World Joker

―外伝―

TEAM ROSE



[ 30 ]

カーネリアンに続き、リヒターとリディが姿を見せた。
「・・・・・・」(どういうこと?)←コハク、心の声。

気になる展開ではあるが・・・

(うるさくされると、困るんだよね)

ヒスイが熟睡している間に、双子の件を片付けるつもりなのだ。
今、ここで目を覚まされたら、予定が狂ってしまう。

「とにかく、場所を変え――」

コハクが、三人を部屋から追い出そうとした、その時。

「う・・・ん?おにい・・・ちゃ?」

騒音、ではなく。コハクの匂いに反応したヒスイが、目を擦りながら起き上がった。

「ヒスイ!?」(まずい!!)

慌ててコハクが駆け寄り、まだ眠そうにしているヒスイを抱き上げる。

「よしよし、いい子だね〜・・・」

もう一度寝かしつけるつもりで、ヒスイの背中を撫で、あやす。と、同時に。
トパーズへ合図を送った。

そっちは任せた!!――そんなところだ。

「・・・・・・」

トパーズは三人を部屋の外に連れ出し、扉を閉めた。
コハクが離脱し、更に面倒な状況ではあるが、三人へと向き直り、毅然とした態度で言った。

「何事だ?」

そして話は遡り――森の奥地。

リヒターを追ってきたリディと、リヒターを見張るカーネリアンが鉢合わせたことで、吸血鬼姉妹・・・姉はレーリンガイト、妹はローザサイトという名らしいが・・・
その二人に見つかってしまった。
リヒターが上手く取り繕い、その場は何とかやり過ごしたものの・・・

「エライことになっちまったんだよ!!」
「落ち着け、ババア」
「落ち着いてられるかい!!」
「まぁ、まぁ、お二人さん」

カーネリアンとトパーズの間に入るリヒター。

「後は、俺から話しますわ。あ、主人も呼んでいいっすか、一応当事者なんで」

場所を大広間へと移し、リアルガーが加わったところで、リヒターが話し出した。
母親代わりの長女、レーリンガイト※以下レーリン※は、妹や弟の結婚を強く望んでいて。

「合コン・・・いや、お見合いパーティってやつですかね、それを催すらしいんすよ」

人間に留まらず、あらゆる生物の血を好むレーリン。
そんな彼女を『狂気のソムリエ』と揶揄する吸血鬼もいるが、“強者”であるレーリンに従う者の方が圧倒的に多かった。
また、レーリンは、純粋な吸血鬼同士の婚姻を後押しする、仲人的な活動もしており、そちらの方面では特に顔が利くのだ。
独身吸血鬼を集めることなど容易く。そのパーティのメインディッシュとして、双子の赤子を振る舞うことにしたらしい。

「姫さんのお子さんだって、カーネリアンさんから聞いたっす」そこで協力を申し出るリヒター。

「そのパーティとやらはいつだ?」トパーズが尋ねると。
「明日の夜っす」と、答えた。

つまりそれまでは、安全とも言える・・・が。

「場所を教えろ。今すぐに、だ」

トパーズは、リヒターからパーティ会場となる場所※姉妹の棲み家※を聞き出した。
傍らで見守っていたカーネリアンは。

「アンタまさか・・・」
「そのまさかだ。このまま乗り込む」
「だったら、コハクも連れていきな!相手は真祖二人だ!相当なモンだよ!」

戦力面を考慮し、カーネリアンが進言するも。

「どうせ今頃イチャついてる」
「・・・・・・」

その一言の、あまりの説得力に黙るしかないカーネリアン。

「あいつに伝えとけ」

一足先に双子の安全を確保する――

そう言い残し、トパーズはひとり、大広間を後にした。



その頃、室内では。

“渇き”を訴えたヒスイが、コハクの首筋に噛み付いていた。

んくっ・・・んくっ・・・

ヒスイが幸せそうに喉を鳴らす一方で、若干表情が引き攣り気味のコハク。
“渇く”ようなことを、分身にされたのだと、確信したからだ。

「・・・・・・」(殺す・・・アイツは絶対殺す!!)

だが、分身の気配は少し前に途切れたきり、追えなくなっていた。

「・・・・・・」(吸い終わったら、セックスしよう。うん。眠くて、ぐずるかもしれないけど、するしかない!!)

取られたカラダを取り返さなくては、気が済まない。
コハクが密かにそう心に決めたところで。

「・・・ん?」(なんだ?これ・・・)

ヒスイが寝ていたベッドの上、折り畳まれたメモらしきものが落ちていた。
吸血に夢中になっているヒスイを抱っこしたまま、コハクはそれを手に取り、目を通した。
自分の字で綴られたメッセージ・・・その内容に。

「成程ね」と、コハク。

どんな手段を使っても、分身を消すつもりだったが。

「まだ使えそうだ」

嫉妬でおかしくなりかけていたコハクに、落ち着きが戻る。

(そうだ、とにかく今はあーくんとまーくんを探さないと・・・でも)
無事、双子を見つけたら。

「覚悟しておいてね、ヒスイ」

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