World Joker/Side-B

26話 Hの動機




「・・・・・・」

以下数行、コハク視点。

(オニキスに先越されちゃったみたいだな)

妻が他の男の服を羽織っていれば、当然いい気はしないが・・・

(仕方ないか、今回は同行できなかった僕に落ち度がある訳だし・・・)

ヒスイが無事なら、良しとする。

「ごめんね、遅くなって」

コハクは天使の微笑みで腕を広げ。

「おいで」

試験官の死角にヒスイを呼び込んだ。

「おにーちゃぁぁぁん!」

ヒスイは真っ白な牙を輝かせ、コハクに駆け寄った。

ヒスイにとってコハクは、最愛の・・・兄であり夫であり。
食糧でも、ある。

ひと仕事終えた後、グビッ!と一杯〜みたいなもので。

カプッ!と、いきたかったのだ。ところが。

ひょいと躱され。背中から抱きしめられる。

(あ、あれっ???)

「ソレはちょっと待ってね。先に―させて?」

「え?ひぁ・・・」

 
※性描写カット


ついに足腰が立たなくなったヒスイを、コハクが抱っこして歩く。

ミノタウロスの居場所は知っている。
裏ルートを使えばすぐだ。

(とりあえず、オニキスに挨拶しておかないとね)

先回りして、双子から一旦オニキスを引き離すことを計画する。

 

こうして・・・

 

「どうもお世話になりました」

ドラゴン姿のオニキスに頭を下げる。

「どうかしましたか?」

ドラゴンの顔色を窺うのは至難の業だが、コハクはさらっとそう言って。

腕の中でウトウトしていたヒスイをキスで起こし、オニキスを見て笑った。

「・・・いや」と、オニキス。

“ブラッド・ダイナマイト”の不発事件・・・わざわざヒスイの耳に入れたくない、というのもあり。

(口にするのは早計か)そう、思い止まる。

アイボリー本人でさえ、「的外したかもしんねぇ」で、丸く収めているのだ。

(ならば・・・)

オニキスは気持ちを切り替え、言った。

「丁度いいところに来た」

「はい?」

 

 

「・・・交代だ」

 
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