World Joker/Side-B

49話 溺愛現場



エクソシストの一団から少し離れたところで。

「・・・え?勘違い???」

ヒスイは、きょとんとした顔でセレの話を聞いていた。

「あーくんは、自ら落ちて頭を打ったのだよ」

イフリートは誤って召喚されただけで、何の罪もない。

そう、セレの口から告げられる。

本来ならば、リヴァイアサンが召喚される場面・・・いっそ、それを氷漬けにしていればお手柄だったのだが。

オニキスを始め、多くのエクソシスト達が、イフリートの引き上げ作業に当たっている。

「そっか・・・私、やっちゃったんだ・・・」

「それで、なのだがね。“向こう側”が、人質を要求してきているのだよ」

「人質?」

「ペナルティというところかね 」

私が行こうと思う、と、セレ。

「なに、イフリートを無事還すまでの間だ」

心配はいらない、そう言ってヒスイの頭を撫でる。

「ついては、留守の間、教会をトパーズに頼みたいのだがね。彼に伝えて・・・」

 

 

「私が失敗したんだから、私が行く」

 

 

高みのセレを見上げるヒスイ。

「ごめんね。後のことはよろしく」

謝罪と決意を述べた、その時。ふわり、コハクの両腕に包まれる。

「わ・・・お兄ちゃん!?」

息も乱れていない、汗もかいていない、表情もいつも通り優美なものだが。

風に吹かれ、髪型は少々崩れている。

コハクもまた、スピード全開で駆け付けたのだ。

「僕も行きます。イフリートが戻るまで、なんて言っても、本当か嘘かわかったものじゃない」

ヒスイをひとりで行かせる訳にはいかない、と。しかしセレは。

「それは困る。君と私が離れる訳にはいかないだろう」

次の瞬間。コハクはヒスイから離れ、セレとのヒソヒソ話に転じた。

「誤解を招くような言い方、やめて貰えませんか」

「おやおや、君と私で行こうと思っていたのだがね」

どうやら定員は2名。

「ヒスイと私で行っても良いのだが」というセレの発言に対し、一瞬コハクが目つきを変えたが、今はそれよりも・・・

「あっ・・・ほら・・・ヒスイが・・・」

・・・疑いの眼差しを向けている。

「セレの本命は、まーくんの筈でしょ!?いい加減なことしたら許さないんだからっ!!」

「へぇ・・・そうなんですか?」

白々しいコハクの物言いに。

「彼女の中では、そういう事になっているらしいよ」

苦笑いでセレが答える。

「お兄ちゃんは絶対あげないっ!!」

そう声を張り上げ、セレを押し退けようとするヒスイだったが・・・ビクともしない。

「っ〜!!!とにかくっ!!“向こう側”には私が行く!!」

 

 

「「「だったら ―」」」

 

 

満を持して。男3人の声が重なる。

「オレが行く」と、トパーズ。

「オレが行こう」と、オニキス。

「いや、ここは俺しかいねーだろ」

魔法治療を済ませたアイボリーまでいた。

「僕が行く」コハクも改めて名乗りをあげ。

「やはり私が行くよ」セレもまた、譲らない。

 

「オレが」「俺が」「僕が」「私が」「オレが」

 

男5人の間で、このやりとりを、何度も繰り返し。

「・・・・・・」×5

埒が明かないので、アミダくじで決めることになった・・・のだが。

「・・・・・・」(どうして僕が?)

選ばれたのは、6人目の男、マーキュリーだった。

ヒスイのパートナーにエントリーした覚えもないというのに。

アイボリーが勝手に名前を書き、大当たりだ。

(大当たり?どこがだよ)

 

 

お母さんと一緒だなんて・・・最悪だ・・・

 

 

 

魔法陣はまだ光を放っている。“向こう側”と繋がっている証拠だ。

日の出前に発たなければならないが、まだ時間はあった。

ふたりきりになれる場所まで移動するコハクとヒスイ。

ただし、どこまで行っても、砂漠は砂漠だ。

しばしの別れを控え。

「ヒスイ―」

背中から抱きしめられると。

「おにぃちゃ〜・・・」

つい、甘えた声を出してしまう。更には。

「あ・・・」(やだ・・・わたし・・・こんな時・・・なのに・・・)


 
※性描写カット
 

 

「ヒスイ・・・っ!!なんかあった!?」

遅ればせながら異変に気付いたジストが、空を切り裂き飛び降りた先は・・・溺愛現場。


※性描写カット



「ごめ・・・オレあっち行って・・・」

「丁度良かった」

コハクは、慌ててその場を去ろうとするジストを呼び止め。

「足場が悪くて困ってたんだ。手伝って貰えないかな」

嫌じゃなければ・・・だけど、と、コハク。

「!!全然嫌じゃないよっ!!」ジストが答える。

(つかまるところもないんじゃ、大変だもんなっ!!)

「オレっ!手伝うよっ!!」

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