World Joker

―外伝―

TEAM ROSE



[ 04 ]


翌朝――

「ん・・・」
ベッドの上、微睡むヒスイ。
途中まで制服を着たままセックスをしていたが、いつしかそれも全部脱ぎ、一糸纏わぬ姿だ。
吸血鬼ver.のコハクに慣れるまで、夕べは散々交わった。
何とか克服したが、イキ疲れたヒスイはぐっすりだった。
「あ・・・あれ?もう朝!?」と、そこで飛び起き。
「あーくんとまーくんにおっぱいあげなきゃ・・・!!」
裸であたふたしている。
「大丈夫だよ」
コハクは至って爽やかに。


「何回か搾って持っていったから」


・・・と、言った。
「・・・・・・」
袖机に、搾乳器。
セックスの最中、あまりの快感に、ところどころ記憶が抜けている。
その時――だということは、ヒスイでもわかった。
双子兄弟は、同じ寮内に住む次女アクアに預けていた。
従って、行き来も楽々だ。
「・・・・・・」
バツが悪そうにしているヒスイの頬に、コハクが笑いながらキスをする。
「シャワー、ひとりでできる?飲み物用意しておくから」



シャワーを済ませ、タオル地のワンピースを着て。
洗いざらしの髪をコハクが丁寧にセットする傍ら、ヒスイがスムージーを飲んでいると。
カリカリ・・・扉を引っ掻く音がした。
「?お兄ちゃん、何か来たよ?」
「くすっ、出てごらん」
コハクに促され、ヒスイが扉を開ける・・・と。


「わ・・・狼!?」


燃えるような赤毛の狼がヒスイに擦り寄ってくる。
「お兄ちゃん!?この子何!?」
「ヒスイの使い魔、ってところかな」
「使い魔?」
「そう、これからしばらくヒスイと一緒に行動するんだ」
名前は好きに付けていいよ、と、コハク。
「“吸血鬼”は、狼や蝙蝠、鼠を使役するからね」
「本で読んだことはあるけど・・・なんで急にそんな・・・」
ヒスイの疑問に。コハクは思惑あり気な微笑みで。
「今回の任務に必要だから」と、答えた。
「それくらいの箔は付けないとね」
「???」



コハクの意図がわからぬまま、司令室に向かうヒスイ。
任務の最終打ち合わせがあるのだ。
ちなみにコハクは準備のため、二時間近く前に部屋を出ていた。
ベルガモットと名付けた狼と共に、ヒスイが廊下を歩いていると。
「あ」
オニキスと出会った。
「お・・・おはよ」
「ああ」


「「夕べは・・・」」


二人の言葉が被った。
ヒスイは赤面しながらも、先にこう切り出した。
「心臓、苦しくなかった?」
「いや・・・」
大丈夫だ、気にしなくていい、という意味で、オニキスが短く言葉を返す。それから・・・
「大変だったな」と、ヒスイの頭を撫でた。
「・・・・・・」(なんか恥ずかしいぃぃ〜・・・)
動悸によって、バレバレなのだ。
今まであまり考えたこともなかったが。
「もしかして、いつえっちしてるとか・・・わかっちゃう・・・の?」
「・・・・・・」
まあ、そうだ。とは、言いにくく、オニキスが黙る。
それでもヒスイは悟ったようだった。赤い顔で俯いている。
「・・・・・・」
ほぼ毎晩、ヒスイの鼓動は早くなる。
辛く感じる夜もあったが、今となっては、“そうじゃない夜”が逆に心配なくらいだ。
「もう慣れた。オレにとっては、“日常”だ」
オニキスは苦笑いで、話を切り上げた。
「行くぞ」
「うん」



エクソシスト教会――司令室。

潜入メンバーが二組に分かれている。
ヴァンパイアハンター組と、吸血鬼組だ。
ヴァンパイアハンター組のリーダーは、メノウ。
吸血鬼組のリーダーは、コハク。
それぞれ企画書を手に持って、打ち合わせに入る。

こちら、吸血鬼組。

ホワイトボードの前にコハクが立ち。
テーブルには、セレ、オニキス、ヒスイ。その足元に狼のベルガモットが控えている。
「・・・それで、これは何だ?コハク」と、オニキス。
企画書の第一章には、制服デザインが描かれている。
男性用は、細身の黒スーツに深みのあるレッドカラーのシャツ、ネクタイはスーツと同じ黒だ。
こちらは既に発注済みで、明日にでも仕上がるそうだ。
女性用・・・つまりヒスイ専用となる制服は、ゴスロリ風だ。色合いは男性と統一し、黒と赤でコハクが仕上げたという。
「・・・・・・」(お兄ちゃん、いつの間に・・・)
「流石に手際が良いね」セレが賞賛する。
「なかなか面白い任務になりそうですからね」
「なぜ制服の必要が・・・」
オニキスが尤もな質問をする。
「それはですね」
コハクはこう説明した。
「僕等は五人一組のチームとして行動します。※トパーズを頭数に入れてます※その際のリーダーはヒスイ。使い魔として、こちらの狼を起用しました」
「えっ!?ちょっ・・お兄ちゃん!?私、リーダーなんて・・・」
「心配することはないよ」と、セレ。
「“設定”なのだろう?コハク」
「その通りです」
コハクが頷く。
「僕等は、“ヴァンパイアプリンセス”であるヒスイに、絶対の忠誠を誓う部下です」
「それは良いね」
セレが笑う。続けてコハクが。
「僕等は全員吸血鬼設定ですが、立場はあくまで中立です」
コハクの思惑とは別に、直前の話し合いでそう決まったのだ。
「まあ、その辺りは臨機応変にやっていくとして」と、コハク。
「チーム名なんですが、何か案はありますか」
そこでオニキスを指名する。
「そうだな・・・ROSEでどうだ」
赤でもなく、白でもなく、ワインでいうところの、中間。
「いいですね、あなたらしい。では、そうしましょう」

チーム名は――



『ROSE』




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