World Joker

―外伝―

TEAM ROSE



[ 31 ]

ヒスイを再び寝かしつけることに成功し、部屋を出るコハク。
丁度そこに・・・


「やはり、ここに戻ってきていたか」


・・・と、オニキス。
双子を探している最中、突然、ヒスイの鼓動が激しくなったため、どこかで行為に及んでいる――そう思った。
相手は、事情を知らないコハクJr.である可能性が高く、また、ヒスイの安全を考えるならば、屋外よりは屋内。
この森で・・・となると、場所は限られてくる。
現に、コハクの立つ扉の向こうからは、確かなヒスイの気配がした。
「オニキス?何故あなたが?」
双子を探している筈では?というニュアンスで、コハクが言った。
オニキスは溜息の後、こう続けた。
「ジストが・・・いなくなった」
「いなくなった?」
「ああ、オレの目の前で、だ」
「それって・・・」
責任を感じたジストは、いてもたってもいられず。
オニキスが止めるのも聞かずに、例の裏ワザを使ったのだ。
もし、成功していたら――辿り着く先は、吸血鬼姉妹の城だ。


「話は聞かせて貰ったよ」


カーネリアンが二人の前に現れた。本来の人型に戻っている。
カーネリアンは、先程得た情報を二人に伝え。
「トパーズが向かってる。ジストとはじき合流するだろうさ」
「そうですか。トパーズが・・・」と、コハク。
悪くない展開だ。
「それなら、僕等はチームロゼとして、明日の夜出向きます。ところで、この件なんですけど――」
この件、とは、双子が攫われた件である。
改めてカーネリアンに説明し、トパーズとの決め事を明かすコハク。
そして、半ば強引に二人を説き伏せた。
「では、この件はヒスイの耳に入れないように。気を付けて下さいね」
「・・・・・・」←オニキス。
「・・・・・・」←カーネリアン。
二人が返事を渋るも、コハクは意に介さず。
「お見合いパーティーとなると、ドレスコードもあるでしょうし。ある程度、支度が必要になりますから、僕とヒスイは一旦船に戻りますね」
ついでにセレにも“この件”の口止めをしておきたい。
トパーズの話では、船の番をしているらしい。幽霊スタッフで対処しきれない事態に備えて、だ。


「それでは、明日の夕方、またここで」
「ああ、ヒスイのこと、今度はしっかり守るんだよ」
死んだように眠っているヒスイを背負い、城を後にするコハクとオニキスを見送り。
カーネリアンは大広間へと向かった。





「・・・・・・」(こっちはこっちで何やってんだい・・・)

そこでは――

「吾輩、行きたくないのだ・・・吾輩にはもう嫁がいるのだぁぁ!!!」
二次元と三次元の区別が付かなくなっているリアルガーが、リヒターに泣きついていた。
「あ〜、はいはい」
リヒターはそれを軽くあしらい。
「寝不足じゃ、折角の男前も台無しっすよ」と。
リディが運んできたらしい棺※吸血鬼睡眠用※にリアルガーを押し込め、蓋を閉めた。
更に鎖を巻き付け。鍵※南京錠※まで掛けるという徹底ぶりだ。
リアルガーは、「嫁が!嫁が!」と、しばらくの間、棺の中で暴れていたが・・・


「行かなきゃ、殺されるっすよ」


そうリヒターが声をかけると、大人しくなった。
「サーセンね、ウチの主人の見苦しさといったら、もう。笑うしかないですわ」
「苦労するねぇ・・・アンタも」と、カーネリアンが同情の意を示す。
「そういや、カーネリアンさん、ひとつ提案なんすけど」
「何だい?」
「使い魔は会場に入れないんで、当日はその姿の方がいいっすよ。かえって動き易いかと」
「そうだねぇ・・・」
「後で、城内の見取り図と――手頃なドレス、見繕いますんで」
「そうして貰えるかい?」
「了解っす」





それから間もなくして、夜が明け。日が高く昇る頃。

シンナバーの港。船上のスイートルームで、ヒスイは目を覚ました。
「・・・・・・」(あれ?なんで船に戻って・・・)
「おはよう、ヒスイ」
「!!お兄ちゃんっ!!」
オリジナルコハクの姿に歓喜するヒスイ。
ベッドから飛び降り、コハクに抱きつく。
コハクもまた、ヒスイをしっかりと腕に抱いた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
「夕べは、湖のお城にいたよね???」
「うん、そのことなんだけど――」


「――え?吸血鬼のお見合いパーティーに乗り込む?」


「そろそろ挨拶しておこうと思ってね」
「それは構わないけど・・・あっ!!」


「あーくんと、まーくん、おっぱい足りてるかな!?」


不意にヒスイが言い出して、ぎくり。
しかしそこはコハクで。動揺を表に出すことなく答えた。
「お腹いっぱいで、今はぐっすり寝てるから。そっとしておいてあげて?」
子育ては、全面的にコハク任せのため、ヒスイは疑うこともなく、素直に頷いた。
「ん!わかった!」
だがそこで、胸に手をやる仕草。
コハクがそれを見逃す筈はなく。
「張ってきちゃったかな?」
「あ、うん、ちょっと・・・」
「じゃあ、着替える前に、少しだけ吸い出しておこうか」
ヒスイをベッドの端に座らせ、まずはキス。
溢れんばかりの愛情を唇に乗せ、ヒスイの唇、鼻先、頬、瞼・・・惜しみなく与える。
ヒスイはとても嬉しそうにキスを受け、時には返したりもして。
そんなイチャイチャキスを続けながら、ヒスイのパジャマのボタンを外すコハク・・・
乳房に視線を落とすと、先端に母乳が滲んでいた。
(ああ・・・可愛いなぁ・・・)
心底愛おしく思いながら浮かべる微笑み。
「我慢しなくていいからね」
コハクはそう言って、震えるヒスイの乳頭に口づけた。
そのまま、熱く湿った舌を乳首に絡み付かせる・・・
「あ・・・ん・・・おにぃ・・・」





その頃――湖の古城では。

カーネリアンがドレスアップを済ませていた。
赤い髪を上品にアップし、マーメイドシルエットの黒ドレス。
大きく背中が開いた、大胆なデザインだ。
「・・・ちょいと派手じゃないかい?」
「いやいや、お似合いですって。結婚の申し込みが殺到すること間違いないっす」
「ったく、冗談も程々にしな」
「冗談じゃないんすけどね」リヒターは苦笑いだ。
「アタシは先に行くよ。ヒスイと顔を合わせる訳にはいかないからね」
「ひとりで大丈夫っすか?」
「ひとりも何も、向こうにゃ、仲間がいるんだ。それにアタシゃ――」


「隠密行動は得意なのさ」

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