World Joker

―外伝―

TEAM ROSE

『TEAM ROSE』は、『願わくば、世界の終わり。』とWorld Joker2章を前提としております。


[ 01 ]


「おチビちゃん」


エクソシスト教会内、司令室へと続く廊下で、ヒスイはある人物に呼び止められた。
「あなたは・・・」
エクソシストの制服に身を包んだヒスイが振り返る。
涼しげな顔立ち。その声の主は忘れもしない、ヒスイを拉致した男装女子コッパー。
今日も学生服姿だ。
「君、本当に美人だね。見とれちゃうな」と、またしても絡まれる。
「“銀”の吸血鬼に会えるなんて、夢みたいだ」
「・・・・・・」
コッパーが口説きめいた文句を連発するも。
人見知りもあり、ヒスイの態度は素っ気なく。
コッパーを相手にすることもなく、早足で歩いた。
・・・が、すぐさま隣に並ばれる。なにせ歩幅が違うのだ。
「・・・・・・」
「とても好みのタイプなのに、処女じゃないのが残念」
自分は処女が好きで。それだけは譲れないのだと、勝手に語るコッパー。
「・・・・・・」(何なの?このヒト・・・)
正直、少々鬱陶しいが・・・二人の行き先は同じだった。


エクソシスト教会――司令室。


そこに集うは、総帥セレナイトをはじめ、幹部のメノウ、コハク、トパーズ。
他、オニキスとスピネルだ。
そこにヒスイとコッパーが加わる。
モルダバイトに集まりつつある半吸血鬼についての話し合いが行われようとしていた。
コッパーは、半吸血鬼グループのリーダーであり。
仲間を集める一方で、教会への登録を拒否し続けているのだ。
モルダバイトでは、教会へ申請することで異種族の移住を認めているため、コッパー率いる一団が問題となっていた。

丸テーブルに一定の間隔で着席している面々・・・
「ヒスイ」「お兄ちゃん!」
二人は椅子をくっつけ、今日もべったり。
それも見慣れた光景であるため、誰もツッコまない。

そして、セレが口を開いた。

「取引き、ということになるのかね」
事前にコッパー側から、ある条件が出されていた。
それは――
『ホーンブレンドに於ける、人間と吸血鬼との戦いの鎮静化』だ。
ホーンブレンドはヴァンパイアハンターの活動拠点でもあり。
コッパー曰く。
「人間側からすれば、“真祖”も“半”も同じ。吸血鬼として、討つべき対象とされる」
彼の地では、ヒスイ達が去った後も、戦いが激化する一方で、半吸血鬼も多く巻き込まれているという。
「教会の力量を見せてもらいたい」
「我々が条件をクリアすれば、モルダバイトのルールに従う――と考えて良いかね?」
限りなく穏やかな口調でセレが言った。続けてヒスイが。
「オニキスのことも諦めてもらうわよ」
あなた達にオニキスは渡さない――と。コッパーを睨む。
「ずいぶんご執心だね」
「当たり前じゃない。オニキスは私の・・・モゴモゴ・・・」
ヒスイの口を塞いだのは、コハクの手だ。
隣に座っているオニキスの手も伸びかかっていた。
(ヒスイの気持ちは嬉しいが・・・)←オニキス、心の声。
モルダバイトの前王が吸血鬼になった経緯を、公にすべきではないと考えたからだ。
「どうぞ話を続けてください」と、コハク。
いつもどおりにこやかだが、コハクの場合は嫉妬心からである。
コッパーはくすりと笑った後・・・
「考えておくよ。じゃあね、おチビちゃん」
ヒスイに手を振り、オニキスには頭を下げて退出した。



「・・・難題だな」
オニキスが溜息を洩らす。
「まあ、何とかなるんじゃないですか?」
ヒスイの口から手を離し、コハクが答える。
「要は双方のトップを潰・・・」
そこまで言いかけたが、ヒスイの手前、言葉を変え。
「トップを説得できれば」
するとそこでセレが。
「ところがだね、双方のトップの顔が見えないのだよ」
どちらも正体不明。組織の大きさ諸々、謎に包まれているという。
離れた大陸ということもあり、国同士の交流もなく。
元ヴァンパイアハンター、フェナス※コハクの紹介で現在はエクソシスト教会勤務※から聞いた限りの情報しかない。
「ヴァンパイアハンターってあれだろ」と、メノウ。
「天使をシンボルにしてる――」
セレが相槌を打つ。
「ヴァンパイアハンターは古くから、天使と関わりがあると言われている。コハク、君ならよく知っているのではないかね」
「“そういう組織が存在する”程度のものです。知っていると言っても、顔見知りがいる訳じゃない」と、コハク。
ホーンブレンドの本部に殴り込みをかけたことはあるが、その際、トップは不在だったのだ。
(まあ、いずれ壊滅させてやろうと思ってたし)
愛妻ヒスイに血を吸う牙がある限り、コハクは吸血鬼の味方なのだ。
「ま、どっちにしろ潜入捜査からだろ?」
メノウの意見にコハクが賛同する。
「内側から崩す方が手っ取り早いですからね」
そしてすかざず。
「僕はヒスイと吸血鬼側にいきます」
残りの人選はお任せします、そうセレに告げた。
対するセレは、コハクの申し出を快諾し。


「では、発表しよう――と、言いたいところだがね」


その前に、これを観て貰いたい。


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