暢気すぎんだよ。天使に守られてる吸血鬼なんざ聞いたこと・・・」
「ん?何かな?」
・・・コハクの圧におされ、途中で黙る。
「ま、あいつ等はヒスイとは違う生き物だから。そんなに深刻に考えんなよ?」と、メノウ。
席を立ち、ヒスイの頭に手を乗せた。それからセレに。
「お前が何企んでんのか、だいたい想像つくけど。俺の娘、あんま怖がらせないでくれよな」
それは失礼――と、セレは笑い。場を仕切り直した。
「さて、では改めて、潜入メンバーを発表しよう」
ヴァンパイアハンター側に、メノウとコクヨウ。
この場にはいないが、サルファーも加入する予定になっているとのこと。
そして吸血鬼側には、コハク、ヒスイ、オニキス、セレ。
時間を要する任務になるため、本業優先のトパーズとスピネルは、サポートメンバーとして動くことになるらしい。
「あ」と、そこでヒスイ。
「あーくんとまーくん、どうする?お兄ちゃん」
二人の間には、先日双子の兄弟が産まれたばかり。まだ一歳にも満たない。
「ジストに頼もうと思って」
コハクの返答に。ヒスイも笑顔で。
「それなら安心だね!」
・・・と、エクソシスト夫婦の話がまとまったところで。
「“天使”のくせに“吸血鬼”か?笑わせる」
コハクに対し、そう言い放ったのは、トパーズだ。
「吸血鬼顔じゃない」と、ずばり指摘する。
そう――コハクは最高位の天使なだけに、究極の天使顔なのだ。
「確かに、そうかもしれないね、今は」
コハクが不敵に笑う。当然、そこは策アリで。
「ちょっと待ってて」
ヒスイを膝から降ろし、廊下に出るコハク。
数分と経たずに戻ってきた、が。
「!!お・・・お兄ちゃん!?」
ヒスイの心臓が、ドキンッ!と強く脈打ち。
何事かと、オニキスが身を寄せる。
「コハク、お前・・・」
「くすっ、どうですか?」
コハクの口元から覗く牙。※萌飴:コウモリ服用※
瞳は、見事な緋色になっていた。※単にコンタクト着用※
「これなら吸血鬼っぽいでしょ?」
「っ・・・!!」
いつもと少し違うコハクの姿に。ヒスイの頬が真っ赤に染まる。
ドキドキが止まらない。
(お兄ちゃん、カッコイイぃぃ〜!!!)