51話 快感、感染。
再びこちら、溺愛現場。
※性描写カット
「僕の味、しっかり覚えておいてね。しばらく、おあずけになっちゃうから」
(・・・なんて、すぐ追いかけるけどね!!)
※性描写カット
それから間もなく・・・
「おい!父もどきよ!!」
砂漠の砂を踏み締め、シトリンがやってきた。※人型
「のぁっ!?な、なにをして・・・」
「ごめん、今ちょっと取り込み中なんだ」
※性描写カット
ゴホンッ!!
「とにかく聞いてくれ!!」
両親と弟に背を向け、シトリンは、大きく咳払い。
何とか気を持ち直し、話し始めた。
王室付き召喚士、ラピスラズリがなぜレムに力を貸したのか・・・
事情聴取の場にシトリンもいたのだ。
「弱味を握られた訳でも、脅しを受けた訳でもない。ただ、ラピスの妻が、そのレムとやらと友人関係にあったらしく、協力してやって欲しいと頼まれただけのようだ」
家庭内は至って平和。不穏なムードなどなく。
「指示通り、見張りをしてはいたが、全く気付かなかった。すまん」
仕方のないことだよ、と、コハクは肩を竦め。
「彼の存在を認識するのが遅かったんだ。君は悪くない。それに・・・ 今回の件で、彼もまた、予定が狂っただろうからね、っと。そろそろ、こっち向いても大丈夫だよ」
「うぉっ!?」(何という早業!!どうなっているんだ!?)
振り向いて、驚かずにはいられないシトリン。
湯上りのような顔をしているものの、ヒスイは制服を着て、ちょこんと立っていた。
余韻はむしろ、ジストの方に残っているらしく、ぼんやり惚けている。
「おお!!可愛い羽根だな、母上!!」
シトリンのものに比べると1/3の程度の大きさしかないが。
「え?そう???」
ヒスイは少し照れ臭そうに、羽根をパタパタさせて。
「なんか、お兄ちゃんとえっちしてたら出ちゃったんだけど」
「ヒスイの中の“僕”が減れば、元に戻るよ」と、コハクが笑う。
「あー!まー!お前達もこっちへ来い!!」
シトリンが大声で双子を呼び寄せ。
「おおーっ!!可愛いじゃんか!!」と。
シトリンと同じリアクションをしたのは、アイボリーだ。
「初めて見たぜ!!」
「そうだっけ???」
「なぁなぁ、ソレって飛べんの?」
「う〜ん、どうだろ。いつもお兄ちゃんが抱っこしてくれるから」
自力で飛ぶ必要に迫られたことがないのだ。そこでコハクが。
「綺麗な形を保つには、飛ばない方がいいんだ」
過保護発言だが、もはや誰も疑問に思わない。
一部、マーキュリーを除いては。
「・・・・・・」(つまりあの羽根は観賞用ってこと?)
黙って見ていると。
「まーくん、ちょっと話、できる?」
コハクに声をかけられた。
「はい。夕べはすみませんでした」
いつもと変わらぬコハクの態度もさることながら、マーキュリーもまた、結構な白々しさだ。
二人並んで、何処へともなく歩き出す・・・
「あーくんの話、ですか?」
「君の話だよ」
そこでコハクは言葉を切り。自分から誘った割に、マーキュリーが言い出すのを待っているようだった。
「・・・・・・」
だったら、と、反抗的な気分で口を開くマーキュリー。
「どうしてですか?」真っ直ぐコハクに視線を向け。
「どうして、あーくんは“金”で、僕は“銀”のままなんですか?」
・・・それは、正しい質問。
「正直に話すよ」と、コハクが視線を返す。
「銀の吸血鬼の習性を、どうにかしなければと思う反面、本当にどうにかしなければいけないことなのか、迷っていたんだ」
ひとりを“金”にしながらも、もうひとりを“銀”として残したのは、その迷いの現れでもあった。
「おかしな話だけど、僕は・・・まーくんにもあーくんにも希望を抱いていたんだ。差別をしたつもりはない。君がどう思うかは別として」
すると。
「ご期待に添えるよう頑張ります」
優等生の常套句。マーキュリーの、その声に一切感情はない。
コハクは軽く息を漏らし。
「もういいんだ。勝手なことをしてごめんね。今のは聞かなかったことにするよ」
砂漠の集団へと戻り。
「体の調子はどう?」
そう言って、ヒスイの肩を抱くコハク。
「ん!すごくいい!今なら何でもできちゃいそう!」と、ヒスイが笑う。
「私、“向こう側”で、頑張るから!」
ある意味、不吉な言葉を残し。手を振って。
マーキュリーと共に、石版の上に乗る。
日の出が近付くにつれ、弱くなっていた光が、一瞬だけ強くなり。
「いってくるね!」
石版に彫られた魔法陣がまっさらになる・・・
そこにはもう、ヒスイの姿もマーキュリーの姿もなかった。